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本編2
悪役令嬢は納得できない
しおりを挟むいよいよ断罪の日。わたくしは、これから心を鬼にして彼女を正さなければならないのよ。
シナリオの強制力で、彼女とブラッドリー様が近づくのは止められなかった。
わたくしが、意地悪をしないように気をつけても小さな行動一つでいじめた事になってしまった。
でも、誠実に過ごしてきたのは無駄じゃなかった。
生徒会長に信じてもらえた。それから、幼い頃から積み上げた信頼のおかげで“魅了魔法”なんていう御伽話の中のような魔法の話も信じてもらえたわ。
彼女が魅了魔法を使っているかは分からないけど、たしかゲームの中では使えた。チャーム程度の自分の魅力を少し底上げするものだけど…
それに、教師陣にもコツコツと接触してわたくしのアリバイを作っていたの。
ついでに、隣国から訳あって逃げてきている王弟殿下にも、わたくしの現状を話させていただいたわ。
「あの…ヴォルフレット先生、今よろしいですか?」
「よろしくないな。帰れ。お前は俺の授業を取ってないだろ?」
「まぁ、先生ったら。大丈夫ですわ。わたくし、予言の力があるのです。だから、先生が苦しんでいたのを知っておりますの。お辛かったですわね。でも…本来は優しくて、人が大好きな先生でしたのに…わたくしが少しでも先生のお気持ちを軽くできたらいいのですが。」
そして、冷たい、氷のような手をとり、両手でそっと握ると先生は照れたようにさっと手を引っ込めてしまった。
これはヒロイン、アマリリスさんのセリフよ。本当はもっと可愛く言うのだけど…
『先生は…本当は優しいです。私が失敗しても助けてくれるし…きっと、隠さなきゃいけない何かがあったんですね…その時に、先生のそばにいたかったな…なんて!』
そう言って彼女は照れ隠しにぎゅっとスカートの裾を握ってアハハと笑うのだわ。
先生は、身分も姿も関係なく“そばにいたい”と言われた事が嬉しくてどんどんアマリリスさんにハマっていくの。
それが、ゲームのシナリオ。
ヴォルフレット先生のルートは隠しルートで、人嫌いで有名で、NPCとほぼ変わらない見た目をしているので初めは誰も気が付かなかった。恋愛ルートを外れて勉強や魔法を頑張っていると解放される。
隣国の王弟で、本当の姿はとてつもない美丈夫だ。
わたくしもゲームでプレイしていた時に必死に攻略したものですわ。
つい、前世の記憶に浸っていると、先生がはぁ。と特大のため息をついた。
「で、なんの用だ。」
「あら!嫌ですわ。最近…ブラッドリー様とも中々…お話できず。アマリリスさんの事を気にしてらっしゃるみたいで…わたくし、寂しいですけど彼女の為に身を引いているところなんですの。つい、目で追ってしまったり話しかけたりしてしまいますが、わたくしは…何もしていないのです…それでも、彼女は…辛いみたいで、いじめられてると…言いふらされているのです。先生、彼女の担任でしたわよね?わたくし、彼女のことは本当に応援していますの。だからどうか、彼女の誤解をやんわりと解いていただきたいのです」
「好きなら…奪われないようにしたいと思うのは当たり前だ。お前がランプールをしっかり捕まえておけばいいだろう。」
「それが…彼女は…魅了魔法が使えますの。他にもカイン様やブルース様、何名か知らぬうちにその魔法に当てられておりますの」
「そうか。わかった。これ以上傷つかないよう守ってやらねばの様だな。」
どうやら、ヴォルフレット先生はわたくしに好印象を持ってくださって、守りたいとまで言ってくださったわ。
ヒロインのセリフを盗んでしまったけれども、仕方ないわよね??
そんなふうに、少しずつ周りの好感度を上げつつ強制力に逆らった。
いま、闘技場の控えのベンチに彼女は座っている。学年の代表者9名と共に。
わたくしは、ブラッドリー様と手を繋いで闘技場の真ん中まで歩いていく。学生の皆さんがザワザワとわたくしを心配してくださっているわ。
彼女はやはり、自覚がなかった様で動揺していた。
純粋な少女を傷つけてしまった事に罪悪感を感じて涙が出てしまった。
そして、彼が…わたくしのために怒ってくださったの。ブラッドリー様の事はもちろん愛しているわ。でも…ヴォルフレット様が求めてくださるなら…
そんなふうに思っていたら、なんと、アマリリスさんはヴォルフレット先生まで攻略していたみたい。
なんだか、胸の中にモヤモヤと暗い気持ちが湧いた。
わたくしの方がさきに、先生に声をかけたのになぜ?やはり、ヒロインには勝てないのね。
悔しい。
でもいいの。
彼女はそのまま、先生に連れられて消えたわ。やはり、信じられないほどの美丈夫、そして美声。
でもいいの。
わたくしには婚約者のブラッドリー様、生徒会長の王子様、それに闇魔法を使えるイル、騎士団長の息子のカイル様がいる。幼馴染の次期第3騎士団、団長にもなるリットがいる。ほぼ、逆ハー愛されルートだわ。
国民や生徒たちからも慕われているもの。
「く…クレア?」
ブラッドリー様に話しかけられて、ハッとした。わたくしったら、俯いたまま固まってしまっていた様だわ。
「嫌だわ、あの…彼女が最後に発した魅了魔法を解くのに夢中で…」
「なんだって?!この回復魔法はきみが?!」
「え?ええ、わたくし…」
「ブラッドリー、彼女との婚約…私に譲ってもらえないか?」
「まぁ、王子殿下!そんな…」
わたくしのことを取り合う2人を見て、胸をドキドキさせながらも、何だか釈然としない心に気づかないふりをしたのよ。
シナリオの強制力で、彼女とブラッドリー様が近づくのは止められなかった。
わたくしが、意地悪をしないように気をつけても小さな行動一つでいじめた事になってしまった。
でも、誠実に過ごしてきたのは無駄じゃなかった。
生徒会長に信じてもらえた。それから、幼い頃から積み上げた信頼のおかげで“魅了魔法”なんていう御伽話の中のような魔法の話も信じてもらえたわ。
彼女が魅了魔法を使っているかは分からないけど、たしかゲームの中では使えた。チャーム程度の自分の魅力を少し底上げするものだけど…
それに、教師陣にもコツコツと接触してわたくしのアリバイを作っていたの。
ついでに、隣国から訳あって逃げてきている王弟殿下にも、わたくしの現状を話させていただいたわ。
「あの…ヴォルフレット先生、今よろしいですか?」
「よろしくないな。帰れ。お前は俺の授業を取ってないだろ?」
「まぁ、先生ったら。大丈夫ですわ。わたくし、予言の力があるのです。だから、先生が苦しんでいたのを知っておりますの。お辛かったですわね。でも…本来は優しくて、人が大好きな先生でしたのに…わたくしが少しでも先生のお気持ちを軽くできたらいいのですが。」
そして、冷たい、氷のような手をとり、両手でそっと握ると先生は照れたようにさっと手を引っ込めてしまった。
これはヒロイン、アマリリスさんのセリフよ。本当はもっと可愛く言うのだけど…
『先生は…本当は優しいです。私が失敗しても助けてくれるし…きっと、隠さなきゃいけない何かがあったんですね…その時に、先生のそばにいたかったな…なんて!』
そう言って彼女は照れ隠しにぎゅっとスカートの裾を握ってアハハと笑うのだわ。
先生は、身分も姿も関係なく“そばにいたい”と言われた事が嬉しくてどんどんアマリリスさんにハマっていくの。
それが、ゲームのシナリオ。
ヴォルフレット先生のルートは隠しルートで、人嫌いで有名で、NPCとほぼ変わらない見た目をしているので初めは誰も気が付かなかった。恋愛ルートを外れて勉強や魔法を頑張っていると解放される。
隣国の王弟で、本当の姿はとてつもない美丈夫だ。
わたくしもゲームでプレイしていた時に必死に攻略したものですわ。
つい、前世の記憶に浸っていると、先生がはぁ。と特大のため息をついた。
「で、なんの用だ。」
「あら!嫌ですわ。最近…ブラッドリー様とも中々…お話できず。アマリリスさんの事を気にしてらっしゃるみたいで…わたくし、寂しいですけど彼女の為に身を引いているところなんですの。つい、目で追ってしまったり話しかけたりしてしまいますが、わたくしは…何もしていないのです…それでも、彼女は…辛いみたいで、いじめられてると…言いふらされているのです。先生、彼女の担任でしたわよね?わたくし、彼女のことは本当に応援していますの。だからどうか、彼女の誤解をやんわりと解いていただきたいのです」
「好きなら…奪われないようにしたいと思うのは当たり前だ。お前がランプールをしっかり捕まえておけばいいだろう。」
「それが…彼女は…魅了魔法が使えますの。他にもカイン様やブルース様、何名か知らぬうちにその魔法に当てられておりますの」
「そうか。わかった。これ以上傷つかないよう守ってやらねばの様だな。」
どうやら、ヴォルフレット先生はわたくしに好印象を持ってくださって、守りたいとまで言ってくださったわ。
ヒロインのセリフを盗んでしまったけれども、仕方ないわよね??
そんなふうに、少しずつ周りの好感度を上げつつ強制力に逆らった。
いま、闘技場の控えのベンチに彼女は座っている。学年の代表者9名と共に。
わたくしは、ブラッドリー様と手を繋いで闘技場の真ん中まで歩いていく。学生の皆さんがザワザワとわたくしを心配してくださっているわ。
彼女はやはり、自覚がなかった様で動揺していた。
純粋な少女を傷つけてしまった事に罪悪感を感じて涙が出てしまった。
そして、彼が…わたくしのために怒ってくださったの。ブラッドリー様の事はもちろん愛しているわ。でも…ヴォルフレット様が求めてくださるなら…
そんなふうに思っていたら、なんと、アマリリスさんはヴォルフレット先生まで攻略していたみたい。
なんだか、胸の中にモヤモヤと暗い気持ちが湧いた。
わたくしの方がさきに、先生に声をかけたのになぜ?やはり、ヒロインには勝てないのね。
悔しい。
でもいいの。
彼女はそのまま、先生に連れられて消えたわ。やはり、信じられないほどの美丈夫、そして美声。
でもいいの。
わたくしには婚約者のブラッドリー様、生徒会長の王子様、それに闇魔法を使えるイル、騎士団長の息子のカイル様がいる。幼馴染の次期第3騎士団、団長にもなるリットがいる。ほぼ、逆ハー愛されルートだわ。
国民や生徒たちからも慕われているもの。
「く…クレア?」
ブラッドリー様に話しかけられて、ハッとした。わたくしったら、俯いたまま固まってしまっていた様だわ。
「嫌だわ、あの…彼女が最後に発した魅了魔法を解くのに夢中で…」
「なんだって?!この回復魔法はきみが?!」
「え?ええ、わたくし…」
「ブラッドリー、彼女との婚約…私に譲ってもらえないか?」
「まぁ、王子殿下!そんな…」
わたくしのことを取り合う2人を見て、胸をドキドキさせながらも、何だか釈然としない心に気づかないふりをしたのよ。
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