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言葉の力を知ってる? 第二十六話
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「傷つけてなんてない!守りたかったんだ。いつも無茶をするから、リリーは…優しいから!」
突然目の前に現れた麗人に緊張したのか、少し自分を大きく見せようとアイクが叫ぶ。
「守るために傷つけるなんて斬新なやり方ですね」
シルビアは冷たい声のままフン、と鼻で笑っているようだ。久しぶりに会ったような気がする、なかなか顔が見えないことで、リリーは残念に感じる。
「好きな相手が無理をするなら、無理をしても守れるくらい強くなればいいじゃないか。僕はリリーを止めない。好きなように動いて、好きなように過ごしてほしい。」
「リリーと話させろよ!お前に関係ないだろ?!」
ゴォ!!っとアイクを中心にして風が起こる。
リリーはシルビアとヴォルフの間からひょこっと顔を出し、二人と視線を絡ませる。シルビアの瞳が一瞬揺らいだ気がした。っというかものすごいクマだ。寝てないのか?
青白い顔に物凄いクマ、長いまつ毛に潤んだ瞳と、結構な破壊力である。
「ありがとうございます、二人とも。大丈夫です、ちょっとお話しさせてください。」
「リリー、急に一家でいなくなるから心配してたんだ!」
「リリーさん、ご無事で良かったです」
二人はほら見ろ!と言わんばかりの表情でリリーに駆け寄る。
「そう?心配してくれてありがとう。」
にっこりと笑顔で返事をする。手は後ろで組んでいるため、二人には見えないだろう。密かに漏れ出る怒りで熱を持ち始めている。そっと、冷たいものが手に添えられる。おそらく、シルビアが手を握ってくれているのだろう。
「あの、こちらの二人は?私はエリンと言います」
元メイドのエリンは媚びるような視線を後ろの美丈夫たちに目配せをする。
「私、元メイドなんです騎士様の寮で働いていました!!」
あぁ、またこの人は私にとって変わろうとしているのか。とリリーは呆れた。
「そうなんだ、それはすごいね。」
ヴォルフが他所行きの笑顔で軽く褒めると、エリンは顔を赤くして今までで一番いい笑顔をみせる。
「リリーいま、聖ジェントクランに商品を卸にきてたんだ、まさかこんなところで会えるなんて…会いたかった」
「私も会えて良かった。」
そういうと、アイクは頬を赤く染めて手を伸ばしてきた。その手が頬に届く前にさっとよける。あれ?と言うような表情でアイクがこちらを見つめてくる。
「アイクに余計なことするなって言われて、自分の無力さが悔しくなって強くなってやるって思えたんだ、だから、ありがとう。」
「あ、いや違う!そういう…」
「アイクはずっとリリーさんをさがしてたんですよぉ!また一緒に過ごしたいって…ね!」
「あ…あぁ、リリーほど俺のことわかってくれる子はいないし、リリーのこと一番わかってるのは俺だから」
アイクは一世一代の告白をしたかのような、自慢げなかおをしていた。
そんな2人に対して“だから?”
と言ってやりたいところだが飲み込む。
シルビアがグッと握る手に力を入れたのがわかった。
「私、リリーさんの代わりに騎士団の寮で働きますから、アイクといてあげてください!」
私が我慢すればいいんです!と言っているような、哀れみを誘うような表情でエリンが喋る。
「そっか、そう言うことか!」
一歩前にヴォルフが踏み出すと、エリンはパッと顔を綻ばせ喜びの声を上げる。
「私、きっとお役に立ちます「え?いや君はいらない」
ヴォルフはリリーの の肩に手を置きリリーを引き寄せシルビアの腕の中に押し込める。
「そう言うことかっていうのは、シルが言ってた通り、嫌な言葉を発する二人だなあって再認識しただけだよ」
「は?嫌な言葉ってなんだよ!」
カッとなったアイクがヴォルフにつかみかかる。
ペチンと手をはたき落とし、無表情になったヴォルフからはただならぬ殺気が漏れ出ていた。
「お前が言った言葉がリリーを縛り付け、そしてそこの女がリリーの居場所を奪った。『自分の代わりはいくらでもいる。自分は何もできないし自分が動くと不幸になる人がいる』そう思い込んだリリーは自らの力を出せなくなってしまった」
「言霊ってね、誰もが使える祝福であり呪いなんだよ。」
シルビアは、やっと腕の中に収めたリリーをぎゅっと抱きしめてはぁ、とため息をつく。
会いたかった。寂しかったよ。と耳元で囁かれると一気に顔が熱をもつ。
「傷つけたつもりは無くても、受け取った側が傷付けばその言葉は鋭い刃になるんだよ」
グッとアイクは悔しそうに唇をかむ。
「それに、リリーちゃんは寮では働いてないよ。君には到底変わることのできない貴重な人材なんだ。おっと。鬼教官がお呼びだじゃあ、みなさん、良い旅を」
そう言うとヴォルフはシルビアの肩に手を触れると、一瞬で目の前の景色が変わった。
突然目の前に現れた麗人に緊張したのか、少し自分を大きく見せようとアイクが叫ぶ。
「守るために傷つけるなんて斬新なやり方ですね」
シルビアは冷たい声のままフン、と鼻で笑っているようだ。久しぶりに会ったような気がする、なかなか顔が見えないことで、リリーは残念に感じる。
「好きな相手が無理をするなら、無理をしても守れるくらい強くなればいいじゃないか。僕はリリーを止めない。好きなように動いて、好きなように過ごしてほしい。」
「リリーと話させろよ!お前に関係ないだろ?!」
ゴォ!!っとアイクを中心にして風が起こる。
リリーはシルビアとヴォルフの間からひょこっと顔を出し、二人と視線を絡ませる。シルビアの瞳が一瞬揺らいだ気がした。っというかものすごいクマだ。寝てないのか?
青白い顔に物凄いクマ、長いまつ毛に潤んだ瞳と、結構な破壊力である。
「ありがとうございます、二人とも。大丈夫です、ちょっとお話しさせてください。」
「リリー、急に一家でいなくなるから心配してたんだ!」
「リリーさん、ご無事で良かったです」
二人はほら見ろ!と言わんばかりの表情でリリーに駆け寄る。
「そう?心配してくれてありがとう。」
にっこりと笑顔で返事をする。手は後ろで組んでいるため、二人には見えないだろう。密かに漏れ出る怒りで熱を持ち始めている。そっと、冷たいものが手に添えられる。おそらく、シルビアが手を握ってくれているのだろう。
「あの、こちらの二人は?私はエリンと言います」
元メイドのエリンは媚びるような視線を後ろの美丈夫たちに目配せをする。
「私、元メイドなんです騎士様の寮で働いていました!!」
あぁ、またこの人は私にとって変わろうとしているのか。とリリーは呆れた。
「そうなんだ、それはすごいね。」
ヴォルフが他所行きの笑顔で軽く褒めると、エリンは顔を赤くして今までで一番いい笑顔をみせる。
「リリーいま、聖ジェントクランに商品を卸にきてたんだ、まさかこんなところで会えるなんて…会いたかった」
「私も会えて良かった。」
そういうと、アイクは頬を赤く染めて手を伸ばしてきた。その手が頬に届く前にさっとよける。あれ?と言うような表情でアイクがこちらを見つめてくる。
「アイクに余計なことするなって言われて、自分の無力さが悔しくなって強くなってやるって思えたんだ、だから、ありがとう。」
「あ、いや違う!そういう…」
「アイクはずっとリリーさんをさがしてたんですよぉ!また一緒に過ごしたいって…ね!」
「あ…あぁ、リリーほど俺のことわかってくれる子はいないし、リリーのこと一番わかってるのは俺だから」
アイクは一世一代の告白をしたかのような、自慢げなかおをしていた。
そんな2人に対して“だから?”
と言ってやりたいところだが飲み込む。
シルビアがグッと握る手に力を入れたのがわかった。
「私、リリーさんの代わりに騎士団の寮で働きますから、アイクといてあげてください!」
私が我慢すればいいんです!と言っているような、哀れみを誘うような表情でエリンが喋る。
「そっか、そう言うことか!」
一歩前にヴォルフが踏み出すと、エリンはパッと顔を綻ばせ喜びの声を上げる。
「私、きっとお役に立ちます「え?いや君はいらない」
ヴォルフはリリーの の肩に手を置きリリーを引き寄せシルビアの腕の中に押し込める。
「そう言うことかっていうのは、シルが言ってた通り、嫌な言葉を発する二人だなあって再認識しただけだよ」
「は?嫌な言葉ってなんだよ!」
カッとなったアイクがヴォルフにつかみかかる。
ペチンと手をはたき落とし、無表情になったヴォルフからはただならぬ殺気が漏れ出ていた。
「お前が言った言葉がリリーを縛り付け、そしてそこの女がリリーの居場所を奪った。『自分の代わりはいくらでもいる。自分は何もできないし自分が動くと不幸になる人がいる』そう思い込んだリリーは自らの力を出せなくなってしまった」
「言霊ってね、誰もが使える祝福であり呪いなんだよ。」
シルビアは、やっと腕の中に収めたリリーをぎゅっと抱きしめてはぁ、とため息をつく。
会いたかった。寂しかったよ。と耳元で囁かれると一気に顔が熱をもつ。
「傷つけたつもりは無くても、受け取った側が傷付けばその言葉は鋭い刃になるんだよ」
グッとアイクは悔しそうに唇をかむ。
「それに、リリーちゃんは寮では働いてないよ。君には到底変わることのできない貴重な人材なんだ。おっと。鬼教官がお呼びだじゃあ、みなさん、良い旅を」
そう言うとヴォルフはシルビアの肩に手を触れると、一瞬で目の前の景色が変わった。
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