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過去編
ぜろ.に
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ふと、馬のお腹の辺りに目をやると微かに動いている。
その時、馬に押し潰された子どもが、救出された途端、わぁん!!と泣いた。
その泣き声にびっくりした馬が意識を取り戻し足をバタバタさせる。大人たちが慌てて距離を取る中、泣いている子どもが逃げ遅れた。彼女なら、助けに飛び込むかもしれない。
そう思った瞬間体が動いていた。
音の無いスローモーションの世界。
彼女の元に辿り着いた時には、馬の蹄が目の前にあった慌てて彼女を抱え込む。
少し間に合わなかったのか、彼女の白い肌にクッキリと赤い裂傷がついてしまった。
更に心臓近くに衝撃を受けた為か、ぐったりとその場に倒れ込んでしまった。
礼央先生が物凄い勢いで走ってきてその場で胸元を開き止血したり、マッサージをしたりする。
俺はその光景が見えないよう、上着を脱いで隠した。
腕の痛みに気がついたのは、彼女の応急措置が終わってからだった。
ジリジリと熱い痛みが、徐々に裂けるような痛みに変わる。素人でもわかる。骨が折れている。ハッキリと裂傷がみえる。詳しく聞きたく無いと思うので誤魔化すが、重症だ。
幸い利き手では無いので、動かさないようにしてその場を去ろうとした。
桜子さんの治療が一通り終わったのか、街の人たちと共に担架に乗せられた桜子さんが運ばれて行く。
真っ青な顔色だが胸がほんの少し上下しているのが見える。そこで少し足を止めたのがいけなかった。
慌ただしく怪我の治療をしていた礼央先生に見つかってしまい、グッと肩を掴まれる。
見た目は華奢なのだが、意外と力があり傷が痛むのもあって抵抗できない。
「おい!!右京くんどこにいくんだ!君も治療が必要だ。すぐそこの僕の治療院にきて!!早く!!」
物凄い剣幕で詰め寄られ、あっという間に連れていかれることとなった。
診療所につくと、小さな子どもたちがパタパタと走り回っていた。皆、目に涙を溜めている。先に運び込まれていた桜子さんのところへ行っては何かを取りに行く、何をしているのかと近寄ろうとしたら、礼央先生に呼ばれた。
傷口に液体を塗ったり、針と糸で縫われ垂らした後に木の板や包帯でぐるぐるに巻かれる。痛みが激しく、久しぶりに涙が出るほどだった。
「右京くん、ごめん、そしてありがとう。」
治療を終えてふう、と一息ついていると頭の上から震えた声が聞こえた。礼央先生は目に涙を溜めて俺の腕を見つめていた。
「リハビリをして、少しでも回復するようにお手伝いをさせてほしい。それから、何か…恩返しをしたい」
一言ずつ慎重に言葉を選んで喋っているようで、礼央先生は表情がどんどん暗くなっていく。
ああ、元に戻らない可能性もあるんだ。と瞬時に察した。軍にいるとそう言うことが良くあるのだ。
「いえ、これは…俺が好きでやったことですから…」
と、口に出してからあっと思い勢いよく顔をあげる。
コレでは、桜子さんが好きだと言ってるようなものだ。
「やっぱりそうなんだ、桜子は、気難しいよ?いいの?」
「でも…俺の方は経歴に傷がありますから…」
「…桜子には婚約者もいるんだ。」
「…」
「お互い愛し合ってはいないみたいだけど。まだ入り込む余地は…あるよ?」
「…先生、俺にもチャンスをくれませんか?」
それが、俺と先生との取引の始まりだった。
その時、馬に押し潰された子どもが、救出された途端、わぁん!!と泣いた。
その泣き声にびっくりした馬が意識を取り戻し足をバタバタさせる。大人たちが慌てて距離を取る中、泣いている子どもが逃げ遅れた。彼女なら、助けに飛び込むかもしれない。
そう思った瞬間体が動いていた。
音の無いスローモーションの世界。
彼女の元に辿り着いた時には、馬の蹄が目の前にあった慌てて彼女を抱え込む。
少し間に合わなかったのか、彼女の白い肌にクッキリと赤い裂傷がついてしまった。
更に心臓近くに衝撃を受けた為か、ぐったりとその場に倒れ込んでしまった。
礼央先生が物凄い勢いで走ってきてその場で胸元を開き止血したり、マッサージをしたりする。
俺はその光景が見えないよう、上着を脱いで隠した。
腕の痛みに気がついたのは、彼女の応急措置が終わってからだった。
ジリジリと熱い痛みが、徐々に裂けるような痛みに変わる。素人でもわかる。骨が折れている。ハッキリと裂傷がみえる。詳しく聞きたく無いと思うので誤魔化すが、重症だ。
幸い利き手では無いので、動かさないようにしてその場を去ろうとした。
桜子さんの治療が一通り終わったのか、街の人たちと共に担架に乗せられた桜子さんが運ばれて行く。
真っ青な顔色だが胸がほんの少し上下しているのが見える。そこで少し足を止めたのがいけなかった。
慌ただしく怪我の治療をしていた礼央先生に見つかってしまい、グッと肩を掴まれる。
見た目は華奢なのだが、意外と力があり傷が痛むのもあって抵抗できない。
「おい!!右京くんどこにいくんだ!君も治療が必要だ。すぐそこの僕の治療院にきて!!早く!!」
物凄い剣幕で詰め寄られ、あっという間に連れていかれることとなった。
診療所につくと、小さな子どもたちがパタパタと走り回っていた。皆、目に涙を溜めている。先に運び込まれていた桜子さんのところへ行っては何かを取りに行く、何をしているのかと近寄ろうとしたら、礼央先生に呼ばれた。
傷口に液体を塗ったり、針と糸で縫われ垂らした後に木の板や包帯でぐるぐるに巻かれる。痛みが激しく、久しぶりに涙が出るほどだった。
「右京くん、ごめん、そしてありがとう。」
治療を終えてふう、と一息ついていると頭の上から震えた声が聞こえた。礼央先生は目に涙を溜めて俺の腕を見つめていた。
「リハビリをして、少しでも回復するようにお手伝いをさせてほしい。それから、何か…恩返しをしたい」
一言ずつ慎重に言葉を選んで喋っているようで、礼央先生は表情がどんどん暗くなっていく。
ああ、元に戻らない可能性もあるんだ。と瞬時に察した。軍にいるとそう言うことが良くあるのだ。
「いえ、これは…俺が好きでやったことですから…」
と、口に出してからあっと思い勢いよく顔をあげる。
コレでは、桜子さんが好きだと言ってるようなものだ。
「やっぱりそうなんだ、桜子は、気難しいよ?いいの?」
「でも…俺の方は経歴に傷がありますから…」
「…桜子には婚約者もいるんだ。」
「…」
「お互い愛し合ってはいないみたいだけど。まだ入り込む余地は…あるよ?」
「…先生、俺にもチャンスをくれませんか?」
それが、俺と先生との取引の始まりだった。
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