20 / 61
19.オーラリアは怒られる
しおりを挟む
一日中砦の方ですごし、ハイカロリーなご飯やおやつを堪能して来たオーラリアだったが、現在、ディナーの時間に慌てて帰宅したハイドにじっと見つめられ小さくなっていた。
「一人で訓練所に行ったって?」
「えぇ…あ、はい。あの…怒ってい…ますか?」
「怒ってる。」
「あの…抱きついたりはしていません。」
ハイドはグッと眉間に皺を寄せて腕を前で組んだ。
いつもニコニコしているハイドがこんなに怒っているのを初めて見たオーラリアは大変なことをしてしまったととても落ち込んだ。
また失敗してしまったのか、やはり自分は何の役にも立たないのかと、気を落としてしまいそうになった。
「砦を守る騎士たちを、大切にしてくれてありがとう。でも、オーラリアが危険な目に遭ってしまったら…俺は立ち直れないんだ。行きたい所には行っていい、やりたい事もやっていい、頼むから、一言声をかけて欲しい。一人にならないで欲しい。」
「騎士の方々がいるから大丈夫かと…ふらふらといなくなってすみませ…」
「よく一人で隔離病院に行っていたよね?“もし、病に倒れて帰って来なくなったら?”と怖かった。どんなに危険な場所でも薬草の為なら突っ走っていってしまうよね?“もし、怪我をしていたら?”と心配だった。俺のいない場所で傷ついたり、消えてしまったりしないで欲しい。本当はずっと離れないでオーラリアのそばにいたいんだ。」
ほとんど、プロポーズのようなその言葉にオーラリアはつい、頬を赤く染める。
勘違いしてはいけない、こんな醜い、何の役にも立たない自分を好きになる人なんていないのだ、あれだけ求められたのにあっさりと捨てられた自分には、誰かに愛される要素などないのだと、色めきだった心に深く言い聞かせる。
何とか火照る頬を落ち着かせて、ふう、と息を吐く。
黙って後ろに控えていたユウリがハイドにこそっと耳打ちをする。
先程までの気むずかし表情が一瞬青くなりすぐに困ったような、照れているような顔になった。
そうかと思うと、慌てて声をかけて来た。
「いや、変なことを言ってごめん。忘れて欲しい…」
そうだ、やはり彼にとっては“変なこと”なのだ。
自分のときめく胸に“やっぱりね”と喝を入れてニコッと笑って見せた。
「では、早速ですが明日は養蜂場を見に行きたいので連れていってくれますか?」
そうお願いすれば、シアとユウリがにっこりと微笑み「わかりました」と納得してくれたようだ。
食事が済むと、ハイドは小さな箱をオーラリアの目の前に置いた。中には蜂蜜色の宝石のピアスが入っていた。
ブルーの金属で花の形に細工された台座がとても珍しく、可愛かった。
「街の視察に行ったらそのピアスがあって…オーラリアに似合うんじゃないかと思ったら買っていた。」
「とても綺麗な色!ハイド様の瞳と髪のようですね。いただいていいのなら、とても嬉しい…」
オーラリアが顔を上げると、ハイドは先ほど食べたイチゴよりも顔を真っ赤にして驚いていた。
つられてオーラリアも顔を赤く染めてしまった。
それから、一言二言言葉を交わしたが両者共に何を話したのかは覚えておらず、大人しく各々の部屋へと退散したのだった。
傷がついても嫌だなと思い、もらったばかりの可愛らしい箱を机の中にしまおうとした所、シアが部屋へやって来て、ピアスをあっという間にオーラリアの耳へと装着させた。
そういえば、装飾品をプレゼントされるなんて、初めてだと。人知れず喜びながら鏡に何度も耳元を映して喜んでしまった。
「一人で訓練所に行ったって?」
「えぇ…あ、はい。あの…怒ってい…ますか?」
「怒ってる。」
「あの…抱きついたりはしていません。」
ハイドはグッと眉間に皺を寄せて腕を前で組んだ。
いつもニコニコしているハイドがこんなに怒っているのを初めて見たオーラリアは大変なことをしてしまったととても落ち込んだ。
また失敗してしまったのか、やはり自分は何の役にも立たないのかと、気を落としてしまいそうになった。
「砦を守る騎士たちを、大切にしてくれてありがとう。でも、オーラリアが危険な目に遭ってしまったら…俺は立ち直れないんだ。行きたい所には行っていい、やりたい事もやっていい、頼むから、一言声をかけて欲しい。一人にならないで欲しい。」
「騎士の方々がいるから大丈夫かと…ふらふらといなくなってすみませ…」
「よく一人で隔離病院に行っていたよね?“もし、病に倒れて帰って来なくなったら?”と怖かった。どんなに危険な場所でも薬草の為なら突っ走っていってしまうよね?“もし、怪我をしていたら?”と心配だった。俺のいない場所で傷ついたり、消えてしまったりしないで欲しい。本当はずっと離れないでオーラリアのそばにいたいんだ。」
ほとんど、プロポーズのようなその言葉にオーラリアはつい、頬を赤く染める。
勘違いしてはいけない、こんな醜い、何の役にも立たない自分を好きになる人なんていないのだ、あれだけ求められたのにあっさりと捨てられた自分には、誰かに愛される要素などないのだと、色めきだった心に深く言い聞かせる。
何とか火照る頬を落ち着かせて、ふう、と息を吐く。
黙って後ろに控えていたユウリがハイドにこそっと耳打ちをする。
先程までの気むずかし表情が一瞬青くなりすぐに困ったような、照れているような顔になった。
そうかと思うと、慌てて声をかけて来た。
「いや、変なことを言ってごめん。忘れて欲しい…」
そうだ、やはり彼にとっては“変なこと”なのだ。
自分のときめく胸に“やっぱりね”と喝を入れてニコッと笑って見せた。
「では、早速ですが明日は養蜂場を見に行きたいので連れていってくれますか?」
そうお願いすれば、シアとユウリがにっこりと微笑み「わかりました」と納得してくれたようだ。
食事が済むと、ハイドは小さな箱をオーラリアの目の前に置いた。中には蜂蜜色の宝石のピアスが入っていた。
ブルーの金属で花の形に細工された台座がとても珍しく、可愛かった。
「街の視察に行ったらそのピアスがあって…オーラリアに似合うんじゃないかと思ったら買っていた。」
「とても綺麗な色!ハイド様の瞳と髪のようですね。いただいていいのなら、とても嬉しい…」
オーラリアが顔を上げると、ハイドは先ほど食べたイチゴよりも顔を真っ赤にして驚いていた。
つられてオーラリアも顔を赤く染めてしまった。
それから、一言二言言葉を交わしたが両者共に何を話したのかは覚えておらず、大人しく各々の部屋へと退散したのだった。
傷がついても嫌だなと思い、もらったばかりの可愛らしい箱を机の中にしまおうとした所、シアが部屋へやって来て、ピアスをあっという間にオーラリアの耳へと装着させた。
そういえば、装飾品をプレゼントされるなんて、初めてだと。人知れず喜びながら鏡に何度も耳元を映して喜んでしまった。
62
お気に入りに追加
413
あなたにおすすめの小説

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話
彩伊
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。
しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。
彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。
............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。
招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。
送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。
そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。
『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』
一日一話
14話完結

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

大公閣下!こちらの双子様、耳と尾がはえておりますが!?
まめまめ
恋愛
魔法が使えない無能ハズレ令嬢オリヴィアは、実父にも見限られ、皇子との縁談も破談になり、仕方なく北の大公家へ家庭教師として働きに出る。
大公邸で会ったのは、可愛すぎる4歳の双子の兄妹!
「オリヴィアさまっ、いっしょにねよ?」
(可愛すぎるけど…なぜ椅子がシャンデリアに引っかかってるんですか!?カーテンもクロスもぼろぼろ…ああ!スープのお皿は投げないでください!!)
双子様の父親、大公閣下に相談しても
「子どもたちのことは貴女に任せます。」
と冷たい瞳で吐き捨てられるだけ。
しかもこちらの双子様、頭とおしりに、もふもふが…!?
どん底だけどめげないオリヴィアが、心を閉ざした大公閣下と可愛い謎の双子とどうにかこうにか家族になっていく恋愛要素多めのホームドラマ(?)です。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました
山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。
※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。
コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。
ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。
トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。
クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。
シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。
ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。
シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。
〈あらすじ〉
コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。
ジレジレ、すれ違いラブストーリー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる