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第一章 未だ見ぬ敵に備えて
二人の出会い
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私の住むタム王国は大陸の端に位置する辺境の国。隣国は遥か遠く、また国境は山岳で遮られていて侵略と略奪とは無縁の平和な国だ。
けれど、今から六年後の秋頃、遥か南方に突如として現れた宗教国家「ライヴ聖教国」に攻め込まれる。タム王国の領地は半分まで縮小するけど、ある日覚醒した聖女の力で国は護られる。
なんで予言者でも超能力者でも無い私がこんな未来を知ってるのかって?
その理由は、実は私が現代日本の女子中学生で、滅茶苦茶やり込んでたゲーム「聖戦場の乙女」の世界に転生してきたからなのだ!
「誰に話しているのか知りませんが、貴女のそれは転生とは言いませんわ。"憑依"と言うのです!」
訂正。私は転生したのではなく憑依したんだ。タム王国軍司令官のご令嬢リーン・オフ・ナチュレの体に・・・
事の起こりは二週間前。ラピュセルのやりすぎで二徹した私は、登校中に階段を踏み外し、おそらく死亡。
その後リーンの体に憑依した。ゲームが始まるころには軍司令官に就任することになる彼女は、ラピュセルの主人公の聖女、ラン・ファ・ラプトの幼馴染であり、嫌がる彼女を言いくるめて出陣の命令を出す嫌な上司というポジションだった。
作中キャラの中でも特にランが気に入っていた私は、彼女に憑依したと分かった時、ランを亡命させて代わりにリーンを出陣させてやろうかと思ったものだ。
でもリーンの話を聞いていくうちに考えが変わった。ゲーム内での彼女の非道は、必死さ故のことだろうと何となく予想がつく程度には、彼女はランに入れ込んでいた。
「それでも許せませんわ、未来の私!自分の尻拭いを親友のランにやらせるなど・・・」
「とにかく状況は今説明した通りだよ。聖教国はまだ影も形もない。だから今私たちにできるのはリーンのお父さんにお願いして、ライヴができる前に・・・」
「鍛えますわよ。」
「え?」
「鍛えると言っているのです。」
当たり前のように言われても困る。
「でも鍛えるっていつまで?早く潰しにライヴ聖教国が完成しちゃうよ!」
「貴女は知らないかもしれませんが、国も軍隊も作るの結構大変ですのよ。六年後に我が国まで攻めてくる、つまりあの山岳地帯を超えられる軍事力を揃えているという事は、今の段階でもある程度の水準までは整えられていると考えるのが妥当ですわ。」
「じゃあ尚更攻めた方がいいよ!早くしないと向こうの準備が完全に整っちゃうよ!」
「何もしてない国を軍隊動かして攻められるわけないでしょう。そもそもタム王国は攻め辛いだけで生き残ってきた国ではありません。”手を出してこないから殴り返す必要がない”、周りからそう思われて生き残って来られた国ですのよ。他所を一方的に攻める様な事をして諸外国に危険視されたら、ライヴ以外の国も脅威になり得ますわ。」
確かに、彼女の言うとおりだ。私は今までタムとライヴだけしか見えていなかった。でも他にも国がある以上、勝手なことをすればライヴ以外の国とも戦争になりかねないんだ。そんな当たり前のことが抜けていたなんて・・・
「だからこそ鍛えるのです。今から三年、否!二年でタムの小隊を一人で殲滅できる程度まで鍛えます。幸い私は武人の家系。私が本気で鍛錬すればライヴとやらの連中も捻り潰せる筈ですわ。」
「いやその発想はおかしいと思うけど・・・二年でそのレベルは無理でしょ。そもそも鍛えたとしてどうやってライヴを叩くのさ!?」
「それを貴女が考えるのです、スカタン。私が力となり、そして・・・この言い方少々不服だけれど、貴女が頭脳となってライヴに立ち向かうのよ。」
「すかっ・・・でも、そうか。確かに私達だけで動けば国は巻き込まなくても済むかも。この世界技術レベルも低そうだから証拠も残りづらそうだしね!」
「なんか腹立つ言い方ですわね・・・まあ理解できたならいいですけど。」
と、ここで私は一つ大事な事を忘れていたことに気付く。
「私、名前いったっけ?」
「そういえばお互い名乗っていませんでしたね。」
「じゃ、改めて。私は高羽伊緒・・・です。これから頑張ろうね!」
「リーン・オフ・ナチュレでございます。二人でライヴを血祭りに。そして我が親愛なるランの生涯に平穏を!」
こうして普通の女子高生と脳筋令嬢の、奇妙な共闘物語が幕を開けたのだった。
けれど、今から六年後の秋頃、遥か南方に突如として現れた宗教国家「ライヴ聖教国」に攻め込まれる。タム王国の領地は半分まで縮小するけど、ある日覚醒した聖女の力で国は護られる。
なんで予言者でも超能力者でも無い私がこんな未来を知ってるのかって?
その理由は、実は私が現代日本の女子中学生で、滅茶苦茶やり込んでたゲーム「聖戦場の乙女」の世界に転生してきたからなのだ!
「誰に話しているのか知りませんが、貴女のそれは転生とは言いませんわ。"憑依"と言うのです!」
訂正。私は転生したのではなく憑依したんだ。タム王国軍司令官のご令嬢リーン・オフ・ナチュレの体に・・・
事の起こりは二週間前。ラピュセルのやりすぎで二徹した私は、登校中に階段を踏み外し、おそらく死亡。
その後リーンの体に憑依した。ゲームが始まるころには軍司令官に就任することになる彼女は、ラピュセルの主人公の聖女、ラン・ファ・ラプトの幼馴染であり、嫌がる彼女を言いくるめて出陣の命令を出す嫌な上司というポジションだった。
作中キャラの中でも特にランが気に入っていた私は、彼女に憑依したと分かった時、ランを亡命させて代わりにリーンを出陣させてやろうかと思ったものだ。
でもリーンの話を聞いていくうちに考えが変わった。ゲーム内での彼女の非道は、必死さ故のことだろうと何となく予想がつく程度には、彼女はランに入れ込んでいた。
「それでも許せませんわ、未来の私!自分の尻拭いを親友のランにやらせるなど・・・」
「とにかく状況は今説明した通りだよ。聖教国はまだ影も形もない。だから今私たちにできるのはリーンのお父さんにお願いして、ライヴができる前に・・・」
「鍛えますわよ。」
「え?」
「鍛えると言っているのです。」
当たり前のように言われても困る。
「でも鍛えるっていつまで?早く潰しにライヴ聖教国が完成しちゃうよ!」
「貴女は知らないかもしれませんが、国も軍隊も作るの結構大変ですのよ。六年後に我が国まで攻めてくる、つまりあの山岳地帯を超えられる軍事力を揃えているという事は、今の段階でもある程度の水準までは整えられていると考えるのが妥当ですわ。」
「じゃあ尚更攻めた方がいいよ!早くしないと向こうの準備が完全に整っちゃうよ!」
「何もしてない国を軍隊動かして攻められるわけないでしょう。そもそもタム王国は攻め辛いだけで生き残ってきた国ではありません。”手を出してこないから殴り返す必要がない”、周りからそう思われて生き残って来られた国ですのよ。他所を一方的に攻める様な事をして諸外国に危険視されたら、ライヴ以外の国も脅威になり得ますわ。」
確かに、彼女の言うとおりだ。私は今までタムとライヴだけしか見えていなかった。でも他にも国がある以上、勝手なことをすればライヴ以外の国とも戦争になりかねないんだ。そんな当たり前のことが抜けていたなんて・・・
「だからこそ鍛えるのです。今から三年、否!二年でタムの小隊を一人で殲滅できる程度まで鍛えます。幸い私は武人の家系。私が本気で鍛錬すればライヴとやらの連中も捻り潰せる筈ですわ。」
「いやその発想はおかしいと思うけど・・・二年でそのレベルは無理でしょ。そもそも鍛えたとしてどうやってライヴを叩くのさ!?」
「それを貴女が考えるのです、スカタン。私が力となり、そして・・・この言い方少々不服だけれど、貴女が頭脳となってライヴに立ち向かうのよ。」
「すかっ・・・でも、そうか。確かに私達だけで動けば国は巻き込まなくても済むかも。この世界技術レベルも低そうだから証拠も残りづらそうだしね!」
「なんか腹立つ言い方ですわね・・・まあ理解できたならいいですけど。」
と、ここで私は一つ大事な事を忘れていたことに気付く。
「私、名前いったっけ?」
「そういえばお互い名乗っていませんでしたね。」
「じゃ、改めて。私は高羽伊緒・・・です。これから頑張ろうね!」
「リーン・オフ・ナチュレでございます。二人でライヴを血祭りに。そして我が親愛なるランの生涯に平穏を!」
こうして普通の女子高生と脳筋令嬢の、奇妙な共闘物語が幕を開けたのだった。
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