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始まりの予感
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僕は孤独である。
ただその事実を甘んじて受け入れる気はさらさらない。だけど僕はコミュニケーション能力というものに恵まれていないようで、友達を作ろうと思ってもうまくいかず皆離れていく。
なので僕は大学でいつも一人っきりで過ごしている。
誰かと繋がりを持ってみたい。そう思うことは間違っているのだろうか。
天は二物を与えずというが、神様は僕に何も与えてはくれなかったようだ。
――僕はこの孤独な空間で情報の波に身を任せ、衝動のまま飛翔していく。
どこにたどり着くか分からぬまま、僕は延々と飛び続けていく。
――いつかたどり着けると信じて。
僕は大学が終わると真っ直ぐに自宅へと帰る。どこかに遊びに行く友達など存在しないからだ。
元来僕はインドア派なのでそのことに不満はない。ただ誰かと一緒に帰路に着くというのもありだと思う。
それが女の子であるならば恋人であるならば、どんなにいいことか。
僕には一度でいいから女の子と付き合ってみたいという願望がある。だけどそれが叶えられる日は来そうにない。
――僕はモテない。それはもう異常なほどに。
僕は性格が暗い。それが女の子が寄ってこない一つ目の理由。
二つ目は容姿。別に不細工というわけではない。いや、そのほうがまだマシだったかもしれない。
僕は普通なのだ。凡人をそのまま絵に描いたような容姿。つまり、普通すぎて記憶にすら残らない程度の容姿なのだ。
このことが僕の孤独さによりいっそう拍車をかけている。
僕はクラスメイトに顔を覚えられてもいない。登校するといつも、あれ誰だっけコイツ? みたいな顔をされる。
これは結構キツイものがある。
そして最後。これがもっとも重要な理由。コミュニケーション能力の有無。
これがないと女の子との会話にすらたどり着くことができないのだ。そう僕みたいに。
けれど唯一僕に話しかけてくる女の子がいる。その優しさが嬉しくて、僕はいつからか彼女に惹かれていた。
でも僕は彼女と上手く話すことができない。これもコミュニケーション能力のなさゆえだ。
そして僕はない知恵を振り絞り、ここにいる。
そう簡単な話だったんだ。モテない理由が性格、容姿、会話能力であるならば、これをモテる要素に作り変えれば良い。
容姿はクールで派手なもの、一度見ればすぐに覚えられる見た目。性格も明るめに、会話能力はこれでもまだましなほう。
『で、どうだろうか? 僕はすでに会う気満々なんだけど、君もそうであってくれるならばこれほど嬉しいこともない。愛してるぜハニー』
僕は彼女の右上に位置するアイコンをクリックし、片思いボタンを選んだ。これで後は待つだけだ。
僕は一月ほど前からとあるオンラインゲームにはまっている。最初にこのゲームを見つけたときは、まさにこれだと思ったものだ。
これでなら僕のコミュニケーション能力のなさを改善できるかもしれない。そう踏んだ僕はすぐにゲームを開始した。
このゲームの名は「コンカツ」結婚活動、根性で勝つの二つの意味がある。
ゲームの基本コンセプトは見合い。仮想上で行うお見合いで、普通のお見合いと違い、全国規模で開催されるのが特徴だ。
仮想上で行われるので、遠くに出かける必要もなく、また自分の好きな時間に行えるので、忙しくてお見合いができないという心配がない。
登録も非常に簡単で、自分の名前、年齢、住所、職業を入力し、自分の顔写真をアップロードするそれだけだ。
この顔写真はお見合いのセッティングまでこぎつけた場合、その相手に送られる。写真を見て気に入れば、運営が現実世界での出会いをセッティングしてくれるというシステムだ。
相手を選ぶにさいし、職業は重要なもの。アバターネームの横には性別、年齢と並んで常に職業が表示される。
僕は大学生なので、その旨が表示されている。
アバターネームは僕の本名、蟻口光太をもじってアントライトと名づけた。
お見合い成功の判断は、アバターの右上に表示されているアイコン『片思いボタン』が握っている。片思いボタンというのはその名の通り、クリックすれば気に入っているという証で、押された相手側が押した自分側の片思いボタンをクリックすれば両思いということになり、お見合い成功ということになる。
そして『会いたいボタン』をクリックする。お互いが押せば現実で会うことになり、押さなかった場合はそこで話が終了する。
残念ながら僕はお見合いが成功したことは一度もない。僕の性格はネット上でも遺憾なく発揮されるようで、いつも振られてしまう。
ネットで暗い人間が現実で明るいはずがないという判断が下されているのだろう。それも致し方ないかもしれない。僕の性格の暗さは折り紙つきだからだ。。
仮想上でも繋がりができないなんて、さすが僕と言わざるをえない。これほどコミュニケーション能力がないとは思わなかった。
しかし今回の僕は一味違う。なぜなら『もう暗いなんていわせない! 今日からあなたもモテ男!』というベストセラー本を熟読したからだ。
まさに僕のような人のために売り出された本といっても過言ではないと思う。
これで僕もモテ男だ。
ただその事実を甘んじて受け入れる気はさらさらない。だけど僕はコミュニケーション能力というものに恵まれていないようで、友達を作ろうと思ってもうまくいかず皆離れていく。
なので僕は大学でいつも一人っきりで過ごしている。
誰かと繋がりを持ってみたい。そう思うことは間違っているのだろうか。
天は二物を与えずというが、神様は僕に何も与えてはくれなかったようだ。
――僕はこの孤独な空間で情報の波に身を任せ、衝動のまま飛翔していく。
どこにたどり着くか分からぬまま、僕は延々と飛び続けていく。
――いつかたどり着けると信じて。
僕は大学が終わると真っ直ぐに自宅へと帰る。どこかに遊びに行く友達など存在しないからだ。
元来僕はインドア派なのでそのことに不満はない。ただ誰かと一緒に帰路に着くというのもありだと思う。
それが女の子であるならば恋人であるならば、どんなにいいことか。
僕には一度でいいから女の子と付き合ってみたいという願望がある。だけどそれが叶えられる日は来そうにない。
――僕はモテない。それはもう異常なほどに。
僕は性格が暗い。それが女の子が寄ってこない一つ目の理由。
二つ目は容姿。別に不細工というわけではない。いや、そのほうがまだマシだったかもしれない。
僕は普通なのだ。凡人をそのまま絵に描いたような容姿。つまり、普通すぎて記憶にすら残らない程度の容姿なのだ。
このことが僕の孤独さによりいっそう拍車をかけている。
僕はクラスメイトに顔を覚えられてもいない。登校するといつも、あれ誰だっけコイツ? みたいな顔をされる。
これは結構キツイものがある。
そして最後。これがもっとも重要な理由。コミュニケーション能力の有無。
これがないと女の子との会話にすらたどり着くことができないのだ。そう僕みたいに。
けれど唯一僕に話しかけてくる女の子がいる。その優しさが嬉しくて、僕はいつからか彼女に惹かれていた。
でも僕は彼女と上手く話すことができない。これもコミュニケーション能力のなさゆえだ。
そして僕はない知恵を振り絞り、ここにいる。
そう簡単な話だったんだ。モテない理由が性格、容姿、会話能力であるならば、これをモテる要素に作り変えれば良い。
容姿はクールで派手なもの、一度見ればすぐに覚えられる見た目。性格も明るめに、会話能力はこれでもまだましなほう。
『で、どうだろうか? 僕はすでに会う気満々なんだけど、君もそうであってくれるならばこれほど嬉しいこともない。愛してるぜハニー』
僕は彼女の右上に位置するアイコンをクリックし、片思いボタンを選んだ。これで後は待つだけだ。
僕は一月ほど前からとあるオンラインゲームにはまっている。最初にこのゲームを見つけたときは、まさにこれだと思ったものだ。
これでなら僕のコミュニケーション能力のなさを改善できるかもしれない。そう踏んだ僕はすぐにゲームを開始した。
このゲームの名は「コンカツ」結婚活動、根性で勝つの二つの意味がある。
ゲームの基本コンセプトは見合い。仮想上で行うお見合いで、普通のお見合いと違い、全国規模で開催されるのが特徴だ。
仮想上で行われるので、遠くに出かける必要もなく、また自分の好きな時間に行えるので、忙しくてお見合いができないという心配がない。
登録も非常に簡単で、自分の名前、年齢、住所、職業を入力し、自分の顔写真をアップロードするそれだけだ。
この顔写真はお見合いのセッティングまでこぎつけた場合、その相手に送られる。写真を見て気に入れば、運営が現実世界での出会いをセッティングしてくれるというシステムだ。
相手を選ぶにさいし、職業は重要なもの。アバターネームの横には性別、年齢と並んで常に職業が表示される。
僕は大学生なので、その旨が表示されている。
アバターネームは僕の本名、蟻口光太をもじってアントライトと名づけた。
お見合い成功の判断は、アバターの右上に表示されているアイコン『片思いボタン』が握っている。片思いボタンというのはその名の通り、クリックすれば気に入っているという証で、押された相手側が押した自分側の片思いボタンをクリックすれば両思いということになり、お見合い成功ということになる。
そして『会いたいボタン』をクリックする。お互いが押せば現実で会うことになり、押さなかった場合はそこで話が終了する。
残念ながら僕はお見合いが成功したことは一度もない。僕の性格はネット上でも遺憾なく発揮されるようで、いつも振られてしまう。
ネットで暗い人間が現実で明るいはずがないという判断が下されているのだろう。それも致し方ないかもしれない。僕の性格の暗さは折り紙つきだからだ。。
仮想上でも繋がりができないなんて、さすが僕と言わざるをえない。これほどコミュニケーション能力がないとは思わなかった。
しかし今回の僕は一味違う。なぜなら『もう暗いなんていわせない! 今日からあなたもモテ男!』というベストセラー本を熟読したからだ。
まさに僕のような人のために売り出された本といっても過言ではないと思う。
これで僕もモテ男だ。
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