星に願っても叶わないから自分で叶えることにしました

空橋彩

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40・コンラッドの事

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アリーナを拘束して連行した者以外の兵士たちがコンラッドの前に集まる。
お姉様、お兄様は何事もなかったような顔をして隊長の様な人に説明をしている。知っていたのかしら、と聞いてみたいが今は話しかけられそうにない。ひとり置き去りにされたようなそんな気持ちになった。

「コンラッド・ディ・セノピア?」

兵士たちに指示を出しているコンラッドの背中に向けて小さな声で呟いてみる。誰にも聞こえないだろう小さな声だったのだが、当の本人には聞こえていたようで凄い勢いで振り返った彼の顔は不安でいっぱいの様な、何とも言えない表情であった。

「ちゃんと説明しようと思っていたんだ。でも、オリヴィアはこんな事で俺から離れて行かないよね?信じてるから。」

コンラッドがフワッと微笑むと何故か周りの兵士たちがポッと頬を赤らめる。
現セノピア皇帝であるリカルド・アレキサンドロ・ディ・セノピアには若い弟がいるが、病弱のため皇室を出て辺境に引き篭っていると聞いていた。
帝国の儀式や行事があると顔を出していたが、いつも国民の前に現れる時には銀色の仮面をつけて顔を隠していた。
継承権も放棄して、臣下に降っていると噂があったが、臣下どころか冒険者になっていたなんて…それでも、ただの子爵家の娘である私とは棲む世界が違いすぎる。
あれほど願った彼の隣に立つのは難しいかもしれない。

柔らかい大好きな笑顔に「私からは…ね」と曖昧な返事を残して家族の元へと向かう。

ふと肩に重みを感じると、シュバルツが降りてきていた。ルビィとノウンは国賓として…皇帝陛下の元へと行ったらしい。おそらく、グールや魅了魔法のことを説明しに行ったのだろう。

「俺様がオリヴィアの護衛だ!」

と張り切ってくれている小さな友達を見ると、安心する。

「私は、本当に何もできないのね。今回だって役に立たないし。ヴィクトール卿だって助けてあげられなかった」

そう、ヴィクトール卿は強い魅了魔法にかかりすぎていたのか意識不明のまま倒れてしまい国立の治療院に運び込まれ魔術師や魔法使い、錬金術師たちがあらゆる手を使って治療するらしい。

「俺様はオリヴィアがいてくれると嬉しくなるぞ。怪我をしても心配してくれる。魔獣の俺様もかっこいいと言ってくれる。当たり前にできそうでできないことをしてもらえるっていうのは嬉しいもんだ」

「ありがとう。シュバルツも、優しいから大好きよ」

「俺様はいつだって、優しいからな!」

「ふふ、そうね。」

こうして、ツーデン邸で過ごす日々は終わりを告げた。
屋敷から助け出した使用人達は私が魔法を使うところを実際に見ていたようで口々に疑いをかけたことへの謝罪を述べた。
しかし、あの二人だけは姿を現さず仕舞いであった。
後から聞いた話では“軽く謝罪する機会など与えない。正式に謝罪をせよ”とお兄様とお姉様が圧力をかけ近づかないようにしたとか。
男爵家に抗議の文も出してくれたようで、ワンフルール家に両親ごと謝罪に来るのはもう少し後のお話である。

私の短い結婚生活は、愛する人たちのおかげで無事、幕を閉じた。

それから、2週間後のことである。ヴィクトール卿が回復したということで結婚の取り消し手続きのため、皇帝陛下に呼び出され、皇宮に向かうことになる。
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