6 / 9
5
しおりを挟む
俺が対局中に漏らしたことは結構な噂となってしまい、それ以来、俺は人前で将棋を指せなくなってしまったのだ。
奴が全て悪いわけではないのだが、それでも恨まずにはいられなかった。
類瀬博士に誘われ棋士アンドロイドを造り始めたのも、奴への復讐という意味合いが大きい。
「譲、まだあのこと根に持ってるんだねぇ」
「当たり前だろ!」
キッと睨みつける俺に、ユキヒロはくすくすと笑った。
「でも俺は譲に感謝してるんだよ。だって譲がいなかったら俺は将棋続けてなかったもん」
「え?」
思いもよらない言葉に目を丸くする。
その間抜け面が面白いのか、ユキヒロはまたくすりと笑った。
「譲が負けると半泣きになるのが可愛くてさぁ。その顔が見たいがために俺がんばってたらこんなに強くなちゃった」
うっとりと目を細めるユキヒロの嫌みな物言いにカッとなった。
「テメェ……ッ」
「では明日の対局では貴様に泣いて貰おう」
頭に血が上った俺を制するように、京司郎が落ち着き払った、しかし毒のある声で俺の言葉を遮った。
「京司郎……」
俺を庇うように一歩前に出て、毅然とユキヒロに対峙する京司郎の姿に少し感動した。
「お前、立派になったな……!」
「このくらい当然です。主殿の仇は俺の仇です。絶対明日は奴を泣かせます。いや、泣くだけでは物足りないな。糞尿を垂れ流し、将棋界での居場所を奪ってやりましょう」
「そこまではしなくていい!」
どんな惨状を作り出そうとしているんだ!
こんなことを真顔で言うのだから本当に恐ろしい……。
「随分強気だな。一度も俺に勝ったことなにのによく言えたものだね。実力の伴わない自信は痛いからやめた方がいいよ」
鼻で笑うユキヒロに、京司郎は不敵な笑みを返した。
「絶対に勝てるから言ってるんだ。今回の俺はいつもと違うからな」
「へぇ、どう違うの?」
「明日の対局で勝てたら、主殿が俺を男にしてくれるのだ。だから絶対に負けられない」
「わーっ! お、お前、それは言うな!」
とんでもないことを得意げに言い放った京司郎の口を慌てて塞ぐ。しかし時すでに遅し。
「……は? なにそれ」
遅れてユキヒロが顔を盛大に顰めて低い声で言った。
「あー、いや、これは、ちょっと……」
俺は目を泳がせながら口ごもった。まさか男性器をつけることをご褒美にしているなど言えるはずがなかった。
何とかして誤魔化さなければ……! と必死に頭をフル回転させていると、
「佐久間くーん!」
豊満な胸を上下に揺らしながら浴衣姿の類瀬博士がやって来た。
や、やった! 天の助け……!
奴が全て悪いわけではないのだが、それでも恨まずにはいられなかった。
類瀬博士に誘われ棋士アンドロイドを造り始めたのも、奴への復讐という意味合いが大きい。
「譲、まだあのこと根に持ってるんだねぇ」
「当たり前だろ!」
キッと睨みつける俺に、ユキヒロはくすくすと笑った。
「でも俺は譲に感謝してるんだよ。だって譲がいなかったら俺は将棋続けてなかったもん」
「え?」
思いもよらない言葉に目を丸くする。
その間抜け面が面白いのか、ユキヒロはまたくすりと笑った。
「譲が負けると半泣きになるのが可愛くてさぁ。その顔が見たいがために俺がんばってたらこんなに強くなちゃった」
うっとりと目を細めるユキヒロの嫌みな物言いにカッとなった。
「テメェ……ッ」
「では明日の対局では貴様に泣いて貰おう」
頭に血が上った俺を制するように、京司郎が落ち着き払った、しかし毒のある声で俺の言葉を遮った。
「京司郎……」
俺を庇うように一歩前に出て、毅然とユキヒロに対峙する京司郎の姿に少し感動した。
「お前、立派になったな……!」
「このくらい当然です。主殿の仇は俺の仇です。絶対明日は奴を泣かせます。いや、泣くだけでは物足りないな。糞尿を垂れ流し、将棋界での居場所を奪ってやりましょう」
「そこまではしなくていい!」
どんな惨状を作り出そうとしているんだ!
こんなことを真顔で言うのだから本当に恐ろしい……。
「随分強気だな。一度も俺に勝ったことなにのによく言えたものだね。実力の伴わない自信は痛いからやめた方がいいよ」
鼻で笑うユキヒロに、京司郎は不敵な笑みを返した。
「絶対に勝てるから言ってるんだ。今回の俺はいつもと違うからな」
「へぇ、どう違うの?」
「明日の対局で勝てたら、主殿が俺を男にしてくれるのだ。だから絶対に負けられない」
「わーっ! お、お前、それは言うな!」
とんでもないことを得意げに言い放った京司郎の口を慌てて塞ぐ。しかし時すでに遅し。
「……は? なにそれ」
遅れてユキヒロが顔を盛大に顰めて低い声で言った。
「あー、いや、これは、ちょっと……」
俺は目を泳がせながら口ごもった。まさか男性器をつけることをご褒美にしているなど言えるはずがなかった。
何とかして誤魔化さなければ……! と必死に頭をフル回転させていると、
「佐久間くーん!」
豊満な胸を上下に揺らしながら浴衣姿の類瀬博士がやって来た。
や、やった! 天の助け……!
4
お気に入りに追加
188
あなたにおすすめの小説
前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果
はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる