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26・英雄の実力はいかに
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「#落雷召喚___サンダーボルト_#」
ヴィクトール卿が唱えると上空に黄金の魔法陣が浮かぶ、小さな落雷があちこちに起きるが、徐々に集まってきてヴィクトール卿が掲げたレイピアを避雷針にして集まっていく。
雷に驚いたのか、アンデットたちがジリジリと距離をとっていく。
落ちると同時に、爆発した様な音が響く。レイピアに少しずつ帯電していっているのか、刃の部分が少しずつ厚く広くなっていく。
雷の音に紛れる様に、回復魔法を唱え、アンデットに向けて放つ。
5対同時に弱ったところで、ヴィクトール卿が剣を一振りすると、兵士たちが進行を必死に止めていたアンデットにあったり真っ二つになり、崩れ落ちた。
狐の魔獣を倒し終えたコンラッドとお姉様が合流して、次々と倒していく。
コンラッドは恐ろしい切れ味の剣を使っている。厚く長く、恐ろしく重そうな剣を軽々片手で振り回している。掠っただけで簡単に切り裂いてしまっている。
お姉様の剣は燃えている。説明はいらない。燃えた刃に斬られた傷はじゅうじゅうと黒い煙をだし、燻っている。
戦闘の足手纏いにならない様ルビィに頼んで負傷した兵士の元へと駆けつける。
幸い命に関わる者はいない様だがみな苦しんでいた。
肝心のアリーナはまだ気を失っているのか、起き上がってこない。
私は地面に横になった兵士の元を周り回復魔法をかけている。実は回復魔法は痛みを感じることがある。
私の使う旧魔法は比較的痛みが少ないが、さらに治療される者の負担が減る様にゆっくり魔力を流すことで痛みを減らしている。
ジワジワと怪我が治ってゆき、兵士たちも意識を取り戻していく。効率的に回れる様に、荒野の狼一行が怪我人を並ばせて、水魔法の使えるリーダーの男を中心に血や泥を軽く落としてくれている。
お兄様も氷を出して、打撲などの傷を冷やしてくれている。
「オリヴィア様!こちらもお願いします!」
「オリヴィア様!ここは任せてください、彼は軽症です。」
と治療の順位も整理してくれたお陰で、コンラッド達が討伐を終える頃には重症者は皆回復していた。
それでも、隊としてダメージが大きかった。傷のない者はアリーナとヴィクトール卿含め、5名ほど、あとの20名ほどはどこかしらに怪我を負っていた。
この後どうするかは隊の長であるヴィクトール卿が決める事である。戻ってくる前にと私はお父様が待つ陣営へとルビィと一緒に帰ってしまうことにした。
コソコソと隠れるようにその場を去ろうとすると、回復した兵士の一人が話しかけてきた。
「オリヴィア・ワンフルール様ですよね?ドラゴンヒーラーの」
大きな怪我は治っているが、腕や顔に擦り傷が残っている。命にかかわらない怪我は治さないようにしている為だ。
「はぃ…っと…えぇ、そうよ」
一瞬、自分の正体を明かして良いものか悩んだが、回復魔法の使い手などそうそういない。そして、私はこの討伐に参加していることになっているので、例えここでそうだと言っても、大丈夫だと思い、肯定する。
「助けていただいてありがとうございます。毎日訓練しているのに、この様です。あなたがいなかったら、何人が帰れていたのか…」
「アンデットは普通に戦って勝てる相手ではないのだそうよ。今、無事でいられてよかった。」
ニッコリと微笑むと、兵士が顔を少し赤らめて、お辞儀をした。
「なんだか頭がぼーっとしてしまって、アンデット対策の聖水を武器に振りかけるのを忘れて…すみません。」
「では、次は大丈夫なようにもっともっと強くなって下さいね」
「はい。貴女ふくめ、国民の皆さんを守れるよう、精進します」
真面目そうな兵士は心臓に手を当ててマジマジと言葉を紡ぐ。
「貴族の義務ですから、私が手を貸すことは当たり前のことです。いつでも、助けが必要なら声をかけてください」
そこで、最後のアンデットを倒したのか、コンラッドとヴィクトール卿がこちらをみて何か話をしている様子がみえた。
兵士に挨拶をすると足早にその場から離れることにした。
「リヴィ!こんなに泥だらけになって…無事でよかった」
「お父様、大丈夫よ。私のパーティーメンバーはみんな強すぎるのよ」
自分の陣営に戻ると、お父様が真っ赤な顔をして待っていた。心配で仕方なかったらしく、すぐにこちらへ飛びついてきて、顔を乾いた布でゴシゴシと拭いてくれた。お父様は半べそをかいていた。
「天下のイーサン様がこんな情けなくなっちまうなんてなぁ。この鬼の様な顔から想像できねぇほどの心配性だな!」
お父様の冒険者仲間が茶化しているが、イーサン・ワンフルールはベテランの冒険者である。強さはあまりないが頭が良い。そして仲間思いである為、冒険者仲間から慕われている。そして、しっかりとした骨格にタカの様な鋭い目つき真っ赤な、燃える様な赤い髪を短く切りそろえてたちあげている。
泣くも黙るほどの強面である。
「リヴィー。心配かけないって約束しただろー。お前は双子の様な強さを持っていないんだ、きをつけてくれ!!」
と、周りの言葉なんて気にせずベタベタと甘やかしてくれる。そうこうしているうちに、コンラッド達も帰ってきた。無事、あちらも落ち着いたらしくいよいよ近くなってきた洞窟へと急ぐことにした。
ヴィクトール卿が唱えると上空に黄金の魔法陣が浮かぶ、小さな落雷があちこちに起きるが、徐々に集まってきてヴィクトール卿が掲げたレイピアを避雷針にして集まっていく。
雷に驚いたのか、アンデットたちがジリジリと距離をとっていく。
落ちると同時に、爆発した様な音が響く。レイピアに少しずつ帯電していっているのか、刃の部分が少しずつ厚く広くなっていく。
雷の音に紛れる様に、回復魔法を唱え、アンデットに向けて放つ。
5対同時に弱ったところで、ヴィクトール卿が剣を一振りすると、兵士たちが進行を必死に止めていたアンデットにあったり真っ二つになり、崩れ落ちた。
狐の魔獣を倒し終えたコンラッドとお姉様が合流して、次々と倒していく。
コンラッドは恐ろしい切れ味の剣を使っている。厚く長く、恐ろしく重そうな剣を軽々片手で振り回している。掠っただけで簡単に切り裂いてしまっている。
お姉様の剣は燃えている。説明はいらない。燃えた刃に斬られた傷はじゅうじゅうと黒い煙をだし、燻っている。
戦闘の足手纏いにならない様ルビィに頼んで負傷した兵士の元へと駆けつける。
幸い命に関わる者はいない様だがみな苦しんでいた。
肝心のアリーナはまだ気を失っているのか、起き上がってこない。
私は地面に横になった兵士の元を周り回復魔法をかけている。実は回復魔法は痛みを感じることがある。
私の使う旧魔法は比較的痛みが少ないが、さらに治療される者の負担が減る様にゆっくり魔力を流すことで痛みを減らしている。
ジワジワと怪我が治ってゆき、兵士たちも意識を取り戻していく。効率的に回れる様に、荒野の狼一行が怪我人を並ばせて、水魔法の使えるリーダーの男を中心に血や泥を軽く落としてくれている。
お兄様も氷を出して、打撲などの傷を冷やしてくれている。
「オリヴィア様!こちらもお願いします!」
「オリヴィア様!ここは任せてください、彼は軽症です。」
と治療の順位も整理してくれたお陰で、コンラッド達が討伐を終える頃には重症者は皆回復していた。
それでも、隊としてダメージが大きかった。傷のない者はアリーナとヴィクトール卿含め、5名ほど、あとの20名ほどはどこかしらに怪我を負っていた。
この後どうするかは隊の長であるヴィクトール卿が決める事である。戻ってくる前にと私はお父様が待つ陣営へとルビィと一緒に帰ってしまうことにした。
コソコソと隠れるようにその場を去ろうとすると、回復した兵士の一人が話しかけてきた。
「オリヴィア・ワンフルール様ですよね?ドラゴンヒーラーの」
大きな怪我は治っているが、腕や顔に擦り傷が残っている。命にかかわらない怪我は治さないようにしている為だ。
「はぃ…っと…えぇ、そうよ」
一瞬、自分の正体を明かして良いものか悩んだが、回復魔法の使い手などそうそういない。そして、私はこの討伐に参加していることになっているので、例えここでそうだと言っても、大丈夫だと思い、肯定する。
「助けていただいてありがとうございます。毎日訓練しているのに、この様です。あなたがいなかったら、何人が帰れていたのか…」
「アンデットは普通に戦って勝てる相手ではないのだそうよ。今、無事でいられてよかった。」
ニッコリと微笑むと、兵士が顔を少し赤らめて、お辞儀をした。
「なんだか頭がぼーっとしてしまって、アンデット対策の聖水を武器に振りかけるのを忘れて…すみません。」
「では、次は大丈夫なようにもっともっと強くなって下さいね」
「はい。貴女ふくめ、国民の皆さんを守れるよう、精進します」
真面目そうな兵士は心臓に手を当ててマジマジと言葉を紡ぐ。
「貴族の義務ですから、私が手を貸すことは当たり前のことです。いつでも、助けが必要なら声をかけてください」
そこで、最後のアンデットを倒したのか、コンラッドとヴィクトール卿がこちらをみて何か話をしている様子がみえた。
兵士に挨拶をすると足早にその場から離れることにした。
「リヴィ!こんなに泥だらけになって…無事でよかった」
「お父様、大丈夫よ。私のパーティーメンバーはみんな強すぎるのよ」
自分の陣営に戻ると、お父様が真っ赤な顔をして待っていた。心配で仕方なかったらしく、すぐにこちらへ飛びついてきて、顔を乾いた布でゴシゴシと拭いてくれた。お父様は半べそをかいていた。
「天下のイーサン様がこんな情けなくなっちまうなんてなぁ。この鬼の様な顔から想像できねぇほどの心配性だな!」
お父様の冒険者仲間が茶化しているが、イーサン・ワンフルールはベテランの冒険者である。強さはあまりないが頭が良い。そして仲間思いである為、冒険者仲間から慕われている。そして、しっかりとした骨格にタカの様な鋭い目つき真っ赤な、燃える様な赤い髪を短く切りそろえてたちあげている。
泣くも黙るほどの強面である。
「リヴィー。心配かけないって約束しただろー。お前は双子の様な強さを持っていないんだ、きをつけてくれ!!」
と、周りの言葉なんて気にせずベタベタと甘やかしてくれる。そうこうしているうちに、コンラッド達も帰ってきた。無事、あちらも落ち着いたらしくいよいよ近くなってきた洞窟へと急ぐことにした。
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