冷遇された王妃は自由を望む

空橋彩

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51.新しい日々で

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「オーラリア、頑張ったね。」


王城の大掃除も終わり、貴賓室へもどるとグリードマンにローランド、シアが待っていてくれた。
一緒に部屋へ戻ってきたハイドが優しい声で慰めてくれた。
人を突き放した経験があまり無いオーラリアの手はわずかに震えていたし瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。


「ワタシを呼んでくだされば、跡形もなく消してあげましたのに」

ローランドがニコッと人好きする穏やかな笑顔を浮かべながらサラッと毒を吐く。


グリードマンが眉間に皺を寄せてチッと舌打ちをした。


「ありがとう。また怒ってくれてるのですか?でも、ローランドとロッカには辺境…シークバレーを納めてもらわなければですから、無理はしないで欲しいの。」


「お任せください!オーラリア様の大切な土地は私が絶対に守ってみせますから!」


キラキラと瞳を輝かせたロッカが張り切って答える。
ハイドが王になり王都へと移動するにあたり、シークバレーを守るものは誰が適任かと考えていたところ、黒ハイド(命名シア)と同等の力をもっていたローランドとオーラリアを慕ってくれている、ロッカが適任なのではとオーラリアとグリードマンから提案した。

あんな事件を起こしたものに任せてはいけない!とロッカに反対されたが、ハイドの命により、正式に任命された。


ローランドは教会から優秀な部下も連れてきたらしくすでにシークバレーへ向かっているそうだ。

オリバー一家には身分を返すと提案したが、宿の経営が楽しいのでと断られてしまった。

一家でシークバレーに残り生活することにしたそうだ。


「あの、ユウリはどこに?」

オーラリアはシアが一人でいることに気がつき尋ねた。シアはニコッといつもより少し乱暴な笑い方をすると、意味ありげに窓の外をみつめた。


「俺がこの姿でいるのも今日まで。ユウリと交代かな。」

シアはいつものかしこまった喋り方をせず、崩した話し方をした。私もハイドもそう望んだからだ。
もっと気安く接してほしい、この国を共に導く仲間になって欲しいと。

「?どういう事?」


「この物語を書くにあたって登場人物を一緒に考えたんだ。その時に見た目、性格、立ち振る舞い。全ての好みを詰め込んだ人物をお互いに考えた。俺は君、オーラリア。」


シアの突然の告白にオーラリアは一瞬遅れて、顔を真っ赤にした。ハイドがピクッと眉を吊り上げて一瞬シアを睨んだ。


「まってよ、安心して。オーラリアは俺の娘みたいなもんだから!それで、ユウリはね、まあ…俺も理解できない好みだけど。…クランだ。」


「あのボンクラのどこがいいんだ?」


先程まで穏やかに笑っていたローランドが本気でわからないと言うような訝しげな顔でシアを見つめながら聞く。



「元々の物語は聖女はユウリがモデルだった。書いていたのがユウリだったから考え方とかそういうものがね。オーラリアを傷つけたと反省した聖女はオーラリアとハイドを供養しながらクランをちょうき…鍛えて…説得して?矯正していきながら幸せになるんだ。ここみみたいなイジメはしないんだよ。クランが勝手に張り切って突っ走ってオーラリアを片付けてしまう、そんな物語だった。この世界は別物だけどね。」



みな、うんうん、とうなづきながらも、ユウリの意外な好みに「あれでいいのか?」と首を傾げている。特にハイドは納得いかないような娘を嫁に出す父親のような微妙な表情をしている。


「とにかくあいつはダメ男が好きだし、クランの見た目はあちらの世界で推してたアイドルにそっくりなんだ。」


「だ…だか、クランはその…ここみと…」


「あー、それは気にしないんじゃ無いかな?俺たちのいた世界では純潔にそれほど重点をおいていなかったから。気にしてる奴もいたけど俺たちは気にしない。だから、弱り切った元王様を落としたくてウズウズしてると思う。ユウリは肉食だから」


ニコ!と太陽のように眩しく美しい笑顔を見せたシアにハイドは「そ…そうか…」と納得せざるをえなかった。


「王子様と聖女様は幸せにならなきゃだからね」



シアはそのセリフだけちょっと寂しそうに、小さな声で呟いた。
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