ココロウラハラ

空橋彩

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強い女

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「あー…あいつは俺なんかいなくていいみたいだから、別に今日でもいいよ」


拓殖 玲子(28)(つげれいこ)独身。堂島銀行の第一営業部に勤める普通のOL。入社してからずっと好きだった経理部の朝比奈 夜鷹(26)(あさひなよだか)と晴れてカップルになって早2年。
今日は久しぶりの彼とのデートの日だった。

胸を弾ませいつもより早く帰れるように速攻で仕事をすすめ、午後から年休をとり、美容室に行ったり、エステに行ったりしてとびきり綺麗になって彼との待ち合わせに行こうと意気揚々と会社を上がろうとした、その時。

給湯室の前まで来たら聞こえたのは、冒頭のセリフである。

「先輩、いいんですか?でもぉ、ワタシ悩んでて苦しくて…」

「玲子だって、仕事だって言えば文句言わないさ。今日夜ちょうど予約してある店個室だし、話聞くよ?」

「ありがとうございます。先輩しか頼れる人いなくって…ぐすん」

「じゃあ、18時にエントランスで」

やばい!夜鷹がこっちくる!!私は慌てて近くの資料室に入り二人が通り過ぎるのを待つ。
通り過ぎてもしばらくは心臓が痛くて動けずにいたら電話が鳴った。チャットだった。

『ごめん、仕事がはいった。今日キャンセルで』

既読だけつけて返事をし損なっていても、次の一言が来るわけでもない。美容室でなんで返そうかなんで1時間、エステでも悩んで2時間。
ついに待ち合わせのはずだった18時になっても追加でメッセージが来ることはなかった。

玲子は、入社式で夜鷹に一目惚れした。そこから毎日挨拶をして、会話できるようになった。
少しずつ趣味も、興味も覚えてたくさん話を振って一緒にいて楽しい!と言ってもらえるまでになった。
そして、意を決して告白をした。やっと付き合えてもらえた。毎日が嬉しかった。

同僚にバレるのが恥ずかしいというから、会社ではあまり関わらないようにした。
チャットも、好きすぎて、好きしか言えず。なんて返していいか悩んでいるうちにいつも遅くなってしまったが必ず返していた。
休日は友人とも関わりたいって言われたからしつこくは誘わないようにしてた。


「だ…大体予約とったの私でしょうがあああああ!」

カァン!!とロックグラスをカウンターに思い切り置く。テレビ番組でやってた料亭、夜鷹が一緒に見ている時に行きたいなぁーってつぶやいたから、サプライズで予約をとった店だった。
私はいつだって、あいつの好きなものを聞き逃さなかった。

「どした?荒れてんなぁ玲子ちゃん」

18時、一応待ち合わせ場所だった猫八銅像前に行ったがもちろんあいつは来なかった。
やるせない気持ちを解消できず、行きつけのBARにてヤケ酒をしていた。
カウンターの向こうでは筋骨隆々の男が、細い足の繊細なワイングラスを拭きながらニヤニヤと笑っていた。

「夜鷹のやつ。わだじの事、うらぎっだ」

「えー…あいつを育てたのお前なのに?そんなことするか?」

「ずびっおみせぇ、予約したのに違う女といったぁ!!部屋まで取ってあったんだよ?なのに…」

「あの、桜亭?高かったんじゃない?」

「夜鷹行きたいって、いいなって言ったからぁ…すーちゃん!!おかわりぃ!!」

この筋骨隆々男は大空 昴(おおぞら すばる)チャラそうに見えてチャラい、このBARのオーナー。
大学時代の同期で、同じサークルメンバーだった彼とは気のおけない仲である。


「あーぁ、もったいねぇー。」

「ぞんなごといっだっでぇ」

涙と鼻水で、もうなんと喋っているかわからないほどぐちゃぐちゃになってしまっている。
夜鷹は入社当時、抜群にダサかった。それ、高校の時のワイシャツ?って感じだったし、スーツパパの?ってくらいサイズが合ってなかった。
玲子はたくさんアニメを見て、漫画を読んで夜鷹と仲良くなって、美容室やスーツのオーダーショップ、このBARに連れて行ったりしてみんなに馬鹿にされないように助けてきた。
全ては好かれたいから。大好きだから。

微かに入り口のベルが鳴った気がする。泣きすぎて酸素が足りないのか頭が朦朧としてきた。

「俺なら絶対に離さないね。」

「私だって離したくない。大好きなんだがらぁ」

うわああああん!!とカウンターに突っ伏して泣いているとぐいっと上半身を起こされ、突然キスされる。

口の中に冷たい氷が押しこめられ、同時に厚みのある暖かい舌が口の中で暴れる。上顎を擦られ、身体が続々とする。

「んんっ!!んっ!」

くすぐったさと焦ったさで声が漏れる。

「ふぁ、あっ!す…すばるさん?!」

「もったいない。俺なら玲子ちゃんの事絶対に離さないのに」

そのまま、首筋に舌を滑らせ、軽いキスを落とされる。
酔っているからなのかその度にゾクゾクとした快感が襲う。

「おきゃくさん、きちゃう!!やめて!!」

「鍵閉めたからこねぇよ。ああ、その顔そそるわ」

そのまま、胸元のボタンをちぎられ、ボリュームのある胸が外気にふれ鳥肌が立つ。
ピンク色の乳首がぴょこんと主張する。

「だめっやめて!私、夜鷹が好きなの!!」

「夜鷹も今頃こうしてるでしょ

そういうと、昴は玲子の乳首を口にふくみ、歯で軽く噛んだり、舌で転がしたりして弄ぶ。

他の女と…いやっ…嫌だ…

ショックのあまり、抵抗するのを忘れて身を任せる事になるが、突然電撃のような快感が身を襲い我に帰る。

「あっああっん!!やめて、ほんとに、やめて」

「そ?こんなにぐちゃぐちゃなのに?」

蜜をたっぷり含んだそこを、玲子の指の倍はあるのか?!くらいの太い指で掻き回す。
長さも申し分なく、イイトコロに届いた指はトントンとリズミカルに刺激する。

「ふっ!!いっく、やめていきたくないぃ」

どん!!と最後の力を振り絞ってすばるを蹴っ飛ばし、距離をとる。腰が抜けてしまい、その場に座り込んでしまう。

「やめて、夜鷹に会えなくなる」

「俺、玲子ちゃんの事好きだから、覚えといてぇ」

艶々と光る指をぺろっと舐めながら昴は玲子を立ち上がらせる。

「玲子ちゃん、突然あいつを連れてきたじゃん?それからというもの、二人でくるとこの後、この穴にあいつのものが入るんだって、考えるだけで、結構イラついてたんだわ。」


「そんな!いつから好きだったのよ!!」

「えーっと…18歳の頃から?」

「初見じゃん!!」

「ってなわけで、俺にしとかない?こっちも俺のがでかいよ?」

革のパンツの股間部分を指さして、昴はにかっと笑う。

「そんなの…そんなのはいらないよ!!!」

玲子は叫び、店を飛び出す。
なんとか家につき、シャワーを浴びる。
昴の行動で、すっかり忘れていたが、夜鷹は今頃あの相談女とよろしくしてるんだろうか。

あのまま昴に朝まで抱かれていれば、考えなくて済んだんだろうか…と少し思ったが。
それなら、眠れないまま夜を過ごした方がいいと、考え直した。
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