38 / 45
37・腕輪にこだわるわけ
しおりを挟む
「やっと、キャラが揃ってきたわ!あとはイフリートと、皇子様よ。早く皇宮に行きたいわ。」
アリーナはうっとりとした視線でルビィを見つめながらブツブツと何か呟いた後にパッと私に視線を移し、指を刺してくる。
「あんたがシナリオ通りに動かないからホンッとに大変だったのよ!?その腕輪、あたしが貰うはずのものなんだから!返してよね。」
先程までのうっとりとした顔つきとはガラリと代わり、きつい目つきで睨みつけてくる。
「私があなたの思い通りに動かないなんて当たり前じゃない。何を言ってるの?これは私のものよ。返せという意味がわからないわ」
「うふふ、わかってないのね。ヴィクトールは指輪、コンラッドは腕輪、イフリートはネックレス、皇子は耳飾り、コンプリートすると皇帝陛下とのストーリーが進められるのよ!ほら!自分から渡したほうが良いわよ?それにイフリートも、いつまでそちらにいるの?早くこちらへきてよ。」
アリーナが黄色い指輪をはめた左手を前に差し出す。
ヴィクトール卿がその手をそっととり、手の甲に口付けをする。そして、私を見て眉間に深い皺をよせた。
それはまるで、泣きたいのを我慢している子どものようだった。
『ヴィクトール、苦しいのか。ワシが守れなかったから…すまない』
『グールとあなたじゃ相性が悪すぎるのよ。私もあの仲間に入れだなんてちゃんちゃらおかしいわよ』
ルビィが心底嫌そうにしっしっと手をヒラヒラさせる。
コンラッドは、ボーッとした様子でずっとアリーナの横顔を見つめているいつもは暖かく感じるアイスブルーの瞳が冷たく凍りついているようだ。
「まぁ、いいわぁ。ここであんたの心を折っておかないと後で困るのよね。」
苦しげなヴィクトール卿にアリーナが何か呟くと、アリーナの手を離し、今度は手のひらを地面にペタリとつけてボソボソと何かを呟いた。
稲妻のような光が一瞬で地面を這ってくる。
電光石火の様な速さだが、大地の精霊の方が一枚上手のようだ。
『ちっ!』
とノウンが舌打ちをしたとたん、大木が目の前に現れ、私たちを地を這う稲妻から守ってくれた。ルビィが私を抱えて壊れた小屋から出ると先程までいた離れは竜巻で空へと巻き上げられていた。
『あの黒いのはウサギの小僧だろ?何者だ?』
『強いのよ。守る為に強くしちゃったのよぉ』
ノウンはシュバルツとベティを抱えた動く木に乗って空から降ってきた。
すかさず、何本もの雷が襲いかかる、動く木とルビィがものすごい速さで全て避けてくれる。
『英雄様も厄介ね。燃やして良い?』
『ダメじゃ!たすけるとやくそくしたろ?!』
コンラッドとヴィクトール卿が人質の様なものになりうまく手が出せず防御一方になってしまう、ふと雷が止んだと思ったら、突然超音波の様な、サイレンの様なキィンと言うような音が鳴る。
『いかん!』
『聞いちゃダメよ!』
ルビィが咄嗟に私を地面に降ろし、私の耳を塞ごうとするが間に合わず…
《動くな》
地の底から響いてくるような、低く深い声が響いたと思ったら、無数の黒い手が地面から生えてきて私たちの足を掴んで動きを封じられる。
攻撃を受けてしまう、と思い唯一動く目線をあちらの3人にむけると、綺麗なブルーの瞳が目の前にあった。
「コンラッド…?」
いつの間にか目の前にいたコンラッドと見つめあっていた。
フワッといつもの優しい香りがする。温かい春のような香りだ。だけど、その顔にいつもの笑顔も、その手に暖かさもない。動かない私の手首にそっと冷たい手が添えられる。
「や、やだ。やめて…」
ポロポロと涙が勝手に流れ落ちる。
「コンラッドがくれたんだよ?お願い、持って行かないで大事なの」
コンラッドは手のひらで引っかかって抜けないブレスレットを引き抜こうと反対の手でぎゅっと私の手を握る。
「いや…やだ!!」
『こんの!!』
ルビィが魔法陣を展開して黒い手を焼き尽くそうとするが、コンラッドが私の周りに竜巻を起こしその炎が届かないようにしているようだ。
ついに、ブレスレットは私の手から抜けてコンラッドの手の中に収まる。何も言わずにクルリと踵を返して私に背を向ける。
「ど…して…」
あなたなの。
と呟いた瞬間に周りの竜巻も黒い手も消え、コンラッドも消えていた。
慌ててルビィとノウンが私に駆け寄った瞬間にアリーナの笑い声が響く。
「あっはははは!!あれー?大切な人にもらったんだよねー?返してって言われちゃったね。かわいそー!」
ケラケラと笑うアリーナにブレスレットを渡すコンラッドの背中が見えた。そのまま、アリーナはコンラッドに抱きつきありがとう!と頬にキスをした。
「さてと、無理矢理でもこちらにきてもらわなくちゃだね。イフリート。あなた、この子が苦手なんでしょう?グール!あとは任せるわよ」
アリーナが呼ぶと、丁度アリーナの後ろの地面がドロドロととけ、真っ暗な影の中から真っ白な男の人が現れた。
その顔は見覚えがある。そう。ルビィとほとんど同じ顔。だけど髪は透き通るほど白く、目は輝くような銀色で少し垂れ目でルビィより儚く、脆く見える。
『グール』
ルビィが呼ぶとニタッと口元を歪めてグールの視線がこちらを捉えた。
アリーナはうっとりとした視線でルビィを見つめながらブツブツと何か呟いた後にパッと私に視線を移し、指を刺してくる。
「あんたがシナリオ通りに動かないからホンッとに大変だったのよ!?その腕輪、あたしが貰うはずのものなんだから!返してよね。」
先程までのうっとりとした顔つきとはガラリと代わり、きつい目つきで睨みつけてくる。
「私があなたの思い通りに動かないなんて当たり前じゃない。何を言ってるの?これは私のものよ。返せという意味がわからないわ」
「うふふ、わかってないのね。ヴィクトールは指輪、コンラッドは腕輪、イフリートはネックレス、皇子は耳飾り、コンプリートすると皇帝陛下とのストーリーが進められるのよ!ほら!自分から渡したほうが良いわよ?それにイフリートも、いつまでそちらにいるの?早くこちらへきてよ。」
アリーナが黄色い指輪をはめた左手を前に差し出す。
ヴィクトール卿がその手をそっととり、手の甲に口付けをする。そして、私を見て眉間に深い皺をよせた。
それはまるで、泣きたいのを我慢している子どものようだった。
『ヴィクトール、苦しいのか。ワシが守れなかったから…すまない』
『グールとあなたじゃ相性が悪すぎるのよ。私もあの仲間に入れだなんてちゃんちゃらおかしいわよ』
ルビィが心底嫌そうにしっしっと手をヒラヒラさせる。
コンラッドは、ボーッとした様子でずっとアリーナの横顔を見つめているいつもは暖かく感じるアイスブルーの瞳が冷たく凍りついているようだ。
「まぁ、いいわぁ。ここであんたの心を折っておかないと後で困るのよね。」
苦しげなヴィクトール卿にアリーナが何か呟くと、アリーナの手を離し、今度は手のひらを地面にペタリとつけてボソボソと何かを呟いた。
稲妻のような光が一瞬で地面を這ってくる。
電光石火の様な速さだが、大地の精霊の方が一枚上手のようだ。
『ちっ!』
とノウンが舌打ちをしたとたん、大木が目の前に現れ、私たちを地を這う稲妻から守ってくれた。ルビィが私を抱えて壊れた小屋から出ると先程までいた離れは竜巻で空へと巻き上げられていた。
『あの黒いのはウサギの小僧だろ?何者だ?』
『強いのよ。守る為に強くしちゃったのよぉ』
ノウンはシュバルツとベティを抱えた動く木に乗って空から降ってきた。
すかさず、何本もの雷が襲いかかる、動く木とルビィがものすごい速さで全て避けてくれる。
『英雄様も厄介ね。燃やして良い?』
『ダメじゃ!たすけるとやくそくしたろ?!』
コンラッドとヴィクトール卿が人質の様なものになりうまく手が出せず防御一方になってしまう、ふと雷が止んだと思ったら、突然超音波の様な、サイレンの様なキィンと言うような音が鳴る。
『いかん!』
『聞いちゃダメよ!』
ルビィが咄嗟に私を地面に降ろし、私の耳を塞ごうとするが間に合わず…
《動くな》
地の底から響いてくるような、低く深い声が響いたと思ったら、無数の黒い手が地面から生えてきて私たちの足を掴んで動きを封じられる。
攻撃を受けてしまう、と思い唯一動く目線をあちらの3人にむけると、綺麗なブルーの瞳が目の前にあった。
「コンラッド…?」
いつの間にか目の前にいたコンラッドと見つめあっていた。
フワッといつもの優しい香りがする。温かい春のような香りだ。だけど、その顔にいつもの笑顔も、その手に暖かさもない。動かない私の手首にそっと冷たい手が添えられる。
「や、やだ。やめて…」
ポロポロと涙が勝手に流れ落ちる。
「コンラッドがくれたんだよ?お願い、持って行かないで大事なの」
コンラッドは手のひらで引っかかって抜けないブレスレットを引き抜こうと反対の手でぎゅっと私の手を握る。
「いや…やだ!!」
『こんの!!』
ルビィが魔法陣を展開して黒い手を焼き尽くそうとするが、コンラッドが私の周りに竜巻を起こしその炎が届かないようにしているようだ。
ついに、ブレスレットは私の手から抜けてコンラッドの手の中に収まる。何も言わずにクルリと踵を返して私に背を向ける。
「ど…して…」
あなたなの。
と呟いた瞬間に周りの竜巻も黒い手も消え、コンラッドも消えていた。
慌ててルビィとノウンが私に駆け寄った瞬間にアリーナの笑い声が響く。
「あっはははは!!あれー?大切な人にもらったんだよねー?返してって言われちゃったね。かわいそー!」
ケラケラと笑うアリーナにブレスレットを渡すコンラッドの背中が見えた。そのまま、アリーナはコンラッドに抱きつきありがとう!と頬にキスをした。
「さてと、無理矢理でもこちらにきてもらわなくちゃだね。イフリート。あなた、この子が苦手なんでしょう?グール!あとは任せるわよ」
アリーナが呼ぶと、丁度アリーナの後ろの地面がドロドロととけ、真っ暗な影の中から真っ白な男の人が現れた。
その顔は見覚えがある。そう。ルビィとほとんど同じ顔。だけど髪は透き通るほど白く、目は輝くような銀色で少し垂れ目でルビィより儚く、脆く見える。
『グール』
ルビィが呼ぶとニタッと口元を歪めてグールの視線がこちらを捉えた。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる