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赤い女 第十八話
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すでにヴォルフも、シルビアも焚き火の周りに座っていた。カバンの中から硬いパンと乾燥させた果物と紅茶の葉を持って合流しようと近づく。
ヴォルフがデカ過ぎて気が付かなかったが、どうやらヴォルフと向かい合うようにもう一人人がいるようだった。
まさか…私を売り飛ばそうと…
一瞬、悪い想像が脳裏をよぎる。音を立てないように後ずさろうとしたが、ちょうど後ろにあった枝を踏んでしまい音を立てる。
「リリーおはよう。よく休めた?」
久しぶりに前髪で顔を隠したシルビアに挨拶をされ、驚くが、いつもと変わらない態度に少し安心する。
「リリーちゃん、紹介したい人がいるんだ。聖ジェントクランの護衛部隊のエルダー。これから国境を越えるから護衛についてきてもらうよ。」
ぺこり。とエルダーが会釈する。ふわりと揺れた茶色のツインテールがとても可愛らしい、リリーよりも少し背の低い少女だった。
赤い詰め襟の上着は太ももまであり、横にスリットが入っている。ワンピースといった方がいいかもしれないが、黒いピッタリとしたパンツにリリーとお揃いの編み上げブーツを履いていた。
「…」
自分以外はみんなジェントクランの人間だ信じていいのか、それとも警戒した方がいいのか、悩んでいるとヴォルフがガシガシと頭を掻きながら立ち上がり、こちらへ近づいてくる。
「勝手にごめんね、でも、あちらの国に入るにはどうしても彼女が必要なんだ。俺たち二人では、国境の結界を破れない」
「リリーさん。怖がらなくてイイ。あの、クズどもをワタシが始末してやるから」
少し吊り上がった目からは強い印象を受けるが、声は大変可愛らしく、言葉も独特のイントネーションをしている。
よく見ると赤い上着には赤黒いシミがいくつもついているし、靴も泥だらけだ。
服のシミを見つめているのに気がついたのか、エルダーの頬が赤くなる。
「安心しろ。リリーさんの家を襲った奴らはワタシが始末した。魔物を逃がしてしまって追いかけていたら合流おそくなった。」
そういって赤くシミのついた髪を袖口から出してリリーに渡す。開いてみると、母からの伝言だった。
“ジェントクランでまってる早く会いたい”
この字は確実に母だ。手紙を読んだ瞬間に涙が溢れて大泣きをしてしまう。子供をあやすようにヴォルフが抱きしめてくれ…ようとしたら、吹っ飛んだ。
リリーの涙も吹っ飛んだ。
そっと衝撃が飛んできた方を見れば、右手を突き出して白い蒸気をあげているシルビア(ドヤ顔)が立っていた。
「リリーと僕は昨日、夜、愛し合ったんだ!!もう、誰にも触らせない!!!!!」
かああああああっと怒りもしていないのに身体中の体温が上がるのがわかった。
「手を出すなっていったでしょ?!」
ヴォルフが氷の塊をどかしながら叫ぶ。
「だから手はつかってないもん。キスしただけだもん」
“水じゃないよ、お湯だもん”の時と同じテンションでシルビアが答えるとヴォルフはリリーに駆け寄りゴシゴシと自分の着ている服でリリーの顔をこする。
「リリーちゃん、ごめんね、洗ったって消えないけど洗う?」
「大丈夫です、嫌じゃなかったので」
ヴォルフは慌ててリリーの口をおさえるがおそかったようで、リリーの答えを聞いたシルビアの周りには冷気が溢れ、空気に触れるとキラキラと輝いていた。
「よく、よく考えて。あいつは…あいつはリリーちゃんを手に入れたら鎖をつけてでも離さなくなる。それほどに、求めてたんだ。不用意な発言はやめた方がいい」
「わ…わかりました。」
「君があのクズどもに監禁されてた間だって、どれだけ惚気ていたか…俺は君のスリーサイズまで聞かされているんだよ」
「ヘンタイネ」
顔から火が出るほど赤くなったリリーのかわりにエルダーがシルビアにツッコミを入れる。
暗くなる前に国境を越えられるよう早速出発する。
リリーの隣をエルダーがぴょこぴょこと歩く。
「リリーさんの獲物はナニ?」
エルダーは、リリーの腰回りや胸元など、武器を探すように眺めながらきく。
「獲物って?何もとってないですよ?」
「リリーちゃんは拳で戦うんだよ。エルダーが逃した大型の魔物も殴って砕いたんだ。」
獲物、とは武器のことだったらしい。
あまり表情を変えないエルダーは口元が綻ばせ、興奮した様子でリリーの手を取る。
「あんなでかいのどうやった?!む?少し硬い!呪いか?呪いを力にできるってことはリリーはカースイーターか?どうやって殴った?!ワタシもやりたい!ワタシもみたい!!!」
手を繋いで歩きながら、エルダーは次々と質問をする。
シルビアが割って入ろうとするが、ヴォルフがシルビアの手をガッチリと繋いで離さないので離れられず困っているようだった。
中型の魔物を蹴散らしたり、昆虫の魔物から逃げたり、しているうちに、少し開けた場所に出た。
ヴォルフがデカ過ぎて気が付かなかったが、どうやらヴォルフと向かい合うようにもう一人人がいるようだった。
まさか…私を売り飛ばそうと…
一瞬、悪い想像が脳裏をよぎる。音を立てないように後ずさろうとしたが、ちょうど後ろにあった枝を踏んでしまい音を立てる。
「リリーおはよう。よく休めた?」
久しぶりに前髪で顔を隠したシルビアに挨拶をされ、驚くが、いつもと変わらない態度に少し安心する。
「リリーちゃん、紹介したい人がいるんだ。聖ジェントクランの護衛部隊のエルダー。これから国境を越えるから護衛についてきてもらうよ。」
ぺこり。とエルダーが会釈する。ふわりと揺れた茶色のツインテールがとても可愛らしい、リリーよりも少し背の低い少女だった。
赤い詰め襟の上着は太ももまであり、横にスリットが入っている。ワンピースといった方がいいかもしれないが、黒いピッタリとしたパンツにリリーとお揃いの編み上げブーツを履いていた。
「…」
自分以外はみんなジェントクランの人間だ信じていいのか、それとも警戒した方がいいのか、悩んでいるとヴォルフがガシガシと頭を掻きながら立ち上がり、こちらへ近づいてくる。
「勝手にごめんね、でも、あちらの国に入るにはどうしても彼女が必要なんだ。俺たち二人では、国境の結界を破れない」
「リリーさん。怖がらなくてイイ。あの、クズどもをワタシが始末してやるから」
少し吊り上がった目からは強い印象を受けるが、声は大変可愛らしく、言葉も独特のイントネーションをしている。
よく見ると赤い上着には赤黒いシミがいくつもついているし、靴も泥だらけだ。
服のシミを見つめているのに気がついたのか、エルダーの頬が赤くなる。
「安心しろ。リリーさんの家を襲った奴らはワタシが始末した。魔物を逃がしてしまって追いかけていたら合流おそくなった。」
そういって赤くシミのついた髪を袖口から出してリリーに渡す。開いてみると、母からの伝言だった。
“ジェントクランでまってる早く会いたい”
この字は確実に母だ。手紙を読んだ瞬間に涙が溢れて大泣きをしてしまう。子供をあやすようにヴォルフが抱きしめてくれ…ようとしたら、吹っ飛んだ。
リリーの涙も吹っ飛んだ。
そっと衝撃が飛んできた方を見れば、右手を突き出して白い蒸気をあげているシルビア(ドヤ顔)が立っていた。
「リリーと僕は昨日、夜、愛し合ったんだ!!もう、誰にも触らせない!!!!!」
かああああああっと怒りもしていないのに身体中の体温が上がるのがわかった。
「手を出すなっていったでしょ?!」
ヴォルフが氷の塊をどかしながら叫ぶ。
「だから手はつかってないもん。キスしただけだもん」
“水じゃないよ、お湯だもん”の時と同じテンションでシルビアが答えるとヴォルフはリリーに駆け寄りゴシゴシと自分の着ている服でリリーの顔をこする。
「リリーちゃん、ごめんね、洗ったって消えないけど洗う?」
「大丈夫です、嫌じゃなかったので」
ヴォルフは慌ててリリーの口をおさえるがおそかったようで、リリーの答えを聞いたシルビアの周りには冷気が溢れ、空気に触れるとキラキラと輝いていた。
「よく、よく考えて。あいつは…あいつはリリーちゃんを手に入れたら鎖をつけてでも離さなくなる。それほどに、求めてたんだ。不用意な発言はやめた方がいい」
「わ…わかりました。」
「君があのクズどもに監禁されてた間だって、どれだけ惚気ていたか…俺は君のスリーサイズまで聞かされているんだよ」
「ヘンタイネ」
顔から火が出るほど赤くなったリリーのかわりにエルダーがシルビアにツッコミを入れる。
暗くなる前に国境を越えられるよう早速出発する。
リリーの隣をエルダーがぴょこぴょこと歩く。
「リリーさんの獲物はナニ?」
エルダーは、リリーの腰回りや胸元など、武器を探すように眺めながらきく。
「獲物って?何もとってないですよ?」
「リリーちゃんは拳で戦うんだよ。エルダーが逃した大型の魔物も殴って砕いたんだ。」
獲物、とは武器のことだったらしい。
あまり表情を変えないエルダーは口元が綻ばせ、興奮した様子でリリーの手を取る。
「あんなでかいのどうやった?!む?少し硬い!呪いか?呪いを力にできるってことはリリーはカースイーターか?どうやって殴った?!ワタシもやりたい!ワタシもみたい!!!」
手を繋いで歩きながら、エルダーは次々と質問をする。
シルビアが割って入ろうとするが、ヴォルフがシルビアの手をガッチリと繋いで離さないので離れられず困っているようだった。
中型の魔物を蹴散らしたり、昆虫の魔物から逃げたり、しているうちに、少し開けた場所に出た。
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