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36・弱気になってる場合じゃない
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『しっかりしてオリヴィア!!あなたがいないとどうにもならないのよ!』
ルビィが慌てた様子で顔を覗き込む。赤い瞳が心配そうに揺れている。
「コンラッドが…どうして…私何もしてないじゃない」
アリーナが私のものを欲しがる理由を考えるうちに、胸の中をモヤモヤとした黒いものがうずまくのがわかる。
ルビィとベティが一生懸命に私の肩を揺すっているのは感じるが、モヤモヤと強い憎しみが心を支配し始めると今すぐにでもこの家を破壊したい衝動に駆られる。
握りしめた拳がメキメキと床をひび割れさせていく。
『オリヴィア!お主まさか…おい、あの小僧を助けられるのはオリヴィアだけじゃ!今その感情に支配されれば二度と会えなくなるぞ!』
「今だってわからないじゃない。私何もしてないのに。むしろ助けたのに。何故…私が奪われなきゃいけないの?」
ボロボロと涙がながれる。今まで人を助けることに何の疑問も抱かなかった、それは皆んなが感謝してくれていたからだ。見返りがあったから頑張れたんだ…
「私は…ほしのまほうつかいにはなれない…こんなに辛い想いを受け入れなきゃいけないならもう良い人になんてならない。アリーナを、ころ…」
殺して彼を取り戻す。そう言おうとした瞬間に頬に衝撃を受け、顔を上げる。そこには同じくボロボロと泣き崩れたお姉様がいた。
「ラッドが今のあなたを見たら悲しむ!!オリヴィアは星の王子様を守るんでしょ?!だったら頑張りなさいよ!」
「?どうやってきたの?」
「シュバルツに運んでもらったのよ!死ぬ気でね!」
バッと指をさされた方を見るとベティの手の上で汗と涙にまみれたシュバルツがゼーゼーと息を切らして倒れていた。
「私の魔力をぶち込んで頑張ってもらったのよ!あなたが死んじゃうって大泣きで屋敷に飛び込んできたわよ!リヴはお父様とお母様と馬でこちらへ向かってるから」
「コンラッドが取られちゃったの。」
徐々に頬がじわじわと痛みだす。お姉様が思い切り平手打ちをした様だ、先程まで心の中で渦巻いていた生温かいモヤモヤが少しスッキリした気がする。
「みんな、助けたいと思ってるから、みんなで取り返すのよ。それに、あんな女に誘惑させられるほどやわな男ならそこまでってことよ。あなたには相応しくない」
お姉様の目がキツく細められる。怒っているのがありありと伝わってくる。
「落ち着いて、大丈夫。大丈夫。」
『のう』
「なによ!こ…子ども?」
張り詰めた空気のお姉様の背後からノウンがひょっこり顔を出す。このギスギスした空気を吹き飛ばす程のキラキラ強い眼差しとウキウキとした声色でだ。
『お主、良い女じゃの!オリヴィアの母親か?』
「誰?私はオリヴィアの姉よ。坊や、危ないからここからでちゃダメよ?」
「あ、お姉様、その子は大地の精霊のノウンです。」
「へぇ、そうなの。…へぇ?!!?」
大地の精霊というワードが受け止めきれないのか、お姉様はノウンと私を交互にみたあとルビィをじっと見つめる。
『ノウンがしっかり英雄様を守れていればこんな事にはならなかったのよぉ。』
「ちょっちょっとまって、どーいう事?」
はぁ、とため息をついて『説明苦手なのよ』と一言付け加えてルビィが今回の事の顛末を説明してくれる。
屋敷からの爆発音や悲鳴がいつの間にか聞こえなくなっていた。窓の外に目をやるとシンと静まり返った庭が不気味だった。
息も絶え絶えだったシュバルツが回復して私の膝の上でもふもふとどんぐりを食べている。そっと尻尾を撫でると「アイツがお前のところに帰ってこないなら、今度は俺様が人間形になってずっとそばにいてやるからちょっと元気だせ!!」と真っ赤になりながら励ましてくれた。みんなの優しさに少しだけ冷静になれた。
「で、結局誰をどうすれば良いのよ」
とお姉様が半ギレで足をダン!と床に足を下ろす。
『一番厄介なのは人間の女。その女に力を貸しているのは…グールよ。不死身なのよ、あいつ。』
「そんな…不死身ならどうすれば良いの?」
少し落ち着いた心が再びザワザワと動きを早める。
グールが何かわからないが、倒せるのだろうか…
『アイツは鉄の剣で腹をズバッとやって、高火力で燃やし尽くしてやらなきゃいけないのよ。だから、大剣のお兄ちゃんがどうしても必要なの。炎は、そこのオネェちゃんと私がいれば良いでしょぉ?』
「ラド…こんな大事な時に…なんてこと!」
「私のせいだよ。私を庇って…」
『まぁ、何とかするしかなかろう。ほれ、くるぞ』
「「「「え?」」」」
ガァン!!
これから作戦を、というところでやはりあっち側わゆっくり待ってはくれないらしい。入り口付近が壁ごと破壊され、木片は一瞬で空へと舞い上がる。
この風は、いつも私を守ってくれていた風だ。暴力的で破壊的だが、優しく温かい匂いがする。
「あらぁー真面目な悪役令嬢、みーつけた。」
コンラッドとヴィクトール卿に挟まれてニッコリと満足げなアリーナが手を頬にあて、首を傾げてニコッと笑う。
ルビィが慌てた様子で顔を覗き込む。赤い瞳が心配そうに揺れている。
「コンラッドが…どうして…私何もしてないじゃない」
アリーナが私のものを欲しがる理由を考えるうちに、胸の中をモヤモヤとした黒いものがうずまくのがわかる。
ルビィとベティが一生懸命に私の肩を揺すっているのは感じるが、モヤモヤと強い憎しみが心を支配し始めると今すぐにでもこの家を破壊したい衝動に駆られる。
握りしめた拳がメキメキと床をひび割れさせていく。
『オリヴィア!お主まさか…おい、あの小僧を助けられるのはオリヴィアだけじゃ!今その感情に支配されれば二度と会えなくなるぞ!』
「今だってわからないじゃない。私何もしてないのに。むしろ助けたのに。何故…私が奪われなきゃいけないの?」
ボロボロと涙がながれる。今まで人を助けることに何の疑問も抱かなかった、それは皆んなが感謝してくれていたからだ。見返りがあったから頑張れたんだ…
「私は…ほしのまほうつかいにはなれない…こんなに辛い想いを受け入れなきゃいけないならもう良い人になんてならない。アリーナを、ころ…」
殺して彼を取り戻す。そう言おうとした瞬間に頬に衝撃を受け、顔を上げる。そこには同じくボロボロと泣き崩れたお姉様がいた。
「ラッドが今のあなたを見たら悲しむ!!オリヴィアは星の王子様を守るんでしょ?!だったら頑張りなさいよ!」
「?どうやってきたの?」
「シュバルツに運んでもらったのよ!死ぬ気でね!」
バッと指をさされた方を見るとベティの手の上で汗と涙にまみれたシュバルツがゼーゼーと息を切らして倒れていた。
「私の魔力をぶち込んで頑張ってもらったのよ!あなたが死んじゃうって大泣きで屋敷に飛び込んできたわよ!リヴはお父様とお母様と馬でこちらへ向かってるから」
「コンラッドが取られちゃったの。」
徐々に頬がじわじわと痛みだす。お姉様が思い切り平手打ちをした様だ、先程まで心の中で渦巻いていた生温かいモヤモヤが少しスッキリした気がする。
「みんな、助けたいと思ってるから、みんなで取り返すのよ。それに、あんな女に誘惑させられるほどやわな男ならそこまでってことよ。あなたには相応しくない」
お姉様の目がキツく細められる。怒っているのがありありと伝わってくる。
「落ち着いて、大丈夫。大丈夫。」
『のう』
「なによ!こ…子ども?」
張り詰めた空気のお姉様の背後からノウンがひょっこり顔を出す。このギスギスした空気を吹き飛ばす程のキラキラ強い眼差しとウキウキとした声色でだ。
『お主、良い女じゃの!オリヴィアの母親か?』
「誰?私はオリヴィアの姉よ。坊や、危ないからここからでちゃダメよ?」
「あ、お姉様、その子は大地の精霊のノウンです。」
「へぇ、そうなの。…へぇ?!!?」
大地の精霊というワードが受け止めきれないのか、お姉様はノウンと私を交互にみたあとルビィをじっと見つめる。
『ノウンがしっかり英雄様を守れていればこんな事にはならなかったのよぉ。』
「ちょっちょっとまって、どーいう事?」
はぁ、とため息をついて『説明苦手なのよ』と一言付け加えてルビィが今回の事の顛末を説明してくれる。
屋敷からの爆発音や悲鳴がいつの間にか聞こえなくなっていた。窓の外に目をやるとシンと静まり返った庭が不気味だった。
息も絶え絶えだったシュバルツが回復して私の膝の上でもふもふとどんぐりを食べている。そっと尻尾を撫でると「アイツがお前のところに帰ってこないなら、今度は俺様が人間形になってずっとそばにいてやるからちょっと元気だせ!!」と真っ赤になりながら励ましてくれた。みんなの優しさに少しだけ冷静になれた。
「で、結局誰をどうすれば良いのよ」
とお姉様が半ギレで足をダン!と床に足を下ろす。
『一番厄介なのは人間の女。その女に力を貸しているのは…グールよ。不死身なのよ、あいつ。』
「そんな…不死身ならどうすれば良いの?」
少し落ち着いた心が再びザワザワと動きを早める。
グールが何かわからないが、倒せるのだろうか…
『アイツは鉄の剣で腹をズバッとやって、高火力で燃やし尽くしてやらなきゃいけないのよ。だから、大剣のお兄ちゃんがどうしても必要なの。炎は、そこのオネェちゃんと私がいれば良いでしょぉ?』
「ラド…こんな大事な時に…なんてこと!」
「私のせいだよ。私を庇って…」
『まぁ、何とかするしかなかろう。ほれ、くるぞ』
「「「「え?」」」」
ガァン!!
これから作戦を、というところでやはりあっち側わゆっくり待ってはくれないらしい。入り口付近が壁ごと破壊され、木片は一瞬で空へと舞い上がる。
この風は、いつも私を守ってくれていた風だ。暴力的で破壊的だが、優しく温かい匂いがする。
「あらぁー真面目な悪役令嬢、みーつけた。」
コンラッドとヴィクトール卿に挟まれてニッコリと満足げなアリーナが手を頬にあて、首を傾げてニコッと笑う。
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