34 / 52
一つ目のけじめをつけましょう① 第三十三話
しおりを挟む
ジェントクラン国は教会、護衛団、騎士団、医療団、と大体はその団に分けられる。
更に、政に特化した機関がいくつかあるそうだ。
騎士団は色々な困り事から国民を守る…何でも屋さんの様な役割らしい。
騎士団の中でも、憲兵団や私兵団など、国民が集まる団体もあるらしい。リリーは教会が抱える騎士団に見習いとして入団することになった。
一番の下っ端なので、ヘンリーと食事を作ったり、雑用ごとも多くある様だが、孤児院でやっていたことなので負担が大きすぎることもなかった。
雑用をこなす傍ら、無理やり手伝いにやってくるシルビアを仕事に返したり、休日にはデェトに出かけたりと忙しい一月を過ごす。
ある日、ヘンリーと昼食の片付けをしている時いつもはリリーが訓練に行ってから来るはずの納品業者がやって来た。
皿洗い担当で裏口にいた新兵が対応していた様だが、どうも様子がおかしいのでヘンリーと顔を見合わせて裏口へ様子を見にいく。
「わたし、エリンと言います騎士様。リリーという友達に会いに来たのですぅ」
ヘンリーが苦手なセミを見るような目でコチラをみる。
そう、エリンはフリフリのドレスを着て語尾を微妙に伸ばし、クネクネとよく動きながら皿洗いをしていた騎士にすり寄っていた。
そばにはげっそりとしたアイクが立っていた。
「ヘンリーさん、あの人たちは知り合いなだけで友人ではありません。むしろあの女性の方は会いたくない相手です。」」
「だ…だよね、よかった。どうしようかな…」
「あ!!リリーさん!この人なんとかしてくださいよ」
絡まれた新兵は、柱の影からこっそり覗くリリーとヘンリーを見つけて助けを求めて来た。
その声が意外と大きかったようでまだ周りにいた騎士達が集まって来た。
「初めまして、リリーさんの友人のエリンと申します。こちらは、リリーさんの婚約者のアイクです。みなさまよろしくお願いします」
エリンは顔を上気させながら、美しく礼をする。
勝手に婚約者にされたことに驚き反論しようと一歩前にでると、洗濯当番の時にいつも仲良くしてくれる女性騎士2人が前に出てくれる。
「貴方たち、関係業者ですか?そうでないのならここは立ち入りを許可されていない場所ですよ」
「あら、私たちグリーン商会の者ですのよ!それに、婚約者に会いに来るのは別に悪いことじゃないですわよね?」
女性騎士は、怯むことなく言い返してくるエリンにあきれ、ため息をついている。
「リリーちゃんの婚約者は別にいるってみんな知っています。嘘をついて侵入しようとするなんて、密偵の容疑で捉えられても文句は言えませんよ?」
あれだけ、ベタベタと一緒にいれば噂はすぐに広まる。
子どもの頃の印象で暗く、他人との交流を嫌う変な人というレッテルを貼られたシルビアが溺愛している婚約者と言うことで、リリーは騎士団の中では有名になっていた。
女騎士達は恋話がやはり好きなようで、リリーを囲んでよく話に花を咲かせていた。
「そんな!!リリー!俺の事は遊びだったのか?」
「ひどいわ!幼い頃からあれだけ思わせぶりな事しておいて、他に婚約者を作るなんて…浮気もいいところね!慰謝料を請求されてもおかしくないわよ!」
うるっと瞳を潤ませてアイクに縋りつき泣き真似をするエリンはリリーと目が合うとニヤリと笑った気がした。
「確かに幼馴染だし、昔は気になってはいたけど先に貴方たち二人でイチャイチャし始めたんじゃない。」
「イチャイチャなんてしてない!あれは、リリーにこっちを見て欲しくてつい…」
「私はただ、相談してただけよ!」
「とにかく、ここは関係者以外は立ち入り禁止よ。出ていって」
そう言って皿洗い担当でいまだに側から離れられず困っていた新兵の手を引っ張り、引き寄せる。
「何よ…アンタばっかりいい思いして…」
エリンが呟くとリリーの手袋に手を掛けて一気に引き抜く。
「こんな気持ち悪い肌の人間が誰かに愛されるはずがないわ!こんな手で作った料理を食べてるなんて、みんな知らないでしょう?!」
手袋を騎士達の方へ放り投げ、リリーの腕を掴みみんなに見せつけるように上へ掲げる。
「だから、俺がもらってあげるって言ってるんだ、あの、君を馬鹿にした事は謝るから、意地を張ってないで戻っておいでよ リリー」
虚な目でリリーに手を伸ばすアイクに捕まる寸前に、一回り大きな手に叩き落され、持ち上げられていた手も下ろされる。
「はぁ、ホント、困った人だ」
少し汗をかいているヴォルフがリリーの壁となってくれていた。後ろから女性騎士二人が慌てて近づいて来て手袋を手渡してくれた。
「気持ち悪いなんて思ったないから、安心して。」
そう言われて後ろのほうを見てみれば、皆んな、うんうんと頷いたり「知てたしなぁ」と当たり前のように暖かく受け入れてくれていた。
ヘンリーに関しては、「美味いものを作る神の手になんて事を!!」と大層が立腹の様子だった。
更に、政に特化した機関がいくつかあるそうだ。
騎士団は色々な困り事から国民を守る…何でも屋さんの様な役割らしい。
騎士団の中でも、憲兵団や私兵団など、国民が集まる団体もあるらしい。リリーは教会が抱える騎士団に見習いとして入団することになった。
一番の下っ端なので、ヘンリーと食事を作ったり、雑用ごとも多くある様だが、孤児院でやっていたことなので負担が大きすぎることもなかった。
雑用をこなす傍ら、無理やり手伝いにやってくるシルビアを仕事に返したり、休日にはデェトに出かけたりと忙しい一月を過ごす。
ある日、ヘンリーと昼食の片付けをしている時いつもはリリーが訓練に行ってから来るはずの納品業者がやって来た。
皿洗い担当で裏口にいた新兵が対応していた様だが、どうも様子がおかしいのでヘンリーと顔を見合わせて裏口へ様子を見にいく。
「わたし、エリンと言います騎士様。リリーという友達に会いに来たのですぅ」
ヘンリーが苦手なセミを見るような目でコチラをみる。
そう、エリンはフリフリのドレスを着て語尾を微妙に伸ばし、クネクネとよく動きながら皿洗いをしていた騎士にすり寄っていた。
そばにはげっそりとしたアイクが立っていた。
「ヘンリーさん、あの人たちは知り合いなだけで友人ではありません。むしろあの女性の方は会いたくない相手です。」」
「だ…だよね、よかった。どうしようかな…」
「あ!!リリーさん!この人なんとかしてくださいよ」
絡まれた新兵は、柱の影からこっそり覗くリリーとヘンリーを見つけて助けを求めて来た。
その声が意外と大きかったようでまだ周りにいた騎士達が集まって来た。
「初めまして、リリーさんの友人のエリンと申します。こちらは、リリーさんの婚約者のアイクです。みなさまよろしくお願いします」
エリンは顔を上気させながら、美しく礼をする。
勝手に婚約者にされたことに驚き反論しようと一歩前にでると、洗濯当番の時にいつも仲良くしてくれる女性騎士2人が前に出てくれる。
「貴方たち、関係業者ですか?そうでないのならここは立ち入りを許可されていない場所ですよ」
「あら、私たちグリーン商会の者ですのよ!それに、婚約者に会いに来るのは別に悪いことじゃないですわよね?」
女性騎士は、怯むことなく言い返してくるエリンにあきれ、ため息をついている。
「リリーちゃんの婚約者は別にいるってみんな知っています。嘘をついて侵入しようとするなんて、密偵の容疑で捉えられても文句は言えませんよ?」
あれだけ、ベタベタと一緒にいれば噂はすぐに広まる。
子どもの頃の印象で暗く、他人との交流を嫌う変な人というレッテルを貼られたシルビアが溺愛している婚約者と言うことで、リリーは騎士団の中では有名になっていた。
女騎士達は恋話がやはり好きなようで、リリーを囲んでよく話に花を咲かせていた。
「そんな!!リリー!俺の事は遊びだったのか?」
「ひどいわ!幼い頃からあれだけ思わせぶりな事しておいて、他に婚約者を作るなんて…浮気もいいところね!慰謝料を請求されてもおかしくないわよ!」
うるっと瞳を潤ませてアイクに縋りつき泣き真似をするエリンはリリーと目が合うとニヤリと笑った気がした。
「確かに幼馴染だし、昔は気になってはいたけど先に貴方たち二人でイチャイチャし始めたんじゃない。」
「イチャイチャなんてしてない!あれは、リリーにこっちを見て欲しくてつい…」
「私はただ、相談してただけよ!」
「とにかく、ここは関係者以外は立ち入り禁止よ。出ていって」
そう言って皿洗い担当でいまだに側から離れられず困っていた新兵の手を引っ張り、引き寄せる。
「何よ…アンタばっかりいい思いして…」
エリンが呟くとリリーの手袋に手を掛けて一気に引き抜く。
「こんな気持ち悪い肌の人間が誰かに愛されるはずがないわ!こんな手で作った料理を食べてるなんて、みんな知らないでしょう?!」
手袋を騎士達の方へ放り投げ、リリーの腕を掴みみんなに見せつけるように上へ掲げる。
「だから、俺がもらってあげるって言ってるんだ、あの、君を馬鹿にした事は謝るから、意地を張ってないで戻っておいでよ リリー」
虚な目でリリーに手を伸ばすアイクに捕まる寸前に、一回り大きな手に叩き落され、持ち上げられていた手も下ろされる。
「はぁ、ホント、困った人だ」
少し汗をかいているヴォルフがリリーの壁となってくれていた。後ろから女性騎士二人が慌てて近づいて来て手袋を手渡してくれた。
「気持ち悪いなんて思ったないから、安心して。」
そう言われて後ろのほうを見てみれば、皆んな、うんうんと頷いたり「知てたしなぁ」と当たり前のように暖かく受け入れてくれていた。
ヘンリーに関しては、「美味いものを作る神の手になんて事を!!」と大層が立腹の様子だった。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました
しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。
そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。
そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。
全身包帯で覆われ、顔も見えない。
所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。
「なぜこのようなことに…」
愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。
同名キャラで複数の話を書いています。
作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。
この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。
皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。
短めの話なのですが、重めな愛です。
お楽しみいただければと思います。
小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる