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「や…やっとついた!!!」
シリルがとても嬉しそうに小さな小屋を見つめている。
トラティリア邸を出発してから7日目、目的地であったアリア(サリア)の家にたどり着いた。
森の中に佇む赤い屋根の小さな家。
私は短い間だがここで過ごした事を全てはっきりと覚えている。
「ずっとたどり着かないと思った。お尻が痛い!」
シリルは涙目になりながらお尻の辺りをさすっている。
馬に乗るのはとても大変だ。特に、慣れていないと体のあちこちが痛くなる。帰りは馬車を拾って帰った方がいいだろう。
すると、何かに気がついたのか、マシロがぶるるる!と穏やかに鳴いた。私はマシロから降りると手綱を引きながら小屋に近づく。
あと少しで玄関….と言う距離まで来ると、ものすごい勢いでドアが開いた。
アリアが涙目で私を見つめている。その後ろには嬉しそうな顔をしたウィンスコットが立っている。
「…っ遅いわよ!!」
照れ隠しなのか、アリアはあえて強い口調で私を責めるようにして出迎えてくれた。
「すまない。これでも急いで来たんだ。元気そうでよかった。」
「げ…元気に決まってるでしょ!って…し…シリル!?」
アリアが私の後ろにあるシリルに気がついて驚きを隠さずにいる。慌ててウィンスコットの後ろに隠れてしまった。
アリアという壁がなくなった事でウィンスコットは私が連れている馬を正面から見る事ができた。すると、普段は怖い顔でじっと立っている男が顔を破顔させ、とてもとても嬉しそうに慌てて私の元へと駆け寄ってきた。
「あ!マシロ!マシロじゃないか!」
そうか、この白馬はウィンスコットが世話をしていた馬だったのか。どうりで穏やかなはずだ。
私が手綱から手を離すと、マシロも嬉しそうにウィンスコットに駆け寄った。
アーサーはそれがわかっていて、マシロを連れていけと言ったのか。うまく、使われた気もするが二人の嬉しそうな顔を見ると満更でもない気持ちになった。
「あの…」
勝手に穏やかな気持ちになっていると、シリルが切羽詰まったような、緊張した声を出した。
そして、小屋の入り口から出てこないサリアに向かってほんの少し緊張したような笑顔を見せた。
「シーラを助けてくれて、ありがとう。どうしてもお礼が言いたくてきたんだ。僕がいたせいで到着が遅くなってしまったんだ。ごめん」
シリルの言葉を聞いたサリアはグッと涙を堪えて、一歩前に踏み出した。
「当たり前のことを…したまでです。私も、この方に恩があります。だから、その恩をほんの少しだけ返しただけです。」
「シーラを失っていたら、僕はきっと立ち上がれなかった。だから、あなたがいてくれて…よかった。」
シリルの言葉を聞いたサリアはいよいよ我慢できずに泣き崩れてしまった。きっと、今シリルが言った言葉はサリアがずっと欲しかった言葉だ。母親からも父親からも言ってもらえなかった、自身を受け止める優しい言葉。
マシロとの再会を喜んでいたウィンスコットが慌ててサリアの元に駆け寄る。優しく肩を抱いて背中をさすっていた。
「ウィンスコット、戻る気はあるか?」
そう聞くと、ほんの少しも間を空けず、迷わず返事が返ってきた。
「副司令官!!自分はここに居たいです。」
「そうか。実は、この教会以外と犯罪者が隠れ蓑に使おうと近付いてくるらしくてな。辺境伯からここの警備を担当するものを選ぶように言われている。君に任せてもいいだろうか」
「はい!!!ぜひ!!アリアのそばにいたいです!」
これは本当の話で、実はここの教会の神父は元銀軍の爽やかだった初老の男性がやっている。最近盗賊を追い払うのに苦労していると友人である父に相談が来ていたのだ。
ウィンスコットなら、適任だろう。
アリアが密かにウィンスコットの袖の裾を掴んでいる。
そうか、彼は想いを伝えられていたんだ。良かった。
辛い過去を生きてきた彼には幸せになってほしいと思っていたんだ。
マシロとウィンスコットは引き続きこの地に残ることになった。マシロがいれば、買い物も今まで以上にしやすくなるだろう。
助けてもらったお礼としてまとまった金貨をサリアに渡す。
あまり長居をしては、サリアとシリルに良くない、私たちはそのまま小屋を後にした。
次は美味しい食べ物や綺麗な花を持ってまたくるよ。そう伝えるとサリアも穏やかに笑ってくれた。
彼女はきっともう、大丈夫。
________________________________________
いつも、読んでいただきありがとうございます。
お話のストックがここまでとなります。明日からは更新が毎日できなくなるかもしれません。
更新をお休みさせていただく日も出てくるかと思いますが、残りの伏線や関係を回収させていただきたいと、思っています。
60話分も応援してくださりありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。
シリルがとても嬉しそうに小さな小屋を見つめている。
トラティリア邸を出発してから7日目、目的地であったアリア(サリア)の家にたどり着いた。
森の中に佇む赤い屋根の小さな家。
私は短い間だがここで過ごした事を全てはっきりと覚えている。
「ずっとたどり着かないと思った。お尻が痛い!」
シリルは涙目になりながらお尻の辺りをさすっている。
馬に乗るのはとても大変だ。特に、慣れていないと体のあちこちが痛くなる。帰りは馬車を拾って帰った方がいいだろう。
すると、何かに気がついたのか、マシロがぶるるる!と穏やかに鳴いた。私はマシロから降りると手綱を引きながら小屋に近づく。
あと少しで玄関….と言う距離まで来ると、ものすごい勢いでドアが開いた。
アリアが涙目で私を見つめている。その後ろには嬉しそうな顔をしたウィンスコットが立っている。
「…っ遅いわよ!!」
照れ隠しなのか、アリアはあえて強い口調で私を責めるようにして出迎えてくれた。
「すまない。これでも急いで来たんだ。元気そうでよかった。」
「げ…元気に決まってるでしょ!って…し…シリル!?」
アリアが私の後ろにあるシリルに気がついて驚きを隠さずにいる。慌ててウィンスコットの後ろに隠れてしまった。
アリアという壁がなくなった事でウィンスコットは私が連れている馬を正面から見る事ができた。すると、普段は怖い顔でじっと立っている男が顔を破顔させ、とてもとても嬉しそうに慌てて私の元へと駆け寄ってきた。
「あ!マシロ!マシロじゃないか!」
そうか、この白馬はウィンスコットが世話をしていた馬だったのか。どうりで穏やかなはずだ。
私が手綱から手を離すと、マシロも嬉しそうにウィンスコットに駆け寄った。
アーサーはそれがわかっていて、マシロを連れていけと言ったのか。うまく、使われた気もするが二人の嬉しそうな顔を見ると満更でもない気持ちになった。
「あの…」
勝手に穏やかな気持ちになっていると、シリルが切羽詰まったような、緊張した声を出した。
そして、小屋の入り口から出てこないサリアに向かってほんの少し緊張したような笑顔を見せた。
「シーラを助けてくれて、ありがとう。どうしてもお礼が言いたくてきたんだ。僕がいたせいで到着が遅くなってしまったんだ。ごめん」
シリルの言葉を聞いたサリアはグッと涙を堪えて、一歩前に踏み出した。
「当たり前のことを…したまでです。私も、この方に恩があります。だから、その恩をほんの少しだけ返しただけです。」
「シーラを失っていたら、僕はきっと立ち上がれなかった。だから、あなたがいてくれて…よかった。」
シリルの言葉を聞いたサリアはいよいよ我慢できずに泣き崩れてしまった。きっと、今シリルが言った言葉はサリアがずっと欲しかった言葉だ。母親からも父親からも言ってもらえなかった、自身を受け止める優しい言葉。
マシロとの再会を喜んでいたウィンスコットが慌ててサリアの元に駆け寄る。優しく肩を抱いて背中をさすっていた。
「ウィンスコット、戻る気はあるか?」
そう聞くと、ほんの少しも間を空けず、迷わず返事が返ってきた。
「副司令官!!自分はここに居たいです。」
「そうか。実は、この教会以外と犯罪者が隠れ蓑に使おうと近付いてくるらしくてな。辺境伯からここの警備を担当するものを選ぶように言われている。君に任せてもいいだろうか」
「はい!!!ぜひ!!アリアのそばにいたいです!」
これは本当の話で、実はここの教会の神父は元銀軍の爽やかだった初老の男性がやっている。最近盗賊を追い払うのに苦労していると友人である父に相談が来ていたのだ。
ウィンスコットなら、適任だろう。
アリアが密かにウィンスコットの袖の裾を掴んでいる。
そうか、彼は想いを伝えられていたんだ。良かった。
辛い過去を生きてきた彼には幸せになってほしいと思っていたんだ。
マシロとウィンスコットは引き続きこの地に残ることになった。マシロがいれば、買い物も今まで以上にしやすくなるだろう。
助けてもらったお礼としてまとまった金貨をサリアに渡す。
あまり長居をしては、サリアとシリルに良くない、私たちはそのまま小屋を後にした。
次は美味しい食べ物や綺麗な花を持ってまたくるよ。そう伝えるとサリアも穏やかに笑ってくれた。
彼女はきっともう、大丈夫。
________________________________________
いつも、読んでいただきありがとうございます。
お話のストックがここまでとなります。明日からは更新が毎日できなくなるかもしれません。
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