17 / 45
透視能力の結末
しおりを挟む
透には透視能力があった。能力は生まれつきのもので、幼い頃から女子の服を透視しては悦に浸っていた。
有機物無機物問わず、すべてを見通すことができる目。何者も何物も透の視線を阻むことはできない。
透視とはそういうものだ。この能力のおかげで透の人生は順風満帆だった。そう――この日までは。
「今日も最高だ。女子を見放題、なんて素晴らしい能力なんだ」
透は男の欲丸出しで、女子に熱い視線を送っている。
「おっ、あの子、可愛い」
一際目立つ緑の髪をなびかせながら、颯爽と歩く女性に透は目をつけた。後をバレないように追いかけ、さりげない足取りで隣に並ぶ。
女性は色の濃いサングラスをかけていた。もったいないと透は思う。
「何か用?」
透はビクリと肩を震わせた。女性は怪訝な目つきで、透を睨んでいる。
「えっと」
透は女性に目を奪われた。サングラスで隠れていて、なお美貌を漂わせる顔立ちにゴクリと喉がなる。
すべてを知りたい。透は透視能力を使った。サングラスの奥の目と視線が合う。
その瞬間、透の時は止まった。
「おい、大変だ! 人が倒れたぞ。誰か救急車を」
「息をしてないわ」
「ピクリとも動かないぞ」
人々の喧騒から、抜け出す影があった。人目を引く緑は逃げるようにその場を後にする。
――どうして? 私サングラスを外していないのに。なぜ彼は石化してしまったの?
有機物無機物問わず、すべてを見通すことができる目。何者も何物も透の視線を阻むことはできない。
透視とはそういうものだ。この能力のおかげで透の人生は順風満帆だった。そう――この日までは。
「今日も最高だ。女子を見放題、なんて素晴らしい能力なんだ」
透は男の欲丸出しで、女子に熱い視線を送っている。
「おっ、あの子、可愛い」
一際目立つ緑の髪をなびかせながら、颯爽と歩く女性に透は目をつけた。後をバレないように追いかけ、さりげない足取りで隣に並ぶ。
女性は色の濃いサングラスをかけていた。もったいないと透は思う。
「何か用?」
透はビクリと肩を震わせた。女性は怪訝な目つきで、透を睨んでいる。
「えっと」
透は女性に目を奪われた。サングラスで隠れていて、なお美貌を漂わせる顔立ちにゴクリと喉がなる。
すべてを知りたい。透は透視能力を使った。サングラスの奥の目と視線が合う。
その瞬間、透の時は止まった。
「おい、大変だ! 人が倒れたぞ。誰か救急車を」
「息をしてないわ」
「ピクリとも動かないぞ」
人々の喧騒から、抜け出す影があった。人目を引く緑は逃げるようにその場を後にする。
――どうして? 私サングラスを外していないのに。なぜ彼は石化してしまったの?
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
兵頭さん
大秦頼太
ホラー
鉄道忘れ物市で見かけた古い本皮のバッグを手に入れてから奇妙なことが起こり始める。乗る電車を間違えたり、知らず知らずのうちに廃墟のような元ニュータウンに立っていたりと。そんなある日、ニュータウンの元住人と出会いそのバッグが兵頭さんの物だったと知る。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
扉の向こうは黒い影
小野 夜
ホラー
古い校舎の3階、突き当たりの隅にある扉。それは「開かずの扉」と呼ばれ、生徒たちの間で恐れられていた。扉の向こう側には、かつて理科室として使われていた部屋があるはずだったが、今は誰も足を踏み入れない禁断の場所となっていた。
夏休みのある日、ユキは友達のケンジとタケシを誘って、学校に忍び込む。目的は、開かずの扉を開けること。好奇心と恐怖心が入り混じる中、3人はついに扉を開ける。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
悪魔の家
光子
ホラー
バス事件に巻き込まれた乗客達が、生きて戻れないと噂される悪魔の森で、悲惨な事件に巻き込まれていくーー。
16歳の少女あかりは、無事にこの森から、生きて脱出出来るのかーー。
辛い悲しい人間模様が複雑に絡み合うダークな物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
【失言ホラー 二言目】励ましたつもりだったのに【なずみのホラー便 第162弾】
なずみ智子
ホラー
本作は「カクヨム」「アルファポリス」「エブリスタ」の3サイトで公開中です。
【なずみのホラー便】のネタバレ倉庫も用意しています。
⇒ https://www.alphapolis.co.jp/novel/599153088/606224994
★リアルタイムでのネタバレ反映ではなく、ちまちま更新予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
もしもし、あのね。
ナカハラ
ホラー
「もしもし、あのね。」
舌足らずな言葉で一生懸命話をしてくるのは、名前も知らない女の子。
一方的に掛かってきた電話の向こうで語られる内容は、本当かどうかも分からない話だ。
それでも不思議と、電話を切ることが出来ない。
本当は着信なんて拒否してしまいたい。
しかし、何故か、この電話を切ってはいけない……と……
ただ、そんな気がするだけだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる