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私の勝ちですね。と言われても。
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翌朝、信じられないほどの腰のだるさで目が覚める。
目の前は肌色。昨夜、と言うか先ほどまでの痴態を思い出して赤く首まで染まる。
ベッドから出ようともがくと、目の前の筋肉がぎゅっと締め付けてくる。
「今日は休めば?一緒にいようよ」
今までの大空昴はなんだったんだと言わんばかりの甘ったるい笑顔で甘えてくる。
ちょっとその提案も捨て難いと思ってしまったが、今日中にクライアントに送らなければいけない資料があることを思い出して首を横に張る。
「一回家に帰らなきゃ、服がない!」
ブチブチにボタンをちぎられたブラウスに、ホックが伸びたスカートをみて、青ざめる。
「あ、服ならあるよ。いつか玲子ちゃんが泊まりにきたらきてもらおうと思って。」
ガチャリとクローゼットの扉を開き、ワンピースを出す。薄い紫の、綺麗めなワンピースに紺のカーディガン。
「これが、週途中、突然会いたくなっちゃったって来た時に出す服。」
もう一組の服をだす。白い、ピッタリ目のVネックのシャツに黒の少しゆったり目のパンツ。薄めのピンクのカーディガン。
「こっちが、明日大切な会議で、でもその前にどうしてもあなたの顔がみたくなったの。ってきた時に出す服」
そして再びクローゼットを開けようとするので、ちょっと待って、止める。
「何組あるの?」
「え?10組くらいもう暮らせるよ」
その中でもイチオシ!!と言われて、薄いピンクの白のセパレート柄のワンピースに紺のカーディガンを羽織って、ギリギリの時間に出社する。
少し慌てて自分のデスクに到着する。
「あれ、柘植さん、いつもと違う!」
隣のデスクの彩子がすかさず声をかける。
「いつものポニーテールも可愛いけど下ろしてると美人だね!そういえば、経理の朝比奈さんがきてたよ?」
そう言って、メモを渡される。
『お昼にカフェに来てください』
と書いてあった。胸が少しヅキンと音を立てた。
クライアントに無事資料をお送り、グッと伸びをする。
夜鷹と付き合っていたことを知る人はいなかったので、いつもと変わらず、仕事ができた。
言いふらさなくてよかった。
寝不足がたたって少し頭がくらっとする。
「すみません、コーヒー買いに行ってきます」
隣の席の同僚に所在を告げ席を立つ。
腰が痛くていつもよりゆっくり歩く。
「夜鷹さ、柘植さんと仲良いの?」
「え?あー…まぁね、」
自販機置き場のところでタイムリーに夜鷹と同じ課の同僚だろうか、話に花を咲かせていた。
「まじかー!紹介してよ可愛いよねあの人」
「あー、やめた方がいいよ。性格に難ありって感じだし。夜の方も全然。」
「え?何やっちゃってる系なの?」
「まぁ、月1くらいで遊んでる感じかな。あっちは彼女だと思ってるけど」
「おい。マジで勿体無いから俺にくれよ」
「もう飽きてきたし、声かけてみたら、喜んでついてくるかもよ」
「ひでー!お前はいいよなぁ桜子さんと付き合ってんだろー!!。」
「まぁね、めちゃくちゃ可愛いよ桜子さん」
聞かれてるともしらず、あけすけな会話をして通り過ぎていく。観葉植物の裏に、急いで隠れた玲子は無事見つからずやり過ごせた。
月一って…確かにそうだけど。何なら、月一もなかったかもしれない。
それでも毎週末家行って、掃除して洗濯して、テレビ見てご飯作ってまったりして…結婚したらこんな感じ?とかって喜んでいたのは私だけだったのか。
ゲームのイベントがあるからって私だけ先に寝ちゃうことが多かったし、疲れて寝ちゃうこともあった。
隣で、あんなに優しく笑ってくれてたのに、心の中では、ウザいって思ってたってこと?
急に恥ずかしくなって目頭が熱くなる。
泣いちゃダメだ、泣いちゃダメだ、泣いちゃダメだ。
有名な少年になりきり自分に言い聞かす。
このアニメも夜鷹に教えてもらったんだっけ。
自分の中にまだ、彼がいたことに驚いて、思わず涙が溢れ出てくる。
慌てて涙を拭いて、自販機でコーヒーを買う。
まだ仕事残ってるし、がんばろ。
そのまま、夜鷹に呼び出されていたことを忘れてランチ抜きで仕事を片付ける。
何かしていないと頭が破裂してしまいそうだったから。
17時に終業のベルがなる。残る人もいるが半分くらいの人たちが帰路につく。
はぁ。と深いため息をついて、荷物をまとめ始める。
「柘植さぁん、いいですかー?」
終業と同時に桜子が引き留めてくる。
「…よくないです。」
「ひどーい。ちょっとだけ、お話お願いしますー」
涙目で、自分は被害者ですーという顔をして、周りの同情を誘う。年配の上司なんかは「ほら、拓殖ちゃん優しく優しく。パワハラって言われちゃうよー」なんて茶化してくる。
「ワタシィすぐ泣いちゃうんですーごめんなさい」
なんて、全力でか弱さアピールされてしまったら、かなうわけない。
そのまま、給湯室まで連れて行かれる。廊下から影に入った途端、桜子の雰囲気がガラリと変わる。
「夜鷹さん、奪っちゃってごめんなさぁい」
「いや、奪うも何も、夜鷹が決めたことだから」
「良い女ぶって、痛いですね。幸せになってもらいたいから…とかドリーム決めてそー!」
その一言でむかっとして、少し大きな声で言い返してしまう。
「桜子さんだっけ?あなた、私を馬鹿にしたいの?」
待ってましたと言わんばかりに流し台の上にあった、水の入ったコップの中身を床に撒き、さらにステンレスのポットの線を引っ張って引き摺り落とす。
「きゃああああ!!」
ジュッと熱いお湯が床に飛び散る。ストッキング玲子の足の甲にお湯がかかるが、何もかかっていないはずの桜子が大きな声で叫び、少し冷めたお湯の上にべちゃんと座り込みながら叫ぶ。
わらわらと帰路に着く途中の人たちが集まってきた。
「ひどいです拓殖さん。ワタシが夜鷹さんに好かれてるからって…こんな熱いお湯をかけてくるなんて」
ポロポロと綺麗に涙を流しながら現場検証を始めた。
野次馬が地味に増えていく。
「ごめんなさい、ワタシ、夜鷹さんと付き合ってること秘密にしてて、ごめんなさい」
聞いてもいないのにどんどん事情を話していく。
これではまるで嫉妬に駆られて…いや一方的に私が言いよって、その末に夜鷹の、彼女に嫌がらせをしているみたいじゃないか。
「桜子さん!!」
ヒーローの登場である。
目の前は肌色。昨夜、と言うか先ほどまでの痴態を思い出して赤く首まで染まる。
ベッドから出ようともがくと、目の前の筋肉がぎゅっと締め付けてくる。
「今日は休めば?一緒にいようよ」
今までの大空昴はなんだったんだと言わんばかりの甘ったるい笑顔で甘えてくる。
ちょっとその提案も捨て難いと思ってしまったが、今日中にクライアントに送らなければいけない資料があることを思い出して首を横に張る。
「一回家に帰らなきゃ、服がない!」
ブチブチにボタンをちぎられたブラウスに、ホックが伸びたスカートをみて、青ざめる。
「あ、服ならあるよ。いつか玲子ちゃんが泊まりにきたらきてもらおうと思って。」
ガチャリとクローゼットの扉を開き、ワンピースを出す。薄い紫の、綺麗めなワンピースに紺のカーディガン。
「これが、週途中、突然会いたくなっちゃったって来た時に出す服。」
もう一組の服をだす。白い、ピッタリ目のVネックのシャツに黒の少しゆったり目のパンツ。薄めのピンクのカーディガン。
「こっちが、明日大切な会議で、でもその前にどうしてもあなたの顔がみたくなったの。ってきた時に出す服」
そして再びクローゼットを開けようとするので、ちょっと待って、止める。
「何組あるの?」
「え?10組くらいもう暮らせるよ」
その中でもイチオシ!!と言われて、薄いピンクの白のセパレート柄のワンピースに紺のカーディガンを羽織って、ギリギリの時間に出社する。
少し慌てて自分のデスクに到着する。
「あれ、柘植さん、いつもと違う!」
隣のデスクの彩子がすかさず声をかける。
「いつものポニーテールも可愛いけど下ろしてると美人だね!そういえば、経理の朝比奈さんがきてたよ?」
そう言って、メモを渡される。
『お昼にカフェに来てください』
と書いてあった。胸が少しヅキンと音を立てた。
クライアントに無事資料をお送り、グッと伸びをする。
夜鷹と付き合っていたことを知る人はいなかったので、いつもと変わらず、仕事ができた。
言いふらさなくてよかった。
寝不足がたたって少し頭がくらっとする。
「すみません、コーヒー買いに行ってきます」
隣の席の同僚に所在を告げ席を立つ。
腰が痛くていつもよりゆっくり歩く。
「夜鷹さ、柘植さんと仲良いの?」
「え?あー…まぁね、」
自販機置き場のところでタイムリーに夜鷹と同じ課の同僚だろうか、話に花を咲かせていた。
「まじかー!紹介してよ可愛いよねあの人」
「あー、やめた方がいいよ。性格に難ありって感じだし。夜の方も全然。」
「え?何やっちゃってる系なの?」
「まぁ、月1くらいで遊んでる感じかな。あっちは彼女だと思ってるけど」
「おい。マジで勿体無いから俺にくれよ」
「もう飽きてきたし、声かけてみたら、喜んでついてくるかもよ」
「ひでー!お前はいいよなぁ桜子さんと付き合ってんだろー!!。」
「まぁね、めちゃくちゃ可愛いよ桜子さん」
聞かれてるともしらず、あけすけな会話をして通り過ぎていく。観葉植物の裏に、急いで隠れた玲子は無事見つからずやり過ごせた。
月一って…確かにそうだけど。何なら、月一もなかったかもしれない。
それでも毎週末家行って、掃除して洗濯して、テレビ見てご飯作ってまったりして…結婚したらこんな感じ?とかって喜んでいたのは私だけだったのか。
ゲームのイベントがあるからって私だけ先に寝ちゃうことが多かったし、疲れて寝ちゃうこともあった。
隣で、あんなに優しく笑ってくれてたのに、心の中では、ウザいって思ってたってこと?
急に恥ずかしくなって目頭が熱くなる。
泣いちゃダメだ、泣いちゃダメだ、泣いちゃダメだ。
有名な少年になりきり自分に言い聞かす。
このアニメも夜鷹に教えてもらったんだっけ。
自分の中にまだ、彼がいたことに驚いて、思わず涙が溢れ出てくる。
慌てて涙を拭いて、自販機でコーヒーを買う。
まだ仕事残ってるし、がんばろ。
そのまま、夜鷹に呼び出されていたことを忘れてランチ抜きで仕事を片付ける。
何かしていないと頭が破裂してしまいそうだったから。
17時に終業のベルがなる。残る人もいるが半分くらいの人たちが帰路につく。
はぁ。と深いため息をついて、荷物をまとめ始める。
「柘植さぁん、いいですかー?」
終業と同時に桜子が引き留めてくる。
「…よくないです。」
「ひどーい。ちょっとだけ、お話お願いしますー」
涙目で、自分は被害者ですーという顔をして、周りの同情を誘う。年配の上司なんかは「ほら、拓殖ちゃん優しく優しく。パワハラって言われちゃうよー」なんて茶化してくる。
「ワタシィすぐ泣いちゃうんですーごめんなさい」
なんて、全力でか弱さアピールされてしまったら、かなうわけない。
そのまま、給湯室まで連れて行かれる。廊下から影に入った途端、桜子の雰囲気がガラリと変わる。
「夜鷹さん、奪っちゃってごめんなさぁい」
「いや、奪うも何も、夜鷹が決めたことだから」
「良い女ぶって、痛いですね。幸せになってもらいたいから…とかドリーム決めてそー!」
その一言でむかっとして、少し大きな声で言い返してしまう。
「桜子さんだっけ?あなた、私を馬鹿にしたいの?」
待ってましたと言わんばかりに流し台の上にあった、水の入ったコップの中身を床に撒き、さらにステンレスのポットの線を引っ張って引き摺り落とす。
「きゃああああ!!」
ジュッと熱いお湯が床に飛び散る。ストッキング玲子の足の甲にお湯がかかるが、何もかかっていないはずの桜子が大きな声で叫び、少し冷めたお湯の上にべちゃんと座り込みながら叫ぶ。
わらわらと帰路に着く途中の人たちが集まってきた。
「ひどいです拓殖さん。ワタシが夜鷹さんに好かれてるからって…こんな熱いお湯をかけてくるなんて」
ポロポロと綺麗に涙を流しながら現場検証を始めた。
野次馬が地味に増えていく。
「ごめんなさい、ワタシ、夜鷹さんと付き合ってること秘密にしてて、ごめんなさい」
聞いてもいないのにどんどん事情を話していく。
これではまるで嫉妬に駆られて…いや一方的に私が言いよって、その末に夜鷹の、彼女に嫌がらせをしているみたいじゃないか。
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