8 / 9
7
しおりを挟む
「貴様、何をする……!」
憤怒の炎を瞳に燃やして、京司郎がユキヒロを睨みつける。
「公共の場でこんなもん開くなよ。思春期のガキだって場を弁える。不愉快」
珍しく怒りを露わにしてユキヒロが言った。そして珍しく、というか、初めて俺はユキヒロに賛同した。
「そうだそうだ! 場を弁えろ!」
「つーか、譲も譲だよね」
「へ?」
なぜか俺の方にも冷たい声音と視線を向けられ、反射的に背筋がぞわぞわと粟立った。
「なんでそんな約束してんの? 馬鹿なの?」
ピリピリとした空気を纏うユキヒロに壁まで追い込まれ狼狽えた。
「え、いや、だって、つけてほしいって言うから、それをモチベーションに頑張ってもらおうと思って……」
「つけるだけで終わらないって普通分かるでしょ」
「いやいや分かるわけないだろ!」
俺はてっきり、人間にさらに近付きたいという向上心的なものとばかり思っていた。
というか、息子みたいな存在の京司郎にケツを狙われるなどという発想を持つ方がおかしいし、よっぽど変態だ。
「主に近寄るな」
不意に京司郎が俺の腕を引っ張り、おもちゃを独り占めする子どものように俺を後ろから腕の中に閉じ込めた。
いや、正直お前にも今は近付いて欲しくないんだけど……。
今はまだついていないとはいえ、ホテルの部屋を別にしようかと思うくらいには危機感を抱いている。
「……京司郎」
「何でしょう、主殿?」
小首を傾げて俺の顔を覗き込む京司郎は、下心などまるで知らないような無垢な表情をしている。
きっと今の京司郎は思春期の男子のように性への興味が芽生えているだけだ。
そしてその矛先が一番近くにいる俺に間違って向かっただけのことだろう。今ならまだ修正できる。
俺はひとつ咳払いして提案した。
「約束通り勝ったらつけてはやる」
「はいっ、頑張ります!」
「でも入れるのは俺じゃなくてよくないか? チンコを手に入れたら穴に入れたくなる気持ちは男としてよく分かる。でも男に入れるって言うのは結構イレギュラーだし、そもそも男の穴は受け入れられるようになってない。だからチンコをつけた暁には俺が風俗で可愛い女の子紹介してあげ――」
「嫌です」
ぴしゃりと提案をはねのけられて、俺は目を丸くした。
いつも俺に従順な京司郎がノーと言ったことなどこれまでに一度もなかったからだ。
「きょ、京司郎……?」
「絶対に嫌です。俺は、主殿と、まぐわいたいのです。他の者とするなんて考えられません」
ぎゅ……と縋るように力を強めて抱き締め直すと俺の肩に顔を埋めた。
……え? なんか俺が悪い奴みたいになってない?
憤怒の炎を瞳に燃やして、京司郎がユキヒロを睨みつける。
「公共の場でこんなもん開くなよ。思春期のガキだって場を弁える。不愉快」
珍しく怒りを露わにしてユキヒロが言った。そして珍しく、というか、初めて俺はユキヒロに賛同した。
「そうだそうだ! 場を弁えろ!」
「つーか、譲も譲だよね」
「へ?」
なぜか俺の方にも冷たい声音と視線を向けられ、反射的に背筋がぞわぞわと粟立った。
「なんでそんな約束してんの? 馬鹿なの?」
ピリピリとした空気を纏うユキヒロに壁まで追い込まれ狼狽えた。
「え、いや、だって、つけてほしいって言うから、それをモチベーションに頑張ってもらおうと思って……」
「つけるだけで終わらないって普通分かるでしょ」
「いやいや分かるわけないだろ!」
俺はてっきり、人間にさらに近付きたいという向上心的なものとばかり思っていた。
というか、息子みたいな存在の京司郎にケツを狙われるなどという発想を持つ方がおかしいし、よっぽど変態だ。
「主に近寄るな」
不意に京司郎が俺の腕を引っ張り、おもちゃを独り占めする子どものように俺を後ろから腕の中に閉じ込めた。
いや、正直お前にも今は近付いて欲しくないんだけど……。
今はまだついていないとはいえ、ホテルの部屋を別にしようかと思うくらいには危機感を抱いている。
「……京司郎」
「何でしょう、主殿?」
小首を傾げて俺の顔を覗き込む京司郎は、下心などまるで知らないような無垢な表情をしている。
きっと今の京司郎は思春期の男子のように性への興味が芽生えているだけだ。
そしてその矛先が一番近くにいる俺に間違って向かっただけのことだろう。今ならまだ修正できる。
俺はひとつ咳払いして提案した。
「約束通り勝ったらつけてはやる」
「はいっ、頑張ります!」
「でも入れるのは俺じゃなくてよくないか? チンコを手に入れたら穴に入れたくなる気持ちは男としてよく分かる。でも男に入れるって言うのは結構イレギュラーだし、そもそも男の穴は受け入れられるようになってない。だからチンコをつけた暁には俺が風俗で可愛い女の子紹介してあげ――」
「嫌です」
ぴしゃりと提案をはねのけられて、俺は目を丸くした。
いつも俺に従順な京司郎がノーと言ったことなどこれまでに一度もなかったからだ。
「きょ、京司郎……?」
「絶対に嫌です。俺は、主殿と、まぐわいたいのです。他の者とするなんて考えられません」
ぎゅ……と縋るように力を強めて抱き締め直すと俺の肩に顔を埋めた。
……え? なんか俺が悪い奴みたいになってない?
4
お気に入りに追加
188
あなたにおすすめの小説
絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!
toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」
「すいません……」
ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪
一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。
作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!

片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。



なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる