9 / 9
おかえり編
いち
しおりを挟む
「おねぇーさまぁー!もうお昼ですわよ!はやく!早く!!」
いつもは穏やかな診療所にハイカラな可愛らしい声が響く。赤いリボンを輝く黒髪につけた可愛らしい女の子が門の外からこちら側に激しく手を振っている。
午前の診療が伸びてしまい、いつもより門を出るのが遅くなってしまったため、すとーかー…待ち侘びた十六原蘭様が私を呼び寄せている。
「もう!早くしないとあの人が帰ってきてしまうわ」
「そんな事いうなら、先に行っていれば良かったのよ。貴女の婚約者だって、貴女が遅れてきたら悲しむでしょ?」
私は急いで準備をしたせいで少し息を切らしながら彼女を攻める。私だって久しぶりに右京と会うんだから、おしゃれをしたかったのに…
服はいつも町に出かけるような簡素なワンピース。
靴はボロボロのブーツのままだし髪もボサボサだ。
はぁ、とため息をつくと目の前に馬車が停まった。
「さぁ!我が家へいきますわよ!お姉様に似合いそうなワンピースをもちろん堂ヶ島隊長ツケで購入してありますの。選んだのはもちろん、ワタクシです。お姉様の体のことは私が一番よーく知っておりますから。肌の色、バスト、ウエストのサイズ。足の長さに手の長さ、まさか、堂ヶ島隊長になんて選ばせられません。えぇ、ワタクシのお姉様なんですから」
蘭様は聞き取りキレないほどの情報をばーーーっと喋ってさっさと馬車に私を積み込んでしまった。
そのまま何故か十六原邸へ連れ込まれ、お湯につけられたかと思ったら、化粧を施され、薄い藤色のワンピースをきせられてしまった。
「あの、何だかピッタリとくっついていてその…」
いつもの服よりも上半身がキツくピッタリと肌にくっついている。ウエスト部分からはたっぷりの布でスカートが伸びているが、これでは…
「あぁ、お姉様でないと着こなせない…豊満なバスト、くびれた腰!!!なんて美しいの!!!」
詰襟になっているため胸は見えないが袖が一切ないデザインのため、気をつけなければ横から胸が見えてしまいそうだ。
恥ずかしくてもじもじしていると、
「絶対見えないから大丈夫ですよ!さあ!!行きましょう!!」
とまた馬車に乗せられて運ばれることになった。
蘭様はピンクの可愛らしいレースのワンピースを着ている。私もああいうのが良かった…
ともらしたら『これはお子ちゃまが着るものですわ。お姉様には似合わないのです』と何故か自信満々にいわれましたわ。
蘭様はずっと隣に座り、手を握りながら最近の出来事を話してくれました。
十六原将軍に聞いた話では、右京は早く帰りたいがために、討伐予定のゴロツキを徹底的に潰して回っていたらしい。
そのせいで少しやつれたとか…
そんなに無理をしないで欲しいと思い、窓の外を眺めていると、何故か蘭様が顔を赤らめてため息をついていたわ。婚約者の方にお会いするのが楽しみなのね…
しばらく走ると馬車はとまり、詰所に到着した。
ざわざわと門のあたりが騒がしく遠征部隊がすでに帰ってきているようだった。
ドキンと胸が高鳴り、手が少し震えた。やっと会えるのね…手紙のやり取りも出来なかった、せっかく思い会えたのに一切あえなくなってしまったのでとても寂しかったのだ。
胸を高ならせながら馬車を降りようと扉を開けた途端に腕を引かれて硬くて暖かい何かに思い切り飛び込んだ。
「桜子…会いたかった。」
耳元で低い心地の良い声で囁かれ鳥肌が立つ。
少し背中が空いたデザインのワンピースのせいでゴタゴタとした手で背中を撫でられ思わず背を逸らしてしまう。
「う…右京…おかえり…なさい」
「ただいま」
たった8日、されど8日。付き合い始めたばかりの二人にとっては長い長い8日だった。
周りに人がいなかったら、私は右京の胸に縋って泣いていたかもしれない。
無事に帰ってくる保証もないのだから、怪我もなく健康にまた会えたことが嬉しかった。
「堂ヶ島、まだ報告が終わっていないんだ、さっさと仕事をしろ」
再会を喜んでいたがどうやらまだ職務が残っていたらしい、私はつい嬉しくてお邪魔をしてしまったんだと慌てて体を話して声がした方へ振り返り頭を下げる。
「すみません、一般人がお邪魔をいたしました」
「…先生?」
その言葉に顔を上げると、右京より少し身長が高い細身の男性が驚いた顔で立っていた。
パッチリと大きな目は薄茶色に輝いている。髪も黒よりは茶色、光に当たると少し赤く見えるくらいだった。
「あ…はい。いつもお世話になっています。」
「…堂ヶ島の…婚約者って先生?」
「え?」
婚約までは…と訂正しなければと思って声を出した途端に右京が腰をぐいっと自分へよせ、抱きしめてくれた。
「妻だ。」
そう、強く言い放った。
いつもは穏やかな診療所にハイカラな可愛らしい声が響く。赤いリボンを輝く黒髪につけた可愛らしい女の子が門の外からこちら側に激しく手を振っている。
午前の診療が伸びてしまい、いつもより門を出るのが遅くなってしまったため、すとーかー…待ち侘びた十六原蘭様が私を呼び寄せている。
「もう!早くしないとあの人が帰ってきてしまうわ」
「そんな事いうなら、先に行っていれば良かったのよ。貴女の婚約者だって、貴女が遅れてきたら悲しむでしょ?」
私は急いで準備をしたせいで少し息を切らしながら彼女を攻める。私だって久しぶりに右京と会うんだから、おしゃれをしたかったのに…
服はいつも町に出かけるような簡素なワンピース。
靴はボロボロのブーツのままだし髪もボサボサだ。
はぁ、とため息をつくと目の前に馬車が停まった。
「さぁ!我が家へいきますわよ!お姉様に似合いそうなワンピースをもちろん堂ヶ島隊長ツケで購入してありますの。選んだのはもちろん、ワタクシです。お姉様の体のことは私が一番よーく知っておりますから。肌の色、バスト、ウエストのサイズ。足の長さに手の長さ、まさか、堂ヶ島隊長になんて選ばせられません。えぇ、ワタクシのお姉様なんですから」
蘭様は聞き取りキレないほどの情報をばーーーっと喋ってさっさと馬車に私を積み込んでしまった。
そのまま何故か十六原邸へ連れ込まれ、お湯につけられたかと思ったら、化粧を施され、薄い藤色のワンピースをきせられてしまった。
「あの、何だかピッタリとくっついていてその…」
いつもの服よりも上半身がキツくピッタリと肌にくっついている。ウエスト部分からはたっぷりの布でスカートが伸びているが、これでは…
「あぁ、お姉様でないと着こなせない…豊満なバスト、くびれた腰!!!なんて美しいの!!!」
詰襟になっているため胸は見えないが袖が一切ないデザインのため、気をつけなければ横から胸が見えてしまいそうだ。
恥ずかしくてもじもじしていると、
「絶対見えないから大丈夫ですよ!さあ!!行きましょう!!」
とまた馬車に乗せられて運ばれることになった。
蘭様はピンクの可愛らしいレースのワンピースを着ている。私もああいうのが良かった…
ともらしたら『これはお子ちゃまが着るものですわ。お姉様には似合わないのです』と何故か自信満々にいわれましたわ。
蘭様はずっと隣に座り、手を握りながら最近の出来事を話してくれました。
十六原将軍に聞いた話では、右京は早く帰りたいがために、討伐予定のゴロツキを徹底的に潰して回っていたらしい。
そのせいで少しやつれたとか…
そんなに無理をしないで欲しいと思い、窓の外を眺めていると、何故か蘭様が顔を赤らめてため息をついていたわ。婚約者の方にお会いするのが楽しみなのね…
しばらく走ると馬車はとまり、詰所に到着した。
ざわざわと門のあたりが騒がしく遠征部隊がすでに帰ってきているようだった。
ドキンと胸が高鳴り、手が少し震えた。やっと会えるのね…手紙のやり取りも出来なかった、せっかく思い会えたのに一切あえなくなってしまったのでとても寂しかったのだ。
胸を高ならせながら馬車を降りようと扉を開けた途端に腕を引かれて硬くて暖かい何かに思い切り飛び込んだ。
「桜子…会いたかった。」
耳元で低い心地の良い声で囁かれ鳥肌が立つ。
少し背中が空いたデザインのワンピースのせいでゴタゴタとした手で背中を撫でられ思わず背を逸らしてしまう。
「う…右京…おかえり…なさい」
「ただいま」
たった8日、されど8日。付き合い始めたばかりの二人にとっては長い長い8日だった。
周りに人がいなかったら、私は右京の胸に縋って泣いていたかもしれない。
無事に帰ってくる保証もないのだから、怪我もなく健康にまた会えたことが嬉しかった。
「堂ヶ島、まだ報告が終わっていないんだ、さっさと仕事をしろ」
再会を喜んでいたがどうやらまだ職務が残っていたらしい、私はつい嬉しくてお邪魔をしてしまったんだと慌てて体を話して声がした方へ振り返り頭を下げる。
「すみません、一般人がお邪魔をいたしました」
「…先生?」
その言葉に顔を上げると、右京より少し身長が高い細身の男性が驚いた顔で立っていた。
パッチリと大きな目は薄茶色に輝いている。髪も黒よりは茶色、光に当たると少し赤く見えるくらいだった。
「あ…はい。いつもお世話になっています。」
「…堂ヶ島の…婚約者って先生?」
「え?」
婚約までは…と訂正しなければと思って声を出した途端に右京が腰をぐいっと自分へよせ、抱きしめてくれた。
「妻だ。」
そう、強く言い放った。
0
お気に入りに追加
7
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
年下の彼氏には同い年の女性の方がお似合いなので、別れ話をしようと思います!
ほったげな
恋愛
私には年下の彼氏がいる。その彼氏が同い年くらいの女性と街を歩いていた。同じくらいの年の女性の方が彼には似合う。だから、私は彼に別れ話をしようと思う。
ヤンデレ幼馴染が帰ってきたので大人しく溺愛されます
下菊みこと
恋愛
私はブーゼ・ターフェルルンデ。侯爵令嬢。公爵令息で幼馴染、婚約者のベゼッセンハイト・ザンクトゥアーリウムにうっとおしいほど溺愛されています。ここ数年はハイトが留学に行ってくれていたのでやっと離れられて落ち着いていたのですが、とうとうハイトが帰ってきてしまいました。まあ、仕方がないので大人しく溺愛されておきます。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる