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12.王妃はあたふたする
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「ゆっくり休んで欲しいところだけど、それぞれが暮らす場所へと案内する。シア!」
シア、と呼ばれて現れたのは背中までまっすぐに伸びた艶のある黒髪の綺麗な女性だった。
横顔が恐ろしく美しい。今まで出会った中で一番の美しさだ。
「お呼びですか?」
「ああ、話していた宿屋の管理をしてくれるオリバー伯爵一家だ。案内をしてくれるか?」
「あのぼ…はい。仰せのままに。」
ぼ?の続きが気になりジーッとシアを見つめていると突然バチっと目が合った。横から見ていたらくろいとおもっていた瞳は光が入るとわずかに茶色い。
「こちらの方は?」
「あ…あぁ、オーラリア・コットン子爵令嬢だ。病院を管理してくれるコットン子爵の御息女だ。」
「朧姫?」
「そうだ。いいから、はやくオリバー一家を…」
「いやです。それはユウリに頼んでください。わたくしはオーラリア様をご案内いたします。」
そういうと、間髪入れずに私の手を掴みシアは走り出した。足の長さが違うのか、同じように走れず転がるように足を動かす。
「こら!!まてシア!!!」
後ろからハイドが手を伸ばしたが間に合わず、声だけが飛んできた。しかし、直ぐにシアは足を止めた。
突然歩みを止められ、私は急には止まれず、ドンとシアの背中に顔面をぶつけてしまった。
「ごめんなさい!!」と声をかけたがこちらを振り向くようすはなく、『チッ』と小さく舌打ちをしている。
「シア。その仕事は僕がする。手を離して、お館様のところへもどれ。」
シアの向こう側から優しいアルトの声が響く。
「嫌だね!みて!この人!こんなに痩せ細って!肌もこんなに…汚い!こんなの許さない!!わたくしが今から極上の女にして見せるわ!」
「シア」
汚い、許さない、という強い言葉に密かに胸を痛めていると、先ほどの優しい声が、少し低くした声で凄んだ。
気になってチラリとシアの背中の横から顔を覗かせるとシアの髪の毛をバッサリと短く切っただけの同じ顔が立っていた。
少し、シアの方が線が細くキレがある。それでも全く同じ顔でほとんど見分けがつかない。
「わかったわよ。」
あっさり諦めたのか、シアはパッと手を離しハイドの方へ戻っていった。一瞬目が合った気がしたが特に声をかけられることなく去っていってしまった。
私の目の前の美人は、腰が砕けそうなほどに妖艶に美しく微笑む。
「オーラリア様お世話をさせていただきます、ユウリ・アサヒナです。まずは湯にご案内をいたしますのでどうぞ。」
白く美しい手をそっと差し出され、壊さないように優しく手を重ねる。ひんやりと冷たい手のひらが同じように優しく握り返してくれた。
「オーラリア・コットンですどうかお願いいたします。」
自己紹介をすると、コクンと頷き誰よりもスマートにお風呂までエスコートをしてくれた。
脱衣場で着古したワンピースを脱がされる。叩けば埃が出るような、白かった生地も私の髪と同じようにくすんでグレーにみえる。
汚い、という先程の言葉を思い出し、急に恥ずかしくなり顔を赤くして俯いてしまった。
「あの、自分で…やります」
「お館様からしっかりケアをするよう言われておりますゆえ、お任せください。でないと僕が叱られます。」
ガリガリの鶏ガラのような身体を見せることに抵抗があり、オロオロしているとニコッと柔らかく笑って大きなタオルを差し出してきた。
「貴女は美しいですよ。たくさんの人たちが貴女に助けられた。僕や、シアもそうです。こんなに身を犠牲にして僕たちのことを助けてくださり有難う御座います。恩返しをさせてください。ご安心ください。一応、僕は女です。」
「は…い。ユウリさん…だけどこの体はあかだらけだし、それに不健康なんですだから…」
「それは僕たちのために駆けずり回っておられたからでしょう。感謝こそすれ、哀れんだり後ろ指を刺したりはいたしませんよ。」
心から感謝しているような温かい眼差しになぜか涙がポロポロと流れた。数日前に否定された私の努力をわかってくれている人がいるんだと。
「ちなみに、シアは男ですから、お気をつけくださいませ」
ユウリの微笑みに見惚れていると、ポロリと爆弾発言をして浴室へと進んでいってしまった。
シア、と呼ばれて現れたのは背中までまっすぐに伸びた艶のある黒髪の綺麗な女性だった。
横顔が恐ろしく美しい。今まで出会った中で一番の美しさだ。
「お呼びですか?」
「ああ、話していた宿屋の管理をしてくれるオリバー伯爵一家だ。案内をしてくれるか?」
「あのぼ…はい。仰せのままに。」
ぼ?の続きが気になりジーッとシアを見つめていると突然バチっと目が合った。横から見ていたらくろいとおもっていた瞳は光が入るとわずかに茶色い。
「こちらの方は?」
「あ…あぁ、オーラリア・コットン子爵令嬢だ。病院を管理してくれるコットン子爵の御息女だ。」
「朧姫?」
「そうだ。いいから、はやくオリバー一家を…」
「いやです。それはユウリに頼んでください。わたくしはオーラリア様をご案内いたします。」
そういうと、間髪入れずに私の手を掴みシアは走り出した。足の長さが違うのか、同じように走れず転がるように足を動かす。
「こら!!まてシア!!!」
後ろからハイドが手を伸ばしたが間に合わず、声だけが飛んできた。しかし、直ぐにシアは足を止めた。
突然歩みを止められ、私は急には止まれず、ドンとシアの背中に顔面をぶつけてしまった。
「ごめんなさい!!」と声をかけたがこちらを振り向くようすはなく、『チッ』と小さく舌打ちをしている。
「シア。その仕事は僕がする。手を離して、お館様のところへもどれ。」
シアの向こう側から優しいアルトの声が響く。
「嫌だね!みて!この人!こんなに痩せ細って!肌もこんなに…汚い!こんなの許さない!!わたくしが今から極上の女にして見せるわ!」
「シア」
汚い、許さない、という強い言葉に密かに胸を痛めていると、先ほどの優しい声が、少し低くした声で凄んだ。
気になってチラリとシアの背中の横から顔を覗かせるとシアの髪の毛をバッサリと短く切っただけの同じ顔が立っていた。
少し、シアの方が線が細くキレがある。それでも全く同じ顔でほとんど見分けがつかない。
「わかったわよ。」
あっさり諦めたのか、シアはパッと手を離しハイドの方へ戻っていった。一瞬目が合った気がしたが特に声をかけられることなく去っていってしまった。
私の目の前の美人は、腰が砕けそうなほどに妖艶に美しく微笑む。
「オーラリア様お世話をさせていただきます、ユウリ・アサヒナです。まずは湯にご案内をいたしますのでどうぞ。」
白く美しい手をそっと差し出され、壊さないように優しく手を重ねる。ひんやりと冷たい手のひらが同じように優しく握り返してくれた。
「オーラリア・コットンですどうかお願いいたします。」
自己紹介をすると、コクンと頷き誰よりもスマートにお風呂までエスコートをしてくれた。
脱衣場で着古したワンピースを脱がされる。叩けば埃が出るような、白かった生地も私の髪と同じようにくすんでグレーにみえる。
汚い、という先程の言葉を思い出し、急に恥ずかしくなり顔を赤くして俯いてしまった。
「あの、自分で…やります」
「お館様からしっかりケアをするよう言われておりますゆえ、お任せください。でないと僕が叱られます。」
ガリガリの鶏ガラのような身体を見せることに抵抗があり、オロオロしているとニコッと柔らかく笑って大きなタオルを差し出してきた。
「貴女は美しいですよ。たくさんの人たちが貴女に助けられた。僕や、シアもそうです。こんなに身を犠牲にして僕たちのことを助けてくださり有難う御座います。恩返しをさせてください。ご安心ください。一応、僕は女です。」
「は…い。ユウリさん…だけどこの体はあかだらけだし、それに不健康なんですだから…」
「それは僕たちのために駆けずり回っておられたからでしょう。感謝こそすれ、哀れんだり後ろ指を刺したりはいたしませんよ。」
心から感謝しているような温かい眼差しになぜか涙がポロポロと流れた。数日前に否定された私の努力をわかってくれている人がいるんだと。
「ちなみに、シアは男ですから、お気をつけくださいませ」
ユウリの微笑みに見惚れていると、ポロリと爆弾発言をして浴室へと進んでいってしまった。
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