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自分が一番だと思ってたsideアイク 第二十七話

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____sideアイク____

俺には幼馴染がいた。王都のはずれの、孤児院にいる。
瞳が茶色と紫なこと以外特別はない、優しい気の強い幼馴染。

孤児院に顔を出せば「アイク!今日もご飯食べていく?」と笑顔で声をかけてくれる。
商家の嫡男であるがゆえに、多少女の子にもモテる。
だから、リリーも絶対自分を好きだと思っていた。

ある日、孤児院にいくとすごく綺麗な銀髪の男の人がいた。リリーにベタベタとくっついてずっと喋っていた。
よく見れば『王太子』その人だった。
でも、俺が顔を出せば頬をピンクにしながら、リリーは俺を優先してくれた。

一緒に護衛やメイドたちもくっついてきていたので、適当にみんなと仲良くなっていった。

「アイクさんって、グリーン商会の方ですよね」

ある時エリンというメイドが声をかけてきた。
ちょっと風の魔法で掃除を手伝えば、

「凄いです!それに優しくて素敵です!」

といつも褒めてくれ、悪い気はしなかった。
『こんな田舎で終わる男じゃない』そんな燻った野心に気がつき、応援してくれた。

さすが、中心街のメイド、お化粧も綺麗で服装も美しくそんな人から褒められ、調子に乗っていた。


リリーが嫉妬の混ざった寂しそうな目で見てくるのもまた、快感だった。いつの間にか子供達も誘いわざと仲のいいところを見せつけるようになっていた。

そんなある日、庭でまたエリンを含めて話をしていた時、魔物が運動場に侵入してきた。
魔法は使えるが、倒すほどの自信は無いため、周りの人たちを集めて防御に徹することにした。
チラッと目をやれば、リリーは遠くにいたので大丈夫だと、そう思っていた。

暴風壁が出来上がるほんの少し前、突然目の前にリリーが現れるまで彼女を失う怖さを感じる事は無かった。
それなのに…突然彼女が飛び出してきた。

風が治り、やっと現場を見やることができた。彼女は王太子に守られて無事だった。

もし、いなくなっていたら…そう考えるとゾッとした。そして、つい厳しい口調で余計なことを言ってしまった。
リリーは今まで見たことのないくらい悲しい顔をすると、王太子の連れてきた真っ黒な男と一緒に消えてしまった。

今度あったら謝ろう、そう思っていたのに、待てども待てども帰っては来なかった。

代わりにとエリンが孤児院に通うようになり、寂しい心にするすると入り込んできた。
最後には、リリーの家族全員が大量の血痕を残して消えてしまった。

唯一のリリーとの繋がりも失い、なぜかエリンはうちの翔会で働き始め、将来は結婚か?などと勝手に周りが騒いでいた。離れたくなり、隣国への納品についてきたのに、エリンもついてきてしまった。
最近では、あれも買ってほしい、これも買って欲しいと強請るものが増えてきたし、[中心部からわざわざきてあげてるのに]と恩を着せてくるようになった。

リリーはそんなことした事なかった。そんな風に彼女と比べて落胆していたら、いつの間にか中型の魔物に囲まれ、どうにも逃げられなくなってしまっていた。

そんな時に助けてくれたのがリリーだった、少し大人びたのか、以前よりも可愛くなっている気がした。髪色も変わっていたし、自分に相応しい…そんな風に思っていた。

謝ればこちらに帰ってくるだろうとたかを括っていたが、全くのハズレで美丈夫2人組に見事に連れて行かれてしまった。

俺の手の中にいたはずだったのに、いつの間にか手が届かなくなっていた。
あの日にすぐ、大丈夫かと駆け寄っていたら…大切だから守りたいから無理しないでほしいと優しく伝えていたら。今のこの状況は変わっていたかもしれない。

鬼のような表情で真っ赤になったエリンの顔をチラッと見て、深いため息をつく。
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