聖戦場の乙女

麻黄緑推

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第一章 未だ見ぬ敵に備えて

襲撃、その後

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敵の脚を潰して直ぐくらいに、ドタドタと騒々しい音が扉の外から聞こえて来た。恐らくリーンが吹っ飛んだ時の音を聞き付けての事だろう。


「ラン嬢、リーン!居るなら返事をしなさい!」

「ルール卿!あの、変な人が窓から、リーンが吹っ飛んで、えと、扉が開かないんです!」

「何!扉をからは、離れてなさい!」


ルール卿が何やら不穏な言葉を口走っているような・・・
私がそんな事を考えていると、リーンがランの元へ飛んで行き、守るように抱きしめた。
見ると耳を塞いでいるみたいだ。


「きゃ、なに?」


直後、扉が尋常では無い音を立てながら、窓から外へ文字通り飛んで行ったのが見えた。
廊下に見えたルール卿の格好からして、恐らく蹴り飛ばしたのだろう。
何というか、流石は親子と言った所か。


「リーン!ラン嬢!二人とも無事だったか!」


おっと、まだリーンは話せない。
私が代わりに話さないと・・・


「ええ、曲者は。安心なさってね、お父様。」


大体こんな感じだろう。
前にルール卿と話した時はこのノリで行けたし・・・。


「?そうか、あそこの簀巻きがその曲者か。」

「はい。言動からして、ライヴ聖教とかいう宗教団体の手の者だそうです。」


本当は所属組織は言ってないけど、ついでに教えておこう。


「何が目的か知らんが饒舌過ぎるな。まあ良い。何にせよ、二人が無事で良かった。」

「あの者は脚を潰しておきましたが、宜しかったでしょうか?」

「正当防衛だからな。寧ろ、よく生かして捕らえた。流石だリーン。」

「気絶はしていませんから、気をつけて下さいね、お父様。」


そう言った辺りで、ランが恥ずかしそうに声を漏らした。


「あの・・・そろそろ離してくれない?」


・・・


襲撃犯が連行され、憲兵も一通り調査を終えた。
リーンも喋れる様になったので体を返し、ランとの雑談をしていると、ルール卿が部屋の外で待たされていた私達の元へやって来た。


「ラン嬢、本日の一件は我が家のセキュリティの問題だ。本当に申し訳ない。リーンの父として、娘の友人をこの様な家に上げた事を謝罪させて欲しい。」

「そんな・・・頭を上げて下さいルール卿!私はいつもみたいに勝手に家に来ただけですし、ナチュレ家の防衛設備は私の父も認めていますし・・・今回は相手が悪かっただけですよ。」

「そう言ってもらえると助かる。それと、話を聞く限り、奴は二人を狙っていたそうだね。ラプト家には本日中に護衛を派遣するから、安心して欲しい。」


事件もひと段落し、ランの安全も確保出来そうだし、ひと安心だ。
そう思っていた時に、ルール卿が話しかけて来た。


「リーン。父親としては危なくなったら逃げろ、と言いたい所だが・・・お前も軍人の娘だからな。力を人の為に使った事、賞賛こそすれ叱るなどできん。もう一度言うが、本当に良くやったよ。」

「そんなに褒められると照れますわ・・・でも、ありがとうございます。」


リーンも褒められても嬉しそうにしている。


「それとな、後で状況をまとめる為に話がしたいから、ラン嬢が帰った後書斎に来なさい。安心しろ、夕食までには確実に間に合わせる。」


その後、ランは憲兵の護衛と共に帰宅し、約束通り私達はルール卿の書斎までやって来た。


「リーンです。」

「入りなさい。」


ルール卿は部屋の中央にある椅子に腰掛けて、何やら書類をまとめていた。
恐らく今日の事件に関する事だろう。


「所でリーン。今は

「何ですって・・・?」

「既に習っただろうが、人は何者かにされる事がある。お前、何かに憑かれてるだろう?」


ルール卿に、バレた?
リーンも少し動揺している。


「・・・どうしてそう思いますの?」

「お前は自信過剰な様に見えて、自らの功績を誇らない。だが、今日曲者の状況を報告した時、『"私が"倒しておいた』と言ったな。普段なら、自分を強調する様な言い方はしないだろう?」

「そう言う時もありますわ。」

「確かに、この位なら考えすぎかもしれん。だがなリーン。お前何故身体強化を使ってから話が出来る?」

「!」

「誰にも教わらずアレを使いこなせるのは大したものだよリーン。だがな、どんなに使いこなせても、口が聞けなくなると言うデメリットは消せんのだよ、あの技は。」

「しかし、何故憑依されていると?」

「身体強化を使いながら、又は使って直ぐ話が出来た例は今まで二件。その両方が憑依の患者だ。」

「・・・祓うのですか?」


憑依は人格に悪影響が出るので、発見された場合即座に祓われることが殆どだ。
リーンと私が今まで憑依した、された事を隠して来たのはこれが理由でもある。
ルール卿はどう答えるのか・・・


「いや?」

「へ?」

「確認が取りたかっただけだ。お前に憑依してる奴、特段悪人とも思えん。」

「成り済まそうとか成り代わろうとか、そう考えてるとは思わないのですか!?」


何故わざわざ刺激するの、リーン!?


「だったらお前を表に出さんだろう。憑依されているなら、主導権は向こうが全て握る事ができる筈だ。」


それは知らなかった。


「憑依してる人、それ知らなかったらしいですわ。」

「だから何で刺激する様な事言っちゃうの、リーン!・・・あ。」


勢い余って出て来てしまった・・・


「やあお嬢さん、なのかは知らないが。引っ込む前に憑依先の父親と話をしないかね?」


優しく微笑むルール卿に若干の恐怖を感じつつ、私は彼と話をする事になってしまったのだった・・・
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みんなの感想(1件)

スパークノークス

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2021.08.17 麻黄緑推

ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。

解除

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