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私だけにできること 第四話
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「どうかしてましたね。昔から、私は余計なことしかしない」
アイクに言われた言葉も思い出して一気に心を痛める。
リリーは今までの自分を思い出して急に恥ずかしくなった。自分がいなきゃ家族は淋しがるだろう。自分がやらなきゃいけないんだと、そう思うことで魔法も使えない、美しくもない自分に少しだけ自信を持とうとしていたのだ。
だけどそれはただの独りよがりで、自分の力なんて何でもないんだと今日痛感した。
『あなたに救われた者もあることをお忘れなく、あなたの独りよがりに縋って生きている者もいますよ』
「シルビア様心読まないでください。」
『会話の性質上心の声も会話として聞こえてしまうんです』
「そうですか。」
『事情を聞かないのですか?何故喋らないのかとか』
「知らなくていいことってたくさんあります。」
ポロポロ涙が溢れる。シルビアはチラチラと覗く黄昏の瞳を時折輝かせながら、穏やかに微笑んでいた。
しばらくすると、客間の扉が控えめにノックされた。
シルビアが手をかざすとキィと扉が開いた。
そこには水色の髪に金の瞳を持つ、儚げな少女が立っていた。
「あの、クレイを助けてくださった聖女様は…」
シルビアは無言でリリーをみると、儚げな美少女はかけより、リリーの手を取った。
「ありがとうございます!私はアクア・モアラート、クレイを助けていただいてありがとう。」
リリーは自己紹介を聞いて立ち上がり、礼をする。
「いいのよ、話して。あなたが平民なのは知っていますから」
「あ…すみません。貴族様の決まり事とか分からなくて。レイ様は…まだお眠りですか?」
「僕の聖女、心配してくれてありがとう。」
開いたままだった扉から、クレイが顔を出す。
「もう大丈夫、すこし、魔獣の瘴気に当てられただけだから。でも、聖女の力はすごいねすっかり瘴気は祓われていたよ。君がここにいてくれれば…」
まだ少し気だるそうなクレイはチラッとアクアの方をみる。アクアはサッと右腕を左手で触る。その手の上にクレイは手を重ねて心配そうにアクアを見つめる。
「レイ様は、私を助けてくださいました。もし、瘴気を祓う力が私にあるのでしたらいくらでも、祓いましょう。」
「本当かい?アクアの…アクアの呪いを解いてくれるかい?」
アクアの呪い?こんなに美しい少女が呪われている?
リリーは言葉の意味がわからず、ぼーっと2人を見つめてしまう。
「クレイ、突然そんなことを言われても困ってしまうでしょ?いいのよ、私は…」
「あの…何か事情があるのですか?」
「アクア、腕を」
そう言われて、アクアは膝のさらに上まで覆い被せるようにつけていた長い手袋をとる。そのしたからは、皮膚が暗く変色し、無数のひび割れに覆われた腕が出てきた。ヒビは溶岩が流れているかのように赤く光っているように見えた。
「これ…は…何故赤く光っているのですか?」
「やはりみえるんだね。普通の人にはただのひび割れにしかみえないはずだよ。シル、そうだね?」
クレイに話をふられシルビアがわずかに頷いた。
「幼い頃、城の中で遊んでクレイとシルで遊んでいたの。その時に壊れてはいけないものが壊れてしまい、呪いを受けたのよ。」
「痛いのですか?」
「時々脈を打つように痛むの。少しずつ登ってきているから、全身こうなってしまうのかと…恐ろしい見た目だし、なくせるのならば、無くしてもらいたい…」
「リリー、幼い頃僕の呪いを解いてくれた…君の体が犠牲になった事はわかってる。だから…絶対にとは言わない。でも、傷がついた君でも、僕の聖女に変わりはない、責任は取るつもりだよ。」
そう言って、クレイはリリーの腕に紫の石が嵌め込まれた銀のブレスレットをつけた。
「未来の君に誓うよ」
私にしかできない事、私を愛してくれる人、リリーは心が弾むほど嬉しかった。
アイクに言われた言葉も思い出して一気に心を痛める。
リリーは今までの自分を思い出して急に恥ずかしくなった。自分がいなきゃ家族は淋しがるだろう。自分がやらなきゃいけないんだと、そう思うことで魔法も使えない、美しくもない自分に少しだけ自信を持とうとしていたのだ。
だけどそれはただの独りよがりで、自分の力なんて何でもないんだと今日痛感した。
『あなたに救われた者もあることをお忘れなく、あなたの独りよがりに縋って生きている者もいますよ』
「シルビア様心読まないでください。」
『会話の性質上心の声も会話として聞こえてしまうんです』
「そうですか。」
『事情を聞かないのですか?何故喋らないのかとか』
「知らなくていいことってたくさんあります。」
ポロポロ涙が溢れる。シルビアはチラチラと覗く黄昏の瞳を時折輝かせながら、穏やかに微笑んでいた。
しばらくすると、客間の扉が控えめにノックされた。
シルビアが手をかざすとキィと扉が開いた。
そこには水色の髪に金の瞳を持つ、儚げな少女が立っていた。
「あの、クレイを助けてくださった聖女様は…」
シルビアは無言でリリーをみると、儚げな美少女はかけより、リリーの手を取った。
「ありがとうございます!私はアクア・モアラート、クレイを助けていただいてありがとう。」
リリーは自己紹介を聞いて立ち上がり、礼をする。
「いいのよ、話して。あなたが平民なのは知っていますから」
「あ…すみません。貴族様の決まり事とか分からなくて。レイ様は…まだお眠りですか?」
「僕の聖女、心配してくれてありがとう。」
開いたままだった扉から、クレイが顔を出す。
「もう大丈夫、すこし、魔獣の瘴気に当てられただけだから。でも、聖女の力はすごいねすっかり瘴気は祓われていたよ。君がここにいてくれれば…」
まだ少し気だるそうなクレイはチラッとアクアの方をみる。アクアはサッと右腕を左手で触る。その手の上にクレイは手を重ねて心配そうにアクアを見つめる。
「レイ様は、私を助けてくださいました。もし、瘴気を祓う力が私にあるのでしたらいくらでも、祓いましょう。」
「本当かい?アクアの…アクアの呪いを解いてくれるかい?」
アクアの呪い?こんなに美しい少女が呪われている?
リリーは言葉の意味がわからず、ぼーっと2人を見つめてしまう。
「クレイ、突然そんなことを言われても困ってしまうでしょ?いいのよ、私は…」
「あの…何か事情があるのですか?」
「アクア、腕を」
そう言われて、アクアは膝のさらに上まで覆い被せるようにつけていた長い手袋をとる。そのしたからは、皮膚が暗く変色し、無数のひび割れに覆われた腕が出てきた。ヒビは溶岩が流れているかのように赤く光っているように見えた。
「これ…は…何故赤く光っているのですか?」
「やはりみえるんだね。普通の人にはただのひび割れにしかみえないはずだよ。シル、そうだね?」
クレイに話をふられシルビアがわずかに頷いた。
「幼い頃、城の中で遊んでクレイとシルで遊んでいたの。その時に壊れてはいけないものが壊れてしまい、呪いを受けたのよ。」
「痛いのですか?」
「時々脈を打つように痛むの。少しずつ登ってきているから、全身こうなってしまうのかと…恐ろしい見た目だし、なくせるのならば、無くしてもらいたい…」
「リリー、幼い頃僕の呪いを解いてくれた…君の体が犠牲になった事はわかってる。だから…絶対にとは言わない。でも、傷がついた君でも、僕の聖女に変わりはない、責任は取るつもりだよ。」
そう言って、クレイはリリーの腕に紫の石が嵌め込まれた銀のブレスレットをつけた。
「未来の君に誓うよ」
私にしかできない事、私を愛してくれる人、リリーは心が弾むほど嬉しかった。
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