悪役令嬢?そんなの知りませんが迷惑です

空橋彩

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本編2

ある生徒の手紙

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親愛なるアマリリス

元気?治療院、順調みたいだね。私今度そちらの国に留学しているお兄様に会いに行くのよ。その時に治療院に寄らせてもらいたいの。

私達はあなたが何もしていないって知ってるし、あなたの味方だって…わかってくれてると思うけど…

会うのが嫌だったら、残念だけど諦めるわ。


ところで、あの後のこの学園の話をしておくね。まだ一月ほどしか経ってないけど…


クレア公爵令嬢はあのあと、あなたの魔法を自分の手柄にしてしまったの。私達はもちろん、あなたの魔力だってわかってる。だから、生徒会長にそう言いに行ったのよ。みんなで。

そしたらなんていったとおもう?

「優秀な者に嫉妬する気持ちはわかる。友達を助けたい気持ちも。でも、うそはだめだよ。」

そしてウインクをしたのよ?寒気がしたわ。

でもね、少しずつクレア様の嘘が剥がれてきたの。まずはいつもべったりくっついていた真っ黒な男の子がいなくなったの。あの後すぐに、3年の教室の前でクレア様に向かって、男の子が「真実を、話してください!!」って喧嘩みたいになってしまっていたのよ。
それで喧嘩別れしたのかしら?

あの一件から、回復魔法を求めてたくさんの人がクレア様の元を訪れたの。でも誰1人、魔法をかけてもらえた人はいないわ。なんか、手を握って祈る真似をするだけで何も回復しない。みんなおかしいなって思ってる。

被害妄想もかわらなくて、いまだに「わたくしがあの子を追い詰めたのね。先生も、わたくしのためにあの子を隣国へ…」とかいって、泣いてるわ。

それから、もう一つカイン様よ。カイン様と婚約者のマリア様がクレア様に物申したの。
マリア様かっこよかったわよ!!!

詳しく話したいわ。アマリリスと話したい。だから、会いに行ってもいい?大好きなアマリリス。

貴女が魅了魔法なんて使ってないこと、みんなわかってるから。あの時助けられなくてごめんなさい。

リーリアより


追伸、この手紙、あなたが読み終わったら燃えるから気をつけて!








ちょうど目を通し終わったところでオレンジの綺麗な火花を散らしながら手紙が燃えて消えた。

私は治療院にどっさり届いた手紙をやっと読み終えた。
あの断罪?クレア様のいう断罪があってからひとつき、毎日少しずつクラスメイトやあの時そばにいてくれた代表者、カイン様とマリア様(魔法の訓練を手伝ってくださってた方達だったの!)からお手紙が届く。

あの時助けられなくてごめんねって。

リーリアは特に仲良くしてくれていた子で、これが3通目。1通目は先生が預かっていた。リーリアは先生が私を連れていくことをしっていたみたい。

直接尋ねてくる人もいたわ。校長先生に、イルーラ、それに、何故か騎士団長!や宰相?さん。


何人かでも私を信じてくれていることが嬉しくて、リーリアに急いでお返事を書いた。もちろん会いたいって!

封をして風魔法で窓から直接とばすと、先生が部屋の扉をノックした。

「あ!どうぞ!先生ですよね?」

「アマリリス、患者を通していいか?その…先生って言うのやめて欲しいんだけど…」

「でも、なんて呼んだらいいか…ヴォルフレットさん?なんか…変な感じで」

「王弟殿下って選択肢がないあたり、アマリリスらしいな。」

「ひえ!不敬で捕まりますか?!」

「違う、俺のこと、考えてくれたのかと思って嬉しかっただけだできれば、ヴォルフと呼んでほしいかな」

フッと目を細めて微笑む。先生は外見が少し?だいぶ変わったけど、この優しい瞳は変わらない。

先生はこちらに来てからよく笑う様になった。こちらの学園に留学するはずだったところ、俺が面倒をみる!!とギルドに交渉して冒険者ギルドの一室を間借りする形で治療院を開いてくれた。

何となく貴族だと思っていたけど、先生は王弟殿下だった。でも、そう呼ばれるのは嫌そうだから、何と呼べばいいかわからなくてずっと先生ってよんでいる。

「…先生はずるいです。私ばっかり好きになっていくから、寂しいです」

「…」

何故か無言になってしまった先生を見上げると、顔が真っ赤になっていた。
私までつられて赤くなってしまう。

「俺は…」

「アマリリスちゃん!早く俺の腕を見てくれよ!!」

もう待ちきれない、というような勢いで何人かの冒険者の方が診察室に雪崩れ込んできた。

「あ、ごめんなさい、調子はどうですか?」

「だいぶ動く様になったぞ。今日から狩に出られそうだ!」

「スパッと治せなくてごめんなさい…」

「何言ってんだ!!怪我をしたのは俺の責任さ、こんなに綺麗に早く治ったのはアマリリスちゃんのおかげだぜ!おらこれ、嫁が作ったパン持ってけって待たされたからくってくれ。うまいんだ、嫁のパン」

「ありがとうございます!奥さんの肩の痛みもまた見せてくださいね!」

「おっ!家出殿下もいるじゃねぇか、おいおい、大好きな婚約者なのはわかるが、ずっと張り付いてちゃかんな!よし!一緒に狩にいくぞ!!」


ダンさんはがはは!と豪快に笑うとヴォルフレット先生を引きずっていった。ここにくる人たちはみんな優しい。

「ヴォルフ…行ってらっしゃい!!」

勇気をだして声をかけるととても嬉しそうに、満面の笑みで「いってきます、アマリリス」と返事をしてくれた。
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