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教会へ行こうよみんなで行こうよ 第二十話
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その日の夜、運動場にあるベンチでリリーは自分の手を見つめていた。
キラキラと光る赤い光は、見ようによっては綺麗だが、ゴツゴツとしたヒビや漆黒のような黒さによって、禍々しく見える。
「リリー、あの時私が止めていれば」
後ろから、母がそっと肩を叩く。
「城にいけ、なんて言ったから。ごめんなさい」
母の目には涙が浮かんでいた。薄暗い広い運動、建物からの灯りはほんのわずかしか届かない。
隣には父も立っていたが、母と同じように申し訳なさそうな、心配したような顔をして立っていた。
「もともとは、私が勝手に呪いを受けたからいけないんだよ。そのせいで、怖い人たちが孤児院を襲いにきたってきいた。ごめんなさい。」
やっと落ち着いて話せるようになり、初めて謝れた。
痛い思いをさせたんじゃないか、子供たち、怖かったんじゃないかって…ずっと心配だったのだ。
「赤い服の小さな女の子が守ってくれたもの、大丈夫よ。それに、お父さんも元は護衛団にいたから、守るべきものは守ってくれたわよ」
「そうだったんだ。お父さん、強いんだね。」
「リリーだって基礎はできてるはずだぞ!」
父の発言の意味が分からなくてグッと拳を握り、見つめてみる。特に力が溢れてくるわけではなく、何も変わらない、いつもの自分の手だった。
「薪割りに煉瓦積み、屋根の修繕や鬼ごっこ、あれは全部護衛団の基礎訓練だから、これから学べば、ある程度はやれるはずだよ」
確かに、孤児院のあらゆる雑用はきつかった。重いものも馬車を使わず運んだし、薪割りもレンガ運びも永遠にやっていた。
「いつか、リリーが呪いと戦う時が来ると思ってね。5歳の時、呪いを引き受けた時から、密かに鍛えてたんだ」
「…私、ちょっと、殴り飛ばしたい人がいるの」
「父さんが鍛えてやりたいところだが、明日、ヴォルフくんと一緒に教会にいって然るべきところで学んだ方が、いいだろうな」
明日はヴォルフから、「家にあそびにきて」とお呼ばれされている。シルビア様も、エルダーも孤児院に残ってくれているが、ヴォルフだけ一足先に帰っていった。
「ところで、リリー」
父が改まって、ゴホンと咳をする。
母と目線をちらっと合わせたあとに、真剣な顔で問いかける。
「シルビアくんと結婚するって本当?」
リリーは本日何度目かの、真っ赤に染まった顔を恐ろしい速さで横に振る。
「いっえ?!いや、身分とか立場とか違いすぎてそんなわけないじゃん!!」
聞いたことはないが、ヴォルフの友人枠に入れるほどの人だ、おそらく貴族だろう。
慌てて否定するリリーを見て、母がクスッと笑う。
「シルビアくんが跪いて娘さんを幸せにしますってお父さんに挨拶してたからそうなんだと思ってつい…」
二人は顔を見合わせてうん、と頷き、意を決したように言葉を紡ぐ。
「「お願いしちゃった」」
何の悪気もなく、ほわーんと微笑む二人にリリーの思考がついていかずただその場で「ひゃーーーー」と叫ぶしかなかった。
その後薄暗く、広い運動場から、奇妙な叫び声が聞こえたのを何人もの子どもたちが聞いており、孤児院の子供達の間で運動場にお化けが出ると噂が出回る事になる
翌朝、どんな顔をしてシルビアに会ったらいいのか、若干頭を抱えながら自室のドアを開けるとすぐそこにシルビアが、満面の笑みでたっていた。
森を彼方の国にいた頃の真っ暗な衣装ではなく、白い詰め襟の短めの上着に黒いシャツ、ベルトでしっかりと閉めた黒いパンツに編み上げのブーツを履いていた。
前髪もしっかり上げてあり、もともと綺麗だと思っていた顔が余計に輝いて見えた。
「迎えに来たよ、一緒に食堂までいこう」
バンッ!と扉をつい閉めてしまった。
自分なんて起きてすぐ髪を適当にまとめてそこら辺にあった麻のワンピースを着てエプロンをひっかけただけのむしろ気の抜けた格好をしていた。
シルビアの服装と違いすぎて恥ずかしくなってしまった。
「どうしたの?そんな服装も新鮮だね。スカート、似合ってる。でもちょっと短いから違うワンピースにしようか」
全力で抑えていたはずのドアが簡単に開けられ、手に持っていたシャツとスカートを差し出される。
ありがたく受け取り着てみると、スカートだと思っていたものは真ん中で分かれており、一見スカートに見えるような赤いズボンだった。
白いシャツのウエスト部分も、コルセットのような硬い生地になっていて、キツさはないが、体がしっかり絞まるようなそんな作りになっていた。
着替えますんで、食堂に行くとすでにヴォルフが来ていて、みんなで食事をした。
いよいよ、ヴォルフの家(この国の一番でかい教会)に出発することになる。
キラキラと光る赤い光は、見ようによっては綺麗だが、ゴツゴツとしたヒビや漆黒のような黒さによって、禍々しく見える。
「リリー、あの時私が止めていれば」
後ろから、母がそっと肩を叩く。
「城にいけ、なんて言ったから。ごめんなさい」
母の目には涙が浮かんでいた。薄暗い広い運動、建物からの灯りはほんのわずかしか届かない。
隣には父も立っていたが、母と同じように申し訳なさそうな、心配したような顔をして立っていた。
「もともとは、私が勝手に呪いを受けたからいけないんだよ。そのせいで、怖い人たちが孤児院を襲いにきたってきいた。ごめんなさい。」
やっと落ち着いて話せるようになり、初めて謝れた。
痛い思いをさせたんじゃないか、子供たち、怖かったんじゃないかって…ずっと心配だったのだ。
「赤い服の小さな女の子が守ってくれたもの、大丈夫よ。それに、お父さんも元は護衛団にいたから、守るべきものは守ってくれたわよ」
「そうだったんだ。お父さん、強いんだね。」
「リリーだって基礎はできてるはずだぞ!」
父の発言の意味が分からなくてグッと拳を握り、見つめてみる。特に力が溢れてくるわけではなく、何も変わらない、いつもの自分の手だった。
「薪割りに煉瓦積み、屋根の修繕や鬼ごっこ、あれは全部護衛団の基礎訓練だから、これから学べば、ある程度はやれるはずだよ」
確かに、孤児院のあらゆる雑用はきつかった。重いものも馬車を使わず運んだし、薪割りもレンガ運びも永遠にやっていた。
「いつか、リリーが呪いと戦う時が来ると思ってね。5歳の時、呪いを引き受けた時から、密かに鍛えてたんだ」
「…私、ちょっと、殴り飛ばしたい人がいるの」
「父さんが鍛えてやりたいところだが、明日、ヴォルフくんと一緒に教会にいって然るべきところで学んだ方が、いいだろうな」
明日はヴォルフから、「家にあそびにきて」とお呼ばれされている。シルビア様も、エルダーも孤児院に残ってくれているが、ヴォルフだけ一足先に帰っていった。
「ところで、リリー」
父が改まって、ゴホンと咳をする。
母と目線をちらっと合わせたあとに、真剣な顔で問いかける。
「シルビアくんと結婚するって本当?」
リリーは本日何度目かの、真っ赤に染まった顔を恐ろしい速さで横に振る。
「いっえ?!いや、身分とか立場とか違いすぎてそんなわけないじゃん!!」
聞いたことはないが、ヴォルフの友人枠に入れるほどの人だ、おそらく貴族だろう。
慌てて否定するリリーを見て、母がクスッと笑う。
「シルビアくんが跪いて娘さんを幸せにしますってお父さんに挨拶してたからそうなんだと思ってつい…」
二人は顔を見合わせてうん、と頷き、意を決したように言葉を紡ぐ。
「「お願いしちゃった」」
何の悪気もなく、ほわーんと微笑む二人にリリーの思考がついていかずただその場で「ひゃーーーー」と叫ぶしかなかった。
その後薄暗く、広い運動場から、奇妙な叫び声が聞こえたのを何人もの子どもたちが聞いており、孤児院の子供達の間で運動場にお化けが出ると噂が出回る事になる
翌朝、どんな顔をしてシルビアに会ったらいいのか、若干頭を抱えながら自室のドアを開けるとすぐそこにシルビアが、満面の笑みでたっていた。
森を彼方の国にいた頃の真っ暗な衣装ではなく、白い詰め襟の短めの上着に黒いシャツ、ベルトでしっかりと閉めた黒いパンツに編み上げのブーツを履いていた。
前髪もしっかり上げてあり、もともと綺麗だと思っていた顔が余計に輝いて見えた。
「迎えに来たよ、一緒に食堂までいこう」
バンッ!と扉をつい閉めてしまった。
自分なんて起きてすぐ髪を適当にまとめてそこら辺にあった麻のワンピースを着てエプロンをひっかけただけのむしろ気の抜けた格好をしていた。
シルビアの服装と違いすぎて恥ずかしくなってしまった。
「どうしたの?そんな服装も新鮮だね。スカート、似合ってる。でもちょっと短いから違うワンピースにしようか」
全力で抑えていたはずのドアが簡単に開けられ、手に持っていたシャツとスカートを差し出される。
ありがたく受け取り着てみると、スカートだと思っていたものは真ん中で分かれており、一見スカートに見えるような赤いズボンだった。
白いシャツのウエスト部分も、コルセットのような硬い生地になっていて、キツさはないが、体がしっかり絞まるようなそんな作りになっていた。
着替えますんで、食堂に行くとすでにヴォルフが来ていて、みんなで食事をした。
いよいよ、ヴォルフの家(この国の一番でかい教会)に出発することになる。
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