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それぞれの修羅 第四十七話
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「シルビア様、今回の件で陛下がお呼びの様です」
今後の作戦を立てていたところに、モアラート王国の護衛騎士が迎えに来る。
「他の方に聞かれたくないので他の皆さんは別室に移動していただきたいとのことなのですが…」
4人は顔を見合わせる。シルビアが小さく頷くと、鎧を着たままのギルバートとヴォルフが騎士の方へ近づく。
「その指示は陛下から直接されたのか?」
「いえ、王太子殿下からの指示ですが、陛下がお呼びだと仰っていました…」
「わかった。準備するから中で待ってて?」
ヴォルフは怪しさを感じながら、ここで呼出に応えず逆に怪しまれることを恐れ、素直に従うことにした。
しばらくして、シルビアと護衛騎士が客間から出てきた。
「では、こちらへ。中庭の東屋にてお待ちです」
丁寧に案内されシルビアは警戒しながらついていく。先程の廊下を通り過ぎ、薔薇の咲く穏やかな庭の隅に隠れ家の様な東屋があった。
「こちらに、おかけになってお待ちください。」
用意されていた椅子にすわると、執事の様な男が熱い紅茶を差し出してくる。
「自慢の紅茶です、お飲みください。」
「ありがとう。うん。良い香りだ」
一口、口に含みソーサーにカップをもどす。
しばらくあたらを見回していると、耳障りな声が聞こえた。
「あら?薔薇はお持ちでないの?楽しみにしていましたのに。」
「…陛下がお呼びのはずでは?」
振り返ると、先程同様、大胆にデコルテ部分が開いた真っ赤なドレスを見に纏ったアクアが立っていた。
先程までいたはずの男も護衛騎士も姿を消していた。
「ふふ、わたくしあなたの様な美しい男は久しぶりに見ましたの。よかったら、お話ししましょう」
すぐ隣の椅子に腰掛けたアクアは、こりもせずシルビアの太ももをツゥっと撫でてしなだれかかる。
刺す様な悪寒に席を立とうとするがシルビアの体は思う様に動かなかった。
「もしここで、わたくしの純潔をあなたが奪ったら、どうなるかしら?あぁ、わたくしのような美しい女を抱けるんだから嬉しいでしょ?」
どうやら、口も動かせなくなっているらしい。動かそうとした場所がビリビリと痺れてしまう。
「陛下がお呼びではないことくらいわかっていたでしょう?それでも来たということは、わたくしに一目惚れしたということよね?仕方ないから抱かせてあげるわ」
そういうと、シルビアの外装に手をかけゆっくりと外す。詰め襟の留め金をプチンと外してその下のボタンも外していく。
「ほら、わたくしの胸をさわって、気持ち良くしてくださる?」
無理やり胸に手を当てさせられると、ギュッと手を上から握られる。まるで胸を弄んでいるかの様に力をこめたり緩めたりして楽しんでいるようだ。困惑したシルビアをみてニッコリとアクアは笑う。
「さぁ、楽しみましょう?」
そういうとシルビアの膝の上に跨り、覆い被さる。
「行ってしまって大丈夫でしょうか?」
「…彼は魔術は一級品ですが、腕っぷしは、からっきりですからねぇ」
呑気にソファに座りながらギルバートが心配そうにするリリーに答える。
フードを外して小さな窓から外を見ると、東屋に向かって歩いていくシルビアがみえた。
そのまま薔薇に隠れて姿が見えなくなる。
はぁ、とため息をつくと扉が激しくノックされる。
「どうしました?」
ギルバートが扉を開けるより早く、乱暴に扉が蹴破られる。ギルバートはリリーの前に立ちはだかるが、ドカドカと入ってきた数名の騎士の剣を制する事で精一杯だった。
リリーに手を触れさせることなくなんとかいなしていたが、いつの間にか部屋の隅へと追いやられていた。
そこにちょうど背中に隣の部屋に通じる扉があった。
静かに回るドアノブに気がついた時にはすでに遅く、少し開いた扉から出てきた腕にリリーは引っ張られて隣の部屋へ引き摺り込まれてしまう。
言葉を発する暇もなく、ギルバートと離され扉も厳重に閉められてしまった。
「 リリー。リリー…初めて名前を呼ぶね。」
そこにはやはり、というか予想通りの人物が立っていた。
「王太子様。私にまだ何か用事があるのですか?」
クレイは頬を赤く染め、うっとりとした表情でリリーをひたすら見つめていた。
「僕と君は本当は結ばれなければいけない運命だった。邪魔が入ってしまって一旦は離れ離れになったけど、もう大丈夫だよ」
なるべく遠くへ行こうと、壁伝いに窓の方へとジリジリと歩みを進める。クレイは気にすることなく悠然とリリーとの距離を詰めていく。
「君は呪いなんてかけてなかったのに、アクアに騙されてあんな酷いことをしてしまった。本当に申し訳なかった…許してくれるよね。優しい僕の聖女…」
穏やかに微笑んでいるはずだが、その美しかった金色の瞳はうっすらと濁っている様に見える。
ついに手の届く距離にきてしまう。
「誤って済む問題じゃないですよ。王太子だからと、そう易々と許されると思ったら大間違いです。」
ガッと思い切り顎を掴まれ、無理やり上を向かされる。
淀んだ瞳と目が合うとなぜか、目をさられなくなり、幸せに笑い合うクレイとリリーの映像が頭の中に流れてきた。
魅了魔法は効かないはずなのに…ぎゅっと拳を握り、手のひらに爪を食い込ませる痛みでなんとか意識を持っていかれない様に抵抗する。
今後の作戦を立てていたところに、モアラート王国の護衛騎士が迎えに来る。
「他の方に聞かれたくないので他の皆さんは別室に移動していただきたいとのことなのですが…」
4人は顔を見合わせる。シルビアが小さく頷くと、鎧を着たままのギルバートとヴォルフが騎士の方へ近づく。
「その指示は陛下から直接されたのか?」
「いえ、王太子殿下からの指示ですが、陛下がお呼びだと仰っていました…」
「わかった。準備するから中で待ってて?」
ヴォルフは怪しさを感じながら、ここで呼出に応えず逆に怪しまれることを恐れ、素直に従うことにした。
しばらくして、シルビアと護衛騎士が客間から出てきた。
「では、こちらへ。中庭の東屋にてお待ちです」
丁寧に案内されシルビアは警戒しながらついていく。先程の廊下を通り過ぎ、薔薇の咲く穏やかな庭の隅に隠れ家の様な東屋があった。
「こちらに、おかけになってお待ちください。」
用意されていた椅子にすわると、執事の様な男が熱い紅茶を差し出してくる。
「自慢の紅茶です、お飲みください。」
「ありがとう。うん。良い香りだ」
一口、口に含みソーサーにカップをもどす。
しばらくあたらを見回していると、耳障りな声が聞こえた。
「あら?薔薇はお持ちでないの?楽しみにしていましたのに。」
「…陛下がお呼びのはずでは?」
振り返ると、先程同様、大胆にデコルテ部分が開いた真っ赤なドレスを見に纏ったアクアが立っていた。
先程までいたはずの男も護衛騎士も姿を消していた。
「ふふ、わたくしあなたの様な美しい男は久しぶりに見ましたの。よかったら、お話ししましょう」
すぐ隣の椅子に腰掛けたアクアは、こりもせずシルビアの太ももをツゥっと撫でてしなだれかかる。
刺す様な悪寒に席を立とうとするがシルビアの体は思う様に動かなかった。
「もしここで、わたくしの純潔をあなたが奪ったら、どうなるかしら?あぁ、わたくしのような美しい女を抱けるんだから嬉しいでしょ?」
どうやら、口も動かせなくなっているらしい。動かそうとした場所がビリビリと痺れてしまう。
「陛下がお呼びではないことくらいわかっていたでしょう?それでも来たということは、わたくしに一目惚れしたということよね?仕方ないから抱かせてあげるわ」
そういうと、シルビアの外装に手をかけゆっくりと外す。詰め襟の留め金をプチンと外してその下のボタンも外していく。
「ほら、わたくしの胸をさわって、気持ち良くしてくださる?」
無理やり胸に手を当てさせられると、ギュッと手を上から握られる。まるで胸を弄んでいるかの様に力をこめたり緩めたりして楽しんでいるようだ。困惑したシルビアをみてニッコリとアクアは笑う。
「さぁ、楽しみましょう?」
そういうとシルビアの膝の上に跨り、覆い被さる。
「行ってしまって大丈夫でしょうか?」
「…彼は魔術は一級品ですが、腕っぷしは、からっきりですからねぇ」
呑気にソファに座りながらギルバートが心配そうにするリリーに答える。
フードを外して小さな窓から外を見ると、東屋に向かって歩いていくシルビアがみえた。
そのまま薔薇に隠れて姿が見えなくなる。
はぁ、とため息をつくと扉が激しくノックされる。
「どうしました?」
ギルバートが扉を開けるより早く、乱暴に扉が蹴破られる。ギルバートはリリーの前に立ちはだかるが、ドカドカと入ってきた数名の騎士の剣を制する事で精一杯だった。
リリーに手を触れさせることなくなんとかいなしていたが、いつの間にか部屋の隅へと追いやられていた。
そこにちょうど背中に隣の部屋に通じる扉があった。
静かに回るドアノブに気がついた時にはすでに遅く、少し開いた扉から出てきた腕にリリーは引っ張られて隣の部屋へ引き摺り込まれてしまう。
言葉を発する暇もなく、ギルバートと離され扉も厳重に閉められてしまった。
「 リリー。リリー…初めて名前を呼ぶね。」
そこにはやはり、というか予想通りの人物が立っていた。
「王太子様。私にまだ何か用事があるのですか?」
クレイは頬を赤く染め、うっとりとした表情でリリーをひたすら見つめていた。
「僕と君は本当は結ばれなければいけない運命だった。邪魔が入ってしまって一旦は離れ離れになったけど、もう大丈夫だよ」
なるべく遠くへ行こうと、壁伝いに窓の方へとジリジリと歩みを進める。クレイは気にすることなく悠然とリリーとの距離を詰めていく。
「君は呪いなんてかけてなかったのに、アクアに騙されてあんな酷いことをしてしまった。本当に申し訳なかった…許してくれるよね。優しい僕の聖女…」
穏やかに微笑んでいるはずだが、その美しかった金色の瞳はうっすらと濁っている様に見える。
ついに手の届く距離にきてしまう。
「誤って済む問題じゃないですよ。王太子だからと、そう易々と許されると思ったら大間違いです。」
ガッと思い切り顎を掴まれ、無理やり上を向かされる。
淀んだ瞳と目が合うとなぜか、目をさられなくなり、幸せに笑い合うクレイとリリーの映像が頭の中に流れてきた。
魅了魔法は効かないはずなのに…ぎゅっと拳を握り、手のひらに爪を食い込ませる痛みでなんとか意識を持っていかれない様に抵抗する。
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