43 / 45
42・皇帝セノピア
しおりを挟む
皇宮に入ると早速謁見室へと案内された。先に到着していたルビィとノウンが扉の前で待っていて、「おそいわよ」とまたくたびれた様な顔をしていた。
重厚な扉が開かれると、真っ直ぐ伸びた赤い絨毯、そして10段ほどの階段と続き、その段の上に皇帝陛下が金の縁取りの背もたれの大きな椅子に腰掛けていた。
銀髪の輝く様な長い髪を緩く後ろでまとめ、透けてしまいそうなほど綺麗な水色の瞳を輝かせていた。
まだ距離があるので表情を正確に読み取れないが、微笑んでいる様に見える。
緊張で震える足を動かして前に進むと、大きな柱の影になっていて見えなかったが、階段のすぐ下のひらけた場所にコンラッドが立っていた。
青と言うよりは紺に近い暗めの軍服を着ている。装飾品のチェーンや刺繍が白に近い金が使われている。
お母様がこっそりと「あなたの色がたくさんね」と囁いてきて、とても恥ずかしくなり頬に熱が集まる。
そのタイミングでコンラッドがこちらを見た。
心臓が大きく跳ねる様な気がした。
会いたくて、会いたくて、無意味にギルドへ足を運んだ。手紙にも会いたいと書いた。
もう会えないんじゃないかと、不安になっていた。
だから、目が合った瞬間にこちらへ手を差し伸べて「おいで」と言ってくれた事が嬉しくて、一筋涙が溢れるのを我慢できなかった。
「待たせてごめんね。オリヴィア、やっと手を取れる」
澄んだ空の様なアイスブルーの瞳がスッと細められ、形の整った唇が弧を描く。他の人が中々みる事ができないこの笑顔が向けられることに心から安心してしまった。
「コンラッド…会いたかった…」
「コンラッドよ。その可憐な子がオリヴィア・ワンフルールか?」
ふと、階段の上から澄んだ様なよく通る声が響いた。
人前…と言うか皇帝陛下の目の前であったことを思い出し慌てて正面を向うとするとお父様はじめ、ワンフルール家の皆が私の前へと並ぶ。
「おお、ワンフルール、そう怒るな。俺だって反省してるんだ。ヴィクトールの話だけを信じて結婚の許可を出してしまった。悪かったと思っている。」
陛下はお父様に向かって親しそうに話しかけている。
ただの子爵であるお父様と陛下、なぜ?と首を傾げているとお父様の口からとんでもない言葉が飛び出してきた。
「一言、俺に確認を取ればよかったんだ。全く。昔からお前はつめがあまいんだよ!俺の大事なオリヴィアに何かあったらどうするつもりだったんだ。」
「?!」
腕を組んで殺気をダダ漏れにして、お父様は皇帝陛下を睨みつけていた。
「ヴィクトールが、『相手はもう邸に住んでいて想い合っている。早く許可が欲しい』と言ってきたんだ。今まで報奨を欲しがったことのない英雄の願いを叶えてやりたいと思ったのさ。まさか、別人がオリヴィア嬢になりすましているとは思わなかったんだ。ヴィクトールの中で治癒魔法をかけた相手はアリーナ嬢、俺たちの中ではオリヴィア嬢。そこが間違っているって気づいた時には全身から血の気が引いたよ」
「お前の弟のコンラッドが長年、求婚していた相手がオリヴィアだと、知っていただろ?なぜ許可を出した?」
「えー?だってコンラッドって執着心凄いからさ、ヴィクトールとオリヴィアが愛し合ってんのに邪魔してんのかと思ったんだよだから、皇帝命令で結婚させてやればコンラッドも邪魔できないかなーって思って」
「バカだバカだと思っていたが、バカだったな」
「おおおおお父様!!皇帝陛下にそんなこと言っていいんですか?!!?」
お父様の砕けた様子にたまらず腕を掴んでとめにはいる。すると壇上の陛下とバチっと目が合った。
「ワンフルール子爵は俺の親友なんだ。昔から世話になっているのさ。大事な弟も育ててもらったしな俺は頭が上がらないんだよ」
「オリヴィア、いいか、ガツンと言ってやっていい。こいつは反省してる風にするのが上手いんだ。」
「ひどいなぁ。流石に今回は反省してるよ。精霊と契約してしまったお嬢さんが帝国のいい様にされない様にさっさと婚姻させてしまおうとして焦ってたんだ。下手したら俺と結婚することになってたんだからね!親と同じ年齢の俺と結婚なんてヤでしょ?!」
大人2人の間でポンポンと進む話についていけず、頭がショートしそうだった。
つまり、皇帝陛下もわたしを守ろうとしてくださっていたと言う事か…
グルグルと話を整理しようとしていたら、コンラッドが優しく手を握ってくれた。ふと顔を上げるとおでこに唇が落とされる。
「星の王子様になっても守ってくれるんだよね?」
え?今?と思ったがコクンと頷く。
「兄上、オリヴィアが俺の妻になってくれるそうだ。約束通り、皇太子として皇宮にはいるよ。だから、オリヴィアはもう大丈夫。」
突然の妻発言に顔が真っ赤になる。そんな私を他所に家族や陛下は「わーおめでとうー」と祝福している。
どうやら事情を飲み込めていないのは私だけだった様だ。
重厚な扉が開かれると、真っ直ぐ伸びた赤い絨毯、そして10段ほどの階段と続き、その段の上に皇帝陛下が金の縁取りの背もたれの大きな椅子に腰掛けていた。
銀髪の輝く様な長い髪を緩く後ろでまとめ、透けてしまいそうなほど綺麗な水色の瞳を輝かせていた。
まだ距離があるので表情を正確に読み取れないが、微笑んでいる様に見える。
緊張で震える足を動かして前に進むと、大きな柱の影になっていて見えなかったが、階段のすぐ下のひらけた場所にコンラッドが立っていた。
青と言うよりは紺に近い暗めの軍服を着ている。装飾品のチェーンや刺繍が白に近い金が使われている。
お母様がこっそりと「あなたの色がたくさんね」と囁いてきて、とても恥ずかしくなり頬に熱が集まる。
そのタイミングでコンラッドがこちらを見た。
心臓が大きく跳ねる様な気がした。
会いたくて、会いたくて、無意味にギルドへ足を運んだ。手紙にも会いたいと書いた。
もう会えないんじゃないかと、不安になっていた。
だから、目が合った瞬間にこちらへ手を差し伸べて「おいで」と言ってくれた事が嬉しくて、一筋涙が溢れるのを我慢できなかった。
「待たせてごめんね。オリヴィア、やっと手を取れる」
澄んだ空の様なアイスブルーの瞳がスッと細められ、形の整った唇が弧を描く。他の人が中々みる事ができないこの笑顔が向けられることに心から安心してしまった。
「コンラッド…会いたかった…」
「コンラッドよ。その可憐な子がオリヴィア・ワンフルールか?」
ふと、階段の上から澄んだ様なよく通る声が響いた。
人前…と言うか皇帝陛下の目の前であったことを思い出し慌てて正面を向うとするとお父様はじめ、ワンフルール家の皆が私の前へと並ぶ。
「おお、ワンフルール、そう怒るな。俺だって反省してるんだ。ヴィクトールの話だけを信じて結婚の許可を出してしまった。悪かったと思っている。」
陛下はお父様に向かって親しそうに話しかけている。
ただの子爵であるお父様と陛下、なぜ?と首を傾げているとお父様の口からとんでもない言葉が飛び出してきた。
「一言、俺に確認を取ればよかったんだ。全く。昔からお前はつめがあまいんだよ!俺の大事なオリヴィアに何かあったらどうするつもりだったんだ。」
「?!」
腕を組んで殺気をダダ漏れにして、お父様は皇帝陛下を睨みつけていた。
「ヴィクトールが、『相手はもう邸に住んでいて想い合っている。早く許可が欲しい』と言ってきたんだ。今まで報奨を欲しがったことのない英雄の願いを叶えてやりたいと思ったのさ。まさか、別人がオリヴィア嬢になりすましているとは思わなかったんだ。ヴィクトールの中で治癒魔法をかけた相手はアリーナ嬢、俺たちの中ではオリヴィア嬢。そこが間違っているって気づいた時には全身から血の気が引いたよ」
「お前の弟のコンラッドが長年、求婚していた相手がオリヴィアだと、知っていただろ?なぜ許可を出した?」
「えー?だってコンラッドって執着心凄いからさ、ヴィクトールとオリヴィアが愛し合ってんのに邪魔してんのかと思ったんだよだから、皇帝命令で結婚させてやればコンラッドも邪魔できないかなーって思って」
「バカだバカだと思っていたが、バカだったな」
「おおおおお父様!!皇帝陛下にそんなこと言っていいんですか?!!?」
お父様の砕けた様子にたまらず腕を掴んでとめにはいる。すると壇上の陛下とバチっと目が合った。
「ワンフルール子爵は俺の親友なんだ。昔から世話になっているのさ。大事な弟も育ててもらったしな俺は頭が上がらないんだよ」
「オリヴィア、いいか、ガツンと言ってやっていい。こいつは反省してる風にするのが上手いんだ。」
「ひどいなぁ。流石に今回は反省してるよ。精霊と契約してしまったお嬢さんが帝国のいい様にされない様にさっさと婚姻させてしまおうとして焦ってたんだ。下手したら俺と結婚することになってたんだからね!親と同じ年齢の俺と結婚なんてヤでしょ?!」
大人2人の間でポンポンと進む話についていけず、頭がショートしそうだった。
つまり、皇帝陛下もわたしを守ろうとしてくださっていたと言う事か…
グルグルと話を整理しようとしていたら、コンラッドが優しく手を握ってくれた。ふと顔を上げるとおでこに唇が落とされる。
「星の王子様になっても守ってくれるんだよね?」
え?今?と思ったがコクンと頷く。
「兄上、オリヴィアが俺の妻になってくれるそうだ。約束通り、皇太子として皇宮にはいるよ。だから、オリヴィアはもう大丈夫。」
突然の妻発言に顔が真っ赤になる。そんな私を他所に家族や陛下は「わーおめでとうー」と祝福している。
どうやら事情を飲み込めていないのは私だけだった様だ。
10
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる