57 / 61
本編の本編のその後
3.私は悪く無い!
しおりを挟む
「あんたの場合はわざとだろ。好きになった相手にすでに相手がいたら、俺は手を引くね。」
「そうやって、オーラリアの事諦めて自分かっこいいって思ってるんでしょ?紫亜は。だっさー」
ちょっと揶揄おうと思っただけなのに、紫亜の顔から一瞬にして表情がなくなった。
「あんたが今まで不幸にしてきた人たちはあんたを一生許さないだろうね。」
「は?何言ってんの?許すも何も、ヘラヘラ着いてきた男達に責任あるでしょ?断ればいいんだから!何でもかんでも人のせいにしないでよね」
「…あんたにわかってもらおうとは思わないけど、ほんとにムカつくよ。」
紫亜はガシャンと近くにあったレンガを蹴り飛ばす。大きな音がしたのでここみはびっくりして肩をはねさせる。
「ね…ねぇ、本気で怒ったの?紫亜?まさか怒らないよね?私に。だって私は…」
「なに?また妹みたいなもんだからとかいうの?俺に妹はいないよ。あっちの世界でもっと、あんたを拒絶しておけばよかった。」
「待ってよ!早くここから出してよ!もうクランなんかいらないからさ。ね!」
紫亜は背中を向けたままこちらを振り向くことは無かった。いつも穏やかで優しく笑っていた彼はどこにもいなかった。
次の食事の時からまたロバートが来てくれるようになった。紫亜にひどい態度を取られたこと、みんな振られたことをここみのせいにして怒ること…自分の辛い気持ちをどうしても誰かに聞いて欲しくて、ここみはロバートに涙ながらに話をした。
「わ…私がいけないのかな?私、とろうとなんてしてないんだよ?いつも、男の人が私を好きになっちゃうんだよ。でもそれはしょうがないよね?私のせいじゃ無いよね?」
「そうっすね。相手がいるのに他に目を向ける…男たちもよく無いと思います。でも…」
「そうでしょ?!なのに、全部私のせいにして…私が羨ましいんだよ!だから悪口言ってくるんだよね!」
「でも…」
「でも?何?ロバートまで私が悪いっていうの?!」
目に涙をためてわざと声を震わせれば、ロバートは申し訳なさそうな、悲しそうな顔をした。
あぁ、惚れてるなって思った。
やっぱり、ちょっと涙を流して甘えればみんな可愛がってくれる。
この塔から出られる日も近いかもしれない。ロバートはどのくらいお金を持っているだろう。
王都じゃなくてもいいから、小さな可愛い家に住むのも悪く無いかもしれない。
農業とかは無理だけど…お菓子作りながら得意だし、お菓子屋さんをやってもいいかも!こちらの世界のお菓子には無いお菓子を作って一儲けできるかも!
主人公補正ってやつ。
本当は佑里が聖女だったとか言ってたけど…私にだって浄化の能力があった。今だってちゃんと浄化できてる。
私は可愛い、誰からも愛される。
だから、大丈夫。モテすぎて僻まれるのは仕方ない。オーラリアだってそうだった。
初めて私を連れたクランを見て、とても怖い顔をして私をじっとみていた。
わざとクランと遠い部屋にされたし、ケーキを食べられないよう食事内容もキツく管理された。
欲しいものも買わせてもらえなかった。
だから全部クランに頼んで手に入れるしか無かった。
自分でクランと私の中を取り持ったようなものだ。
そのくせ、愛されたかっただの、なんだなとグチグチ文句を言って、結局自分がこの国の王妃になってる。
ああいう狡賢い女が一番嫌い。
さも、『私仕事できまーす』みたいな、あの『私大変です、痩せちゃってます』みたいな哀れみを乞うような見た目も、仕事も本当にイライラした。
だから、部屋を交換してもらったり、ちょっとだけ意地悪をしてしまった。
それは仕方ないよね?自分が悪いんだから。
初めから優しくしてくれてれば…
ふと、外を見ると塔の下の階にクランと佑里が入ってくるのが見えた。
あの時、最後に会った時のクランのあの…
血走ったような鋭い目が忘れられない。
オーラリアをすてて、私を選んだのは自分なのに。
本当に自分勝手で嫌になる。
「そうやって、オーラリアの事諦めて自分かっこいいって思ってるんでしょ?紫亜は。だっさー」
ちょっと揶揄おうと思っただけなのに、紫亜の顔から一瞬にして表情がなくなった。
「あんたが今まで不幸にしてきた人たちはあんたを一生許さないだろうね。」
「は?何言ってんの?許すも何も、ヘラヘラ着いてきた男達に責任あるでしょ?断ればいいんだから!何でもかんでも人のせいにしないでよね」
「…あんたにわかってもらおうとは思わないけど、ほんとにムカつくよ。」
紫亜はガシャンと近くにあったレンガを蹴り飛ばす。大きな音がしたのでここみはびっくりして肩をはねさせる。
「ね…ねぇ、本気で怒ったの?紫亜?まさか怒らないよね?私に。だって私は…」
「なに?また妹みたいなもんだからとかいうの?俺に妹はいないよ。あっちの世界でもっと、あんたを拒絶しておけばよかった。」
「待ってよ!早くここから出してよ!もうクランなんかいらないからさ。ね!」
紫亜は背中を向けたままこちらを振り向くことは無かった。いつも穏やかで優しく笑っていた彼はどこにもいなかった。
次の食事の時からまたロバートが来てくれるようになった。紫亜にひどい態度を取られたこと、みんな振られたことをここみのせいにして怒ること…自分の辛い気持ちをどうしても誰かに聞いて欲しくて、ここみはロバートに涙ながらに話をした。
「わ…私がいけないのかな?私、とろうとなんてしてないんだよ?いつも、男の人が私を好きになっちゃうんだよ。でもそれはしょうがないよね?私のせいじゃ無いよね?」
「そうっすね。相手がいるのに他に目を向ける…男たちもよく無いと思います。でも…」
「そうでしょ?!なのに、全部私のせいにして…私が羨ましいんだよ!だから悪口言ってくるんだよね!」
「でも…」
「でも?何?ロバートまで私が悪いっていうの?!」
目に涙をためてわざと声を震わせれば、ロバートは申し訳なさそうな、悲しそうな顔をした。
あぁ、惚れてるなって思った。
やっぱり、ちょっと涙を流して甘えればみんな可愛がってくれる。
この塔から出られる日も近いかもしれない。ロバートはどのくらいお金を持っているだろう。
王都じゃなくてもいいから、小さな可愛い家に住むのも悪く無いかもしれない。
農業とかは無理だけど…お菓子作りながら得意だし、お菓子屋さんをやってもいいかも!こちらの世界のお菓子には無いお菓子を作って一儲けできるかも!
主人公補正ってやつ。
本当は佑里が聖女だったとか言ってたけど…私にだって浄化の能力があった。今だってちゃんと浄化できてる。
私は可愛い、誰からも愛される。
だから、大丈夫。モテすぎて僻まれるのは仕方ない。オーラリアだってそうだった。
初めて私を連れたクランを見て、とても怖い顔をして私をじっとみていた。
わざとクランと遠い部屋にされたし、ケーキを食べられないよう食事内容もキツく管理された。
欲しいものも買わせてもらえなかった。
だから全部クランに頼んで手に入れるしか無かった。
自分でクランと私の中を取り持ったようなものだ。
そのくせ、愛されたかっただの、なんだなとグチグチ文句を言って、結局自分がこの国の王妃になってる。
ああいう狡賢い女が一番嫌い。
さも、『私仕事できまーす』みたいな、あの『私大変です、痩せちゃってます』みたいな哀れみを乞うような見た目も、仕事も本当にイライラした。
だから、部屋を交換してもらったり、ちょっとだけ意地悪をしてしまった。
それは仕方ないよね?自分が悪いんだから。
初めから優しくしてくれてれば…
ふと、外を見ると塔の下の階にクランと佑里が入ってくるのが見えた。
あの時、最後に会った時のクランのあの…
血走ったような鋭い目が忘れられない。
オーラリアをすてて、私を選んだのは自分なのに。
本当に自分勝手で嫌になる。
73
お気に入りに追加
411
あなたにおすすめの小説

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

影の王宮
朱里 麗華(reika2854)
恋愛
王立学園の卒業式で公爵令嬢のシェリルは、王太子であり婚約者であるギデオンに婚約破棄を言い渡される。
ギデオンには学園で知り合った恋人の男爵令嬢ミーシャがいるのだ。
幼い頃からギデオンを想っていたシェリルだったが、ギデオンの覚悟を知って身を引こうと考える。
両親の愛情を受けられずに育ったギデオンは、人一倍愛情を求めているのだ。
だけどミーシャはシェリルが思っていたような人物ではないようで……。
タグにも入れましたが、主人公カップル(本当に主人公かも怪しい)は元サヤです。
すっごく暗い話になりそうなので、プロローグに救いを入れました。
一章からの話でなぜそうなったのか過程を書いていきます。
メインになるのは親世代かと。
※子どもに関するセンシティブな内容が含まれます。
苦手な方はご自衛ください。
※タイトルが途中で変わる可能性があります<(_ _)>
公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜
月
ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。
けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。
ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。
大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。
子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。
素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。
それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。
夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。
ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。
自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。
フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。
夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。
新たに出会う、友人たち。
再会した、大切な人。
そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。
フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。
★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。
※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。
※一話あたり二千文字前後となります。

大公閣下!こちらの双子様、耳と尾がはえておりますが!?
まめまめ
恋愛
魔法が使えない無能ハズレ令嬢オリヴィアは、実父にも見限られ、皇子との縁談も破談になり、仕方なく北の大公家へ家庭教師として働きに出る。
大公邸で会ったのは、可愛すぎる4歳の双子の兄妹!
「オリヴィアさまっ、いっしょにねよ?」
(可愛すぎるけど…なぜ椅子がシャンデリアに引っかかってるんですか!?カーテンもクロスもぼろぼろ…ああ!スープのお皿は投げないでください!!)
双子様の父親、大公閣下に相談しても
「子どもたちのことは貴女に任せます。」
と冷たい瞳で吐き捨てられるだけ。
しかもこちらの双子様、頭とおしりに、もふもふが…!?
どん底だけどめげないオリヴィアが、心を閉ざした大公閣下と可愛い謎の双子とどうにかこうにか家族になっていく恋愛要素多めのホームドラマ(?)です。

本日より他人として生きさせていただきます
ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話
彩伊
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。
しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。
彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。
............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。
招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。
送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。
そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。
『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』
一日一話
14話完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる