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結婚記念日の一幕
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「ただいまー、今帰ったよー」
「お帰りなさい、(ブッ)あなた。あら? どうしたのその白い花?」
見たことない花だわ。彼、花に興味なんてあったかしら。じっと見つめていると、どこか照れくさそうに頬をかきだした。
「エーデルワイスっていう花なんだ。気高い白って意味があるらしくて、君にぴったりだと思って買ってきたんだ」
彼の抱える白い花はキレイな色をしていた。私にぴったりだなんて恥ずかしいわ。体が火照ってきちゃった。
あー、やだやだ。年甲斐もなくキュンとするなんて。乙女なんてとっくに過ぎてるのに。
「どうして花を私に」
「結婚記念日だからだよ」
「あっ(ブゥ)」
そうだったわ。今日、結婚記念日じゃない。どうしよう、何の準備もしてないわ。
「もしかして忘れてたのかい?」
「け、今朝までは覚えてたのよ」
ホントはまったく覚えてなかったけど。
「ははっ」
「もう笑わないでよ。忘れてたなんて恥ずかしいわ」
「……受け取ってくれるかい。僕の気持ち」
「えぇ、もちろんよ。私はあなたの(ブブッ)妻なんだから」
彼がくれた白い花は何よりも輝いて見えた。
「嬉しいよ。……ところでさっきからブゥって音が聞こえるけど。この音は何かな?」
夫はニコニコしている。絶対に分かっていて聞いてるんだわ。イヤになっちゃう。
「おならよ。お・な・ら!」
「君は屁の音までステキなんだね」
「そこまで行くとただの嫌味だわ」
「褒めたつもりなんだけどなぁ」
「気づいていない振りをするのが優しさよ」
「でも君って普段おならをしないから、余計に気になっちゃって」
「言ったそばから、蒸し返さないでよ」
「ごめんごめん」
「あなたのせいよ」
「えぇ、どうして!?」
私はエーデルワイスの花束を顔の横に掲げた。
「これはエーデルワイスの花」
「そして私は――ヘーデルワイフ(屁出るワイフ)。なんちって」
私はペロリと舌を出して笑ってみた。夫は盛大に鼻血を吹き出して倒れた。大丈夫かしらこの人……いろんな意味で。
「お帰りなさい、(ブッ)あなた。あら? どうしたのその白い花?」
見たことない花だわ。彼、花に興味なんてあったかしら。じっと見つめていると、どこか照れくさそうに頬をかきだした。
「エーデルワイスっていう花なんだ。気高い白って意味があるらしくて、君にぴったりだと思って買ってきたんだ」
彼の抱える白い花はキレイな色をしていた。私にぴったりだなんて恥ずかしいわ。体が火照ってきちゃった。
あー、やだやだ。年甲斐もなくキュンとするなんて。乙女なんてとっくに過ぎてるのに。
「どうして花を私に」
「結婚記念日だからだよ」
「あっ(ブゥ)」
そうだったわ。今日、結婚記念日じゃない。どうしよう、何の準備もしてないわ。
「もしかして忘れてたのかい?」
「け、今朝までは覚えてたのよ」
ホントはまったく覚えてなかったけど。
「ははっ」
「もう笑わないでよ。忘れてたなんて恥ずかしいわ」
「……受け取ってくれるかい。僕の気持ち」
「えぇ、もちろんよ。私はあなたの(ブブッ)妻なんだから」
彼がくれた白い花は何よりも輝いて見えた。
「嬉しいよ。……ところでさっきからブゥって音が聞こえるけど。この音は何かな?」
夫はニコニコしている。絶対に分かっていて聞いてるんだわ。イヤになっちゃう。
「おならよ。お・な・ら!」
「君は屁の音までステキなんだね」
「そこまで行くとただの嫌味だわ」
「褒めたつもりなんだけどなぁ」
「気づいていない振りをするのが優しさよ」
「でも君って普段おならをしないから、余計に気になっちゃって」
「言ったそばから、蒸し返さないでよ」
「ごめんごめん」
「あなたのせいよ」
「えぇ、どうして!?」
私はエーデルワイスの花束を顔の横に掲げた。
「これはエーデルワイスの花」
「そして私は――ヘーデルワイフ(屁出るワイフ)。なんちって」
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