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もっと深く、確かなもの
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「もちろん分かっています。だからこそ、お願いしているんです。ずっとこの先もカーティス様の傍にいられるという証しを、契約書よりももっと深く、確かなもので欲しいんです」
レイラの死に際の言葉は、恐らく一生カーティスにつき纏うだろう。だから、その呪いのような言葉が蘇って彼を苛むたびに、違うと力強く否定し、温かな抱擁で包み込んで、守ってあげたいと思った。
だからこそ、この世で何よりも強固で絶対的な関係である番になりたいのだ。そうすれば、ずっとカーティスの傍にいることができる。
「……どうか俺を、ずっとカーティス様の傍に置かせてください」
まるで天に祈るようにカーティスの顔を見上げて、その手を両手で包み込んだ。
しばらくの間、空で眼差しを濃密に絡ませ見つめ合っていた二人だが、不意にカーティスがダリルの腕を引き寄せ、そのまま深く口づけた。
胸の底から突き上がる衝動を抑えるにはこれしかないというような、切実で狂おしい熱を孕んだキスだった。
カーティスは唇を離すと、キスの名残で熱く潤んだ吐息を口元に滲ませながら言った。
「君に先に言わせてしまうなんて、不甲斐ないことだ。……私の方こそ、君とずっと一緒にいたい。だから、どうか私の番として、この先もずっと傍にいてくれないだろうか」
真紅の瞳が真っ直ぐダリルを見つめる。
心の底から願うこの世でただひとつの願いを口にするような、その真摯な告白に胸が甘く締め付けられた。
ダリルは微笑む目元に涙を滲ませて、大きく頷いた。
「もちろんです。たとえ地の果てまで行こうとついていきますからね」
「君となら地の果てでも楽しそうだ」
おどけて言うダリルに、カーティスは甘やかに微笑んでその額に淡いキスを落とした。
そして戯れのようなキスを唇にしながら、柔らかにダリルをソファに押し倒した。
「ん……、はぁ……っ」
着ているものを脱がされ露わになった肌が、カーティスの熱い手で労るように撫でられるたび、キスの合間に漏れる吐息に淫靡な響きが増した。
手で撫でられるだけでその有り様なのだ。首筋や鎖骨など、淫らな期待を孕んだ肌にキスを落とされると、狂おしいまでの歓喜に息が詰まった。
もちろんカーティスにダリルの体をもてあそぶような下劣な思惑はないだろう。しかしそれでも肌を這う自分の唇や手に、悩まし気な反応を見せるダリルに、カーティスは愛おしげに目を細めつつも、その瞳の奥には情欲の熱を確かに宿していた。
「あ……んっ、は……、あぁ……っ」
濡れた窄まりに、カーティスの指が滑り込み奥を丁寧にほぐしていく。
それはカーティスがダリルを大事に思っているからこその丁寧さで、彼の優しさであることは重々承知している。
それに、番になるにはアルファがオメガの項を単に噛めばいいという話ではなく、互いが互いを強く求める愛欲の熱を心身に孕んでいなければならない。
だから決してカーティスの行為が、ダリルの淫らな苦悶の表情を見たいという嗜虐的な意味合いでないことは十分に分かっている。
それでもこの時間がどうしようもなく焦れったく、甘い非難めいた色が声に滲んでしまう。
早く番になりたいという気持ちが、一層、ダリルの心を性急なものにしたのかもしれない。
ついに我慢できず、ダリルはするりとカーティスの腕に手を伸ばし、そのままぎゅっと縋るように握りしめた。
「ダリル君?」
「もう、い、いれて、ください……っ」
甘く濡れた声で懇願すると、カーティスは目を見開いた。
レイラの死に際の言葉は、恐らく一生カーティスにつき纏うだろう。だから、その呪いのような言葉が蘇って彼を苛むたびに、違うと力強く否定し、温かな抱擁で包み込んで、守ってあげたいと思った。
だからこそ、この世で何よりも強固で絶対的な関係である番になりたいのだ。そうすれば、ずっとカーティスの傍にいることができる。
「……どうか俺を、ずっとカーティス様の傍に置かせてください」
まるで天に祈るようにカーティスの顔を見上げて、その手を両手で包み込んだ。
しばらくの間、空で眼差しを濃密に絡ませ見つめ合っていた二人だが、不意にカーティスがダリルの腕を引き寄せ、そのまま深く口づけた。
胸の底から突き上がる衝動を抑えるにはこれしかないというような、切実で狂おしい熱を孕んだキスだった。
カーティスは唇を離すと、キスの名残で熱く潤んだ吐息を口元に滲ませながら言った。
「君に先に言わせてしまうなんて、不甲斐ないことだ。……私の方こそ、君とずっと一緒にいたい。だから、どうか私の番として、この先もずっと傍にいてくれないだろうか」
真紅の瞳が真っ直ぐダリルを見つめる。
心の底から願うこの世でただひとつの願いを口にするような、その真摯な告白に胸が甘く締め付けられた。
ダリルは微笑む目元に涙を滲ませて、大きく頷いた。
「もちろんです。たとえ地の果てまで行こうとついていきますからね」
「君となら地の果てでも楽しそうだ」
おどけて言うダリルに、カーティスは甘やかに微笑んでその額に淡いキスを落とした。
そして戯れのようなキスを唇にしながら、柔らかにダリルをソファに押し倒した。
「ん……、はぁ……っ」
着ているものを脱がされ露わになった肌が、カーティスの熱い手で労るように撫でられるたび、キスの合間に漏れる吐息に淫靡な響きが増した。
手で撫でられるだけでその有り様なのだ。首筋や鎖骨など、淫らな期待を孕んだ肌にキスを落とされると、狂おしいまでの歓喜に息が詰まった。
もちろんカーティスにダリルの体をもてあそぶような下劣な思惑はないだろう。しかしそれでも肌を這う自分の唇や手に、悩まし気な反応を見せるダリルに、カーティスは愛おしげに目を細めつつも、その瞳の奥には情欲の熱を確かに宿していた。
「あ……んっ、は……、あぁ……っ」
濡れた窄まりに、カーティスの指が滑り込み奥を丁寧にほぐしていく。
それはカーティスがダリルを大事に思っているからこその丁寧さで、彼の優しさであることは重々承知している。
それに、番になるにはアルファがオメガの項を単に噛めばいいという話ではなく、互いが互いを強く求める愛欲の熱を心身に孕んでいなければならない。
だから決してカーティスの行為が、ダリルの淫らな苦悶の表情を見たいという嗜虐的な意味合いでないことは十分に分かっている。
それでもこの時間がどうしようもなく焦れったく、甘い非難めいた色が声に滲んでしまう。
早く番になりたいという気持ちが、一層、ダリルの心を性急なものにしたのかもしれない。
ついに我慢できず、ダリルはするりとカーティスの腕に手を伸ばし、そのままぎゅっと縋るように握りしめた。
「ダリル君?」
「もう、い、いれて、ください……っ」
甘く濡れた声で懇願すると、カーティスは目を見開いた。
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