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出会い
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『ごめんなさい。私暗くて惨めで情けなくてへぼくて地味でクズでゴミでダメダメな男性を見抜く力に昔からとっても長けているんですよね。だからあなたは私好みじゃありません。そんな付け焼刃なセリフで私を口説こうなんて……生まれてきたことを後悔させてあげてもいいくらい私に対してとっても失礼ですよ?』
……僕には処理できない言葉の暴力! 人を見た目で判断してはいけないという言葉を、これほど実感したことは人生で初めてだ。
いやしかしアバターの見た目だけで判断するのはおかしいかもしれない。実際は見た目どおりの毒舌女かもしれない。アバターは清楚なお姫様なのに。
『何か言ったらどうなんです? 図星過ぎて言葉もでないんですか? ……あぁ、それとも私の言葉を理解できる程度の知能すら持ち合わせていない低級な存在なんですか? それなら謝らないといけません。あなたに理解できる程度の言葉で話せない私の愚かさを。あぁ、でも謝罪しても理解できるかどうか……。……低脳な人にも理解できる私の美しさは本当に罪ですね』
…………無理だ。コミュニーケション能力が皆無に近い僕では、とても太刀打ちできない存在。
RPGでいうところの始まりの村で、魔王城周辺にでてくるべき敵と遭遇してしまった感覚にとても近い。僕の会話力では相対することすら難しい。
清楚な見た目に騙されて話しかけるべきではなかった。『もう暗いなんていわせない! 今日からあなたもモテ男!』の効果を確かめようと思わなければよかった。
ベストセラー本を読んで気が大きくなっていたのかもしれない。常の僕にはないミスをしでかしてしまった。いつもなら交友関係、性格、趣味嗜好、好きなタイプなどの情報をリサーチしてからしか話しかけないというのに。今回は何のリサーチもせずに話しかけてしまった。知っておけば絶対に話しかけなかった。これは僕のミスだ。
仕方ない、この手だけは使いたくなかったが。
『あぁ、神よ。愚かな僕を許してくれたまえ。次からは努力を怠らずに相手の全てを調べつくします。だからどうか目の前の悪魔を遠い場所に追いやってください。僕のコミュニケーション能力では到底太刀打ちできません。そして『もう暗いなんていわせない! 今日からあなたもモテ男!』の効果を確かめようと所構わずに話しかけることもやめます。ついでに片思いボタンを押した事実もなかったことにしてください。神様ですからその程度のことはできるはずです。もう藁人形に神様の名を書いて釘を打ち付けて呪うこともしません。ネットの掲示板に神様の悪口を書くのも止めにします。なので僕の容姿をハンサムに変えてください。ここまで謝ってお願いしているのですから、それぐらいしてくれますよね? 神様なんだからこの程度のことを許容できないほど、器は小さくないですよね? あと性格も容姿も完璧な女の子を僕のところに寄こしてくれたら言うことなしです。お願いします神様、僕の願いを叶えてください。もし叶えてくれないのであれば、姿を見せてください。八つ裂きにしますから。それではよろしくお願いしますね神様?』
これぞ秘技、神頼み。今のところ成功確率0パーセントの大技である。
『……なんて図々しいお願いをしているんですかあなたは? 脳みそ腐っているんですか。それに私のような可憐で美しい少女に向かって悪魔とは失敬です。あなたの方がよっぽど悪魔めいています。というかせこいです、やっていること』
図々しい、何を言っているんだこの女は? 僕はかなり下手にでてお願いをしたというのに。
それにせこいとは何だせこいとは! ただ藁人形を作ったり、悪口を書いただけだ。
君に僕の何が分かるというのだ! ということを面と向かって言うことができない僕の気の弱さったらないね。
ここに来てもなお発揮されるコミュニケーション力のなさ。
『……さすが僕といったところか』
『何がさすがなのか脈絡がなさすぎて分からないのですが。あなた私と会話する気あるんですか。急に呼び止めて告白したり、神様にお願い事をしたりまったくわけが分かりません』
それはそうかもしれない。いくらオンラインゲームとはいえ見知らぬアバターに急に話しかけられたら、驚くかもしれない。
しかしこれはお見合いゲーム。男と女の出会いを提供する場。急に話しかけられるイコールナンパと捉えるべきだ。
よっていきなり告白することはおかしくない。
神頼みをいきなりするのはさすがにおかしい。僕だって急に目の前で神頼みをされたら何、コイツ? ってなると思う。
だが今回の神頼みは僕にコミュニーケション能力がないのが原因。コミュニケーション能力があれば、毒舌にも対応できた。しかし僕にはなかった。だから対応できずに神頼みをすることになった。
それもこれも全て僕にコミュニーケション能力を付随させなかった神様が悪い。つまり今回のことも僕に恋人できないのも、友達がいないのも全て神様が原因。
よって、
『神様が悪い!』
この一言に尽きる。
『……神頼みをしたと思えば、神様の悪口ですか。ますます意味が分からなくなってきました。本当に頭がおかしいんですね。そんな人にも惚れられる私って何て罪深いの。神様、私も言いたいことがあります。私に美しさという罪を授けたことを恨みます』
確かに僕はおかしいかもしれない。だが君も大差ないのではと言いたい。しかし僕には……。
『あのぉ、何か言ってほしいのですが。自分で自分のことを美しいって言うの結構恥ずかしいんですよ。だから何か言ってくれないと、恥ずかしさで倒れちゃいます』
ほんのりと頬を赤らめ……アバターだからそうかは分からないが、本人が目の前にいたら赤らめているだろうそういう雰囲気を醸し出している。というか
『恥ずかしいなら言わなければいいのに、バカなのだろうか?』
『……何か言ってとは言いましたが、まさか悪口がくるとは思ってもいませんでした。これだから低脳な男は嫌いなんです。乙女心がまったく分かっていない。ただ美しいとかきれいとか可愛いとか女神様のようだとか可憐だとか、雑草の中に生える一輪の花のようだとか天から舞い降りた美しき天使だとか奇跡の美少女とか歴史上先にも後にも超えるものはいない美しさの持ち主だとか、そういうことを言ってほしい――』
自分の容姿に絶大な自信を持っていることが分かる一文だ。まさにナルシストの鏡だ。
僕とは正反対の人間のようだ。まさしく鏡のように。
『――わけではもちろんないのですが』
『OK! 歯ぁ食いしばろうか!』
さすがの僕も切れたぜ。
『ゲームで鍛えた僕の格闘術、とくと味わうがいい』
このセリフだけ聞くと友だちが多そうな明るいやつっぽいのに、現実とはかくも残酷であるということをまざまざと実感せざるをえない。
『ゲームはソロプレイが基本の僕。現実でも仮想でも孤独な男。孤独の星のもとに生まれた僕の宿命。それが僕。いざ尋常に勝負』
今の僕っていつにも増してかっこいい気がする? そうか僕に足りなかったものは、コミュニケーション能力ではなく気迫だったのか! 目から鱗の衝撃の事実。灯台下暗しとはまさにこのこと。
行くぞ僕。過去の自分と決別し、勝利をもぎ取るために。
――もしここで勝ったら、きゃーあの人かっこいいとかもてはやされるかもしれない。
『女の子を襲おうとするなんて、男の風上にも置けません。これがゲームの中だったから良かったものの、現実だったらどうするつもりだったんですか?』
僕は何も言うことができなかった。否彼女の言葉すら認識できていなかった。
僕は僕のアバターは……フィールドに背をつけ倒れていた。
彼女のアバターにコテンパンにされてしまった。
僕に格闘ゲームの才能はなかったようだ。
恨めしい、このゲームにバトル機能がついていたことが憎い。誰だ女の子は男の子の戦う姿に惚れてしまうのですよとかぬかして、格闘ゲームの要素を盛り込んだのは。
そのせいで恥を掻いてしまったではないか。
『憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いぞー! 誰だ格闘要素付け足したやつ。あぁ、神様追加です。格闘要素を付け足したやつを探して目の前に連れてきてください。あとは僕の全力をもって叩き潰す所存です。孤独な人間の失うものが何もないやつの怖さを、とくと思い知るがいい』
不思議だ。今の僕は何でもできそうな気がしている。恐れるものなど何もない。そういう感覚だ。怒りで頭のねじがぶっ飛んだのかもしれない。
『とりあえず人の話……聞きましょうか?』
彼女のアバターはニッコリと笑っている。
僕は首を縦に振った。
……前言撤回、恐ろしいものは目の前にいた。僕程度では敵わない、悪魔が。
その日の夜、僕は自室でぼんやりと天井を眺めていた。
あのあと僕は彼女に、なぜ告白したのかの説明をさせられた。理由は単純明快。彼女は怒っていた。
それはそうだろう。告白されたと思ったら、目の前で突然神頼みをし始め、襲い掛かられたのだから無理もない。
僕はちゃんと『もう暗いなんていわせない! 今日からあなたもモテ男!』の効果を試したかったと正直に口にしたのだが、バカにしたような目をされた。
無理もない。このような本に頼らなければモテない僕の惨めさを、彼女は情けないと思ったに違いない。
神頼みをした理由も聞かれた。コミュニケーション能力のなさが招いた要因であると、それを聞いた彼女はいったい何を思ったのだろう。
――私は美しさと優しさ、両方を兼ね備えた人間です。今日会ったのも何かの縁ということで、あなたのコミュニケーション能力が上がるように協力くらいはしてあげましょう。だからそうですね……告白の件は保留ということにしておきましょう。もしかしたら私があなたに惚れる可能性も、あなたに恋人ができる確率と同じくらいはあるかもしれませんので――
彼女は僕にそういい残しログアウトして今に至るわけだが。
さて僕はどうするべきなのだろうか。コミュニケーション能力がない僕に、彼女と協力するなどという芸当が果たして務まるのだろうか。
考えても栓なきことだとは思うのだが、考えずにはいられないのだ。
女子との交流。耐性がない僕はとても緊張している。なんせ人と触れ合うことがなかった僕が、いきなり協力関係を結ぶことになってしまったのだ。
しかも彼女はとても美しい。アバターはだが。実際は美人じゃない可能性の方が高い。
まぁ、それはいずれ分かることだ。彼女と僕が両思いになったときに。
そのためにまずは彼女とともに、お見合いを成功させるためにコミュニケーション能力を上げるとしよう。
……僕には処理できない言葉の暴力! 人を見た目で判断してはいけないという言葉を、これほど実感したことは人生で初めてだ。
いやしかしアバターの見た目だけで判断するのはおかしいかもしれない。実際は見た目どおりの毒舌女かもしれない。アバターは清楚なお姫様なのに。
『何か言ったらどうなんです? 図星過ぎて言葉もでないんですか? ……あぁ、それとも私の言葉を理解できる程度の知能すら持ち合わせていない低級な存在なんですか? それなら謝らないといけません。あなたに理解できる程度の言葉で話せない私の愚かさを。あぁ、でも謝罪しても理解できるかどうか……。……低脳な人にも理解できる私の美しさは本当に罪ですね』
…………無理だ。コミュニーケション能力が皆無に近い僕では、とても太刀打ちできない存在。
RPGでいうところの始まりの村で、魔王城周辺にでてくるべき敵と遭遇してしまった感覚にとても近い。僕の会話力では相対することすら難しい。
清楚な見た目に騙されて話しかけるべきではなかった。『もう暗いなんていわせない! 今日からあなたもモテ男!』の効果を確かめようと思わなければよかった。
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仕方ない、この手だけは使いたくなかったが。
『あぁ、神よ。愚かな僕を許してくれたまえ。次からは努力を怠らずに相手の全てを調べつくします。だからどうか目の前の悪魔を遠い場所に追いやってください。僕のコミュニケーション能力では到底太刀打ちできません。そして『もう暗いなんていわせない! 今日からあなたもモテ男!』の効果を確かめようと所構わずに話しかけることもやめます。ついでに片思いボタンを押した事実もなかったことにしてください。神様ですからその程度のことはできるはずです。もう藁人形に神様の名を書いて釘を打ち付けて呪うこともしません。ネットの掲示板に神様の悪口を書くのも止めにします。なので僕の容姿をハンサムに変えてください。ここまで謝ってお願いしているのですから、それぐらいしてくれますよね? 神様なんだからこの程度のことを許容できないほど、器は小さくないですよね? あと性格も容姿も完璧な女の子を僕のところに寄こしてくれたら言うことなしです。お願いします神様、僕の願いを叶えてください。もし叶えてくれないのであれば、姿を見せてください。八つ裂きにしますから。それではよろしくお願いしますね神様?』
これぞ秘技、神頼み。今のところ成功確率0パーセントの大技である。
『……なんて図々しいお願いをしているんですかあなたは? 脳みそ腐っているんですか。それに私のような可憐で美しい少女に向かって悪魔とは失敬です。あなたの方がよっぽど悪魔めいています。というかせこいです、やっていること』
図々しい、何を言っているんだこの女は? 僕はかなり下手にでてお願いをしたというのに。
それにせこいとは何だせこいとは! ただ藁人形を作ったり、悪口を書いただけだ。
君に僕の何が分かるというのだ! ということを面と向かって言うことができない僕の気の弱さったらないね。
ここに来てもなお発揮されるコミュニケーション力のなさ。
『……さすが僕といったところか』
『何がさすがなのか脈絡がなさすぎて分からないのですが。あなた私と会話する気あるんですか。急に呼び止めて告白したり、神様にお願い事をしたりまったくわけが分かりません』
それはそうかもしれない。いくらオンラインゲームとはいえ見知らぬアバターに急に話しかけられたら、驚くかもしれない。
しかしこれはお見合いゲーム。男と女の出会いを提供する場。急に話しかけられるイコールナンパと捉えるべきだ。
よっていきなり告白することはおかしくない。
神頼みをいきなりするのはさすがにおかしい。僕だって急に目の前で神頼みをされたら何、コイツ? ってなると思う。
だが今回の神頼みは僕にコミュニーケション能力がないのが原因。コミュニケーション能力があれば、毒舌にも対応できた。しかし僕にはなかった。だから対応できずに神頼みをすることになった。
それもこれも全て僕にコミュニーケション能力を付随させなかった神様が悪い。つまり今回のことも僕に恋人できないのも、友達がいないのも全て神様が原因。
よって、
『神様が悪い!』
この一言に尽きる。
『……神頼みをしたと思えば、神様の悪口ですか。ますます意味が分からなくなってきました。本当に頭がおかしいんですね。そんな人にも惚れられる私って何て罪深いの。神様、私も言いたいことがあります。私に美しさという罪を授けたことを恨みます』
確かに僕はおかしいかもしれない。だが君も大差ないのではと言いたい。しかし僕には……。
『あのぉ、何か言ってほしいのですが。自分で自分のことを美しいって言うの結構恥ずかしいんですよ。だから何か言ってくれないと、恥ずかしさで倒れちゃいます』
ほんのりと頬を赤らめ……アバターだからそうかは分からないが、本人が目の前にいたら赤らめているだろうそういう雰囲気を醸し出している。というか
『恥ずかしいなら言わなければいいのに、バカなのだろうか?』
『……何か言ってとは言いましたが、まさか悪口がくるとは思ってもいませんでした。これだから低脳な男は嫌いなんです。乙女心がまったく分かっていない。ただ美しいとかきれいとか可愛いとか女神様のようだとか可憐だとか、雑草の中に生える一輪の花のようだとか天から舞い降りた美しき天使だとか奇跡の美少女とか歴史上先にも後にも超えるものはいない美しさの持ち主だとか、そういうことを言ってほしい――』
自分の容姿に絶大な自信を持っていることが分かる一文だ。まさにナルシストの鏡だ。
僕とは正反対の人間のようだ。まさしく鏡のように。
『――わけではもちろんないのですが』
『OK! 歯ぁ食いしばろうか!』
さすがの僕も切れたぜ。
『ゲームで鍛えた僕の格闘術、とくと味わうがいい』
このセリフだけ聞くと友だちが多そうな明るいやつっぽいのに、現実とはかくも残酷であるということをまざまざと実感せざるをえない。
『ゲームはソロプレイが基本の僕。現実でも仮想でも孤独な男。孤独の星のもとに生まれた僕の宿命。それが僕。いざ尋常に勝負』
今の僕っていつにも増してかっこいい気がする? そうか僕に足りなかったものは、コミュニケーション能力ではなく気迫だったのか! 目から鱗の衝撃の事実。灯台下暗しとはまさにこのこと。
行くぞ僕。過去の自分と決別し、勝利をもぎ取るために。
――もしここで勝ったら、きゃーあの人かっこいいとかもてはやされるかもしれない。
『女の子を襲おうとするなんて、男の風上にも置けません。これがゲームの中だったから良かったものの、現実だったらどうするつもりだったんですか?』
僕は何も言うことができなかった。否彼女の言葉すら認識できていなかった。
僕は僕のアバターは……フィールドに背をつけ倒れていた。
彼女のアバターにコテンパンにされてしまった。
僕に格闘ゲームの才能はなかったようだ。
恨めしい、このゲームにバトル機能がついていたことが憎い。誰だ女の子は男の子の戦う姿に惚れてしまうのですよとかぬかして、格闘ゲームの要素を盛り込んだのは。
そのせいで恥を掻いてしまったではないか。
『憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いぞー! 誰だ格闘要素付け足したやつ。あぁ、神様追加です。格闘要素を付け足したやつを探して目の前に連れてきてください。あとは僕の全力をもって叩き潰す所存です。孤独な人間の失うものが何もないやつの怖さを、とくと思い知るがいい』
不思議だ。今の僕は何でもできそうな気がしている。恐れるものなど何もない。そういう感覚だ。怒りで頭のねじがぶっ飛んだのかもしれない。
『とりあえず人の話……聞きましょうか?』
彼女のアバターはニッコリと笑っている。
僕は首を縦に振った。
……前言撤回、恐ろしいものは目の前にいた。僕程度では敵わない、悪魔が。
その日の夜、僕は自室でぼんやりと天井を眺めていた。
あのあと僕は彼女に、なぜ告白したのかの説明をさせられた。理由は単純明快。彼女は怒っていた。
それはそうだろう。告白されたと思ったら、目の前で突然神頼みをし始め、襲い掛かられたのだから無理もない。
僕はちゃんと『もう暗いなんていわせない! 今日からあなたもモテ男!』の効果を試したかったと正直に口にしたのだが、バカにしたような目をされた。
無理もない。このような本に頼らなければモテない僕の惨めさを、彼女は情けないと思ったに違いない。
神頼みをした理由も聞かれた。コミュニケーション能力のなさが招いた要因であると、それを聞いた彼女はいったい何を思ったのだろう。
――私は美しさと優しさ、両方を兼ね備えた人間です。今日会ったのも何かの縁ということで、あなたのコミュニケーション能力が上がるように協力くらいはしてあげましょう。だからそうですね……告白の件は保留ということにしておきましょう。もしかしたら私があなたに惚れる可能性も、あなたに恋人ができる確率と同じくらいはあるかもしれませんので――
彼女は僕にそういい残しログアウトして今に至るわけだが。
さて僕はどうするべきなのだろうか。コミュニケーション能力がない僕に、彼女と協力するなどという芸当が果たして務まるのだろうか。
考えても栓なきことだとは思うのだが、考えずにはいられないのだ。
女子との交流。耐性がない僕はとても緊張している。なんせ人と触れ合うことがなかった僕が、いきなり協力関係を結ぶことになってしまったのだ。
しかも彼女はとても美しい。アバターはだが。実際は美人じゃない可能性の方が高い。
まぁ、それはいずれ分かることだ。彼女と僕が両思いになったときに。
そのためにまずは彼女とともに、お見合いを成功させるためにコミュニケーション能力を上げるとしよう。
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