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20・魅了の力
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「派手にやられてしまってね。傷跡もでかいんだ。」
と恥ずかしそうに笑ってローブを治した。
魔獣にやられて運び込まれる若者を思い出し胸が痛む。みな、痛みを我慢して「またやられました」と笑うのだ。治療が間に合わず命が助からないものもある。
「痛いですか?」
そっとローブの上から傷をなぞってしまった。
「リヴ…!」
ビクッと体を跳ねさせてヴィクトール卿が咄嗟に手を掴む。どうもさっきから頭にモヤがかかった様にはっきりしない。私が治せなかったからこの人が苦しんでいると思うと、居ても立っても居られないような焦燥感に駆られる。
「痛いですか?ごめんなさい…」
治してあげられなくて…と続けようとして涙が溢れる。
ふわっと指先から光が溢れる。
「リヴ?これは?まさか…」
『リヴ!!!』
慌てた様子でルビィが部屋に飛び込んできた。
『旦那様、すみません。この子、熱があるから仕事休ませてたのに勝手にいなくなっちゃって…』
ガウンの隙間から肌に触れている私の手を慌ててルビィが掴み引き戻す。
「いや、いい、それより今のは…」
「だ…だんなさま…すみません。体に触れるなど…どうかしてました。お許しください」
ルビィの顔を見て急に頭のモヤが晴れた様な気がした。途端に鈍器で殴られた様な衝撃がはしり、立っていられずふらついてしまう。
「リヴ、大丈夫かい?」
ヴィクトール卿も椅子から立ち上がり手を差し出してくれた様だが、咄嗟に後ろにいたルビィが受け止めてくれたので、安心してしまい、そのまま意識を手放すことにした。
次に目を開けた時は、与えられた部屋のベッドの上だった。上半身を持ち上げると見たことのない紅色の髪をした男の人がベッドの横に腰掛けていた。
一瞬お兄様かと思ったが、少し体の線が細く繊細だった。
『目が覚めた?』
「え…えぇ、え?」
『全く、無茶するんじゃないわよ!』
「えっと、だれ?」
『やぁねぇ。ルビィよ。』
「ふ?!もが!!」
『しーっ結構夜中なの。静かにね!あなたが倒れたことはシュバルツがワンフルールに知らせに行ってるから。貴方、魅了魔法をかけられていたわよ。思い当たる節は?』
「まって!ルビィって男の人だったの?!」
『私達に男も女もないわよ。女の姿だと運びにくかったからこちらの姿になっただけよ!どっちも私。中身は変わらないんだからいいじゃない!』
「うん、いいの。それは良いんだけど…一緒にお風呂に入ったりしていたわ!着替えも手伝ってもらってた。」
『あら、なぁに?恥ずかしがってるの?大丈夫よ、大剣振り回すお兄ちゃんに手を出したら殺すって言われてるから!!手は出さないわよ!』
「そういう問題なの?」
『違うの?襲ってもいいの?』
「だ!だめよ!襲うのはだめ!」
『とにかく、魅了魔法、どこでかけられてきたのよ。ブレスレットにかけた加護が反応したからすぐに駆けつけたけど、あの少し前に何かあった?』
うーん…と一連の行動を思い起こすが、誰かに会ったりはしていない。紅茶を入れたり、家探ししたりして…
「ネックレス?を手に取ったところから少しぼんやりした気がする…」
『ネックレス?そんなんでかけられる魅了なんてたかが知れてる…もう少し強い、直接かけられたくらいの力だったけど…うーん』
両目を優しくつむって腕を組んだまま首を傾げ、ふう、とため息をつく。
何か魔法陣の様なものが本に仕込まれてた?
なんのために?それこそ、英雄の妻の座を狙って仕掛けられた罠なのか?
部屋での出来事を思い出すうちに、優しい、輝くような金色の瞳を思い出す。
「あ…あと、ヴィクトール卿だけど。雰囲気が全く違ったの。もう一人いるのかしら、彼は。とても優しくて、その…素敵な人だったわ」
私の報告を聞くとルビィは黙って顎に手を当てたまま、立ち上がりウロウロとし始めた。
ブツブツ何かを呟いているが、私には聞こえなかった。
素敵な人か…それでもコンラッドに遠く及ばないが、先程の彼であれば、英雄と呼ぶに相応しいかもしれない。
ぼんやりと満月を見つめていると、いつの間にか眠ってしまった様で、ドンドン!!と激しく扉を叩く音で目を覚ますまでぐっすりだった。
と恥ずかしそうに笑ってローブを治した。
魔獣にやられて運び込まれる若者を思い出し胸が痛む。みな、痛みを我慢して「またやられました」と笑うのだ。治療が間に合わず命が助からないものもある。
「痛いですか?」
そっとローブの上から傷をなぞってしまった。
「リヴ…!」
ビクッと体を跳ねさせてヴィクトール卿が咄嗟に手を掴む。どうもさっきから頭にモヤがかかった様にはっきりしない。私が治せなかったからこの人が苦しんでいると思うと、居ても立っても居られないような焦燥感に駆られる。
「痛いですか?ごめんなさい…」
治してあげられなくて…と続けようとして涙が溢れる。
ふわっと指先から光が溢れる。
「リヴ?これは?まさか…」
『リヴ!!!』
慌てた様子でルビィが部屋に飛び込んできた。
『旦那様、すみません。この子、熱があるから仕事休ませてたのに勝手にいなくなっちゃって…』
ガウンの隙間から肌に触れている私の手を慌ててルビィが掴み引き戻す。
「いや、いい、それより今のは…」
「だ…だんなさま…すみません。体に触れるなど…どうかしてました。お許しください」
ルビィの顔を見て急に頭のモヤが晴れた様な気がした。途端に鈍器で殴られた様な衝撃がはしり、立っていられずふらついてしまう。
「リヴ、大丈夫かい?」
ヴィクトール卿も椅子から立ち上がり手を差し出してくれた様だが、咄嗟に後ろにいたルビィが受け止めてくれたので、安心してしまい、そのまま意識を手放すことにした。
次に目を開けた時は、与えられた部屋のベッドの上だった。上半身を持ち上げると見たことのない紅色の髪をした男の人がベッドの横に腰掛けていた。
一瞬お兄様かと思ったが、少し体の線が細く繊細だった。
『目が覚めた?』
「え…えぇ、え?」
『全く、無茶するんじゃないわよ!』
「えっと、だれ?」
『やぁねぇ。ルビィよ。』
「ふ?!もが!!」
『しーっ結構夜中なの。静かにね!あなたが倒れたことはシュバルツがワンフルールに知らせに行ってるから。貴方、魅了魔法をかけられていたわよ。思い当たる節は?』
「まって!ルビィって男の人だったの?!」
『私達に男も女もないわよ。女の姿だと運びにくかったからこちらの姿になっただけよ!どっちも私。中身は変わらないんだからいいじゃない!』
「うん、いいの。それは良いんだけど…一緒にお風呂に入ったりしていたわ!着替えも手伝ってもらってた。」
『あら、なぁに?恥ずかしがってるの?大丈夫よ、大剣振り回すお兄ちゃんに手を出したら殺すって言われてるから!!手は出さないわよ!』
「そういう問題なの?」
『違うの?襲ってもいいの?』
「だ!だめよ!襲うのはだめ!」
『とにかく、魅了魔法、どこでかけられてきたのよ。ブレスレットにかけた加護が反応したからすぐに駆けつけたけど、あの少し前に何かあった?』
うーん…と一連の行動を思い起こすが、誰かに会ったりはしていない。紅茶を入れたり、家探ししたりして…
「ネックレス?を手に取ったところから少しぼんやりした気がする…」
『ネックレス?そんなんでかけられる魅了なんてたかが知れてる…もう少し強い、直接かけられたくらいの力だったけど…うーん』
両目を優しくつむって腕を組んだまま首を傾げ、ふう、とため息をつく。
何か魔法陣の様なものが本に仕込まれてた?
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部屋での出来事を思い出すうちに、優しい、輝くような金色の瞳を思い出す。
「あ…あと、ヴィクトール卿だけど。雰囲気が全く違ったの。もう一人いるのかしら、彼は。とても優しくて、その…素敵な人だったわ」
私の報告を聞くとルビィは黙って顎に手を当てたまま、立ち上がりウロウロとし始めた。
ブツブツ何かを呟いているが、私には聞こえなかった。
素敵な人か…それでもコンラッドに遠く及ばないが、先程の彼であれば、英雄と呼ぶに相応しいかもしれない。
ぼんやりと満月を見つめていると、いつの間にか眠ってしまった様で、ドンドン!!と激しく扉を叩く音で目を覚ますまでぐっすりだった。
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