星に願っても叶わないから自分で叶えることにしました

27・アンデット集団の討伐

洞窟近くに到着すると、辺りは薄暗くなっていた。
ザワザワと肌を刺激する風すらも不気味な臭いを孕んでいる様だ。
洞窟内では、何かが蠢いている気配がするため、外から様子を窺っている。
肉眼では確認できないため、全員戦闘体制を取り中を照らすことにした。

「お父様、私が照らします。いきます！」

3・2・1・カウントダウンを取りながら、光を手のひらに集めて光の玉を練り上げる。
0と同時に人の頭はどの大きさの光の玉を洞窟の中へと放り投げる。

「光よルーチェ」

「疾風スイフトウィンドゥ」

後ろからコンラッドが補助で魔法をかけてくれると恐ろしい速さで洞窟の中へ光の玉が放り込まれる。

洞窟内が照らされると同時に“ぎゃーー”と甲高い超音波の様な悲鳴が響く。
天井からボトボトと小さな塊が落ちていく。どうやら蝙蝠のようだ。アンデット化していて、光にやられて落ちているらしい。洞窟自体は浅い作りだった様で行き止まりに玉が衝突して弾ける。
灯りに誘われてゾロゾロと狼や熊のアンデットが外へと走り出してくる。洞窟から出てくる所を狙って回復魔法を乱発する。待ち受けていた冒険者達が魔法や武器で切っていく。
リアお兄様が散弾銃を打ちながら空を飛んでいる原理がよくわからないが、氷の球を打ちまくっている。
イヴお姉様とコンラッドに限っては時々姿を確認できるがどこにいるのかよくわからないほどに動き回っている様だ。

私はアンデットが少ない場所を選んで回復と強化をして回る。ルビィも、「人間が邪魔だわ！」と言いながら小型の魔法を打ちまくっている。

「蝙蝠に噛まれてアンデット化したようね。」

イヴお姉様がそう叫ぶと、シュバルツが「俺様に任せろ！」とどんぐりの爆弾の様なものを蝙蝠の残党に投げつける。

後少しで殲滅出来るというところで、突然辺りが明るくなり、残ったアンデット達に雷が落ちる。

ジュワッと跡形もなく消え去り、再び静かな森がかえってきた。突然の終わりに力が抜けて、座り込見そうになると、優しくコンラッドが抱えてくれた。

「ありがとう、コンラッド。」

「いや、頑張ってくれたな。大きな怪我人もいなさそうだ。ありがとう」

「冒険者の皆さん、ありがとうございました。あなたたちのおかげでアンデットを殲滅できました。皇帝にはあなた達の功績を伝えさせていただきます。」

茂みの中から、ヴィクトール卿と他数名の兵士が姿を現した。

「最後の楽なとこだけやって、俺もやりました、とか言われても敵わないな。これは仕事だ。ギルドの記録レンズを持ってきているからオタクから報告してもらう必要はない。通信しているからすでにあちらさんは端末を知ってるよ」

ムッとした冒険者の代表が、嫌味っぽく言い返す。

「いや、今回は僕たちはなんの仕事もしていない、全てあなた達の手柄だ。そう、伝えるつもりです。」

「それなら良いけどな。後始末は任せたからな。」とゾロゾロと冒険者達が下山を始める。少し下に小川が流れているところがあるのでそこまで戻るそうだ。

私はというと、少し魔法を使いすぎたのか目の前が霞んで見えてしまう。足元がおぼつかず少しフラフラとしている様だ。

「リヴ、少し待っていてくれ、馬で運ぼう」

やっと見つけた、という感じでヴィクトール卿がこちらへ駆け寄るが、強い風が吹いたと思ったら木の中程くらいまで浮き上がっていた。もちろん、コンラッドに抱えられたままだ。

「この子はオレのものだ。あんたに守ってもらう必要はないとさっきも伝えた。お前は、あの女を選んだんだから、近寄らないでもらおうか」

美しいけれど、怖い、と言われ冒険者仲間からも、街の女の子達からも憧れ怖がられているコンラッドが、その冷たいアイスブルーの瞳を更に鋭く輝かせて威嚇する。
温かい印象を与えるヴィクトール卿の金の瞳とまるで反対である。
私には、ニコニコと微笑んでくれるコンラッドの顔が今は一ミリも微笑んでおらずただ、怒りを露わにしている。

「コンラッド、良いの。もうお家に帰りたい」

「ああ、帰ろう。このまま運んでやるから、眠りなさい。お休み…」

オリヴィア…と耳元で囁かれたところで、安心して夢の世界へと旅立った。