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16.オーラリアはぼ…の先を知る
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昼食が済むとまた強制的に部屋に戻されてしまった。
しばらくは窓辺に座って刺繍をしていたが、どうも時間が経つのが遅く、ソワソワとしてしまう。
チラッと外を見ると、見慣れた顔がバタバタと忙しそうに走っていた。
「あの!リリー?」
はしたないとは思ったが、つい、大きな声で窓から身を乗り出して声をかけてしまった。
彼女は私のために泣いてくれていたメイドだ。
キャサリンの娘のリリー。
何と三つ子なのだそうだ。みな、顔は似ているが、少しずつ髪色や瞳の色が違う。リリーは明るい茶色に瞳は美味しそうな濃い茶色だ。
声を掛けてすぐに手に持っていたシーツを地面にどさっと落とす。キョロキョロと辺りを慌ただしく見渡している。
「こっちよ!上!オーラリアです!」
手を振って呼ぶと、愛らしい丸い瞳をキラキラと光らせてこちらを見つめてくれた。
「おーらりあさまぁー!!!!」
うわあああん!!と嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねながらこちらに手を振ってくれた。
「どこにいくの?私も連れて行って?」
「鬼軍曹から許可が出ればもちろんご一緒に!いきましょうー!!!」
鬼軍曹が誰のことかわからず、困っていると、後ろからユウリがトントン、と肩を叩いてきた。
「少しくらいなら外出しても鬼軍曹も許してくれると思いますよ」
「そうですか?で、では行ってもいいですか?行きたいです」
ユウリはクスッと笑って手を差し出してくれた。そっと掴むと優しくエスコートしてくれた。最後に私を嫌そうにエスコートしていたクランの顔が思い浮かんで胸がズキンと痛んだ。
1階に降りるとリリーが嬉しそうに待っていてくれた。
「これから、私達家族が経営して行くことになる宿屋へ行きます、なかなかにぼ…いえ、あの…お掃除が行き届いていなくてオーラリア様、驚くかもしれませんが…」
確か、シアもぼ…と口こぼしていたけれど。
その続きに来る言葉を想像しながら、歩いてついて行くことにした。
館のすぐ近く、歩いて5分くらいの所に木作りの趣のある洋館があった。
中からはコンコンコンと規則正しく木を打つ音や、バサバサと布を広げたりする音が聞こえる。
「ボロいでしょう?」
ユウリがクスクスと笑いながら私を見つめている。
「え?いあ、いえ!!趣があって素敵ですよ!」
ついつい、その姿に見惚れてしまい、ボロいを肯定しそうになってしまった。何とか取り繕ったがきっとユウリにはバレているだろうと、オーラリアは少し落ち込んだ。
「オーラリア様!お元気になられたんですね!」
「キャシー!会いたかったわ!あ、会いたかったです!私のことはオーラリアと、お呼びください。私はもう貴女より身分も低くて本当なら話しかけられないくらいの…」
「いいえ!オーラリア様、私達は貴族籍を抜けてますから、平民です。だから、オーラリア様ですよ。」
宿屋から慌てて飛び出して来たのはキャサリンだ。驚いたことに爵位を返上したと言う。オーラリアは自分のせいでこの一家を不幸にしてしまったのではないかと、一気に表情をなくした。
「あんな名前だけの爵位のせいで税も高ければ王に逆らえもしない。ただの足枷ですよ。我が家は皆働き者でね。平民の方が稼げるんですよ。我々の兼ねてからの希望でした。」
キャサリンの後ろから、ヨーダリー元料理長が顔を出した。ここみが現れるまでオーラリアの食事を作っていたのはこのヨーダリーだった。
手には金槌を持って鍵をじゃらじゃらと抱えている。
「この建物、素晴らしいでしょ?オーラリア様。しっかりした作りで、掃除さえすれば立派な宿屋になりますよ!主人の料理に私たちのもてなし、人気が出るに違いありません!」
キャサリンも、とても楽しそうに笑っている。王宮にいた時はいつも難しそうな、心配そうな顔をしていた。
オーラリアは、その姿を見て少しだけホッとしてしまった。
2人に導かれて中に入ってみれば、本当に素敵な建物だった。濃いオーク色の木造りで細かい細工の施された柱や所々に使われている可愛らしいタイル。
大きな暖炉から微かに香る薪の香りが入った瞬間にホッとさせる。
オリバー一家と数人の若い男たちがせっせと細かな修繕や掃除をしている。
どうやら近日中には宿屋として動き出せるそうだ。
それだけではなく、1階には食堂もできるらしい。
そちらはまだ準備に時間がかかるのだそうだ。
帰り際に、ヨーダリーから揚げドーナツをたくさんもらった。砂糖ではなく、シークバレーの特産品のハチミツに、シア、ユウリの好きなとうふーというもので作ったドーナツなんだそうだ。
「いっぱい食べて、太れよ!」
と、ヨーダリーが励ますと、後ろからキャサリンが鬼の形相で叱りつけていた。
オーラリアは集中的な激務や、グリーフ(悲嘆)を知らずに溜め込んだことによる心的外傷による摂食障害、睡眠障害により、かなり痩せ細っていた。158センチほどの身長に対しておそらく30キロほどしか体重がない。
肌質も髪質も悪く、頬は痩せこけている。
本人は気がついていなかったが、周りはしばらく前から彼女が死んでしまうのではないか、と気を揉んでいた。
そんな経緯もあって今回一致団結の後、集団で脱出すると言う大胆な手口に出たわけであった。
2日間十分に眠ったオーラリアの目の下からは早速クマが消え始めている。
その姿を見て、ホッと胸を撫で下ろしている者がおおくいた。
しばらくは窓辺に座って刺繍をしていたが、どうも時間が経つのが遅く、ソワソワとしてしまう。
チラッと外を見ると、見慣れた顔がバタバタと忙しそうに走っていた。
「あの!リリー?」
はしたないとは思ったが、つい、大きな声で窓から身を乗り出して声をかけてしまった。
彼女は私のために泣いてくれていたメイドだ。
キャサリンの娘のリリー。
何と三つ子なのだそうだ。みな、顔は似ているが、少しずつ髪色や瞳の色が違う。リリーは明るい茶色に瞳は美味しそうな濃い茶色だ。
声を掛けてすぐに手に持っていたシーツを地面にどさっと落とす。キョロキョロと辺りを慌ただしく見渡している。
「こっちよ!上!オーラリアです!」
手を振って呼ぶと、愛らしい丸い瞳をキラキラと光らせてこちらを見つめてくれた。
「おーらりあさまぁー!!!!」
うわあああん!!と嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねながらこちらに手を振ってくれた。
「どこにいくの?私も連れて行って?」
「鬼軍曹から許可が出ればもちろんご一緒に!いきましょうー!!!」
鬼軍曹が誰のことかわからず、困っていると、後ろからユウリがトントン、と肩を叩いてきた。
「少しくらいなら外出しても鬼軍曹も許してくれると思いますよ」
「そうですか?で、では行ってもいいですか?行きたいです」
ユウリはクスッと笑って手を差し出してくれた。そっと掴むと優しくエスコートしてくれた。最後に私を嫌そうにエスコートしていたクランの顔が思い浮かんで胸がズキンと痛んだ。
1階に降りるとリリーが嬉しそうに待っていてくれた。
「これから、私達家族が経営して行くことになる宿屋へ行きます、なかなかにぼ…いえ、あの…お掃除が行き届いていなくてオーラリア様、驚くかもしれませんが…」
確か、シアもぼ…と口こぼしていたけれど。
その続きに来る言葉を想像しながら、歩いてついて行くことにした。
館のすぐ近く、歩いて5分くらいの所に木作りの趣のある洋館があった。
中からはコンコンコンと規則正しく木を打つ音や、バサバサと布を広げたりする音が聞こえる。
「ボロいでしょう?」
ユウリがクスクスと笑いながら私を見つめている。
「え?いあ、いえ!!趣があって素敵ですよ!」
ついつい、その姿に見惚れてしまい、ボロいを肯定しそうになってしまった。何とか取り繕ったがきっとユウリにはバレているだろうと、オーラリアは少し落ち込んだ。
「オーラリア様!お元気になられたんですね!」
「キャシー!会いたかったわ!あ、会いたかったです!私のことはオーラリアと、お呼びください。私はもう貴女より身分も低くて本当なら話しかけられないくらいの…」
「いいえ!オーラリア様、私達は貴族籍を抜けてますから、平民です。だから、オーラリア様ですよ。」
宿屋から慌てて飛び出して来たのはキャサリンだ。驚いたことに爵位を返上したと言う。オーラリアは自分のせいでこの一家を不幸にしてしまったのではないかと、一気に表情をなくした。
「あんな名前だけの爵位のせいで税も高ければ王に逆らえもしない。ただの足枷ですよ。我が家は皆働き者でね。平民の方が稼げるんですよ。我々の兼ねてからの希望でした。」
キャサリンの後ろから、ヨーダリー元料理長が顔を出した。ここみが現れるまでオーラリアの食事を作っていたのはこのヨーダリーだった。
手には金槌を持って鍵をじゃらじゃらと抱えている。
「この建物、素晴らしいでしょ?オーラリア様。しっかりした作りで、掃除さえすれば立派な宿屋になりますよ!主人の料理に私たちのもてなし、人気が出るに違いありません!」
キャサリンも、とても楽しそうに笑っている。王宮にいた時はいつも難しそうな、心配そうな顔をしていた。
オーラリアは、その姿を見て少しだけホッとしてしまった。
2人に導かれて中に入ってみれば、本当に素敵な建物だった。濃いオーク色の木造りで細かい細工の施された柱や所々に使われている可愛らしいタイル。
大きな暖炉から微かに香る薪の香りが入った瞬間にホッとさせる。
オリバー一家と数人の若い男たちがせっせと細かな修繕や掃除をしている。
どうやら近日中には宿屋として動き出せるそうだ。
それだけではなく、1階には食堂もできるらしい。
そちらはまだ準備に時間がかかるのだそうだ。
帰り際に、ヨーダリーから揚げドーナツをたくさんもらった。砂糖ではなく、シークバレーの特産品のハチミツに、シア、ユウリの好きなとうふーというもので作ったドーナツなんだそうだ。
「いっぱい食べて、太れよ!」
と、ヨーダリーが励ますと、後ろからキャサリンが鬼の形相で叱りつけていた。
オーラリアは集中的な激務や、グリーフ(悲嘆)を知らずに溜め込んだことによる心的外傷による摂食障害、睡眠障害により、かなり痩せ細っていた。158センチほどの身長に対しておそらく30キロほどしか体重がない。
肌質も髪質も悪く、頬は痩せこけている。
本人は気がついていなかったが、周りはしばらく前から彼女が死んでしまうのではないか、と気を揉んでいた。
そんな経緯もあって今回一致団結の後、集団で脱出すると言う大胆な手口に出たわけであった。
2日間十分に眠ったオーラリアの目の下からは早速クマが消え始めている。
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