35 / 52
一つ目のけじめをつけましょう② 第三十四話
しおりを挟む
「この間の騎士様!私、恩返しがしたくて…探しておりましたの!」
先程までの醜い顔はすっかりどこかにいってしまった様で、頬を赤く染めてヴォルフに抱きつこうとエリンがこちらへ近づいてくる。
「お前たちが感謝しなきゃいけないのは僕じゃない。リリーだ。」
ヴォルフが冷たい眼差しでピシャリと言い切ると、さすがのエリンもでも…とか言ってその場に立ち尽くす。
「それにお前たち二人は少なからずリリーを追い込んでいるよね。謝りもせず友人だと言い張るなんて、ずうずうしいよ」
「き…傷つけてしまったのなら、謝りますわ、」
「嫌です。」
続けて謝ろうとしたエリンの言葉を遮りリリーは答える。あまりに予想していない答えだったのか、二人は怒った様な表情をこちらに向ける。
「謝ったら許さなかった私が悪いってまた言うんでしょ?どうやら故意に私に悪意を向けたみたいだし…謝ると言う行為すらさせたくないほど、貴方が嫌いです。それにアイクには謝ってもらう事なんで何もないよ。ただの幼馴染。それだけだもん。あの時言われた言葉は傷ついたけどそれのおかげで強くなれた。」
「何よ!!アンタばっかりいい男に囲まれて幸せになろうなんて!私の方が可愛いのに!仕事ができるのに!!せっかく奪ってやったのに更に上にいくなんて!!!よこしなさいよ!アンタ如きが手に入れていいもんじゃないのよ、私の方が相応しいわよ!」
ついに、本性を表したのかエリンはそばにいたアイクを突き飛ばしてリリーに掴み掛かる。
止めようとした団員を止めて、襟元を掴み詰め寄ってくるエリンの手をもち、反対側に捻りあげる。
「や!!痛いじゃない!!やめてよ!暴行よ!」
「このまま、牢屋に入れてもいいんですよ、不法侵入です。それが嫌だったら、今すぐここから出ていって!」
「アイク、もう私は貴方には会わないと思う。あの時はもう、戻らないから。アイクも前に進んで欲しい。」
ドン!と軽く背中から押してエリンを遠ざける。ポーッと立っているアイクに向かってさようなら、とつげる。
ギャーギャーと騒ぐエリンをアイクは静かに引っ張って連れて行く。
嵐が過ぎ去った裏口ではリリーが他の団員たちに謝り通していた。この一件で女性騎士達との絆が深まった様な気がした。いつでも相談に乗るから!!と頼もしいお言葉を何人もが掛けてくれた。
「リリーちゃん大丈夫?あの女の子、確かあちらの王宮で働いたた子だよね?」
「えぇ、孤児院にあの方が来る時に連れて来ていた人です。アイクの事を好きになってしまったのか、よく2人で話していました。アイクも気になる様なそぶりを見せ、よく相談事になっていましたから、そう言う事なんだと。私は思っていたのですが」
彼女が求めるものはいったい何だったんだろう。
アイクの疲れ果てた顔と、彼女が着ていた上等なワンピースの明るいピンク色がまるで反対に見えて、幼馴染の未来が少し心配になった。
「はぁ、まぁ、グリーン商会の方には釘を刺しておくから、リリーちゃんも気をつけて。でも、よく言いたいこと言えたね偉かったよ」
ポンポンと頭を撫でられると少し照れてしまうが、兄が出来たようで密かに喜びを感じていた。
すっきりとはいかないが、悲しい思い出を一つ過去にできた様な気がした。
「さぁ、午後の訓令を始めよう。討伐の依頼が入ってる、森へ入って撃破せよ」
「「はっ!!」」
それから何事もなかったかの様に午後の訓練もすみ、また夜がやってくる。
今夜の星空はいつもより少し、透き通ってみえた。
先程までの醜い顔はすっかりどこかにいってしまった様で、頬を赤く染めてヴォルフに抱きつこうとエリンがこちらへ近づいてくる。
「お前たちが感謝しなきゃいけないのは僕じゃない。リリーだ。」
ヴォルフが冷たい眼差しでピシャリと言い切ると、さすがのエリンもでも…とか言ってその場に立ち尽くす。
「それにお前たち二人は少なからずリリーを追い込んでいるよね。謝りもせず友人だと言い張るなんて、ずうずうしいよ」
「き…傷つけてしまったのなら、謝りますわ、」
「嫌です。」
続けて謝ろうとしたエリンの言葉を遮りリリーは答える。あまりに予想していない答えだったのか、二人は怒った様な表情をこちらに向ける。
「謝ったら許さなかった私が悪いってまた言うんでしょ?どうやら故意に私に悪意を向けたみたいだし…謝ると言う行為すらさせたくないほど、貴方が嫌いです。それにアイクには謝ってもらう事なんで何もないよ。ただの幼馴染。それだけだもん。あの時言われた言葉は傷ついたけどそれのおかげで強くなれた。」
「何よ!!アンタばっかりいい男に囲まれて幸せになろうなんて!私の方が可愛いのに!仕事ができるのに!!せっかく奪ってやったのに更に上にいくなんて!!!よこしなさいよ!アンタ如きが手に入れていいもんじゃないのよ、私の方が相応しいわよ!」
ついに、本性を表したのかエリンはそばにいたアイクを突き飛ばしてリリーに掴み掛かる。
止めようとした団員を止めて、襟元を掴み詰め寄ってくるエリンの手をもち、反対側に捻りあげる。
「や!!痛いじゃない!!やめてよ!暴行よ!」
「このまま、牢屋に入れてもいいんですよ、不法侵入です。それが嫌だったら、今すぐここから出ていって!」
「アイク、もう私は貴方には会わないと思う。あの時はもう、戻らないから。アイクも前に進んで欲しい。」
ドン!と軽く背中から押してエリンを遠ざける。ポーッと立っているアイクに向かってさようなら、とつげる。
ギャーギャーと騒ぐエリンをアイクは静かに引っ張って連れて行く。
嵐が過ぎ去った裏口ではリリーが他の団員たちに謝り通していた。この一件で女性騎士達との絆が深まった様な気がした。いつでも相談に乗るから!!と頼もしいお言葉を何人もが掛けてくれた。
「リリーちゃん大丈夫?あの女の子、確かあちらの王宮で働いたた子だよね?」
「えぇ、孤児院にあの方が来る時に連れて来ていた人です。アイクの事を好きになってしまったのか、よく2人で話していました。アイクも気になる様なそぶりを見せ、よく相談事になっていましたから、そう言う事なんだと。私は思っていたのですが」
彼女が求めるものはいったい何だったんだろう。
アイクの疲れ果てた顔と、彼女が着ていた上等なワンピースの明るいピンク色がまるで反対に見えて、幼馴染の未来が少し心配になった。
「はぁ、まぁ、グリーン商会の方には釘を刺しておくから、リリーちゃんも気をつけて。でも、よく言いたいこと言えたね偉かったよ」
ポンポンと頭を撫でられると少し照れてしまうが、兄が出来たようで密かに喜びを感じていた。
すっきりとはいかないが、悲しい思い出を一つ過去にできた様な気がした。
「さぁ、午後の訓令を始めよう。討伐の依頼が入ってる、森へ入って撃破せよ」
「「はっ!!」」
それから何事もなかったかの様に午後の訓練もすみ、また夜がやってくる。
今夜の星空はいつもより少し、透き通ってみえた。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる