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6・黒炎竜討伐とヴィクトール・ツーデン
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『テメェらあとで燃やし尽くすからな』
例の5人組に出会った途端瞳孔を開き切ってイフリータが威嚇する。今は、外にいる黒く燃える竜をなんとかしようと話し合っているところなので、お仕置きをしないでいてくれている様だ。
「ありゃ、黒炎竜だなぁ。お前達だけなら逃げられるが、この5人が足手纏いだな。」
みんなで話し合うために円になっているが、その中心ではシュバルツがどんぐりをかじりながら仕切っていた。
お前達、と言うのはイフリータと豪炎の夜明けのことらしい。私たちがAランクパーティーとしり、とてもおとなしくなってしまった5人はさらにしょんぼりと肩を落としていた。
「大丈夫ですよ。必ずみんなで帰りましょうね」
励ます様に“荒野の狼”一行に微笑みかけると皆女性陣はうるうると泣き出しそうになってしまった。
「生意気言ったのにごめんなさい。」
「私も、ごめんなさい」
と次々に謝罪をしてくれた。『誤ったってゆるさねぇから』と私の後ろでイフリータが凄んでいるが気にしない様にしよう。
『アイツがオリヴィアの屋敷に近づかないようにわたしが止めてたんだけどね。そいつらのせいで鎖が千切れちゃったの。魔力の半分は鎖に使ってたからね』
くるりと視界に入り込んで穏やかに話すイフリータはここだけ見れば穏やかなお淑やかなオネェさんである。
ずいっと近づいてきたイフリータに警戒して隣にいたコンラッドがグイッと私の腕を引っ張り、胸元に寄せる。
「俺がまた引き付けるから、と言いたいところだがちょっとな…イブとリアには避難を担当してもらいたいし…」
その時、ズガァン!!と洞窟の外で雷鳴が轟く音がした。慌てて全員で外に出ると、そばにある崖の上に煌めく強い金色の青年が立ち、黒炎竜に向かって雷を落としまくっていた。
「お!ありゃ、ヴィクトール・ツーデンだな!いいもん見れそうだぜぇ!」
よりよくみたいからか、私の頭の上からイフリータの頭の上へと移動して足をバタバタさせたシュバルツが興奮していた。
みている間にヴィクトールと呼ばれた金色の男が次々と雷を落とす。
「君たち!早く逃げて!助力できる人が居るなら攻撃してくれて構わない!」
「黒炎に炎は効かない、オリヴィア、イフリータとイブは荒野の狼と共に逃げろ。」
コンラッドは大剣を引き抜きこちらに指示を飛ばす。
「あらぁ?わたしは平気よ?」
イフリータが片手を頬に当て手伝おうかぁ?と問いかけるが、コンラッドと目を合わせたリアお兄様が落ち着いた様子でイフリータに告げる。
「君にはオリヴィアを守ってもらいたい。早く、気づかれる前に行って!!氷の弾丸」
そう言うとお兄様と私達の間に方に向けて氷魔法を放つ。物凄い爆音と水蒸気に紛れて森の出口を目指して走り出す。
後方からは雷と氷が砕ける音が響いている。時折ズシンと地面に何かが落ちる音がする。
「俺たちが殿を務める。せめてもの償いだ」
荒野の狼のリーダーが後ろへ下がりながら、私を前に押し出す。するとイフリータがバシンとリーダーの男のお尻を叩く。
『弱っちいくせに強がらない。ほら前行って邪魔よぉ~。あんた達故郷にお金送らなきゃなんでしょ』
どうやら訳ありらしい5人はベソベソと泣きべそをかき始めたので、「大丈夫ですよ。絶対何とかなりますからね」と声をかけると、号泣し始めてしまった。そして「ありがとう」と呟きながら必死に走っていく。不意に目の前に何かが飛び出してきて、こちらを見て反射的に叫ぶ。金切り声があたりに響く。イブお姉様が臨戦体制にはいる。
「きゃあああ!!」
「まずい!!叫ぶな!!!」
お姉様が慌てて静かにさせようとするが間に合わず、だいぶ離れたと思っていた黒い炎がこちらに鎌首を向ける。
少し霞んだオレンジの髪の少女が尻餅をついた少女は、なおもきゃぁきゃぁと叫び続けている。
その叫び声につられたのか、黒炎竜の炎がこちらに向かってくる気配がした。なぜ気配がしたのかと言うと、熱い。こんなに離れているのに熱すぎるのだ。
『うるさい女は嫌いよぉ』
イフリータが真っ赤な炎をぶつけて相殺するが、炎が消えたその奥から黒炎竜が飛んできていた。
「オリヴィア!!!!」
どうやったのか氷の塊にのったコンラッドがその後ろを飛んできて、振り返った黒炎竜の額にそのままの勢いで剣を突き刺す。
ヴィクトール卿も、風に乗って追いついてきた。どうやら、一軍隊を連れてきているらしく、水魔法や風魔法で竜の動きを封じる。
なおも抵抗する黒炎竜は尻尾を振り回し、イフリータをバシンと弾き飛ばす。
残された人間の塊に向かって黒い炎を大量に吐き出す。
コンラッドとイブお姉様が私を抱きしめて庇おうとしたが、目の前に着地したヴィクトール卿が大型の魔法を発動させる。
「霹靂の壁」
一瞬の静寂ののち、ドスンと巨体が倒れる音が響き土煙が落ち着いてくると目の前に立ち塞がる強い金色が崩れ落ちる。
「いけない!!」
コンラッドとお姉様を振り払い金色を抱き留めると、右腕から心臓にかけて黒い炎に焼き切られた様な跡がある。ヒューヒューと弱い呼吸を繰り返し、瞳がわずかに開かれていた。
「回復」
ブワッとあたり一面に淡い金色の光が舞い上がる。
その光が未だブスブスと燃える黒い傷に集まり、パチンパチンとはじけて溶けて行く。
少しずつヴィクトールさんの顔色が戻ってきて、呼吸も深くなってきた。同時に大量の魔力を消費させられ、目の前が霞み始める。
ぎゅっと目をつむり、ありったけの魔力を叩き込む。
あと少し、あとすこし…あと…
「リヴィ!!」
名前を呼ばれて目を開けると悲痛な顔をしたお兄様とお姉様が目に飛び込んでくる。その景色を最後に意識は途切れてしまった。
例の5人組に出会った途端瞳孔を開き切ってイフリータが威嚇する。今は、外にいる黒く燃える竜をなんとかしようと話し合っているところなので、お仕置きをしないでいてくれている様だ。
「ありゃ、黒炎竜だなぁ。お前達だけなら逃げられるが、この5人が足手纏いだな。」
みんなで話し合うために円になっているが、その中心ではシュバルツがどんぐりをかじりながら仕切っていた。
お前達、と言うのはイフリータと豪炎の夜明けのことらしい。私たちがAランクパーティーとしり、とてもおとなしくなってしまった5人はさらにしょんぼりと肩を落としていた。
「大丈夫ですよ。必ずみんなで帰りましょうね」
励ます様に“荒野の狼”一行に微笑みかけると皆女性陣はうるうると泣き出しそうになってしまった。
「生意気言ったのにごめんなさい。」
「私も、ごめんなさい」
と次々に謝罪をしてくれた。『誤ったってゆるさねぇから』と私の後ろでイフリータが凄んでいるが気にしない様にしよう。
『アイツがオリヴィアの屋敷に近づかないようにわたしが止めてたんだけどね。そいつらのせいで鎖が千切れちゃったの。魔力の半分は鎖に使ってたからね』
くるりと視界に入り込んで穏やかに話すイフリータはここだけ見れば穏やかなお淑やかなオネェさんである。
ずいっと近づいてきたイフリータに警戒して隣にいたコンラッドがグイッと私の腕を引っ張り、胸元に寄せる。
「俺がまた引き付けるから、と言いたいところだがちょっとな…イブとリアには避難を担当してもらいたいし…」
その時、ズガァン!!と洞窟の外で雷鳴が轟く音がした。慌てて全員で外に出ると、そばにある崖の上に煌めく強い金色の青年が立ち、黒炎竜に向かって雷を落としまくっていた。
「お!ありゃ、ヴィクトール・ツーデンだな!いいもん見れそうだぜぇ!」
よりよくみたいからか、私の頭の上からイフリータの頭の上へと移動して足をバタバタさせたシュバルツが興奮していた。
みている間にヴィクトールと呼ばれた金色の男が次々と雷を落とす。
「君たち!早く逃げて!助力できる人が居るなら攻撃してくれて構わない!」
「黒炎に炎は効かない、オリヴィア、イフリータとイブは荒野の狼と共に逃げろ。」
コンラッドは大剣を引き抜きこちらに指示を飛ばす。
「あらぁ?わたしは平気よ?」
イフリータが片手を頬に当て手伝おうかぁ?と問いかけるが、コンラッドと目を合わせたリアお兄様が落ち着いた様子でイフリータに告げる。
「君にはオリヴィアを守ってもらいたい。早く、気づかれる前に行って!!氷の弾丸」
そう言うとお兄様と私達の間に方に向けて氷魔法を放つ。物凄い爆音と水蒸気に紛れて森の出口を目指して走り出す。
後方からは雷と氷が砕ける音が響いている。時折ズシンと地面に何かが落ちる音がする。
「俺たちが殿を務める。せめてもの償いだ」
荒野の狼のリーダーが後ろへ下がりながら、私を前に押し出す。するとイフリータがバシンとリーダーの男のお尻を叩く。
『弱っちいくせに強がらない。ほら前行って邪魔よぉ~。あんた達故郷にお金送らなきゃなんでしょ』
どうやら訳ありらしい5人はベソベソと泣きべそをかき始めたので、「大丈夫ですよ。絶対何とかなりますからね」と声をかけると、号泣し始めてしまった。そして「ありがとう」と呟きながら必死に走っていく。不意に目の前に何かが飛び出してきて、こちらを見て反射的に叫ぶ。金切り声があたりに響く。イブお姉様が臨戦体制にはいる。
「きゃあああ!!」
「まずい!!叫ぶな!!!」
お姉様が慌てて静かにさせようとするが間に合わず、だいぶ離れたと思っていた黒い炎がこちらに鎌首を向ける。
少し霞んだオレンジの髪の少女が尻餅をついた少女は、なおもきゃぁきゃぁと叫び続けている。
その叫び声につられたのか、黒炎竜の炎がこちらに向かってくる気配がした。なぜ気配がしたのかと言うと、熱い。こんなに離れているのに熱すぎるのだ。
『うるさい女は嫌いよぉ』
イフリータが真っ赤な炎をぶつけて相殺するが、炎が消えたその奥から黒炎竜が飛んできていた。
「オリヴィア!!!!」
どうやったのか氷の塊にのったコンラッドがその後ろを飛んできて、振り返った黒炎竜の額にそのままの勢いで剣を突き刺す。
ヴィクトール卿も、風に乗って追いついてきた。どうやら、一軍隊を連れてきているらしく、水魔法や風魔法で竜の動きを封じる。
なおも抵抗する黒炎竜は尻尾を振り回し、イフリータをバシンと弾き飛ばす。
残された人間の塊に向かって黒い炎を大量に吐き出す。
コンラッドとイブお姉様が私を抱きしめて庇おうとしたが、目の前に着地したヴィクトール卿が大型の魔法を発動させる。
「霹靂の壁」
一瞬の静寂ののち、ドスンと巨体が倒れる音が響き土煙が落ち着いてくると目の前に立ち塞がる強い金色が崩れ落ちる。
「いけない!!」
コンラッドとお姉様を振り払い金色を抱き留めると、右腕から心臓にかけて黒い炎に焼き切られた様な跡がある。ヒューヒューと弱い呼吸を繰り返し、瞳がわずかに開かれていた。
「回復」
ブワッとあたり一面に淡い金色の光が舞い上がる。
その光が未だブスブスと燃える黒い傷に集まり、パチンパチンとはじけて溶けて行く。
少しずつヴィクトールさんの顔色が戻ってきて、呼吸も深くなってきた。同時に大量の魔力を消費させられ、目の前が霞み始める。
ぎゅっと目をつむり、ありったけの魔力を叩き込む。
あと少し、あとすこし…あと…
「リヴィ!!」
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