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免罪は良くないよ
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「っ!何でこんな…大丈夫?」
慌てて桜子に駆け寄り抱き起こす夜鷹。
「うん、ありがとうございます。」
儚げに潤ませた瞳で、弱々しく胸元に添えた手。完全に被害者の出来上がりである。
「玲子さん、弱いものに対して力で出るのはどうでしょうか?」
なぜか頬を赤らめて夜鷹は玲子が悪いと初めから決めつけて話をする。見てなかったくせに自信満々に。
「私じゃないよ。その子がポット落としただけだよ。喧嘩売られたのは私だし、被害者は私。」
「良いんです!夜鷹さん、私がいけないんです。仲の良かったお二人の間に割って入ってしまったからだから、柘植さんが怒っても仕方ないんです。」
怒ってないってば。だから。
何と言えば伝わるか悩んで、落ちたポットを見つめながら無言でいると、そばに人の気配を感じ視線を上げる。
パシン
軽くだが、頬を打たれた感覚があった。
「玲子さん、僕たち別れてますよね?そのあと僕が誰と付き合おうと関係ないはずです。いつまでも、僕の彼女気取りで大切な人を傷つけるなんて、何様なんですか?」
お前がな。
「…何てことを…」
「え?修羅場?」
「うわ、やば」
通行人という名の野次馬たちが各々に思ったことを口にする。
「わ!柘植さん足が真っ赤ですよ!早くこちらへ」
平手打ちと、言葉の衝撃で動けずにいると先ほどの彩子が助けるために手を引っ張ってくれた。
夜鷹はハッと気がつき、また手を伸ばしてくる。
ビクッと身体が反応してしまったのを見て、彩子が前に出てくれた。
「もう充分です。おやめください。」
そう言って手を払いのけてくれた。
そのまま、無言で医務室まで連れて行ってくれる。
「大丈夫ですか?痛かったですね」
冷えたタオルで頬を包んで、氷を足に乗せてくれたところでやっとホッとして涙が溢れてくる。
「私…何もしてなくて、ただ、夜鷹が大好きだった…だけなのにぃ」
ボロボロ出てくる涙を止められなくて会社なのに泣きじゃくってしまう。
「よしよし、柘植さんがあんな考えなしなことしないって分かってるから大丈夫ですよー」
私よりも大きな胸に包まれ、余計に泣いてしまう。
「わああああああん!!くやしいよー!」
「ほんと、あの女は何人たぶらかせば気が済まんでしょうかねぇ」
ぼそっと何かあったが今は自分のことで精一杯である。よしよし、と頭を優しく撫でられ、その心地よさで少しずつ心が落ち着いてくる。
「あの…彩子さん…ありがとう」
ズビッと鼻を啜るのを許してほしい。
顔もきっと汚いけど許してほしい。
「うふ、拓殖さんってやっぱり可愛い方なんですねぇ、まだ、アホどもがうろついているかもしれないですから、一緒に帰りましょうか」
ほんわかした彩子の雰囲気が心地よくて、早めに落ち着くことができた。
お言葉に甘えて、彩子にボディーガードを(心の)お願いして退社する。
「あの…お礼に一杯いかがですか?」
厚かましいかと思ったが、どうしても彩子を昴に会わせたくなり誘うと二つ返事で答えが返ってくる。
「わー!オシャレなBARですねぇ」
「玲子ちゃんの同僚の方?いつもお世話になってます」
彩子はとてもワクワクしていた。カウンターの昴が声をかけるとさらに瞳を光らせて慌てて席に座る。
「お兄さん!!お兄さんくらいの細マッチョでドーベルマンみたいな男の人いませんか?!」
「いるよ、いるいる、呼んであげようか?」
「呼んでくださぁい!」
いやまだ飲んでないよね?シャンパンあけてくださぁい!みたいなコール入っちゃってるよ。
「彩子さん、今日はありがとうございました」
「いーえー、気にしないでください。大丈夫ですか?」
彩子は小柄で良く動く。表情も豊かだし胸も豊かだ。
黒髪を長く伸ばしていて、前髪から綺麗に編み込んである。穏やかな春の日差しのような口調と相まって、ものすごい癒しオーラをだしている。
「大丈夫、じゃないです。私明日会社行けないです」
「あれは、流石に派手にやりすぎましたねぇ」
「私じゃないんです信じて…ください」
「しってますよぉ。それに拓殖さん朝比奈さんと同棲してますよね?」
「え?同棲?」
「え?課の中では有名ですが。朝比奈さんのアパート、結構会社の人間がいるんですよ?」
かああああっと顔が赤くなるのがわかる。バレてないと思っていたのは私だけだったのか!恥ずかしすぎる。
「朝比奈さんがカッコよくなり始めた頃から、柘植さんが甲斐甲斐しく世話してるの、見てる人がたくさんいますよー?」
「わあああああ!恥ずかしい」
真っ赤になった顔を手で隠してバタバタと暴れる。
これでも会社ではクールに決めてるつもりだった。
「なのにあんな、恩を仇で返すような事して、朝比奈さんは何を考えているんですかね」
「恩を仇で返すなんて、良くないなぁ」
昴が大盛りの唐揚げとご飯を持ってやってくる。
「ほんとに、あんな事して…柘植さんと別れたって言ってたけど本当なんですか?あっ言いたくなかったら良いんです。美味しく唐揚げ食べましょ♪」
揚げたてのほかほかな唐揚げを美味しそうに口に放り込む彩子を尻目に、仄暗い眼差しで玲子を見つめる昴に居た堪れなくなる。
「昨日ふられちゃって…あはは」
「柘植さん…大丈夫。あんなことする人と付き合い続けなくて良かったんですよ!良いですか?男女間でどんな喧嘩があっても手を出すのはいけません。ましてや顔を打つなんて、あの人の頭はどうかしてます。クソです」
ガッと両手を包まれて力説される。
「ちょっと、ちょっと聞き捨てならない。バーテンダーが口出して悪いけどどういう事?」
目がいっちゃってる。昴の目が。黙って聞いていたがどうやら我慢できなくなった様子。
「あっ、おっきい声で言っちゃった。ごめんなさい」
いや、セリフがエロいです彩子さん。
もう、彩子さんになら言ってもいいかな…なと思い、まずは昴との関係を説明する。
「あの、実はこのマッチョ私の親友でして…その…」
「18才から玲子ちゃんに片思いをし続け、昨日弱ったところにつけいって、心も体も手に入れた幸運なマッチョ大空昴(28)です。」
名刺を出しながら昴がぺこりと挨拶をする。
「これはこれはご丁寧に。柘植さんの隣の席で密かに柘植さんのいい匂いを堪能していた橘彩子(29)独身です。逞しくて、強そうだけど優しい…そんな男性が理想です。」
二人はなぜかにこやかに握手していた。
慌てて桜子に駆け寄り抱き起こす夜鷹。
「うん、ありがとうございます。」
儚げに潤ませた瞳で、弱々しく胸元に添えた手。完全に被害者の出来上がりである。
「玲子さん、弱いものに対して力で出るのはどうでしょうか?」
なぜか頬を赤らめて夜鷹は玲子が悪いと初めから決めつけて話をする。見てなかったくせに自信満々に。
「私じゃないよ。その子がポット落としただけだよ。喧嘩売られたのは私だし、被害者は私。」
「良いんです!夜鷹さん、私がいけないんです。仲の良かったお二人の間に割って入ってしまったからだから、柘植さんが怒っても仕方ないんです。」
怒ってないってば。だから。
何と言えば伝わるか悩んで、落ちたポットを見つめながら無言でいると、そばに人の気配を感じ視線を上げる。
パシン
軽くだが、頬を打たれた感覚があった。
「玲子さん、僕たち別れてますよね?そのあと僕が誰と付き合おうと関係ないはずです。いつまでも、僕の彼女気取りで大切な人を傷つけるなんて、何様なんですか?」
お前がな。
「…何てことを…」
「え?修羅場?」
「うわ、やば」
通行人という名の野次馬たちが各々に思ったことを口にする。
「わ!柘植さん足が真っ赤ですよ!早くこちらへ」
平手打ちと、言葉の衝撃で動けずにいると先ほどの彩子が助けるために手を引っ張ってくれた。
夜鷹はハッと気がつき、また手を伸ばしてくる。
ビクッと身体が反応してしまったのを見て、彩子が前に出てくれた。
「もう充分です。おやめください。」
そう言って手を払いのけてくれた。
そのまま、無言で医務室まで連れて行ってくれる。
「大丈夫ですか?痛かったですね」
冷えたタオルで頬を包んで、氷を足に乗せてくれたところでやっとホッとして涙が溢れてくる。
「私…何もしてなくて、ただ、夜鷹が大好きだった…だけなのにぃ」
ボロボロ出てくる涙を止められなくて会社なのに泣きじゃくってしまう。
「よしよし、柘植さんがあんな考えなしなことしないって分かってるから大丈夫ですよー」
私よりも大きな胸に包まれ、余計に泣いてしまう。
「わああああああん!!くやしいよー!」
「ほんと、あの女は何人たぶらかせば気が済まんでしょうかねぇ」
ぼそっと何かあったが今は自分のことで精一杯である。よしよし、と頭を優しく撫でられ、その心地よさで少しずつ心が落ち着いてくる。
「あの…彩子さん…ありがとう」
ズビッと鼻を啜るのを許してほしい。
顔もきっと汚いけど許してほしい。
「うふ、拓殖さんってやっぱり可愛い方なんですねぇ、まだ、アホどもがうろついているかもしれないですから、一緒に帰りましょうか」
ほんわかした彩子の雰囲気が心地よくて、早めに落ち着くことができた。
お言葉に甘えて、彩子にボディーガードを(心の)お願いして退社する。
「あの…お礼に一杯いかがですか?」
厚かましいかと思ったが、どうしても彩子を昴に会わせたくなり誘うと二つ返事で答えが返ってくる。
「わー!オシャレなBARですねぇ」
「玲子ちゃんの同僚の方?いつもお世話になってます」
彩子はとてもワクワクしていた。カウンターの昴が声をかけるとさらに瞳を光らせて慌てて席に座る。
「お兄さん!!お兄さんくらいの細マッチョでドーベルマンみたいな男の人いませんか?!」
「いるよ、いるいる、呼んであげようか?」
「呼んでくださぁい!」
いやまだ飲んでないよね?シャンパンあけてくださぁい!みたいなコール入っちゃってるよ。
「彩子さん、今日はありがとうございました」
「いーえー、気にしないでください。大丈夫ですか?」
彩子は小柄で良く動く。表情も豊かだし胸も豊かだ。
黒髪を長く伸ばしていて、前髪から綺麗に編み込んである。穏やかな春の日差しのような口調と相まって、ものすごい癒しオーラをだしている。
「大丈夫、じゃないです。私明日会社行けないです」
「あれは、流石に派手にやりすぎましたねぇ」
「私じゃないんです信じて…ください」
「しってますよぉ。それに拓殖さん朝比奈さんと同棲してますよね?」
「え?同棲?」
「え?課の中では有名ですが。朝比奈さんのアパート、結構会社の人間がいるんですよ?」
かああああっと顔が赤くなるのがわかる。バレてないと思っていたのは私だけだったのか!恥ずかしすぎる。
「朝比奈さんがカッコよくなり始めた頃から、柘植さんが甲斐甲斐しく世話してるの、見てる人がたくさんいますよー?」
「わあああああ!恥ずかしい」
真っ赤になった顔を手で隠してバタバタと暴れる。
これでも会社ではクールに決めてるつもりだった。
「なのにあんな、恩を仇で返すような事して、朝比奈さんは何を考えているんですかね」
「恩を仇で返すなんて、良くないなぁ」
昴が大盛りの唐揚げとご飯を持ってやってくる。
「ほんとに、あんな事して…柘植さんと別れたって言ってたけど本当なんですか?あっ言いたくなかったら良いんです。美味しく唐揚げ食べましょ♪」
揚げたてのほかほかな唐揚げを美味しそうに口に放り込む彩子を尻目に、仄暗い眼差しで玲子を見つめる昴に居た堪れなくなる。
「昨日ふられちゃって…あはは」
「柘植さん…大丈夫。あんなことする人と付き合い続けなくて良かったんですよ!良いですか?男女間でどんな喧嘩があっても手を出すのはいけません。ましてや顔を打つなんて、あの人の頭はどうかしてます。クソです」
ガッと両手を包まれて力説される。
「ちょっと、ちょっと聞き捨てならない。バーテンダーが口出して悪いけどどういう事?」
目がいっちゃってる。昴の目が。黙って聞いていたがどうやら我慢できなくなった様子。
「あっ、おっきい声で言っちゃった。ごめんなさい」
いや、セリフがエロいです彩子さん。
もう、彩子さんになら言ってもいいかな…なと思い、まずは昴との関係を説明する。
「あの、実はこのマッチョ私の親友でして…その…」
「18才から玲子ちゃんに片思いをし続け、昨日弱ったところにつけいって、心も体も手に入れた幸運なマッチョ大空昴(28)です。」
名刺を出しながら昴がぺこりと挨拶をする。
「これはこれはご丁寧に。柘植さんの隣の席で密かに柘植さんのいい匂いを堪能していた橘彩子(29)独身です。逞しくて、強そうだけど優しい…そんな男性が理想です。」
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