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呪いの解除(流血表現あります。)

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「私、アクア様のためにできることをします。」


「お姉様!嬉しいわ!早速、儀式をしてもいいかしら?!早くお姉様と繋がりたいの!!」


アクアは瞳に涙を浮かべてリリーの手を握る。儀式、とか繋がる、とか分からないけど役に立てることが嬉しくて、言われるがままについていく。


王宮の北にある塔の一番上にその部屋はあった。
長い螺旋階段を登って、たどり着いたその場所はどんよりと暗く、床には赤いインクで魔法陣が描かれていた。

中心には椅子と机が置いてある。片方にリリーが座ると正面にはアクアが座る。リリーの後ろには肩に手を置いて心配そうにする、クレイが。2人の間にある机の横にはシルが立っていた。

「さあ、シル早くお姉様と私を繋げて!」

赤くひびの入った手を机の上に出して、アクアが頬を赤くして興奮しながらシルに命令する。

『…リリーも、手を重ねて』

頭の中に響くシルビアの声に従ってリリーはアクアの手を両手で包み込むようにする。

シルビアは無言で2人の手の上に自分の指を差し出して、ナイフで指先を傷つける。血の滲んだ指先を、リリーの手の甲に押し付ける。

「繋げ、そして汝の主人を変えよ」

シル唇がそう発音する。
声は出ていないはずだが聞こえた。

その瞬間、リリーの両手の人差し指にビリッと痛みが走る。慌てて手を離して見てみると、アクアの全ての指は綺麗な肌に、リリーの両手の親指、人差し指、中指は今までのアクアのそれに変わっていた。

「あああ!!私の…手が戻った!クレイ!!見た?戻ったのよ!」

そう喜ぶアクアを横目に、耐え切れないほどの痛みがリリーを襲う。そのまま、クレイにもたれかかるように意識を失ってしまった。






ビリビリと痛む手を、誰かがそっと包んでいるような気がした。痛みで熱を持った指をヒンヤリとした、気持ちのいいものでずっと包んでくれていた。

「レイ様?」

夢現に呟くと優しく包んでいたものに、ぎゅっと力が入るのがわかる。そばにいてくれた安心感から、再び深い眠りにつく。
リリーが目覚めたのはそれから3日後の事だった。




「リリー、体調はどうだい?」

「レイ様毎日バラをありがとうございます。とても気分がいいです。手の痛みも無いようです」

「やはり君は聖女なんだ、アクアがあんなに痛み嘆いていたのに、こんなに早く浄化できるなんて…」


眠っているうちに、リリーの手はスッカリ綺麗になっていた。痛みも光もなくなっている。

「手を握ると違和感がありますが、この調子でアクア様の呪いを解いていきたいです。レイ様の為に…」

「あぁ、ありがとう。」

クレイは瞳を潤ませてそっとリリーに顔を寄せる。ありきたりな茶色の髪を一房とり、唇をおとす。


「君との未来に」

それから、リリーは城に住まう事になる。
儀式は定期的に続き、アクアの手を大切そうに両手で包むリリーの手は、なぜか、儀式のたびにあの赤いひび割れが広がっていく。

しかし、広がったように見えたひび割れは3日経てば元通り綺麗になっていた。

リリーは王太子の婚約者として、学びたいと願い出て、マナーやダンス歴史、外国語などをシルビアから学んだ。シルビアは聖女専属の護衛魔導士としてリリーを支えた。

「ねえ、シルビア様、レイ様がお花をくださるのはどこのお花?これを育てた方にもお礼を言いたいの」

『リリーは呪いが残っているといけないからこの宮から出ることができない。手紙を書くか?』

「いいの?では、字を教えてくれますか?あと、料理を作ってくださる方にもお礼をしたいです」

『あぁ、リリーが望むならいくらでも』

「ありがとうございます、シルビア様」

リリーは偉ぶる事なく、時々瘴気をまとって帰ってくるシルビアの事も救った。

「他にも困ってる人はいるのかしら?私に助けられる人たちが…いつかレイ様と街に降りて見たいわ…」

『伝えておくよ』

シルビアはだいぶ打ち解けてくれたようで砕けた話し方をしてくれるようになった。
黄昏色の瞳も見ていたいと頼んだためか、リリーと一緒にいる間は前髪を後ろに流して表情を見せていてくれることが多くなった。
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