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64.アレキサンドライト視点
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軍馬に跨って門を飛び出す。スイは…どこに行ったんだろう。そして俺はもしスイに会ったらなんと言うんだろう。まさか自分がこんなにヘタレだとは思ってもみなかった。
自分はもっと、社交的で積極的だと思っていた。
当てはないがなんとなくトラティリア邸に向かって馬を走らせていた。
ふと、後ろから蹄の音が迫ってきた。
振り返らなくても誰が乗っているのかは、なんとなくわかる。俺は一番早い軍馬を選んだが、やはり乗る者によって馬たちもやる気…と言うか早さが変わるらしい。
シーラが乗ると早い。
並走するようにしてシーラが話しかけてきた。
「スイの居場所はわかっているのか?」
「あぁ、なんとなく。トラティリア邸にいる気がして。向かっている。」
俺は苦笑いをしながら答える。シーラに殴られた腹がズキズキと痛む。先ほどよりほんの少し速度を落としたシーラは二人乗りをしているのに、一人で乗っている俺より早いのかわからない。シーラの後ろにちゃっかり乗ったシリルがニッコリと笑った。
「セイさんもいますよ。僕に花嫁修行をしてくれるために来たんです」
「そ…そうか…でも、シリルは料理とか、刺繍とか完璧と言うか人より上手いだろう?後は何を?」
シリルは頬を赤らめてものすごく嬉しそうに微笑んだ。男の俺でも惚れてしまいそうなほどに色気があった。
結局何をしていたのかは答えてもらえないうちに、トラティリア邸に到着した。
公爵や夫人も可哀想なものを見るような目で俺を見ている気がする。なるほど、憐れまれると言うのはあまり気持ちのいいものではないな。
「スイさんはシーラの部屋に立てこもっています。どうぞ、お入りください」
公爵に促されて邸に足を踏み入れる。ギシ、と床が軋む音が心なしか屋敷中に響いた気がした。
トラティリア邸は玄関を入ると正面に大きな階段がある。その上には踊り場の様な少し広いロビーがあり、廊下に繋がっている。
ふと、そのロビーにスイにそっくりなセイが姿を現した。
見間違える事はないが、ほんの一瞬心臓がバクンと音を立てた。
「あら、お別れを言いに来たのかしら?」
その視線で凍りついてしまいそうだ。いつもは、口では攻撃をしてくるが、こんなに冷たい目で俺を見ない。
怒っているんだと一瞬で理解した。
「いや、違う。話をしにきた。スイと」
「話している暇はないのでしょう?お帰りくださいまし」
「…あれは、俺が悪かった。スイに会わせてくれないか」
俺が小さな声で話をすると、ほんの少しの間もあけずにすぐ、攻撃が返ってくる。なかなかの威力に尻込みをしてしまいそうだが、ここで諦めたら、本当にもう二度とスイには会えない気がしたので、踏ん張ることにした。
「今更ですわね。やはり軽薄な男は口だけなのでしょう。幻滅しましたわ。私の目の前から消えなさいな」
セイは手に持っていた扇子を口元で広げてまるでゴミや汚物を見るような目で俺を睨んだ。
「…君たちからシーラを奪いそうになった事をどう謝っていいのかわからなくて会いに来られなかった。本当にすまないと思っている。一目だけでいいから会わせてくれないか」
「自惚れるなよ。たかが一軍隊の隊長ごときがシーラお姉様を私達から奪えるとお思い?私は初めからお姉様が帰ってくるとわかっていましたわ。つまり、貴方には何も思っていないわ。自分がそんなに力があると思っているの?」
背中を冷や汗がつーっと流れ落ちるような嫌な感覚がした。セイは、わざと怒っている。俺を怒らせようとしている。本当にもう、スイと合わせたくないのだ。このまま仲違いをさせて、あわよくば接触禁止にでもしようとしている。
「思っている。俺には権力も力もある。俺のせいで命を奪われる人は実際にたくさんいる。俺を恨んでいる人も、もちろんたくさんいる。」
セイはほんの少しだけ寂しそうな、悲しそうな顔をした。
「だから、君たちにももう嫌われてしまったと。嫌われてしまうんだと思いこんでいた。お願いだ、スイに会わせてくれ。」
そうして頭を下げるとほんの数十秒後にパタン、と扇子を閉じる音がした。
「まぁ、許すも許さないもわたくしの権利ではないわね。」
そういってセイはロビーの端に音もなく移動した。
スイになんと言おう。ごめん?それとも…
シーラの部屋にあっという間に着いた。ノックしようと拳を扉にあてる。あとほんの数センチ動かせば、扉を叩くことができる。できるのに、手首が動かない。
『なにをしているノロマ!』
『殿下!今戸惑ってどうするんですか!弱虫なんですか?!』
『やっぱりただの木偶の坊ですわね。』
廊下の離れたところから3人が様子をうかがっている。もはや俺の悪口大会となっている。
そんな3人の言葉になぜか背中を押されて、意を決して扉を2回、ノックする。
自分はもっと、社交的で積極的だと思っていた。
当てはないがなんとなくトラティリア邸に向かって馬を走らせていた。
ふと、後ろから蹄の音が迫ってきた。
振り返らなくても誰が乗っているのかは、なんとなくわかる。俺は一番早い軍馬を選んだが、やはり乗る者によって馬たちもやる気…と言うか早さが変わるらしい。
シーラが乗ると早い。
並走するようにしてシーラが話しかけてきた。
「スイの居場所はわかっているのか?」
「あぁ、なんとなく。トラティリア邸にいる気がして。向かっている。」
俺は苦笑いをしながら答える。シーラに殴られた腹がズキズキと痛む。先ほどよりほんの少し速度を落としたシーラは二人乗りをしているのに、一人で乗っている俺より早いのかわからない。シーラの後ろにちゃっかり乗ったシリルがニッコリと笑った。
「セイさんもいますよ。僕に花嫁修行をしてくれるために来たんです」
「そ…そうか…でも、シリルは料理とか、刺繍とか完璧と言うか人より上手いだろう?後は何を?」
シリルは頬を赤らめてものすごく嬉しそうに微笑んだ。男の俺でも惚れてしまいそうなほどに色気があった。
結局何をしていたのかは答えてもらえないうちに、トラティリア邸に到着した。
公爵や夫人も可哀想なものを見るような目で俺を見ている気がする。なるほど、憐れまれると言うのはあまり気持ちのいいものではないな。
「スイさんはシーラの部屋に立てこもっています。どうぞ、お入りください」
公爵に促されて邸に足を踏み入れる。ギシ、と床が軋む音が心なしか屋敷中に響いた気がした。
トラティリア邸は玄関を入ると正面に大きな階段がある。その上には踊り場の様な少し広いロビーがあり、廊下に繋がっている。
ふと、そのロビーにスイにそっくりなセイが姿を現した。
見間違える事はないが、ほんの一瞬心臓がバクンと音を立てた。
「あら、お別れを言いに来たのかしら?」
その視線で凍りついてしまいそうだ。いつもは、口では攻撃をしてくるが、こんなに冷たい目で俺を見ない。
怒っているんだと一瞬で理解した。
「いや、違う。話をしにきた。スイと」
「話している暇はないのでしょう?お帰りくださいまし」
「…あれは、俺が悪かった。スイに会わせてくれないか」
俺が小さな声で話をすると、ほんの少しの間もあけずにすぐ、攻撃が返ってくる。なかなかの威力に尻込みをしてしまいそうだが、ここで諦めたら、本当にもう二度とスイには会えない気がしたので、踏ん張ることにした。
「今更ですわね。やはり軽薄な男は口だけなのでしょう。幻滅しましたわ。私の目の前から消えなさいな」
セイは手に持っていた扇子を口元で広げてまるでゴミや汚物を見るような目で俺を睨んだ。
「…君たちからシーラを奪いそうになった事をどう謝っていいのかわからなくて会いに来られなかった。本当にすまないと思っている。一目だけでいいから会わせてくれないか」
「自惚れるなよ。たかが一軍隊の隊長ごときがシーラお姉様を私達から奪えるとお思い?私は初めからお姉様が帰ってくるとわかっていましたわ。つまり、貴方には何も思っていないわ。自分がそんなに力があると思っているの?」
背中を冷や汗がつーっと流れ落ちるような嫌な感覚がした。セイは、わざと怒っている。俺を怒らせようとしている。本当にもう、スイと合わせたくないのだ。このまま仲違いをさせて、あわよくば接触禁止にでもしようとしている。
「思っている。俺には権力も力もある。俺のせいで命を奪われる人は実際にたくさんいる。俺を恨んでいる人も、もちろんたくさんいる。」
セイはほんの少しだけ寂しそうな、悲しそうな顔をした。
「だから、君たちにももう嫌われてしまったと。嫌われてしまうんだと思いこんでいた。お願いだ、スイに会わせてくれ。」
そうして頭を下げるとほんの数十秒後にパタン、と扇子を閉じる音がした。
「まぁ、許すも許さないもわたくしの権利ではないわね。」
そういってセイはロビーの端に音もなく移動した。
スイになんと言おう。ごめん?それとも…
シーラの部屋にあっという間に着いた。ノックしようと拳を扉にあてる。あとほんの数センチ動かせば、扉を叩くことができる。できるのに、手首が動かない。
『なにをしているノロマ!』
『殿下!今戸惑ってどうするんですか!弱虫なんですか?!』
『やっぱりただの木偶の坊ですわね。』
廊下の離れたところから3人が様子をうかがっている。もはや俺の悪口大会となっている。
そんな3人の言葉になぜか背中を押されて、意を決して扉を2回、ノックする。
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