星に願っても叶わないから自分で叶えることにしました

空橋彩

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37・腕輪にこだわるわけ

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「やっと、キャラが揃ってきたわ!あとはイフリートと、皇子様よ。早く皇宮に行きたいわ。」

アリーナはうっとりとした視線でルビィを見つめながらブツブツと何か呟いた後にパッと私に視線を移し、指を刺してくる。

「あんたがシナリオ通りに動かないからホンッとに大変だったのよ!?その腕輪、あたしが貰うはずのものなんだから!返してよね。」

先程までのうっとりとした顔つきとはガラリと代わり、きつい目つきで睨みつけてくる。

「私があなたの思い通りに動かないなんて当たり前じゃない。何を言ってるの?これは私のものよ。返せという意味がわからないわ」

「うふふ、わかってないのね。ヴィクトールは指輪、コンラッドは腕輪、イフリートはネックレス、皇子は耳飾り、コンプリートすると皇帝陛下とのストーリーが進められるのよ!ほら!自分から渡したほうが良いわよ?それにイフリートも、いつまでそちらにいるの?早くこちらへきてよ。」

アリーナが黄色い指輪をはめた左手を前に差し出す。
ヴィクトール卿がその手をそっととり、手の甲に口付けをする。そして、私を見て眉間に深い皺をよせた。
それはまるで、泣きたいのを我慢している子どものようだった。

『ヴィクトール、苦しいのか。ワシが守れなかったから…すまない』

『グールとあなたじゃ相性が悪すぎるのよ。私もあの仲間に入れだなんてちゃんちゃらおかしいわよ』

ルビィが心底嫌そうにしっしっと手をヒラヒラさせる。
コンラッドは、ボーッとした様子でずっとアリーナの横顔を見つめているいつもは暖かく感じるアイスブルーの瞳が冷たく凍りついているようだ。

「まぁ、いいわぁ。ここであんたの心を折っておかないと後で困るのよね。」

苦しげなヴィクトール卿にアリーナが何か呟くと、アリーナの手を離し、今度は手のひらを地面にペタリとつけてボソボソと何かを呟いた。
稲妻のような光が一瞬で地面を這ってくる。
電光石火の様な速さだが、大地の精霊の方が一枚上手のようだ。

『ちっ!』

とノウンが舌打ちをしたとたん、大木が目の前に現れ、私たちを地を這う稲妻から守ってくれた。ルビィが私を抱えて壊れた小屋から出ると先程までいた離れは竜巻で空へと巻き上げられていた。

『あの黒いのはウサギの小僧だろ?何者だ?』

『強いのよ。守る為に強くしちゃったのよぉ』

ノウンはシュバルツとベティを抱えた動く木に乗って空から降ってきた。
すかさず、何本もの雷が襲いかかる、動く木とルビィがものすごい速さで全て避けてくれる。

『英雄様も厄介ね。燃やして良い?』

『ダメじゃ!たすけるとやくそくしたろ?!』

コンラッドとヴィクトール卿が人質の様なものになりうまく手が出せず防御一方になってしまう、ふと雷が止んだと思ったら、突然超音波の様な、サイレンの様なキィンと言うような音が鳴る。

『いかん!』
『聞いちゃダメよ!』

ルビィが咄嗟に私を地面に降ろし、私の耳を塞ごうとするが間に合わず…


《動くな》


地の底から響いてくるような、低く深い声が響いたと思ったら、無数の黒い手が地面から生えてきて私たちの足を掴んで動きを封じられる。
攻撃を受けてしまう、と思い唯一動く目線をあちらの3人にむけると、綺麗なブルーの瞳が目の前にあった。

「コンラッド…?」

いつの間にか目の前にいたコンラッドと見つめあっていた。
フワッといつもの優しい香りがする。温かい春のような香りだ。だけど、その顔にいつもの笑顔も、その手に暖かさもない。動かない私の手首にそっと冷たい手が添えられる。

「や、やだ。やめて…」

ポロポロと涙が勝手に流れ落ちる。

「コンラッドがくれたんだよ?お願い、持って行かないで大事なの」

コンラッドは手のひらで引っかかって抜けないブレスレットを引き抜こうと反対の手でぎゅっと私の手を握る。

「いや…やだ!!」

『こんの!!』

ルビィが魔法陣を展開して黒い手を焼き尽くそうとするが、コンラッドが私の周りに竜巻を起こしその炎が届かないようにしているようだ。

ついに、ブレスレットは私の手から抜けてコンラッドの手の中に収まる。何も言わずにクルリと踵を返して私に背を向ける。

「ど…して…」

あなたなの。

と呟いた瞬間に周りの竜巻も黒い手も消え、コンラッドも消えていた。
慌ててルビィとノウンが私に駆け寄った瞬間にアリーナの笑い声が響く。

「あっはははは!!あれー?大切な人にもらったんだよねー?返してって言われちゃったね。かわいそー!」

ケラケラと笑うアリーナにブレスレットを渡すコンラッドの背中が見えた。そのまま、アリーナはコンラッドに抱きつきありがとう!と頬にキスをした。

「さてと、無理矢理でもこちらにきてもらわなくちゃだね。イフリート。あなた、この子が苦手なんでしょう?グール!あとは任せるわよ」

アリーナが呼ぶと、丁度アリーナの後ろの地面がドロドロととけ、真っ暗な影の中から真っ白な男の人が現れた。
その顔は見覚えがある。そう。ルビィとほとんど同じ顔。だけど髪は透き通るほど白く、目は輝くような銀色で少し垂れ目でルビィより儚く、脆く見える。

『グール』

ルビィが呼ぶとニタッと口元を歪めてグールの視線がこちらを捉えた。
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