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第一章 未だ見ぬ敵に備えて
魔獣で腕試し1
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リーンが鍛練を始めてはや一年。
若干伸び悩みつつもフィジカルは順調に成長していき、私との入れ替わりもかなりスムーズになってきた。
自慢じゃ無いが、私も大分リーンのマネが上手くなってきたように思う。
「謙遜なさるのね。葡萄酒樽一杯もてなされたお父様なら簡単に騙せますわ。」
「手厳しいね・・・」
リーンのお父さん下戸じゃないか。
もう半年以上も経つのに、今でもランと話した時のことを根に持たれているらしい。
「冗談はさておき、私もそろそろ自分の実力を知る時だと思いますの。」
「と、いうと?」
「つまり、腕試しですわ!相手は貴女が見繕いなさい。できれば近隣の魔獣から。無理なら手頃なダンジョンを教えなさいな。」
この御令嬢中々の無茶を言ってくれる。
とはいえ、私も全く準備をしていなかったわけでは無い。
こうなる事は分かりきっていたので、しっかりリスト挑戦リストを作っておいたのだ。
「グリフォンにクリスタルドラゴン、それからリュータオドビ・・・中々良い面子ではありませんか。」
リーンの目が爛々と輝いている。
この一年で分かったけれど、どうやら彼女若干戦闘狂なところがある気がする。
この前中型の魔獣と戦って怪我した時も、怯むどころか寧ろノリノリで戦ってたし・・・
「決めましたわ!腕試しの相手は、この魔獣、ルビーウルフですわ!」
「ルビーウルフ・・・"赤目"か!」
ルビーウルフ、通称赤目。
目玉が美しい紅をしていることからその名がついた魔獣。
実際倒すと大量のゴールドが手に入ったけど、その異常な強さからプレイヤーから赤目の名で恐れられてきた怪物だ。
「あら、貴女もその呼び方をしますのね。」
「この世界でも赤目って呼ばれてるの?」
「ギルドでの通称ですわ。お遊戯の中で聞いたのではなくて?」
言われてみればそんな気もする。
ラピュセルにはモンスターの素材を高値で売れる、ギルドと呼ばれる場所があった。
そこのモブが呼んでたっけ?
「今日は満月ですわね。行くんだったら今日しかありません!出発は夜十一時!皆が起きてくる五時までには決着を着けますわよ!」
「消灯時間すぐじゃん!」
・・・
夜は更けて十一時。
部屋の窓は月明かりで照らされた木々が薄らと見えるだけ。
街頭のないこの世界の夜余りにも暗く、だけどネオン街のそれとはまた違った美しさを感じた。
「ほら、景色に見惚れてないで。さっさと体を返しなさい。」
「ああ、ごめん。こういう景色見慣れてなくて。」
「話を聞くによっぽどキラキラテカテカした所に住んでたみたいですわね。貴女本当はドラゴンの方が仲良く出来るのでは無くて?」
「光物好きと言いたいんだね。」
皮肉言いながら、リーンは慣れた手付きで狩装束を身に纏っていく。
御令嬢と呼ばれる様な人は、身の回りの事を全てやって貰って自分は何もできない、という様なイメージがあった。
でも彼女は一通りの事以上を自分で出来てしまう。
これは彼女の父であるルール卿の、「国が滅びても生き残れる子を育てる」という教育方針故だろう。
「さてと。いつから身体強化が発動しているのか分かりません。人に見つかったら言い訳を頼みますわよ、イオ。」
「勿論。素面のランでも騙してみせるよ。」
「言うじゃありませんか。それじゃ、出発!」
開けた窓から勢いよく飛び降りたリーンは、しかし音は一切立てずに着地した。
今の時期は日本で言う夏にあたるから窓を開けて寝ること自体は珍しくない。
中まで入ってこられても、ワタを詰めた人形を寝かせてあるからバレる事はないだろう、多分。
出発してからおよそ五分、距離にしておよそ4km程度。
赤目の生息域である、タム領土南部の森にやってきた。
ゲームの赤目は固定敵だけど、こっちではどうなんだろう・・・
「目安くらいにはなるでしょう。道案内もお願いしますわ。」
「了解。じゃあそのまま、まっすぐ行って・・・」
此処のマップは大体頭に入っているし、ゲームでの入り口まで来れれば後は簡単だった。
ラピュセルが一人称ゲームだった事も救いの一つだろう。
果たして、ゲームでのエンカウント場所に到着した。
だけど赤目の姿は・・・何処にもない。
「やっぱり間違えたかな・・・」
「いいえ感謝しますわ、タカバ イオ!貴女しっかり私を獲物に導いてくれました!」
彼女の言葉通りだった。
リーンが見据えるその先、月明かりを反射して紅に輝く双眼が、こちらを見つめている。
「ここからは私のお仕事です!掛かってきなさい、獣共。未来の聖騎士殺しがお相手しますわ!」
若干伸び悩みつつもフィジカルは順調に成長していき、私との入れ替わりもかなりスムーズになってきた。
自慢じゃ無いが、私も大分リーンのマネが上手くなってきたように思う。
「謙遜なさるのね。葡萄酒樽一杯もてなされたお父様なら簡単に騙せますわ。」
「手厳しいね・・・」
リーンのお父さん下戸じゃないか。
もう半年以上も経つのに、今でもランと話した時のことを根に持たれているらしい。
「冗談はさておき、私もそろそろ自分の実力を知る時だと思いますの。」
「と、いうと?」
「つまり、腕試しですわ!相手は貴女が見繕いなさい。できれば近隣の魔獣から。無理なら手頃なダンジョンを教えなさいな。」
この御令嬢中々の無茶を言ってくれる。
とはいえ、私も全く準備をしていなかったわけでは無い。
こうなる事は分かりきっていたので、しっかりリスト挑戦リストを作っておいたのだ。
「グリフォンにクリスタルドラゴン、それからリュータオドビ・・・中々良い面子ではありませんか。」
リーンの目が爛々と輝いている。
この一年で分かったけれど、どうやら彼女若干戦闘狂なところがある気がする。
この前中型の魔獣と戦って怪我した時も、怯むどころか寧ろノリノリで戦ってたし・・・
「決めましたわ!腕試しの相手は、この魔獣、ルビーウルフですわ!」
「ルビーウルフ・・・"赤目"か!」
ルビーウルフ、通称赤目。
目玉が美しい紅をしていることからその名がついた魔獣。
実際倒すと大量のゴールドが手に入ったけど、その異常な強さからプレイヤーから赤目の名で恐れられてきた怪物だ。
「あら、貴女もその呼び方をしますのね。」
「この世界でも赤目って呼ばれてるの?」
「ギルドでの通称ですわ。お遊戯の中で聞いたのではなくて?」
言われてみればそんな気もする。
ラピュセルにはモンスターの素材を高値で売れる、ギルドと呼ばれる場所があった。
そこのモブが呼んでたっけ?
「今日は満月ですわね。行くんだったら今日しかありません!出発は夜十一時!皆が起きてくる五時までには決着を着けますわよ!」
「消灯時間すぐじゃん!」
・・・
夜は更けて十一時。
部屋の窓は月明かりで照らされた木々が薄らと見えるだけ。
街頭のないこの世界の夜余りにも暗く、だけどネオン街のそれとはまた違った美しさを感じた。
「ほら、景色に見惚れてないで。さっさと体を返しなさい。」
「ああ、ごめん。こういう景色見慣れてなくて。」
「話を聞くによっぽどキラキラテカテカした所に住んでたみたいですわね。貴女本当はドラゴンの方が仲良く出来るのでは無くて?」
「光物好きと言いたいんだね。」
皮肉言いながら、リーンは慣れた手付きで狩装束を身に纏っていく。
御令嬢と呼ばれる様な人は、身の回りの事を全てやって貰って自分は何もできない、という様なイメージがあった。
でも彼女は一通りの事以上を自分で出来てしまう。
これは彼女の父であるルール卿の、「国が滅びても生き残れる子を育てる」という教育方針故だろう。
「さてと。いつから身体強化が発動しているのか分かりません。人に見つかったら言い訳を頼みますわよ、イオ。」
「勿論。素面のランでも騙してみせるよ。」
「言うじゃありませんか。それじゃ、出発!」
開けた窓から勢いよく飛び降りたリーンは、しかし音は一切立てずに着地した。
今の時期は日本で言う夏にあたるから窓を開けて寝ること自体は珍しくない。
中まで入ってこられても、ワタを詰めた人形を寝かせてあるからバレる事はないだろう、多分。
出発してからおよそ五分、距離にしておよそ4km程度。
赤目の生息域である、タム領土南部の森にやってきた。
ゲームの赤目は固定敵だけど、こっちではどうなんだろう・・・
「目安くらいにはなるでしょう。道案内もお願いしますわ。」
「了解。じゃあそのまま、まっすぐ行って・・・」
此処のマップは大体頭に入っているし、ゲームでの入り口まで来れれば後は簡単だった。
ラピュセルが一人称ゲームだった事も救いの一つだろう。
果たして、ゲームでのエンカウント場所に到着した。
だけど赤目の姿は・・・何処にもない。
「やっぱり間違えたかな・・・」
「いいえ感謝しますわ、タカバ イオ!貴女しっかり私を獲物に導いてくれました!」
彼女の言葉通りだった。
リーンが見据えるその先、月明かりを反射して紅に輝く双眼が、こちらを見つめている。
「ここからは私のお仕事です!掛かってきなさい、獣共。未来の聖騎士殺しがお相手しますわ!」
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