45 / 61
43.side王と聖女は狼狽る
しおりを挟む
「え?なんで?王様の命令なのになんでいないの??」
ニコニコ顔で馬車を降りたここみは一気に顔を強張らせる。お目当ての人物が館を不在にしていることを知り不機嫌をかくさずに相手を責めた。
「お館様の滞在につきましてはなにも支持されておりませんでしたので。浄化していただくのにお館様がいなくても問題ありませんでしょう。」
ピンと背筋を張った貫禄のある女性がハキハキと答える。その声になんだか聞き覚えのあるような懐かしい感じを覚えた。
「ーーー!今すぐ連れ戻してください!シークさんがいないなら浄化しませんから!」
ここみは、ふん!不貞腐れてそっぽをむいてしまった。しかし、シークバレーの者たちは困っている様子もなく、どうもクスクスと笑ってさえいるようだ。
「おじ…シークは…今どこに?僕が尋ねてくるというのに何故城を空けているんだ?」
敵陣に単独で入り込んだような、ムズムズとした感じが気持ち悪くて少し強気に聞いてしまった。
王城の者たちだったら、ここで眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をしながらしぶしぶ退室する。
だけど、この女性は違った。さらに胸を張りハッキリとした声で答える。
「…陛下が、お館様にお会いしたいとは思いませんでした。お手紙にはいつも、別の方のことしか書かれていなかったとか?ですからお館様は自分には用事はないだろう、とご判断されました。」
「その、別の方も、もちろんここにいるんだろ?早くここへ連れてこい!僕の元へ返すよう命令したはずだ!!」
1ついえばそれが10倍になって帰ってくることに腹が立ち、強い口調でついせめてしまう。
「お名前が、間違っておりましたので陛下のご命令は無効でございます。」
ハッと息を飲むしかなかった。この口調、この冷たい視線…
「専属侍女殿か、やはりオーラリアはここにいるんだな。すぐによんでくれ。」
「やっぱりここにいたんですか。シーク様に迷惑かけるなんて、本当に困った人ですね。」
しばらく黙って様子を見ていたここみが突然口を出してきた。はぁ、と大きなため息までついて。
「オーラリア様が病気の人たちを放り出していなくなったから、こんなに被害が広がってるんですよ?早く王都に帰って責任をとってください!」
その後も、しばらくここみはオーラリアが無責任だと責め立てていた。目の前のオーラリアの専属侍女だった女性だけでなく、僕たちを迎え入れるために玄関まで出てきていた騎士たちからも怒りの空気を感じた。
早めに何とかしなければ、取り返しのつかない事になりそうだと思い、「ここみ」と声をかける。
「私たちの子供も産まれるし、オーラリア様には戻ってきてもらわないとこまるんですよね」
時すでに遅く、一番伝わって欲しくなかった事をここみはすんなりとしゃべった。
「そうでしたか。おめでとうございます。では、立ちっぱなしでは辛いでしょう応接室へどうぞ」
流石に怒らせたかと思って、周りを見渡すが誰一人こちらを見ていなかった。敵意を向けられていた方がまだマシだった。
これではまるで、
『関係ない』
と言っている様なものだ。つまり、オーラリアはもう…
「ね、王様なんだから側室がいたって誰も気にしませんよ?だから、大丈夫って言ったじゃないですか!」
ここみはこの空気を感じていないのか、とても機嫌が良さそうにニコニコと笑っている。
案内された応接室でも、オーラリアの気配を感じる事はできなかった。それどころか、
「現在この地域には熱病の患者はおりませんので、浄化の必要はございません。」
とあんに帰れと言われてしまった。
しかし、オーラリアに会うまでは帰れない…彼女がいない生活はもう耐えられない…何とかして彼女に会えないものか…そう考えた。
「じゃあ、視察ってことで、シーク様が帰ってくるまではここに居ましょうよ!ね!」
「あ、ああ、そうだな。留守にしているシークが悪いんだ、しばらく待たせていただくよ。」
ここみがいつもの様にわがままを言ってくれて助かった。嫌そうな顔をしているかと思いながら屋敷の者たちを見ると、皆ほっとした様な何故か落ち着いた笑顔を見せていた。
何かがおかしい、何かが違う、そんな違和感があった。
ニコニコ顔で馬車を降りたここみは一気に顔を強張らせる。お目当ての人物が館を不在にしていることを知り不機嫌をかくさずに相手を責めた。
「お館様の滞在につきましてはなにも支持されておりませんでしたので。浄化していただくのにお館様がいなくても問題ありませんでしょう。」
ピンと背筋を張った貫禄のある女性がハキハキと答える。その声になんだか聞き覚えのあるような懐かしい感じを覚えた。
「ーーー!今すぐ連れ戻してください!シークさんがいないなら浄化しませんから!」
ここみは、ふん!不貞腐れてそっぽをむいてしまった。しかし、シークバレーの者たちは困っている様子もなく、どうもクスクスと笑ってさえいるようだ。
「おじ…シークは…今どこに?僕が尋ねてくるというのに何故城を空けているんだ?」
敵陣に単独で入り込んだような、ムズムズとした感じが気持ち悪くて少し強気に聞いてしまった。
王城の者たちだったら、ここで眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をしながらしぶしぶ退室する。
だけど、この女性は違った。さらに胸を張りハッキリとした声で答える。
「…陛下が、お館様にお会いしたいとは思いませんでした。お手紙にはいつも、別の方のことしか書かれていなかったとか?ですからお館様は自分には用事はないだろう、とご判断されました。」
「その、別の方も、もちろんここにいるんだろ?早くここへ連れてこい!僕の元へ返すよう命令したはずだ!!」
1ついえばそれが10倍になって帰ってくることに腹が立ち、強い口調でついせめてしまう。
「お名前が、間違っておりましたので陛下のご命令は無効でございます。」
ハッと息を飲むしかなかった。この口調、この冷たい視線…
「専属侍女殿か、やはりオーラリアはここにいるんだな。すぐによんでくれ。」
「やっぱりここにいたんですか。シーク様に迷惑かけるなんて、本当に困った人ですね。」
しばらく黙って様子を見ていたここみが突然口を出してきた。はぁ、と大きなため息までついて。
「オーラリア様が病気の人たちを放り出していなくなったから、こんなに被害が広がってるんですよ?早く王都に帰って責任をとってください!」
その後も、しばらくここみはオーラリアが無責任だと責め立てていた。目の前のオーラリアの専属侍女だった女性だけでなく、僕たちを迎え入れるために玄関まで出てきていた騎士たちからも怒りの空気を感じた。
早めに何とかしなければ、取り返しのつかない事になりそうだと思い、「ここみ」と声をかける。
「私たちの子供も産まれるし、オーラリア様には戻ってきてもらわないとこまるんですよね」
時すでに遅く、一番伝わって欲しくなかった事をここみはすんなりとしゃべった。
「そうでしたか。おめでとうございます。では、立ちっぱなしでは辛いでしょう応接室へどうぞ」
流石に怒らせたかと思って、周りを見渡すが誰一人こちらを見ていなかった。敵意を向けられていた方がまだマシだった。
これではまるで、
『関係ない』
と言っている様なものだ。つまり、オーラリアはもう…
「ね、王様なんだから側室がいたって誰も気にしませんよ?だから、大丈夫って言ったじゃないですか!」
ここみはこの空気を感じていないのか、とても機嫌が良さそうにニコニコと笑っている。
案内された応接室でも、オーラリアの気配を感じる事はできなかった。それどころか、
「現在この地域には熱病の患者はおりませんので、浄化の必要はございません。」
とあんに帰れと言われてしまった。
しかし、オーラリアに会うまでは帰れない…彼女がいない生活はもう耐えられない…何とかして彼女に会えないものか…そう考えた。
「じゃあ、視察ってことで、シーク様が帰ってくるまではここに居ましょうよ!ね!」
「あ、ああ、そうだな。留守にしているシークが悪いんだ、しばらく待たせていただくよ。」
ここみがいつもの様にわがままを言ってくれて助かった。嫌そうな顔をしているかと思いながら屋敷の者たちを見ると、皆ほっとした様な何故か落ち着いた笑顔を見せていた。
何かがおかしい、何かが違う、そんな違和感があった。
109
お気に入りに追加
411
あなたにおすすめの小説

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

影の王宮
朱里 麗華(reika2854)
恋愛
王立学園の卒業式で公爵令嬢のシェリルは、王太子であり婚約者であるギデオンに婚約破棄を言い渡される。
ギデオンには学園で知り合った恋人の男爵令嬢ミーシャがいるのだ。
幼い頃からギデオンを想っていたシェリルだったが、ギデオンの覚悟を知って身を引こうと考える。
両親の愛情を受けられずに育ったギデオンは、人一倍愛情を求めているのだ。
だけどミーシャはシェリルが思っていたような人物ではないようで……。
タグにも入れましたが、主人公カップル(本当に主人公かも怪しい)は元サヤです。
すっごく暗い話になりそうなので、プロローグに救いを入れました。
一章からの話でなぜそうなったのか過程を書いていきます。
メインになるのは親世代かと。
※子どもに関するセンシティブな内容が含まれます。
苦手な方はご自衛ください。
※タイトルが途中で変わる可能性があります<(_ _)>
公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜
月
ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。
けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。
ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。
大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。
子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。
素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。
それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。
夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。
ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。
自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。
フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。
夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。
新たに出会う、友人たち。
再会した、大切な人。
そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。
フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。
★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。
※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。
※一話あたり二千文字前後となります。

大公閣下!こちらの双子様、耳と尾がはえておりますが!?
まめまめ
恋愛
魔法が使えない無能ハズレ令嬢オリヴィアは、実父にも見限られ、皇子との縁談も破談になり、仕方なく北の大公家へ家庭教師として働きに出る。
大公邸で会ったのは、可愛すぎる4歳の双子の兄妹!
「オリヴィアさまっ、いっしょにねよ?」
(可愛すぎるけど…なぜ椅子がシャンデリアに引っかかってるんですか!?カーテンもクロスもぼろぼろ…ああ!スープのお皿は投げないでください!!)
双子様の父親、大公閣下に相談しても
「子どもたちのことは貴女に任せます。」
と冷たい瞳で吐き捨てられるだけ。
しかもこちらの双子様、頭とおしりに、もふもふが…!?
どん底だけどめげないオリヴィアが、心を閉ざした大公閣下と可愛い謎の双子とどうにかこうにか家族になっていく恋愛要素多めのホームドラマ(?)です。

本日より他人として生きさせていただきます
ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話
彩伊
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。
しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。
彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。
............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。
招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。
送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。
そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。
『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』
一日一話
14話完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる