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:RE
しおりを挟む拝啓、あたしのどうしようもねぇクソダーリン。
とりあえずあんたのちんこがもげ落ちることを神に祈る。
いや、マジで。
あまたの女子からあんたのビッグマグナムが高性能であることを聞かされたけど、あたしは一度もその性能とやらを確認させてもらっていないから、勝手に残念な火縄銃だと思い込んでいる。ざまー。
直接別れを言ったら経験上、ものすごく面倒なことになりそうなのでこうやって、手紙をしたためることにした。
ちなみに“したためる”って漢字で書くと“認める”って書くのね。
初めて知った。
あんたも覚えておくと、いいかもしれない。
ついでに言うと、この手紙を書くに当たって封筒セットは100均で買った。
消費税がついてぜんぜん100均じゃないので詐欺だと思うと思いながら、買った。
だから、うさぎのファンシーなのはクールで知的なあたしの趣味ではなく、ちょうどよさそうなのがなかったせいだ。
さすが田舎の小さな100均。種類が乏しすぎる。
とまぁ、手紙に柄に対する言い訳は置いておいて。
あたしは今、一夜干しのスルメをしゃぶりながら、この手紙を書いている。
この手紙を書こうと思いいたるまで、あたしはかなりの我慢をしたと思う。
三ヶ月もの間、よく耐えたと自分で自分を誉めたい。
あんたなら、あたしががこんな手紙を書くハメになった理由を、誰よりも一番知っているだろう。
率直に言うが、原因はあんたの節操と貞淑を母親の胎内に置いてきたとしか思えない、ゆるい下半身事情のせいだ。
ゆるキャラもびっくりのゆるゆる具合には、あたしももう、ついていけない。
女ならば下は中学生、上は既婚者まで射程圏内の無節操すぎるあんたには、ついていけない。
そこに山があるから……という理由で登山する冒険家のように、そこに相手がいるからと、ちんこをおっ勃てるあんたの変態ぶりにも呆れた。
絶倫野郎死ねよマジで馬鹿じゃねてめぇ……などと、何度思い、そして口にしたことか。
あんたの浮気現場を押さえるたびに、あんたの超絶いい顔にだまされたあたしにも非はあるだろう。小指の爪の先程度には。
浮気現場に乗り込み、消火器をぶっ放した経験は、あたしにとってはおいしいネタ……いや違う。面白い思い出となった。
ごく普通な人生を歩んでいたら、こういう経験はめったに味わえなかっただろう。
だが、あんたとの思い出はあたしの中で黒歴史扱いになるだろう。
できるだけ早く、あんたのことは忘れるつもりだ。
超絶美形で実家もお金持ちなあんたと違って、一盛り100円程度で売ってそうなあたしでは、そうそう恋人もできないだろうけど、次こそは誠実でマトモな恋人とお花畑でお手手をつないでルンタッタしてやる。
あんたとできなかったことをしてやる。
なおこの手紙を書くのに、実は三日もかかった。
ここ数年、手紙なんて書いていなかったので、指が痛くなった。
なので、あんたの誕生日に電話もメールもなければ、約束の場所にいけなかったのも、この手紙を書いていたせいだ。
あんたの友達の藤森だか藤井だかに、あんたの誕生日を無視したことを叱られたが、こういう理由だったから、あんたも笑顔で許すべきだと思う。
あんな部屋の隅っこで膝を抱えているのは、卑怯だと思う。
思わず、別れる決意がポキって折れかけた。
頭を撫でてやりたくなった。
まぁ、なんとか持ちこたえたわけだけど。
と、そろそろ書くスペースがなくなってきたので、これで最後。
あんたとあたしの人生が交わることはもうないだろう。
あたしはあんたのことを忘れて幸せになるから、あんたもあたしのことは忘れて、どこかそこら辺の男女と腰をふって、変な病気でも移されてちんこがもげ落ちてしまえ。
世のため人のため、何よりあたしがスッキリすると思うので、そうなって欲しい。
あたしはあんたの幸せなんか願わない。
そのくらいのことを、あんたはあたしににしてきたんだから。
別に恨んじゃいないが、幸せを願えるほど俺はできた人間じゃない。
だからあんたも、あたしの幸せとか願わなくいい。
あんたもあたしのことなんか、忘れちまえ。
じゃあ。
本当にこれで最後。
大学内で会うこともあるかもしれないけど、あたしたちは他人。
顔見知りでさえない、あたしはあんたのことを無視するだろうけど、決して追いかけてこないでね。
……念のために書いておくが、これは本当は追いかけてほしいの! ってゆーツンデレ発言じゃないわよ。
なんかあんたなら勘違いしそうだから、念のためね。
この手紙があんたの元に届く頃には、あたしの携帯は番号もアドレスもかえていると思う。
あんたの履歴等も完璧に消しておいてやるから、個人情報うんぬんについては心配しないでも大丈夫よ。そこら辺は、しっかりしてるから。
それじゃ、元気でね。
敬具
あれ、あたし。
あんたの住所……知らなくね(´・ω・`)?
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書いたはいいけど、届けられない。
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