冷遇された王妃は自由を望む

空橋彩

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本編の本編のその後

3.私は悪く無い!

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「あんたの場合はわざとだろ。好きになった相手にすでに相手がいたら、俺は手を引くね。」

「そうやって、オーラリアの事諦めて自分かっこいいって思ってるんでしょ?紫亜は。だっさー」


ちょっと揶揄おうと思っただけなのに、紫亜の顔から一瞬にして表情がなくなった。

「あんたが今まで不幸にしてきた人たちはあんたを一生許さないだろうね。」


「は?何言ってんの?許すも何も、ヘラヘラ着いてきた男達に責任あるでしょ?断ればいいんだから!何でもかんでも人のせいにしないでよね」


「…あんたにわかってもらおうとは思わないけど、ほんとにムカつくよ。」


紫亜はガシャンと近くにあったレンガを蹴り飛ばす。大きな音がしたのでここみはびっくりして肩をはねさせる。


「ね…ねぇ、本気で怒ったの?紫亜?まさか怒らないよね?私に。だって私は…」


「なに?また妹みたいなもんだからとかいうの?俺に妹はいないよ。あっちの世界でもっと、あんたを拒絶しておけばよかった。」


「待ってよ!早くここから出してよ!もうクランなんかいらないからさ。ね!」


紫亜は背中を向けたままこちらを振り向くことは無かった。いつも穏やかで優しく笑っていた彼はどこにもいなかった。
次の食事の時からまたロバートが来てくれるようになった。紫亜にひどい態度を取られたこと、みんな振られたことをここみのせいにして怒ること…自分の辛い気持ちをどうしても誰かに聞いて欲しくて、ここみはロバートに涙ながらに話をした。



「わ…私がいけないのかな?私、とろうとなんてしてないんだよ?いつも、男の人が私を好きになっちゃうんだよ。でもそれはしょうがないよね?私のせいじゃ無いよね?」


「そうっすね。相手がいるのに他に目を向ける…男たちもよく無いと思います。でも…」


「そうでしょ?!なのに、全部私のせいにして…私が羨ましいんだよ!だから悪口言ってくるんだよね!」


「でも…」


「でも?何?ロバートまで私が悪いっていうの?!」


目に涙をためてわざと声を震わせれば、ロバートは申し訳なさそうな、悲しそうな顔をした。
あぁ、惚れてるなって思った。

やっぱり、ちょっと涙を流して甘えればみんな可愛がってくれる。

この塔から出られる日も近いかもしれない。ロバートはどのくらいお金を持っているだろう。
王都じゃなくてもいいから、小さな可愛い家に住むのも悪く無いかもしれない。
農業とかは無理だけど…お菓子作りながら得意だし、お菓子屋さんをやってもいいかも!こちらの世界のお菓子には無いお菓子を作って一儲けできるかも!
主人公補正ってやつ。

本当は佑里が聖女だったとか言ってたけど…私にだって浄化の能力があった。今だってちゃんと浄化できてる。



私は可愛い、誰からも愛される。

だから、大丈夫。モテすぎて僻まれるのは仕方ない。オーラリアだってそうだった。

初めて私を連れたクランを見て、とても怖い顔をして私をじっとみていた。
わざとクランと遠い部屋にされたし、ケーキを食べられないよう食事内容もキツく管理された。
欲しいものも買わせてもらえなかった。

だから全部クランに頼んで手に入れるしか無かった。
自分でクランと私の中を取り持ったようなものだ。
そのくせ、愛されたかっただの、なんだなとグチグチ文句を言って、結局自分がこの国の王妃になってる。

ああいう狡賢い女が一番嫌い。
さも、『私仕事できまーす』みたいな、あの『私大変です、痩せちゃってます』みたいな哀れみを乞うような見た目も、仕事も本当にイライラした。


だから、部屋を交換してもらったり、ちょっとだけ意地悪をしてしまった。
それは仕方ないよね?自分が悪いんだから。

初めから優しくしてくれてれば…

ふと、外を見ると塔の下の階にクランと佑里が入ってくるのが見えた。


あの時、最後に会った時のクランのあの…


血走ったような鋭い目が忘れられない。


オーラリアをすてて、私を選んだのは自分なのに。

本当に自分勝手で嫌になる。
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