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12、王は知る
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その者達は、慌てて玉座の前に駆けつけると大人しく膝をついたままこうべをたれている。
「…みな、仕事はどうした?何故ここに来たのだ?」
すると、騎士の一人が顔を上げずに強張った声で僕に話しかけて来た。
「皆、陛下にお聞きしたいことがあり、恐れながら発言をお許しいただきたく。」
「良い、顔を上げ発言する事を許す。」
顔を見てやっとわかったが、この者は、第2騎士団長だ。そうすると、後ろにいる者達もみな、そうだろう。
「オーラリア様が…子爵令嬢にお戻りになり、王都をたたれたと聞きました。」
「子爵令嬢に戻ることには同意していない。だから、すぐにもどる。心配はいらない。」
「…そうですか。」
騎士団長は歯切れ悪く相槌を打つ。後ろに控える他の使用人たちも皆顔色がすぐれず、何か言いたそうに見える。
「何か、言いたいことがあるか?」
「…陛下は…オーラリア様が…冷遇されているのをご存知でしたか?」
団長の代わりに料理長が口を開いた。ベテランの使用人で僕が幼い頃からこの城に支えてくれている者だ。
「あぁ、だがオーラリアはここみに心ない仕打ちをしたと聞いた。そのせいで評判が悪くなったのだろ?仕方がないことだ。もどったら、やり直せばきっと皆認めてくれるだろう。」
「恐れながら、オーラリア様が…ここみ様に噂のような事をした事実はありません。」
料理長の一言で頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。きっとこの者は知らないのだ、噂と呼ばれる物の話を。
「食事に差をつけろと言われたと…キッチンのものたちの証言もある!」
「当たり前です。デザートばかりを要求され、朝昼晩と野菜もパンも食べず、時間を問わずケーキを所望されましたので王妃様にご相談をして、決まった時間以外出さないと言っていただきました。」
「なっ…いや、他にもあるんだ。浄化を強要され、無理やりやらされそうになったと。」
この質問には騎士団長が答えた。
「当たり前です!一番浄化してもらいたい隔離病院には一度も来てくださらない!だから、一度でいいから病に苦しむ者たちのところに来てほしいと患者や家族、それにわたくしたちから嘆願書を出しました。ご覧になられてないですか?!」
チラリとここみを盗み見ると顔を青くしてアタフタしている。
「部屋の物を持っていかれたと。」
この問いには文官が
「もともとオーラリア様の自室でございますゆえ、お荷物はオーラリア様のものでございます。」
「そ…」
そんな…とつい口から言葉が出そうになった。そんな隙を与えず、グリードマンの補佐が一歩前にでた。
「昨日から、オーラリア様が病気をバイキン扱いして病院に行くのを嫌がっている、だとか、聖女の仕事を軽んじていて、王と遊んでると言っている、という事実無根の話も出てますね。」
それを聞いて、昨日のやりとりを思い出し身体中の熱が冷めたような感覚になった。オーラリアを責めたのは、僕とここみだ。嫌がらせをしていると思い込んで…オーラリアの言葉もちゃんと受け止めず決めつけた…
その時、やっとあの言葉の本当の意味に気がついた。
『…私は熱病にかかっても良いと?』
病気にかかるリスクを心配してここみやシークの事は止めたのにオーラリアには行けと指示を出した。
使用人たちは、黙ったままの僕を無表情で見ている。やっと気がついたかと、言っているような気がした。
「オーラリア様が冷遇されているのは、身分が低いにも関わらず、急に王妃になられたからです。周りのメイド、特に聖女様付きのメイドや中級文官達からいじめを受けていました。」
オーラリアと共に、流行病の対策をしていた文官の一人が目を潤ませながら話す。
「結婚後、しばらくしてから病院に泊り込み患者を看病するようになったオーラリア様は、王に好かれていない、仕方なく娶った王妃だと言われていました。それでも、陛下が“愛している”と公言されていたので、表立っては冷遇されませんでしたし、我々が守れていました。王宮に帰って来てから、聖女様に全てをお譲りになり、陛下がオーラリア様を叱るようになってからは周りの者たちも同じように…オーラリア様を冷遇するようになりました。」
目の前が真っ暗になった。「ちがうの!」とここみが腕を乱暴に掴んできたのだが、その勢いに耐えることができず、そのまま椅子にどすんと座り込む。
使用人や騎士団の者たちが何が言っていたが、聞こえず、いつのまにか目の前には誰もいなくなっていた。
横を見れば、子どもみたいに、声を出して泣き怒るここみがたっているだけだった。
「…みな、仕事はどうした?何故ここに来たのだ?」
すると、騎士の一人が顔を上げずに強張った声で僕に話しかけて来た。
「皆、陛下にお聞きしたいことがあり、恐れながら発言をお許しいただきたく。」
「良い、顔を上げ発言する事を許す。」
顔を見てやっとわかったが、この者は、第2騎士団長だ。そうすると、後ろにいる者達もみな、そうだろう。
「オーラリア様が…子爵令嬢にお戻りになり、王都をたたれたと聞きました。」
「子爵令嬢に戻ることには同意していない。だから、すぐにもどる。心配はいらない。」
「…そうですか。」
騎士団長は歯切れ悪く相槌を打つ。後ろに控える他の使用人たちも皆顔色がすぐれず、何か言いたそうに見える。
「何か、言いたいことがあるか?」
「…陛下は…オーラリア様が…冷遇されているのをご存知でしたか?」
団長の代わりに料理長が口を開いた。ベテランの使用人で僕が幼い頃からこの城に支えてくれている者だ。
「あぁ、だがオーラリアはここみに心ない仕打ちをしたと聞いた。そのせいで評判が悪くなったのだろ?仕方がないことだ。もどったら、やり直せばきっと皆認めてくれるだろう。」
「恐れながら、オーラリア様が…ここみ様に噂のような事をした事実はありません。」
料理長の一言で頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。きっとこの者は知らないのだ、噂と呼ばれる物の話を。
「食事に差をつけろと言われたと…キッチンのものたちの証言もある!」
「当たり前です。デザートばかりを要求され、朝昼晩と野菜もパンも食べず、時間を問わずケーキを所望されましたので王妃様にご相談をして、決まった時間以外出さないと言っていただきました。」
「なっ…いや、他にもあるんだ。浄化を強要され、無理やりやらされそうになったと。」
この質問には騎士団長が答えた。
「当たり前です!一番浄化してもらいたい隔離病院には一度も来てくださらない!だから、一度でいいから病に苦しむ者たちのところに来てほしいと患者や家族、それにわたくしたちから嘆願書を出しました。ご覧になられてないですか?!」
チラリとここみを盗み見ると顔を青くしてアタフタしている。
「部屋の物を持っていかれたと。」
この問いには文官が
「もともとオーラリア様の自室でございますゆえ、お荷物はオーラリア様のものでございます。」
「そ…」
そんな…とつい口から言葉が出そうになった。そんな隙を与えず、グリードマンの補佐が一歩前にでた。
「昨日から、オーラリア様が病気をバイキン扱いして病院に行くのを嫌がっている、だとか、聖女の仕事を軽んじていて、王と遊んでると言っている、という事実無根の話も出てますね。」
それを聞いて、昨日のやりとりを思い出し身体中の熱が冷めたような感覚になった。オーラリアを責めたのは、僕とここみだ。嫌がらせをしていると思い込んで…オーラリアの言葉もちゃんと受け止めず決めつけた…
その時、やっとあの言葉の本当の意味に気がついた。
『…私は熱病にかかっても良いと?』
病気にかかるリスクを心配してここみやシークの事は止めたのにオーラリアには行けと指示を出した。
使用人たちは、黙ったままの僕を無表情で見ている。やっと気がついたかと、言っているような気がした。
「オーラリア様が冷遇されているのは、身分が低いにも関わらず、急に王妃になられたからです。周りのメイド、特に聖女様付きのメイドや中級文官達からいじめを受けていました。」
オーラリアと共に、流行病の対策をしていた文官の一人が目を潤ませながら話す。
「結婚後、しばらくしてから病院に泊り込み患者を看病するようになったオーラリア様は、王に好かれていない、仕方なく娶った王妃だと言われていました。それでも、陛下が“愛している”と公言されていたので、表立っては冷遇されませんでしたし、我々が守れていました。王宮に帰って来てから、聖女様に全てをお譲りになり、陛下がオーラリア様を叱るようになってからは周りの者たちも同じように…オーラリア様を冷遇するようになりました。」
目の前が真っ暗になった。「ちがうの!」とここみが腕を乱暴に掴んできたのだが、その勢いに耐えることができず、そのまま椅子にどすんと座り込む。
使用人や騎士団の者たちが何が言っていたが、聞こえず、いつのまにか目の前には誰もいなくなっていた。
横を見れば、子どもみたいに、声を出して泣き怒るここみがたっているだけだった。
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