冷遇された王妃は自由を望む

空橋彩

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30.オーラリアは驚く

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「戻ったら助けられるかしら?」

ふと、顔を上げて外を見ると騎士達が庭にテントを立てていた。20名ほどの騎士達が今回はついてきてくれたが、空いている病室が足りない為、騎士達は外で寝泊まりしてくれる事になった。
皆、一日忙しかったはずなのに嫌な顔をしたり、文句を言ったりしている様子がない。
笑顔で話し、時々病棟の窓に向かって手を振っている。
見れば、子供の患者が嬉しそうに手を振っている。


シークバレー領の穏やかで優しい雰囲気がそのまま感じられる。あの、トゲトゲとした暗い王宮に戻ると考えただけでゾッと寒気がした。


「でも、戻るにはこれを断らなきゃいけない」

そういうと、ハイドはポケットから小さな赤い箱を出した。パカっと開くと中には金色に輝く小さな宝石がついた指輪が入っていた。

「オーラリア・コットン子爵令嬢。私の婚約者になって欲しい。だからどうか、ことは考えないで欲しい。」


突然の求婚に驚き、目を見開いてしまう。ハイドも、顔を赤くして少しはにかんでいた。いつも輝いている金の瞳が、パッと星を散りばめたようにキラリと光った気がした。
何も言えずに固まっていると、スッと指輪を箱から取り出してこちらへ差し出す。


「俺は君を裏切らない。オーラリアと一緒にいたい。君が辛い時は1番に助けてあげたい。愛してるよ」


その言葉を聞くと、何故かボロボロと涙が溢れてきた。
こんな風に思ってもらえるのは、初めてかもしれない。そして、クランがここみを大切にするように私もそうして甘やかして欲しいと思っていた。

その気持ちに気がついてくれたのはクランではなく、ハイドだった。

「私も貴方と一緒にいたい。」

そう口にした途端にガバッとハイドに抱き締められた。
はぁ、とハイドの熱いため息が首筋にじんわりと伝わる。心臓の音がバクバクと聞こえるが自分の音なのか、彼の音なのかわからないほどにうるさく鼓動している。

「好き…とかはまだわからないけど、朝起きて、貴方に会いたいって思う日がたくさんあるの。」

「いいよ、それでいい。十分だよ。」

そうやって嬉しそうに笑ってから、私の左手のひらに指輪をのせる。シンプルなシルバーのリングにハイドの瞳の色が埋め込まれている。

「石が出ていると患者さんを傷つけてしまうでしょ?だから埋め込んだんだよ。」

よく見ると、宝石の下の方まで穴が貫通していて光を通して石の輝きが強くなっている。細かい細工もされていてとても綺麗な指輪だった。

「すごく綺麗、こんなに素敵な指輪は見た事がない…」

王妃だった頃にだってこんな指輪は見た事がない。
そもそも装飾品をもらった事がなかったのだから、それもそうか…
じっと大切そうに眺めているとおもむろにハイドが指輪を持ち上げる。名残惜しく見つめると石と同じ色の瞳と視線があった。

「そんな顔して…可愛い、左手を出して?」

「?はい」

おずおずと手を差し出すと薬指にその指輪を通してくれた。思わず手を目の前まで持ってきてじっと見つめてしまった。

「この指に指輪をするとね、愛が深まるんだって。教えてもらった。だから、俺の愛をオーラリアに誓うよ。」


「素敵…私もハイド…に指輪をプレゼントしたい。同じような物を作れる場所がある?」


「実は揃えて作ってあるんだ」


恥ずかしそうに青い箱を取り出して見せるハイド。蓋を開けると少し太めのデザインは同じだが、シルバーのリングに小さな赤い宝石が埋め込まれていた。

箱から指輪をとり、ハイドの指にはめる。


「綺麗な宝石。」


「どちらもダイヤモンドという宝石なんだ。すごく硬い石だから、いつまでも輝いてくれると思って。でもやっぱり、オーラリアの瞳の方が綺麗だ。」


「もうそんなに褒めなくてもいいのよ」


「褒めてないよ。事実を述べているだけだから」


「もう。でもありがとう、本当に…嬉しい」


「これで、オーラリアは俺のものだから。もう、王妃に戻ろうとかしないでね。」


「わかってる。だけど…どうにかしないと…」


「そうだな。まずは、明日のために体を休めて。申し訳ないけど、俺もこの部屋で休ませてもらうよ」


「うん…え?え!!??」


雰囲気に流されてつい、うんとうなづいてしまったがこの部屋にはベットは一つしかない。それも狭い一人用のベットだ。
オーラリアは、返事をして10秒としないうちに顔を真っ赤にした。
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