冷遇された王妃は自由を望む

34.オーラリアは消える

残酷な表現や火事の表現あります。
苦手な方はお読みにならないでください。












「私は誰のものにもならない。もう、誰かのために生きるのは嫌なの。苦しくて、悲しくて、辛い。お願い、ローランドさん、私を洞窟へ連れていって。早くしないと…」


「ほぅ、昔のあなたなら即自分を差し出したというのに、少しは人間になったんですね。残念です。洞窟の者達は王と聖女が殺したんだ、あなたが気に病むことはない。」


また、昔のような穏やかな表情にもどったローランドは私の上に覆い被さると額に唇を落とす。そのまま、耳元でそっと囁く。


「誰が、あなたを変えてしまったの？」




ひんやりとした手が私の首をグッととらえる。少しずつ力が入れられだんだんと首が締まってきている。ヒューヒューと呼吸音が苦しそうな音に変わる。
手も足も拘束されていて身動きがとれずただ、涙を流して口をパクパクさせるしかできない。


「苦しいですか？誰かのものになると言うのなら、誰のところにも行けなくして差し上げます。これ…」



そう言ってローランドが小さなリングをつまんで目の前にみせる。酸素が足りず、視界がぼやけているがハッキリと、黄色い宝石が見えた。


「か…え…し…」


「黄色の宝石…まだ、王のことを思っているのですか？残念ながら彼のところへはもう戻れない。ワタシの元に永遠に…」


目の前が霞んでローランドの表情は見えない。カッと頭が熱くなり痛いとか悲しいとかの感情を感じなくなった。ただ、苦しいだけだ。

ふと目の前に浮かぶのはハイドの顔。優しく微笑む暖かな顔。もう一度だけ会いたかった。

願わくば、あの人と幸せになりたかった。


オーラリアは瞳を閉じる事もできずそのまま呼吸をとめた。










ローランドはその細い首からそっと手を離した。
光を失ったかつて美しかった赤い瞳からは涙が流れた跡がたくさんあった。
瞬きをしない人形の様になったオーラリアの足枷と手枷を外し、大切に抱える。


初めて会ったあの日から、親子ほどに年が離れている少女に恋をした。王が彼女を無理やり娶り、二人の運命は引き裂かれてしまった。

やっと、自分だけのものにできる。もう、彼女が他の誰かの事を考えることはないだろう。


今頃、オーラリアを必死に探しているであろうもの達に向けて最後の餞別をおくろう。


この、誰にも見向きもされなくなった古い教会に油を大量に撒く。

それから、小さな火種をポンと投げ入れる。

チラチラと燃えていた小さな炎はワタシの想いのように赤く、大きく燃え上がる。


ゴォ、と音を立てて

細かな火花を散らして

盛大に








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