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一つ目のけじめをつけましょう② 第三十四話

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「この間の騎士様!私、恩返しがしたくて…探しておりましたの!」

先程までの醜い顔はすっかりどこかにいってしまった様で、頬を赤く染めてヴォルフに抱きつこうとエリンがこちらへ近づいてくる。

「お前たちが感謝しなきゃいけないのは僕じゃない。リリーだ。」

ヴォルフが冷たい眼差しでピシャリと言い切ると、さすがのエリンもでも…とか言ってその場に立ち尽くす。

「それにお前たち二人は少なからずリリーを追い込んでいるよね。謝りもせず友人だと言い張るなんて、ずうずうしいよ」

「き…傷つけてしまったのなら、謝りますわ、」

「嫌です。」

続けて謝ろうとしたエリンの言葉を遮りリリーは答える。あまりに予想していない答えだったのか、二人は怒った様な表情をこちらに向ける。

「謝ったら許さなかった私が悪いってまた言うんでしょ?どうやら故意に私に悪意を向けたみたいだし…謝ると言う行為すらさせたくないほど、貴方が嫌いです。それにアイクには謝ってもらう事なんで何もないよ。ただの幼馴染。それだけだもん。あの時言われた言葉は傷ついたけどそれのおかげで強くなれた。」

「何よ!!アンタばっかりいい男に囲まれて幸せになろうなんて!私の方が可愛いのに!仕事ができるのに!!せっかく奪ってやったのに更に上にいくなんて!!!よこしなさいよ!アンタ如きが手に入れていいもんじゃないのよ、私の方が相応しいわよ!」

ついに、本性を表したのかエリンはそばにいたアイクを突き飛ばしてリリーに掴み掛かる。
止めようとした団員を止めて、襟元を掴み詰め寄ってくるエリンの手をもち、反対側に捻りあげる。

「や!!痛いじゃない!!やめてよ!暴行よ!」

「このまま、牢屋に入れてもいいんですよ、不法侵入です。それが嫌だったら、今すぐここから出ていって!」

「アイク、もう私は貴方には会わないと思う。あの時はもう、戻らないから。アイクも前に進んで欲しい。」

ドン!と軽く背中から押してエリンを遠ざける。ポーッと立っているアイクに向かってさようなら、とつげる。


ギャーギャーと騒ぐエリンをアイクは静かに引っ張って連れて行く。
嵐が過ぎ去った裏口ではリリーが他の団員たちに謝り通していた。この一件で女性騎士達との絆が深まった様な気がした。いつでも相談に乗るから!!と頼もしいお言葉を何人もが掛けてくれた。

「リリーちゃん大丈夫?あの女の子、確かあちらの王宮で働いたた子だよね?」

「えぇ、孤児院にあの方が来る時に連れて来ていた人です。アイクの事を好きになってしまったのか、よく2人で話していました。アイクも気になる様なそぶりを見せ、よく相談事になっていましたから、そう言う事なんだと。私は思っていたのですが」

彼女が求めるものはいったい何だったんだろう。
アイクの疲れ果てた顔と、彼女が着ていた上等なワンピースの明るいピンク色がまるで反対に見えて、幼馴染の未来が少し心配になった。

「はぁ、まぁ、グリーン商会の方には釘を刺しておくから、リリーちゃんも気をつけて。でも、よく言いたいこと言えたね偉かったよ」

ポンポンと頭を撫でられると少し照れてしまうが、兄が出来たようで密かに喜びを感じていた。

すっきりとはいかないが、悲しい思い出を一つ過去にできた様な気がした。

「さぁ、午後の訓令を始めよう。討伐の依頼が入ってる、森へ入って撃破せよ」


「「はっ!!」」

それから何事もなかったかの様に午後の訓練もすみ、また夜がやってくる。
今夜の星空はいつもより少し、透き通ってみえた。
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