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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?
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和やかな気持ちで包装を開け終わり、箱を開けるとそこには、自分が着ているものとはおよそ比べものにならないほど高級感が漂うスーツが入っていた。
「うわぁ……!」
思わず感嘆の声が漏れた。
「すごい、まるでモデルさんが着ていそうなスーツですね! これを着たら何だか脚が長く見えそうです!」
興奮気味に言いながら、箱から取り出したスーツを眺めていると蓮さんが小さく笑った。
「あ、す、すみません、つい興奮して……」
年甲斐もなく興奮したことが恥ずかしくなり頭を掻いて謝ったが、蓮さんは首を緩く振った。
「いや、別に謝ることじゃねぇよ。なんか、お前の喜びっぷり見てたら蘭香のこと思い出して」
「え? 蘭香ちゃんをですか?」
驚いて聞き返すと、蓮さんは穏やかな微笑みを浮かべながら頷いた。
「あいつに何回かプレゼントやったことあるんだけど、どんなものでも毎回すげぇ喜んでくれてさ。その顔が見たくて理由こじつけてよくやってたなぁ、と思って」
昔を懐かしむその声はとても安らかで優しく、きっと思い出が蓮さんにとって宝物のように大事なことがよく分かった。
微笑ましい気持ちで蓮さんの顔を見ていると、僕の視線に気付いた蓮さんがハッとしたように穏やかな微笑を霧散させた。
「言っとくけど、思い出すとは言っても蘭香の方が数億倍可愛いからな! 勘違いするなよ!」
「は、はいっ、もちろんです!」
そんなおこがましい勘違いしようがないけれど、気圧されて僕はこくこくと頷いた。
「でも本当にこんな素敵なものをありがとうございました。こんな立派なスーツ、きっと一生着ることなんてなかったと思います」
「あー……、お前いかにも安物って感じのスーツ着てるもんな」
呆れるような視線で着ているスーツを上から下まで見られ、何だか恥ずかしくなって肩をすぼめた。
「ははは……、ですよね、ここの皆さんはスーツもお洒落で色々こだわっているので本当にすごいなと思います。僕もいつか指名が入るようになったらこのスーツを着させてもらいますね」
それを励みに頑張ります! と抱負を述べると蓮さんに「は?」と眉を顰められてしまった。
「お前まさか指名がもらえるようになるまでそのスーツ着ない気か?」
なぜか少し不機嫌に問われて怯みつつも頷いた。
「は、はい、こんなに立派なスーツですから、やっぱり記念すべき日に着ないと」
「アホか。お前が指名もらえる日まで仕舞ってたらカビが生えるか、お前のホスト生命が尽きるわ」
「う……っ」
辛辣な言葉が胸に刺さる。けれど確かにその可能性は大いにある。いや、ほぼ確定かもしれない。
「で、でも、僕のような指名を一度もとったことのない者がこんな立派なスーツを着ていたら調子に乗ってると思われるかもしれませんし……」
ヘルプのヘルプくらいの立ち位置の僕が着るのは、分不相応というものだ。
おこがましい気持ちでそう言うと、蓮さんは鼻先でハッと笑った。
「うわぁ……!」
思わず感嘆の声が漏れた。
「すごい、まるでモデルさんが着ていそうなスーツですね! これを着たら何だか脚が長く見えそうです!」
興奮気味に言いながら、箱から取り出したスーツを眺めていると蓮さんが小さく笑った。
「あ、す、すみません、つい興奮して……」
年甲斐もなく興奮したことが恥ずかしくなり頭を掻いて謝ったが、蓮さんは首を緩く振った。
「いや、別に謝ることじゃねぇよ。なんか、お前の喜びっぷり見てたら蘭香のこと思い出して」
「え? 蘭香ちゃんをですか?」
驚いて聞き返すと、蓮さんは穏やかな微笑みを浮かべながら頷いた。
「あいつに何回かプレゼントやったことあるんだけど、どんなものでも毎回すげぇ喜んでくれてさ。その顔が見たくて理由こじつけてよくやってたなぁ、と思って」
昔を懐かしむその声はとても安らかで優しく、きっと思い出が蓮さんにとって宝物のように大事なことがよく分かった。
微笑ましい気持ちで蓮さんの顔を見ていると、僕の視線に気付いた蓮さんがハッとしたように穏やかな微笑を霧散させた。
「言っとくけど、思い出すとは言っても蘭香の方が数億倍可愛いからな! 勘違いするなよ!」
「は、はいっ、もちろんです!」
そんなおこがましい勘違いしようがないけれど、気圧されて僕はこくこくと頷いた。
「でも本当にこんな素敵なものをありがとうございました。こんな立派なスーツ、きっと一生着ることなんてなかったと思います」
「あー……、お前いかにも安物って感じのスーツ着てるもんな」
呆れるような視線で着ているスーツを上から下まで見られ、何だか恥ずかしくなって肩をすぼめた。
「ははは……、ですよね、ここの皆さんはスーツもお洒落で色々こだわっているので本当にすごいなと思います。僕もいつか指名が入るようになったらこのスーツを着させてもらいますね」
それを励みに頑張ります! と抱負を述べると蓮さんに「は?」と眉を顰められてしまった。
「お前まさか指名がもらえるようになるまでそのスーツ着ない気か?」
なぜか少し不機嫌に問われて怯みつつも頷いた。
「は、はい、こんなに立派なスーツですから、やっぱり記念すべき日に着ないと」
「アホか。お前が指名もらえる日まで仕舞ってたらカビが生えるか、お前のホスト生命が尽きるわ」
「う……っ」
辛辣な言葉が胸に刺さる。けれど確かにその可能性は大いにある。いや、ほぼ確定かもしれない。
「で、でも、僕のような指名を一度もとったことのない者がこんな立派なスーツを着ていたら調子に乗ってると思われるかもしれませんし……」
ヘルプのヘルプくらいの立ち位置の僕が着るのは、分不相応というものだ。
おこがましい気持ちでそう言うと、蓮さんは鼻先でハッと笑った。
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