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8・ハッピーウェディング?
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しばらくしてお腹が空いていたことを思い出し、何か食べたいとルビィにお願いしたら、これまた真っ赤な甘い味をどっさりくれた。
苺、というらしい。
それを食べていたら眠気が襲ってきてまたウトウトと眠ってしまったらしい。
ガシャン!という何かが割れる音で目を覚ました。
ドタドタと慌てて走り回る足音も聞こえる。中には金属の触れ合う音もするため、鎧を着ているものがあるのかもしれない。急にゾワっと寒気に襲われて、急いで階下へ駆けつける。
大広間の扉が、吹っ飛び、反対側の窓ガラスが砕けていた。中からは大人たち、というかお父様の怒号が響く。
「とにかく!そんな勝手な命令は聞けない!あの子の気持ちはどうなるんだ!!!」
「ワンフルール子爵、勅命を断るという事はどういうことかお分かりか?」
「だから!そんなことを皇帝に決める権利はないだろう!」
「あるのです。あるからこその勅命です。」
チラッと覗くと室内はそれほど荒れてはいなかったが、お父様をはじめとした腕利きの冒険者であるワンフルール一家は揃って顔を顰めて怒り狂っていた。
対峙している者達はどうやら王宮からの使いのものらしく、ピシッとした質の良い服を着た男と数名の騎士達だった。
「では、本人に聞きましょう。」
ピシッとした男がパチンと指を鳴らすと、私の周りに風が起こり、強制的に室内へと足を踏み入れるさせられた。本人の登場に皆驚いていたが、男は何も気にしない様子で勅命書を広げて読み始める。
[此度の黒炎竜討伐の褒美として、ヴィクトール・ツーデンが傷を癒した少女との婚姻を望んだ。そこで、オリヴィア・ワンフルールに、第一騎士団団長で名誉公爵であるヴィクトール・ツーデンとの婚姻を命じる]
読み終わると後の様な細い目を少し開いて私をじっと見つめる。
「ご両親は断ると申しましたが、あなたは?どうですかな?勅命を断ればどうなるかは、わかっておりますな?」
突然の出来事に驚くと同時に、自分の為に勅命を断ろうとしていた家族を思って震える。
穏やかな皇帝であるらしいが、周りのもの達は猛者揃いときく。しがない子爵家など、捻り潰されてしまうだろう。
「あ、もちろん、あり…ありがたい…」
ふと、コンラッドが優しく微笑む顔が脳裏に浮かぶ。
どうしようもなく切なくなり、涙が勝手に溢れる。
「ありがたく、英雄様の妻となれるなら喜んでお受けいたします」
「懸命ですな。では、我々はこれで」
涙を隠す為に、カーテシーをする。そのまま顔を上げられず、使者が退室するまでその姿勢を保つ。
使者が出ていった途端に足から力が抜けその場にへたり込んでしまう。ポロポロ涙が出続けるが突然暖かいものに抱きしめられる。見上げると私よりも号泣しているイヴお姉様が唇を噛み締めて窓の外をただ見つめていた。
「…コンラッド君の申し出をもっと早く受けていれば…すまない、オリヴィア」
お父様が消えてしまいそうな声で呟く。
「良いの。貴族だから。そういう婚姻も覚悟していたの。幸いあちらに望まれての婚姻なんだから、きっと幸せになれるはずよね。ただ、コンラッドには言わないで。」
我慢しようと思っても我慢できない涙が次々に溢れてくる。お姉様の胸を借りてどうしても崩れてしまう表情を隠す。
「いわ…言わないで。私は、コンラッドが好きだったって…気づかれたく、ない。修道院に、入ったと、伝えて」
叶わない想いなら、伝わらない方がいいだろう。コンラッドも私を好ましく思ってくれていたのだから、次の恋ができる様に、何も伝えずに消えようとその時は本気でそう思った。
「僕が、いつかヴィクトール・ツーデンよりすごい手柄を立ててオリヴィアを取り返す。絶対だ。」
近くにあった机をバンッと叩いてリアも悔しがる。
お母様は静かに怒りを放出している。お母様は隠密の達人である。その静かな怒りは穏やかで透明だが、触れると気絶しそうなくらい恐ろしい。
『私はついていくわよぉ。オリヴィアに』
「俺もついていくぜ」
侍女の数人くらい受け入れてもらえるでしょぉ?と壊れた扉を片手に持ってルビィが入り口に現れる。
いつの間に仲良くなったのか、頭の上にはシュバルツが乗ってる。
『あの時、守ってあげられなかったから、今度は守ってあげるわよ。絶対よ』
あの時とはきっと自身が竜の尻尾で飛ばされてしまった時のことだろう。まだ回復しきっていなかった彼女にとっては黒炎竜の一撃が重かったようで、10メートルほど飛ばされてしまったらしい。
直ぐに戻り、助けに入ってくれたおかげで誰も死なずに済んだと聞いている。
うんうん、と頷いているシュバルツをがっしりと掴む手が現れる。モコモコの毛が逆立ち、「きゅ!!」とリスらしい可愛い鳴き声が漏れる。
「シュバルツさん、でしたわね。あなたに私の隠密技術を伝授します。スパイとなって必ず、、必ずオリヴィアの一挙手一投足までも我が家に報告に来て欲しいの」
目に光を宿していないお母様は氷よりも冷たい空気を背負っている。シュバルツが凍っている。
少しでもオリヴィアを不幸にしたら、一家総出でツーデンを潰す。と怖い呟きがあちこちから聞こえてくる。
自分が愛さらている事を再確認し、家族のために頑張ろうと。心を決めた。
苺、というらしい。
それを食べていたら眠気が襲ってきてまたウトウトと眠ってしまったらしい。
ガシャン!という何かが割れる音で目を覚ました。
ドタドタと慌てて走り回る足音も聞こえる。中には金属の触れ合う音もするため、鎧を着ているものがあるのかもしれない。急にゾワっと寒気に襲われて、急いで階下へ駆けつける。
大広間の扉が、吹っ飛び、反対側の窓ガラスが砕けていた。中からは大人たち、というかお父様の怒号が響く。
「とにかく!そんな勝手な命令は聞けない!あの子の気持ちはどうなるんだ!!!」
「ワンフルール子爵、勅命を断るという事はどういうことかお分かりか?」
「だから!そんなことを皇帝に決める権利はないだろう!」
「あるのです。あるからこその勅命です。」
チラッと覗くと室内はそれほど荒れてはいなかったが、お父様をはじめとした腕利きの冒険者であるワンフルール一家は揃って顔を顰めて怒り狂っていた。
対峙している者達はどうやら王宮からの使いのものらしく、ピシッとした質の良い服を着た男と数名の騎士達だった。
「では、本人に聞きましょう。」
ピシッとした男がパチンと指を鳴らすと、私の周りに風が起こり、強制的に室内へと足を踏み入れるさせられた。本人の登場に皆驚いていたが、男は何も気にしない様子で勅命書を広げて読み始める。
[此度の黒炎竜討伐の褒美として、ヴィクトール・ツーデンが傷を癒した少女との婚姻を望んだ。そこで、オリヴィア・ワンフルールに、第一騎士団団長で名誉公爵であるヴィクトール・ツーデンとの婚姻を命じる]
読み終わると後の様な細い目を少し開いて私をじっと見つめる。
「ご両親は断ると申しましたが、あなたは?どうですかな?勅命を断ればどうなるかは、わかっておりますな?」
突然の出来事に驚くと同時に、自分の為に勅命を断ろうとしていた家族を思って震える。
穏やかな皇帝であるらしいが、周りのもの達は猛者揃いときく。しがない子爵家など、捻り潰されてしまうだろう。
「あ、もちろん、あり…ありがたい…」
ふと、コンラッドが優しく微笑む顔が脳裏に浮かぶ。
どうしようもなく切なくなり、涙が勝手に溢れる。
「ありがたく、英雄様の妻となれるなら喜んでお受けいたします」
「懸命ですな。では、我々はこれで」
涙を隠す為に、カーテシーをする。そのまま顔を上げられず、使者が退室するまでその姿勢を保つ。
使者が出ていった途端に足から力が抜けその場にへたり込んでしまう。ポロポロ涙が出続けるが突然暖かいものに抱きしめられる。見上げると私よりも号泣しているイヴお姉様が唇を噛み締めて窓の外をただ見つめていた。
「…コンラッド君の申し出をもっと早く受けていれば…すまない、オリヴィア」
お父様が消えてしまいそうな声で呟く。
「良いの。貴族だから。そういう婚姻も覚悟していたの。幸いあちらに望まれての婚姻なんだから、きっと幸せになれるはずよね。ただ、コンラッドには言わないで。」
我慢しようと思っても我慢できない涙が次々に溢れてくる。お姉様の胸を借りてどうしても崩れてしまう表情を隠す。
「いわ…言わないで。私は、コンラッドが好きだったって…気づかれたく、ない。修道院に、入ったと、伝えて」
叶わない想いなら、伝わらない方がいいだろう。コンラッドも私を好ましく思ってくれていたのだから、次の恋ができる様に、何も伝えずに消えようとその時は本気でそう思った。
「僕が、いつかヴィクトール・ツーデンよりすごい手柄を立ててオリヴィアを取り返す。絶対だ。」
近くにあった机をバンッと叩いてリアも悔しがる。
お母様は静かに怒りを放出している。お母様は隠密の達人である。その静かな怒りは穏やかで透明だが、触れると気絶しそうなくらい恐ろしい。
『私はついていくわよぉ。オリヴィアに』
「俺もついていくぜ」
侍女の数人くらい受け入れてもらえるでしょぉ?と壊れた扉を片手に持ってルビィが入り口に現れる。
いつの間に仲良くなったのか、頭の上にはシュバルツが乗ってる。
『あの時、守ってあげられなかったから、今度は守ってあげるわよ。絶対よ』
あの時とはきっと自身が竜の尻尾で飛ばされてしまった時のことだろう。まだ回復しきっていなかった彼女にとっては黒炎竜の一撃が重かったようで、10メートルほど飛ばされてしまったらしい。
直ぐに戻り、助けに入ってくれたおかげで誰も死なずに済んだと聞いている。
うんうん、と頷いているシュバルツをがっしりと掴む手が現れる。モコモコの毛が逆立ち、「きゅ!!」とリスらしい可愛い鳴き声が漏れる。
「シュバルツさん、でしたわね。あなたに私の隠密技術を伝授します。スパイとなって必ず、、必ずオリヴィアの一挙手一投足までも我が家に報告に来て欲しいの」
目に光を宿していないお母様は氷よりも冷たい空気を背負っている。シュバルツが凍っている。
少しでもオリヴィアを不幸にしたら、一家総出でツーデンを潰す。と怖い呟きがあちこちから聞こえてくる。
自分が愛さらている事を再確認し、家族のために頑張ろうと。心を決めた。
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