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13.王妃は目覚める
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覚悟を決めて入浴する事にしたが、モコモコの優しい泡に包まれて全身を綺麗にしてもらい、ちょうど良い温度のお湯に浸かって髪を蜂蜜のような甘い香りのクリームでパックしながら頭皮をマッサージしてもらっているとき、ハチミツが取れるなら、蜜蝋が作れるかも…
なんて考えていたところまでは覚えているが、それから記憶がパッタリとなくなった。
フト目を覚ましたら時には、まだ朝日が登りきらない鮮やかな薄いオレンジ色の空が広がっている頃だった。
見覚えのない天井に、ふかふかのベット、優しい花の香り。
もう少し景色が見たくて、そっと起き上がり、窓を開ける。行き場を探していた少し冷たい、爽やかな風が一気に室内に入ってきた。
髪が揺れるたびに、甘い匂いがする。
今まではあまり感じなかったが、とてもお腹が空いてきた。
どこか遠くでパンが焼けるような美味しそうな匂いがした。下から視線を感じて、そちらを見ると、シアが驚いた顔でこちらを見つめていた。
「オーラリア様!!起きられましたか!」
そういうと慌てて館内に入ったかと思うと、一瞬ほどで入り口のドアがノックされた。
どうぞ、と入室を促すと真っ赤な顔をしたシアが立っていた。
「やっとご挨拶ができます。シア・アサヒナです。オーラリア様は2日間寝たきりでした。よほど疲れていたのでしょう。今直ぐに食事の準備をします。」
「アサヒナ?ユウリさんと一緒ね。オーラリア・コットンです。よろしくお願いします」
「ユウリはわたくしの姉です。伝えたいことは沢山ありますがまずは、食事を!!」
そういうと、パタパタと慌ててキッチンへ向かった。
しばらくすると、聞き慣れた足音が響いてきた。
鎧の音がしないが、この足音は
「オーラリア!起きたんだね!よかった」
「シ…ハイド様、お世話になりきりですみませ…」
最後まで言えなかったのは、ハイドがシーッと私の唇を人差し指で軽く抑えたからだ。
「3年。君は3年ほぼ寝てない。それはこの国のために。愚かな甥っ子のために。まずはゆっくり休んで欲しい。」
ガリガリで、カサカサ、ささくれだった惨めな手を優しくとられる。ハイドの手のひらにはいくつもの硬いタコがある。
ぎゅっと握られて気になり、そっと指でなぞってしまった。
「守りたい人を守れるように、剣の練習を。多少は強くなったよ。」
「ハイド様にはずっと、守ってもらってました。とても強いと聞いてます。」
手のひらから目線を上げてハイドの瞳を見つめる。
王妃の頃よりも近い距離にある金色の瞳のなかには、星が散りばめられたように細かい光が輝いていた。
「お館様。朝からハレンチはだめですわ。」
花柄の陶器の板が目の前にさっと差し入れられる。
向こう側では「ゔっ」と声が漏れているのを聞くとお盆が直撃しているのだろう。
「ちがう!そんなことしてない!!」
と小さな声で抵抗する声が聞こえる。クスッとつい、笑ってしまう。その瞬間に目の前からお盆が消えた。足元の毛足の長い絨毯のおかげで割れなくて済んだようだ。
足元に視線を取られているとグキッと無理やり顔を横に向けさせられる。
眼前は絶景。真っ黒なシルクのような滝に、吸い込まれそうな漆黒の瞳。バラのような香りに…
「わっ…あ、シアさん!!!」
「あぁ、少しだけ戻った。朧姫、さすが姉。ほんの少し戻った。さあ、食事を。沢山食べて戻さないと。」
華奢だと思っていたシアは私を軽々と担ぎ上げると窓側にある椅子に座らせる。目の前にはトロトロに煮込まれたパンがゆが湯気をたてていた。トロッとしたハチミツがタップリかかっていてとても美味しそうだ。
輝く白いご馳走様を前にして胸の前で手を合わせて祈りを捧げてしまった。
「いただきます。」
ひとさじすくって口の中に入れると鼻からハチミツの甘く、優しい香りがぬける。
「ラベンダー?」
「よくわかったね。このハチミツはラベンダーの蜜を集めた蜂たちの蜜だよ。」
大好きなラベンダーの香りに久しぶりに食べた蜂蜜の味に、感動してつい、涙が溢れてしまった。
暖かく優しい。私のためだけのメニュー。
書き込むだけの王宮での食事は正直味がしなかった。
あの2人の為に作られた食事は冷めていた。温め直されることはほとんどなく、いつも固くて味がしない何かだった。
頬を柔らかい布がさっと撫でる。
「お館様がもっと早く連れてくるはずだったのに。こんなに痩せて。許せない。あいつら…薄汚い女!!!」
ぎっと音が聞こえて来そうなほどに鋭い目つきでシアはハイドを睨みつけた。
「汚いって私のことではなかったんですね…」
つい、寝込む前の言葉を思い出して呟いた。その瞬間、シアが鬼のような顔をしてこちらをみる。
「あなた様は美しい!内側から溢れる光のような美しさ、その、赤いルビーのような瞳!!月の光のような輝く髪!!!」
「こわい。こわいから。おーい!ユウリ!!連れてって」
「まだおわってませ…!!!!!!」
失礼しました。とクールにユウリがシアを引きずって部屋を出て行く。残されたハイドは優しく微笑みながらコーヒーを飲んでいる。
なんて考えていたところまでは覚えているが、それから記憶がパッタリとなくなった。
フト目を覚ましたら時には、まだ朝日が登りきらない鮮やかな薄いオレンジ色の空が広がっている頃だった。
見覚えのない天井に、ふかふかのベット、優しい花の香り。
もう少し景色が見たくて、そっと起き上がり、窓を開ける。行き場を探していた少し冷たい、爽やかな風が一気に室内に入ってきた。
髪が揺れるたびに、甘い匂いがする。
今まではあまり感じなかったが、とてもお腹が空いてきた。
どこか遠くでパンが焼けるような美味しそうな匂いがした。下から視線を感じて、そちらを見ると、シアが驚いた顔でこちらを見つめていた。
「オーラリア様!!起きられましたか!」
そういうと慌てて館内に入ったかと思うと、一瞬ほどで入り口のドアがノックされた。
どうぞ、と入室を促すと真っ赤な顔をしたシアが立っていた。
「やっとご挨拶ができます。シア・アサヒナです。オーラリア様は2日間寝たきりでした。よほど疲れていたのでしょう。今直ぐに食事の準備をします。」
「アサヒナ?ユウリさんと一緒ね。オーラリア・コットンです。よろしくお願いします」
「ユウリはわたくしの姉です。伝えたいことは沢山ありますがまずは、食事を!!」
そういうと、パタパタと慌ててキッチンへ向かった。
しばらくすると、聞き慣れた足音が響いてきた。
鎧の音がしないが、この足音は
「オーラリア!起きたんだね!よかった」
「シ…ハイド様、お世話になりきりですみませ…」
最後まで言えなかったのは、ハイドがシーッと私の唇を人差し指で軽く抑えたからだ。
「3年。君は3年ほぼ寝てない。それはこの国のために。愚かな甥っ子のために。まずはゆっくり休んで欲しい。」
ガリガリで、カサカサ、ささくれだった惨めな手を優しくとられる。ハイドの手のひらにはいくつもの硬いタコがある。
ぎゅっと握られて気になり、そっと指でなぞってしまった。
「守りたい人を守れるように、剣の練習を。多少は強くなったよ。」
「ハイド様にはずっと、守ってもらってました。とても強いと聞いてます。」
手のひらから目線を上げてハイドの瞳を見つめる。
王妃の頃よりも近い距離にある金色の瞳のなかには、星が散りばめられたように細かい光が輝いていた。
「お館様。朝からハレンチはだめですわ。」
花柄の陶器の板が目の前にさっと差し入れられる。
向こう側では「ゔっ」と声が漏れているのを聞くとお盆が直撃しているのだろう。
「ちがう!そんなことしてない!!」
と小さな声で抵抗する声が聞こえる。クスッとつい、笑ってしまう。その瞬間に目の前からお盆が消えた。足元の毛足の長い絨毯のおかげで割れなくて済んだようだ。
足元に視線を取られているとグキッと無理やり顔を横に向けさせられる。
眼前は絶景。真っ黒なシルクのような滝に、吸い込まれそうな漆黒の瞳。バラのような香りに…
「わっ…あ、シアさん!!!」
「あぁ、少しだけ戻った。朧姫、さすが姉。ほんの少し戻った。さあ、食事を。沢山食べて戻さないと。」
華奢だと思っていたシアは私を軽々と担ぎ上げると窓側にある椅子に座らせる。目の前にはトロトロに煮込まれたパンがゆが湯気をたてていた。トロッとしたハチミツがタップリかかっていてとても美味しそうだ。
輝く白いご馳走様を前にして胸の前で手を合わせて祈りを捧げてしまった。
「いただきます。」
ひとさじすくって口の中に入れると鼻からハチミツの甘く、優しい香りがぬける。
「ラベンダー?」
「よくわかったね。このハチミツはラベンダーの蜜を集めた蜂たちの蜜だよ。」
大好きなラベンダーの香りに久しぶりに食べた蜂蜜の味に、感動してつい、涙が溢れてしまった。
暖かく優しい。私のためだけのメニュー。
書き込むだけの王宮での食事は正直味がしなかった。
あの2人の為に作られた食事は冷めていた。温め直されることはほとんどなく、いつも固くて味がしない何かだった。
頬を柔らかい布がさっと撫でる。
「お館様がもっと早く連れてくるはずだったのに。こんなに痩せて。許せない。あいつら…薄汚い女!!!」
ぎっと音が聞こえて来そうなほどに鋭い目つきでシアはハイドを睨みつけた。
「汚いって私のことではなかったんですね…」
つい、寝込む前の言葉を思い出して呟いた。その瞬間、シアが鬼のような顔をしてこちらをみる。
「あなた様は美しい!内側から溢れる光のような美しさ、その、赤いルビーのような瞳!!月の光のような輝く髪!!!」
「こわい。こわいから。おーい!ユウリ!!連れてって」
「まだおわってませ…!!!!!!」
失礼しました。とクールにユウリがシアを引きずって部屋を出て行く。残されたハイドは優しく微笑みながらコーヒーを飲んでいる。
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