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第三部 更科橋 ~涙の森~
第二十五章 残党狩り
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甲州・韮崎村
武田勝頼が山中で自害し 北条夫人も一緒に旅立った。
家臣の小山田の岩殿城へ向かったが、その小山田も徳川に寝返り、行き場を失ったのである。
これにより完全に武田家は滅亡した。
しばらくして、織田・徳川の軍勢により武田方武士の粛清が始まった。
世に伝わる「残党狩り」である。
逃げ延びた武田兵を探し出し、始末を行い始めた。それは、後世にもあまりにも残虐な残虐な行為であったと伝わる。武田兵をかくまった村人達も同罪とされ打ち首にされ、村ごと焼きはらわれたと伝わる。
また、通報した村人には報酬も与えられたことにより、今までかくまってくれていた村人たちから武田兵はことごとく通報され捕まった。
その為、生き残った武田方兵は少なかったと伝わる。
ある村を除いて・・・
韮崎村の上ノ山地区
更科一行はこの村で過ごしていた。
かつて、この村の子供達を、山賊から救い、
また、先の戦に駆りだされた大勢の村人達を、命からがら守り抜いて、連れて帰ってきたのである。この村人達は、決して更科達を通報するような事は無かった。もし更科が見つかるような事があれば、村人たちは戦う覚悟があった。
残党狩りの知らせは、この村にも情報は入って来ていた。
直ぐ近くまで、来ていた。
更科の屋敷内にて
「相当厳しく、村の隅々まで隠れていないか調べてる」圭二郎
「そうか。通報した者には褒美も出していると聞いた」孝之進
「この村には、あっしらを売るような者はおるまい」お琴
「そうじゃな。その点は安心じゃが、先の戦に、大勢出ておるので、村人達の顔を見られておらぬか心配じゃの」お結
「髙天神城内でほぼ、戦っておったのじゃ、逃げる際に僅かな戦いしかしていない為、大丈夫じゃろう。わしを除いてはの」更科
「そうだと良いが。とにかく隠れるわけにはいかん。あくまで百姓になりきってやり過ごすしかない」お結
そこへ、隣の村まで偵察に行っていた晴介が飛んで帰って来た。
「まずい。隣村まで残党狩りの一行がやって来た。」晴介
「ちょうど今、その話をしておった。隅々まで村を調べる為、隠れる事はせず、百姓になりきって、やり過ごせばよかろうと。」圭二郎
「この村には、我らを売るような者はおるまい」孝之進
「一行の頭が、血眼になって更科を探しておる」晴介
「更科を?」お結
「そら、そうじゃろ。我らを見つければ、大手柄じゃ。褒美ほしさじゃろ」お琴
「似ておるが、村人総出で違うと言い通せば、大丈夫じゃろう」孝之進
「・・・それが駄目だ。出来ねえ」晴介
「駄目とは?」圭二郎
「この一帯を探しておる、残党狩りの頭が、あの尹松だ」晴介
皆が一斉に驚いた。
「あの、横田尹松か?」更科
「あの卑怯者めが、まだ手柄が欲しいか?」お結
髙天神城の軍艦でありながら、徳川方に内通し、援軍は必要無しとの書状を勝頼に出し、髙天神城を孤立させ、
自分と家臣一人を連れ城を抜け出して、後に徳川方へ寝返った男である。
城内の7百人を超える家臣たちを見捨てて。
徳川からの降伏せよとの意向も、勝頼が断った為である。但し、寝返るなら通常は家臣もろともである。通常の城主であれば、家臣達の命と引き換えに、自分の首を差し出すのが、武士のならわしであった。
「更科だけでは無く、わしら全員顔を知られておる。村人兵達もじゃ」お結
「万事休すじゃの」お琴
「どこかに隠れるか?」圭二郎
「今更、じたばたしても始まらぬわ」更科
「どうするつもりじゃ更科?」お結
「尹松と刺し違えるか?」晴介
「たわけ。そんな事をしてみろ。村ごと焼かれるぞ。皆殺しじゃ」更科
「では、どうする」お琴
「そうじゃの・・・こういう場合、森之助殿であればどうすかの?」
更科は森之助に問いただしていた。そして
出した答えは
「わし一人の首ですまぬか、頼んでみるわ」更科
「そうじゃの。ならばわしも一緒じゃ」お結
「しかたないの。あっしも一緒じゃ」お琴
「森之助に助けられた命。守り通せなんだな」孝之進
「あっちで森之助に怒られるの。何故、更科を守れなんだと」圭二郎
そこへドタドタと外から走ってくる足音がした。
「更科様。残党狩りがすぐそこまで来ました」と連絡が入った。
「そうか。村に入ったら、ここに通せ」更科
「え?よろしいので?」
「良い」
しばらくして、足音がして残党狩りが数名で入って来た。
バンと障子が勢いよく開いた。
横田尹松と一緒に寝返った家臣とその他数名の供がいた。
更科達の顔を見渡した。
更科達は、正座をして迎えていた。
尹松が嬉しそうな顔、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「お前たちは、他の場所を調べて来い」尹松
「はっ。」
数名の家臣が出て行き、尹松と一緒に寝返った家臣二人になった。
障子を閉めた
「ここにおられましたか。更科殿」
「皆さまも、お揃いで」家臣が言った。
「尹松殿もご無事でなによりでございまする。」更科
緊張が走った。
第二十五章 完
武田勝頼が山中で自害し 北条夫人も一緒に旅立った。
家臣の小山田の岩殿城へ向かったが、その小山田も徳川に寝返り、行き場を失ったのである。
これにより完全に武田家は滅亡した。
しばらくして、織田・徳川の軍勢により武田方武士の粛清が始まった。
世に伝わる「残党狩り」である。
逃げ延びた武田兵を探し出し、始末を行い始めた。それは、後世にもあまりにも残虐な残虐な行為であったと伝わる。武田兵をかくまった村人達も同罪とされ打ち首にされ、村ごと焼きはらわれたと伝わる。
また、通報した村人には報酬も与えられたことにより、今までかくまってくれていた村人たちから武田兵はことごとく通報され捕まった。
その為、生き残った武田方兵は少なかったと伝わる。
ある村を除いて・・・
韮崎村の上ノ山地区
更科一行はこの村で過ごしていた。
かつて、この村の子供達を、山賊から救い、
また、先の戦に駆りだされた大勢の村人達を、命からがら守り抜いて、連れて帰ってきたのである。この村人達は、決して更科達を通報するような事は無かった。もし更科が見つかるような事があれば、村人たちは戦う覚悟があった。
残党狩りの知らせは、この村にも情報は入って来ていた。
直ぐ近くまで、来ていた。
更科の屋敷内にて
「相当厳しく、村の隅々まで隠れていないか調べてる」圭二郎
「そうか。通報した者には褒美も出していると聞いた」孝之進
「この村には、あっしらを売るような者はおるまい」お琴
「そうじゃな。その点は安心じゃが、先の戦に、大勢出ておるので、村人達の顔を見られておらぬか心配じゃの」お結
「髙天神城内でほぼ、戦っておったのじゃ、逃げる際に僅かな戦いしかしていない為、大丈夫じゃろう。わしを除いてはの」更科
「そうだと良いが。とにかく隠れるわけにはいかん。あくまで百姓になりきってやり過ごすしかない」お結
そこへ、隣の村まで偵察に行っていた晴介が飛んで帰って来た。
「まずい。隣村まで残党狩りの一行がやって来た。」晴介
「ちょうど今、その話をしておった。隅々まで村を調べる為、隠れる事はせず、百姓になりきって、やり過ごせばよかろうと。」圭二郎
「この村には、我らを売るような者はおるまい」孝之進
「一行の頭が、血眼になって更科を探しておる」晴介
「更科を?」お結
「そら、そうじゃろ。我らを見つければ、大手柄じゃ。褒美ほしさじゃろ」お琴
「似ておるが、村人総出で違うと言い通せば、大丈夫じゃろう」孝之進
「・・・それが駄目だ。出来ねえ」晴介
「駄目とは?」圭二郎
「この一帯を探しておる、残党狩りの頭が、あの尹松だ」晴介
皆が一斉に驚いた。
「あの、横田尹松か?」更科
「あの卑怯者めが、まだ手柄が欲しいか?」お結
髙天神城の軍艦でありながら、徳川方に内通し、援軍は必要無しとの書状を勝頼に出し、髙天神城を孤立させ、
自分と家臣一人を連れ城を抜け出して、後に徳川方へ寝返った男である。
城内の7百人を超える家臣たちを見捨てて。
徳川からの降伏せよとの意向も、勝頼が断った為である。但し、寝返るなら通常は家臣もろともである。通常の城主であれば、家臣達の命と引き換えに、自分の首を差し出すのが、武士のならわしであった。
「更科だけでは無く、わしら全員顔を知られておる。村人兵達もじゃ」お結
「万事休すじゃの」お琴
「どこかに隠れるか?」圭二郎
「今更、じたばたしても始まらぬわ」更科
「どうするつもりじゃ更科?」お結
「尹松と刺し違えるか?」晴介
「たわけ。そんな事をしてみろ。村ごと焼かれるぞ。皆殺しじゃ」更科
「では、どうする」お琴
「そうじゃの・・・こういう場合、森之助殿であればどうすかの?」
更科は森之助に問いただしていた。そして
出した答えは
「わし一人の首ですまぬか、頼んでみるわ」更科
「そうじゃの。ならばわしも一緒じゃ」お結
「しかたないの。あっしも一緒じゃ」お琴
「森之助に助けられた命。守り通せなんだな」孝之進
「あっちで森之助に怒られるの。何故、更科を守れなんだと」圭二郎
そこへドタドタと外から走ってくる足音がした。
「更科様。残党狩りがすぐそこまで来ました」と連絡が入った。
「そうか。村に入ったら、ここに通せ」更科
「え?よろしいので?」
「良い」
しばらくして、足音がして残党狩りが数名で入って来た。
バンと障子が勢いよく開いた。
横田尹松と一緒に寝返った家臣とその他数名の供がいた。
更科達の顔を見渡した。
更科達は、正座をして迎えていた。
尹松が嬉しそうな顔、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「お前たちは、他の場所を調べて来い」尹松
「はっ。」
数名の家臣が出て行き、尹松と一緒に寝返った家臣二人になった。
障子を閉めた
「ここにおられましたか。更科殿」
「皆さまも、お揃いで」家臣が言った。
「尹松殿もご無事でなによりでございまする。」更科
緊張が走った。
第二十五章 完
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