31 / 61
30.オーラリアは驚く
しおりを挟む
「戻ったら助けられるかしら?」
ふと、顔を上げて外を見ると騎士達が庭にテントを立てていた。20名ほどの騎士達が今回はついてきてくれたが、空いている病室が足りない為、騎士達は外で寝泊まりしてくれる事になった。
皆、一日忙しかったはずなのに嫌な顔をしたり、文句を言ったりしている様子がない。
笑顔で話し、時々病棟の窓に向かって手を振っている。
見れば、子供の患者が嬉しそうに手を振っている。
シークバレー領の穏やかで優しい雰囲気がそのまま感じられる。あの、トゲトゲとした暗い王宮に戻ると考えただけでゾッと寒気がした。
「でも、戻るにはこれを断らなきゃいけない」
そういうと、ハイドはポケットから小さな赤い箱を出した。パカっと開くと中には金色に輝く小さな宝石がついた指輪が入っていた。
「オーラリア・コットン子爵令嬢。私の婚約者になって欲しい。だからどうか、戻ることは考えないで欲しい。」
突然の求婚に驚き、目を見開いてしまう。ハイドも、顔を赤くして少しはにかんでいた。いつも輝いている金の瞳が、パッと星を散りばめたようにキラリと光った気がした。
何も言えずに固まっていると、スッと指輪を箱から取り出してこちらへ差し出す。
「俺は君を裏切らない。オーラリアと一緒にいたい。君が辛い時は1番に助けてあげたい。愛してるよ」
その言葉を聞くと、何故かボロボロと涙が溢れてきた。
こんな風に思ってもらえるのは、初めてかもしれない。そして、クランがここみを大切にするように私もそうして欲しいと思っていた。
その気持ちに気がついてくれたのはクランではなく、ハイドだった。
「私も貴方と一緒にいたい。」
そう口にした途端にガバッとハイドに抱き締められた。
はぁ、とハイドの熱いため息が首筋にじんわりと伝わる。心臓の音がバクバクと聞こえるが自分の音なのか、彼の音なのかわからないほどにうるさく鼓動している。
「好き…とかはまだわからないけど、朝起きて、貴方に会いたいって思う日がたくさんあるの。」
「いいよ、それでいい。十分だよ。」
そうやって嬉しそうに笑ってから、私の左手のひらに指輪をのせる。シンプルなシルバーのリングにハイドの瞳の色が埋め込まれている。
「石が出ていると患者さんを傷つけてしまうでしょ?だから埋め込んだんだよ。」
よく見ると、宝石の下の方まで穴が貫通していて光を通して石の輝きが強くなっている。細かい細工もされていてとても綺麗な指輪だった。
「すごく綺麗、こんなに素敵な指輪は見た事がない…」
王妃だった頃にだってこんな指輪は見た事がない。
そもそも装飾品をもらった事がなかったのだから、それもそうか…
じっと大切そうに眺めているとおもむろにハイドが指輪を持ち上げる。名残惜しく見つめると石と同じ色の瞳と視線があった。
「そんな顔して…可愛い、左手を出して?」
「?はい」
おずおずと手を差し出すと薬指にその指輪を通してくれた。思わず手を目の前まで持ってきてじっと見つめてしまった。
「この指に指輪をするとね、愛が深まるんだって。教えてもらった。だから、俺の愛をオーラリアに誓うよ。」
「素敵…私もハイド…に指輪をプレゼントしたい。同じような物を作れる場所がある?」
「実は揃えて作ってあるんだ」
恥ずかしそうに青い箱を取り出して見せるハイド。蓋を開けると少し太めのデザインは同じだが、シルバーのリングに小さな赤い宝石が埋め込まれていた。
箱から指輪をとり、ハイドの指にはめる。
「綺麗な宝石。」
「どちらもダイヤモンドという宝石なんだ。すごく硬い石だから、いつまでも輝いてくれると思って。でもやっぱり、オーラリアの瞳の方が綺麗だ。」
「もうそんなに褒めなくてもいいのよ」
「褒めてないよ。事実を述べているだけだから」
「もう。でもありがとう、本当に…嬉しい」
「これで、オーラリアは俺のものだから。もう、王妃に戻ろうとかしないでね。」
「わかってる。だけど…どうにかしないと…」
「そうだな。まずは、明日のために体を休めて。申し訳ないけど、俺もこの部屋で休ませてもらうよ」
「うん…え?え!!??」
雰囲気に流されてつい、うんとうなづいてしまったがこの部屋にはベットは一つしかない。それも狭い一人用のベットだ。
オーラリアは、返事をして10秒としないうちに顔を真っ赤にした。
ふと、顔を上げて外を見ると騎士達が庭にテントを立てていた。20名ほどの騎士達が今回はついてきてくれたが、空いている病室が足りない為、騎士達は外で寝泊まりしてくれる事になった。
皆、一日忙しかったはずなのに嫌な顔をしたり、文句を言ったりしている様子がない。
笑顔で話し、時々病棟の窓に向かって手を振っている。
見れば、子供の患者が嬉しそうに手を振っている。
シークバレー領の穏やかで優しい雰囲気がそのまま感じられる。あの、トゲトゲとした暗い王宮に戻ると考えただけでゾッと寒気がした。
「でも、戻るにはこれを断らなきゃいけない」
そういうと、ハイドはポケットから小さな赤い箱を出した。パカっと開くと中には金色に輝く小さな宝石がついた指輪が入っていた。
「オーラリア・コットン子爵令嬢。私の婚約者になって欲しい。だからどうか、戻ることは考えないで欲しい。」
突然の求婚に驚き、目を見開いてしまう。ハイドも、顔を赤くして少しはにかんでいた。いつも輝いている金の瞳が、パッと星を散りばめたようにキラリと光った気がした。
何も言えずに固まっていると、スッと指輪を箱から取り出してこちらへ差し出す。
「俺は君を裏切らない。オーラリアと一緒にいたい。君が辛い時は1番に助けてあげたい。愛してるよ」
その言葉を聞くと、何故かボロボロと涙が溢れてきた。
こんな風に思ってもらえるのは、初めてかもしれない。そして、クランがここみを大切にするように私もそうして欲しいと思っていた。
その気持ちに気がついてくれたのはクランではなく、ハイドだった。
「私も貴方と一緒にいたい。」
そう口にした途端にガバッとハイドに抱き締められた。
はぁ、とハイドの熱いため息が首筋にじんわりと伝わる。心臓の音がバクバクと聞こえるが自分の音なのか、彼の音なのかわからないほどにうるさく鼓動している。
「好き…とかはまだわからないけど、朝起きて、貴方に会いたいって思う日がたくさんあるの。」
「いいよ、それでいい。十分だよ。」
そうやって嬉しそうに笑ってから、私の左手のひらに指輪をのせる。シンプルなシルバーのリングにハイドの瞳の色が埋め込まれている。
「石が出ていると患者さんを傷つけてしまうでしょ?だから埋め込んだんだよ。」
よく見ると、宝石の下の方まで穴が貫通していて光を通して石の輝きが強くなっている。細かい細工もされていてとても綺麗な指輪だった。
「すごく綺麗、こんなに素敵な指輪は見た事がない…」
王妃だった頃にだってこんな指輪は見た事がない。
そもそも装飾品をもらった事がなかったのだから、それもそうか…
じっと大切そうに眺めているとおもむろにハイドが指輪を持ち上げる。名残惜しく見つめると石と同じ色の瞳と視線があった。
「そんな顔して…可愛い、左手を出して?」
「?はい」
おずおずと手を差し出すと薬指にその指輪を通してくれた。思わず手を目の前まで持ってきてじっと見つめてしまった。
「この指に指輪をするとね、愛が深まるんだって。教えてもらった。だから、俺の愛をオーラリアに誓うよ。」
「素敵…私もハイド…に指輪をプレゼントしたい。同じような物を作れる場所がある?」
「実は揃えて作ってあるんだ」
恥ずかしそうに青い箱を取り出して見せるハイド。蓋を開けると少し太めのデザインは同じだが、シルバーのリングに小さな赤い宝石が埋め込まれていた。
箱から指輪をとり、ハイドの指にはめる。
「綺麗な宝石。」
「どちらもダイヤモンドという宝石なんだ。すごく硬い石だから、いつまでも輝いてくれると思って。でもやっぱり、オーラリアの瞳の方が綺麗だ。」
「もうそんなに褒めなくてもいいのよ」
「褒めてないよ。事実を述べているだけだから」
「もう。でもありがとう、本当に…嬉しい」
「これで、オーラリアは俺のものだから。もう、王妃に戻ろうとかしないでね。」
「わかってる。だけど…どうにかしないと…」
「そうだな。まずは、明日のために体を休めて。申し訳ないけど、俺もこの部屋で休ませてもらうよ」
「うん…え?え!!??」
雰囲気に流されてつい、うんとうなづいてしまったがこの部屋にはベットは一つしかない。それも狭い一人用のベットだ。
オーラリアは、返事をして10秒としないうちに顔を真っ赤にした。
61
お気に入りに追加
411
あなたにおすすめの小説

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

影の王宮
朱里 麗華(reika2854)
恋愛
王立学園の卒業式で公爵令嬢のシェリルは、王太子であり婚約者であるギデオンに婚約破棄を言い渡される。
ギデオンには学園で知り合った恋人の男爵令嬢ミーシャがいるのだ。
幼い頃からギデオンを想っていたシェリルだったが、ギデオンの覚悟を知って身を引こうと考える。
両親の愛情を受けられずに育ったギデオンは、人一倍愛情を求めているのだ。
だけどミーシャはシェリルが思っていたような人物ではないようで……。
タグにも入れましたが、主人公カップル(本当に主人公かも怪しい)は元サヤです。
すっごく暗い話になりそうなので、プロローグに救いを入れました。
一章からの話でなぜそうなったのか過程を書いていきます。
メインになるのは親世代かと。
※子どもに関するセンシティブな内容が含まれます。
苦手な方はご自衛ください。
※タイトルが途中で変わる可能性があります<(_ _)>
公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜
月
ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。
けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。
ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。
大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。
子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。
素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。
それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。
夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。
ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。
自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。
フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。
夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。
新たに出会う、友人たち。
再会した、大切な人。
そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。
フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。
★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。
※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。
※一話あたり二千文字前後となります。

大公閣下!こちらの双子様、耳と尾がはえておりますが!?
まめまめ
恋愛
魔法が使えない無能ハズレ令嬢オリヴィアは、実父にも見限られ、皇子との縁談も破談になり、仕方なく北の大公家へ家庭教師として働きに出る。
大公邸で会ったのは、可愛すぎる4歳の双子の兄妹!
「オリヴィアさまっ、いっしょにねよ?」
(可愛すぎるけど…なぜ椅子がシャンデリアに引っかかってるんですか!?カーテンもクロスもぼろぼろ…ああ!スープのお皿は投げないでください!!)
双子様の父親、大公閣下に相談しても
「子どもたちのことは貴女に任せます。」
と冷たい瞳で吐き捨てられるだけ。
しかもこちらの双子様、頭とおしりに、もふもふが…!?
どん底だけどめげないオリヴィアが、心を閉ざした大公閣下と可愛い謎の双子とどうにかこうにか家族になっていく恋愛要素多めのホームドラマ(?)です。

本日より他人として生きさせていただきます
ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる